【インタビュー】SHINING / Niklas Kvarforth

2017年12月23日 (土) 02:00

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10枚目のアルバム『X - Varg Utan Flock』をリリースするスウェーデンの闇、シャイニング。エクストリーム・メタルきってのお騒がせ男、ニクラス・クヴァルフォルトに色々と話を聞いてみた。インタビューは、度重なる時間変更の末にやっと実現。さらに、いつのまにかニクラスは、スウェーデンからスロベニアに引っ越していた。


ニクラス:申し訳ない、本当にいろんなことがあって。脚を痛めて病院に行ったりもしなくてはいけなくて、とにかくストレスが溜まる事ばかりだよ。俺は普段は非常に時間に正確なんだけどね。ドイツ人みたいにさ。先週はずっと寝込んでいて、まったく何もできなかった。さらに猫が俺のパソコンに小便しやがって。それでキーボードがダメになってしまって、やり取りはすべて携帯電話でやらなくちゃいけなかったんだ。半分のキーが使えなくなってしまったから、さすがにそれでインタビューに答えるのは不可能だよ(笑)

川嶋未来(以下、川嶋):スロベニアに引っ越したのはいつなのですか。

ニクラス:1年くらい前かな。スウェーデンでの状況があまり良くなくてさ。ギャングによる暴力とか。あそこにいたら、俺はいずれ死ぬか、またドラッグにハマってしまいそうだったんだ。それでスペインに引っ越したんだけど、合わなくてね。それで旧ユーゴスラヴィアに引っ越すことにしたんだ。ここはいいよ。食い物もワインもうまいし。ワインは特に素晴らしいよ。とても落ち着いた雰囲気のところだし。

川嶋:ニュー・アルバム『X - Varg Utan Flock』がリリースになります。このタイトルはどういう意味なのですか。スウェーデン語でしょうか。

ニクラス:スウェーデン語で、"Wolf without a Flock"(群れを持たない狼)という意味なんだ。

川嶋:前作と比べてどのような点が進化、変化していると思いますか。

ニクラス:前作は、シャイニングがバンドとして安定している中で作られた。シャイニングは、とにかくメンバー・チェンジが激しいからね。ライヴも2年くらいやって、その後作ったアルバムだった。今回のアルバムの曲は、俺がスペインにいるときに書いたんだよ。とにかく俺の身辺にあまりに多くのことが起こりすぎてね。何と言ったらいいかな、つまりあまり精神状態が良くなかったのさ。曲が書けずに転がり回るのでなく、今回は20年で初めて、ものすごい怒りを感じた。ものすごい怒りと、再びすべてを失う悲しみをミックスした感じと言えばいいかな。だからこのアルバムは、非常に良い感情のミックスになっていると思うよ。

川嶋:歌詞はどのような内容なのですか。

ニクラス:歌詞はスタジオに入って座ると、スラスラと湧き上がって来て、あっという間に書きあがった。1曲目は、英語でいうと"Black Unstoppable Fire"という意味で、自らの相続財産、生まれながらの権利を否定することについてだ。炎を通じて、さらに強い存在へと生まれ変わるということだよ。2曲目は、"Gate of the Golden Bridge"という意味で、自分という人格をいかにコントロールするかについて、己の肉体の否定についてだ。一歩進んで理性の声を聞く。後戻りはない。一度眼を開けてしまえば、二度と閉じることはできないのさ。3曲目は"I am Your Enemy"という意味なのだが、これは怒りに満ちた曲だよ。最初のフレーズは、「姉妹よ、兄弟よ、お前らは日和見主義者の寄生虫だ」みたいな感じさ。友情というのはより良い人生を送るのに役立つとは思う一方、人を惑わすことにもなる。何度も何度も繰り返しね。とにかくもうウンザリだ、ということが言いたいんだ。4曲目の歌詞は、一度書いたものをレコーディングの前の晩に全てボツにして、新しく書き直したんだ。この曲は、俺がかつて抱えていた問題についてだ。アルコールやドラッグで引き起こされるセックス依存だよ。もう今は大丈夫だけどね。とてもオープンな内容さ。最後のパートはとてもシンプルで、「もし俺の人生を再び生きるチャンスがあったとしても、俺はまったく同じミスを犯すだろう。それも10倍悪く」というものだ。5曲目はインスト。

川嶋:6曲目「Mot Aokigahara」は日本人には非常に興味深いタイトルですが。

ニクラス:そうだろう(笑)正しい発音はわからないのだけど。

川嶋:アオキガハラです。

ニクラス:アオキガハラか。俺はゴールデン・ゲート・ブリッジとか、自殺の名所にとても興味がある。まあ実際の歌詞は自殺についてではなく、ネガティヴな感情についてなのだけどね。アーティストとして、ネガティヴなものを、建設的に利用したのさ。日本に行ったときに、青木ヶ原にはぜひ行きたかったんだけどね。非常に残念なことに、この曲を書いたあとに、樹海をテーマにしたアメリカでクソみたいな映画が作られたことがわかったんだ。俺は映画が大好きで、現代ホラーについての本も書いているくらいさ。青木ヶ原という題材は、映画にするには最高のもののはずだよ。『The Forest』(邦題『Jukai―樹海―』)というタイトルなんだけど、アメリカ式に作っちゃってさ。それから『Grave Halloween』(邦題『呪(のろい)』というアメリカ映画も、舞台は青木ヶ原さ。まあ日本人は楽しめるかもしれないけど。

川嶋:"Mot"というのはどういう意味なのですか。

ニクラス:英語でいうと「Towards」、つまり「アオキガハラに向かって」という意味さ。

川嶋:この曲では「2017年12月に俺は死んだ」というつぶやきが出てきますが、これはどういう意味なのでしょう。

ニクラス:それは別に俺のことと限定しているわけではない。それに死と言っても、肉体の死とは限らない。精神的な死もあるからね。俺は基本的に何でもきちんと日時を決めないと気が済まないタイプなんだ。異常にキッチリしているところがあって、例えば掃除も毎日しないと耐えられない。まあ12月に本当に肉体の死を迎えるかもしれないね。わからないよ。だけどそうなったら、アルバムのリリース前に死ぬことになるな(大爆笑)。本当はこのアルバムは、2017年の12月にリリースされる予定だったんだよ。また歌詞を掲載した本も出版しようと思ってるんだ。スウェーデン語の歌詞をGoogle翻訳しても、まったく意味がわからないだろう?歌詞はとても詩的に書かれているし、隠された意味も含まれている。前にも出したんだよ、歌詞を英語に訳した本を。ただ英訳するのではなく、歌詞としてきちんと書き直しているんだ。前のは売り切れて、フランス語版やロシア語、トルコ語のものも出た。これはつまり、俺の書く歌詞が一体どのような意味なんかを知りたいと思う人が多数いるということだと思ってる。

川嶋:日本に来たときに、樹海は行かなかったのですね。

ニクラス:行かなかった。Taakeのオリヤン(Hoest)が色々と話を聞かせてくれたんだ。

川嶋:オリヤンとは一緒に樹海行きましたよ。

ニクラス:それで靴を見つけたんだろ(爆笑)。(注:Hoestは樹海でボロボロになった片方の靴を発見。大喜びで持ち帰った。)せっかくニュー・アルバムも出ることだし、早くまた日本に行って、次回は必ず青木ヶ原にも行きたいね。

川嶋:今回も6曲入りですが、6曲収録というのはこだわりなのでしょうか。

ニクラス:いや、決して意図的ではないんだ。ただアルバムを作ると、自然と6曲になってしまうのさ。Burzumの『Filosofem』(注:このアルバムも6曲入り)が大好きなので、それが頭の片隅にあるという可能性はある。俺が曲を書くと、だいたい6−9分くらいの長さになるんだ。だから自然と6曲ということになるのかもしれない。振り返ってみてアルバムがみな6曲入りという事実は気に入っているけどね。

川嶋:本作はスウェーデン語による歌詞が殆どですが、スウェーデン語で歌うのと英語で歌うのは違いますか。

ニクラス:スウェーデン語で歌うのが気に入っているというわけではないんだ。今回のアルバムで歌詞を書いたときに、自然とスウェーデン語が浮かんで来たというだけのことだよ。『Redefining Darkness』には英語の歌詞もたくさん入っているし。決してコントロールしてやっているわけではない。座って心から湧き上がってくるものを書き留めるだけさ。アーティストというのはそういうものだろう。たとえそれが不快なものであれ、心地よいものであれ、素直に心を開くというのは重要なことだ。創造行為というのは対価を求めずにやるものさ。20周年記念のとき、ライヴで最初の2枚のアルバムからの曲を演奏しようと思ったんだ。だけど一晩やって、セットリストを変更せざるを得なかった。どうしても12−13歳の頃に書いた歌詞を歌うというのがしっくり来なくてね。誤解しないで欲しいのは、当時あの歌詞は本気で書いたということさ。だけどさすがに30歳をすぎて、12−13歳のころよりは大人になっていた(笑)。ティーンエイジャーというのは、何かと批判的なものだろ。

川嶋:シャイニングはもともとブラック・メタル・バンドとしてスタートし、その後音楽性を広げていきました。ターニング・ポイントとなったアルバムはどれだと思いますか。

ニクラス:4枚目の『IV - The Eerie Cold』がきっかけだね。俺は常にポップ・ミュージックも大好きで、ジャズなども聴いている。実はもうあまりメタルは聴かないんだ。俺はおそらくアレンジメントの能力に秀でていると思うんだ。ベースラインを変えて、同じリフを面白く響かせたりとか。本当のターニング・ポイントは5枚目の『V - Halmstad (Niklas ang?ende Niklas)』だよ。同じ事ばかりやっているわけにいかないからね。しかし心の狭いブラック・メタル・ファンの反応っていつも同じだろう?Sighもそうだと思うけど、「一番好きなアルバムはファースト・アルバムだ」ってすぐに言われたり。

川嶋:それはよくありますね。

ニクラス:ファーストみたいな作品をもはや作ることはないんだよ。あれは20年も前の作品で、俺は20年前の俺とは違う人物なんだ。まあ中にはクソみたいに同じアルバムを何度も何度もリリースし続けているバンドもいるけどさ。他人の評価を気にして、自分自身を表現できなくなったらおしまいさ。いずれにせよ5枚目が大きなターニング・ポイントになってると思うよ。フラメンコ・ギターを取り入れたりて、「タカタン、タカタン」っていうリズムを入れたりしてね。やらずにはいられなかったのさ。やりたかった、だからやった。それだけのことさ。

川嶋:シャイニングは2004年に1度解散していますが、理由は何だったのですか。

ニクラス:実はシャイニングは5−6回解散してるんだ。

川嶋:そうなんですか?

ニクラス:そうだよ。俺はときに他人と一緒に何かをやるということが苦痛になるんだ。シャイニングというのは俺にとっては子供みたいなものさ。フラストレーションが溜まったり、苦痛になることもしょっちゅうある。そしてツアー。俺はツアーというものがあまり好きではないんだ。同じ会場で、何度も同じお客さん相手にしてさ。豚に真珠を与えている気がしてくる。ライヴをやるというのは、俺にとっては非常に精神的苦痛を伴うことなんだよ。10曲演奏するということは、俺にとっては10の悪夢を体験するようなものだ。俺たちもどんどん年をとっていってるしね。振り返ってみると、パリのあのライヴハウスでは12回も演奏したけど、エッフェル塔は見たことすらない、なんていうことにもなりたくない。言いたいことは伝わるかな。変な気分になるんだよ。

川嶋:そう言えば、今年のアメリカツアーでもトラブルに見舞われたそうですね。

ニクラス:小さな町の会場だったんだけど、プロモーターが奇妙なやつでね。食い物もロクに用意されていない代わりに、ドラッグとアルコールだけは準備されていた。バーにスピードが用意されてたんだけど、断ったんだ。こんなのやったらショウがめちゃくちゃになってしまうし、お前と喧嘩を吹っかけるハメになるかもしれないって。でもしつこくてさ、「いいじゃないか、やりなよ」って。俺もいい加減、必死に気に入られようとしているプロモーターにムカムカきて、面倒だからとりあえずやって、飯を食いに出て行った。レストランでウェイトレスをやっている女の子に、「ボーイフレンドはいるか」と聞いたら、「いる」と。で、「ちょっとの間、彼のことを忘れないか」って誘ってみたら「もちろん!」って(笑)。それでその子と楽しんだあと、会場に戻り、ステージに上がったのだけど、もうすべてがめちゃくちゃなんだ。俺に何かを投げつけてきた奴がいたから、そいつの胸を蹴ってやった。ツアー・マネジャーには「ステージでジーク・ハイルをやってくれ」と言われたのだけど、それは無理なので断って、代わりに腕を上げて下げるジェスチャーをやったんだ。ハレルヤみたいな感じでね。プロモーターはあまりにプロフェッショナルでないので、会場を去るときに「ファック・オフ」と言ってやった。めちゃくちゃムカついたからさ。そしたらそいつ、何をやったと思う?ANTIFAにコンタクトしやがったんだ!親のクレジットカードで遊んでるようなやつらさ。あいつらは、MardukやMayhemのライヴも妨害しやがった。で、次にシャイニングをターゲットにしたんだよ。俺に関するポスターやフライヤーを撒いたりしてね。ゴシップ・ウェブサイトから必死に情報を集めてさ。俺がレイシストだとか、ホモフォビアだとかって。ホモフォビアなんて心当たりすらない。確かに「Come on, you fuckin’ faggot black metal people!」くらいは言ったかもしれないけどさ。挙句の果てに、俺が女の子にドラッグを盛って、体を触ったなんて言い出し始めやがった。これはおかしい、何でこんな作り話が突如出てきたんだろうと怪訝に思っていたら、何のことはない、俺がヤったウェイトレスが、そのプロモーターの彼女だったんだよ(大爆笑)!それで奴は怒り狂ってさ。そのせいでポートランドのライヴがキャンセルになって、怒ったファンが会場に火炎瓶を投げ込んだりもしたらしい。出回ってる話のほとんどが作り話さ。確かに男を脅したのは本当だ。だけど女の子の体を触ったとかさ、冗談じゃない。俺は疲れすぎていて、そんな気すらなかった。俺の体を触ってきた女はいたけどね(笑)。結局ライヴが1回キャンセルに追い込まれたのだけど、それも実はセールスが今ひとつだったというのが本当のところさ。キャンセルする口実が欲しかったんだよ。90年代のDeicideの騒ぎを思い出すね。まあグレン・ベントンはグレン・ベントンだったんだけどさ。わかるだろ、さすがにうんざりさ。別にこれが将来的にさらに問題になることはないだろうけどね。

川嶋:ブラック・メタルとの出会いはどのようなものだったのでしょう。あなたのお婆様がBurzumのアルバムを持っていたことがきっかけだったというのを聞いたことがあるのですが、本当なのでしょうか。

ニクラス:本当さ。彼女はBurzumだけじゃなくて、いろいろな作品を持っていたよ。ガンズ・アンド・ローゼズとかさ。『Appetite for Destruction』は史上最高のブラック・メタル・アルバムだと思うよ(笑)。それからBurzumだけでなく、DarkthroneやSighも聴くようになった。当時はブラック・メタルのアルバムって少なかっただろ。だからブラック・メタル関連のリリースをすべて揃えることもできた。今みたいに1週間に200枚のアルバムが出るみたいな状況じゃなかったからね。彼女のコレクションにはCeltic Frostもあってね。Celtic Frostは「ウッ」の元祖だろ。すぐに取り憑かれたよ。家族の中で、俺の生き方をサポートしてくれるのは、祖母だけなんだ。レコード・レーベルをやったり、レコード・ショップをやったり、もちろんシャイニングもね。一度彼女をHellfestに連れて行ったことがあるんだ。高齢で、いつ何が起こってもおかしくない状況だからさ。ガンズが見たいということなので、連れて行ったんだ。それで俺と、Watainのエリックと、死んじゃったThe Devil’s Bloodのメンバーで一緒に話したり。Hellhammerもいたね。とても不思議な光景だったと思うよ。「ニクラスのお婆さんがバックステージにいるぞ!」なんていう感じでさ。とても楽しかったよ。そもそも俺の友達は、俺よりもずっと年上だからね。俺は生まれるのが遅かったというか、なかなか同年代の奴らとうまくやれなかったんだ。成長が早かったのさ。祖母のような70−80歳くらいの人と話し込むのがとても楽しかったんだ。彼女らは実際に人生経験がとても豊富だろう。経験豊富ぶってるニセモノとは違って(笑)


川嶋:現在のシャイニングの売りの一つはあなたの変幻自在のヴォーカルだと思うのですが、結成時はヴォーカルは担当していませんでしたよね。いつ頃からヴォーカリストとしての才能を自覚したのでしょう。

ニクラス:最初はヴォーカルをやる度胸がなかったんだ。デビュー・アルバム『Within Deep Dark Chambers』をAbyssスタジオで録ったときに、ヴォーカリストとしてBethlehemのAndreas Classenに来てもらったんだ。俺はBethlehemの大ファンでね。自分のレーベルとして最初にリリースしたのがRed Streamからライセンスした彼らのLP、『Dark Metal』だったくらいさ。それでスタジオでAndreasに、歌うところを示すために自分で歌ってみせたんだ。そしたらそれが良い出来でね。結局俺が歌った50%〜60%をそのまま使うことになった。あの頃俺は曲を書くのが専門で、自分では歌いたくなかったんだよ。自信がなかったから。ところがセカンド・アルバムの頃になると、俺こそがヴォーカルとして適任なんじゃないかと思い始めた(笑)。なかなか自分のヴォーカルというものを客観的に評価するのは難しいけれど、俺をヴォーカリストとして高く評価してくれるのはうれしいことだよ。色々とゲスト・ヴォーカルもやったし。友人に頼まれてとか、あるいは普段自分がやっていることとはまったく違うことをやったりとか。普段やっていることと違うことにトライするというのは、芸術においてとても大切なことだ。だから俺は料理などにもとても興味があるんだよ。

川嶋:あなたのヴォーカルは本当に素晴らしいと思います。

ニクラス:ありがとう。そう言ってもらえるのはとても嬉しいよ。

川嶋:ヴォーカルのレッスンなどは受けていないんですよね。

ニクラス:受けてないよ。ギターに関しても、習ったことはない。その方が良いと思うんだ。訓練を受けてしまうと、まあ訓練自体が悪いとは言わないけれど、少なくとも俺にとっては妨げになってしまうと思うんだ。俺は音楽理論も全く知らない。俺はただ自分のやりたいようにやっているだけだ。君はクラシックの教育を受けているんだよね。ピアニストとして。

川嶋:はい。クラシックのピアノをずっとやっていました。

ニクラス:ピアノを弾く時に、どうしても頭の片隅で、習ったパターンに影響されてしまうということがあるんじゃないか?

川嶋:それは確実にありますね。

ニクラス:そういう意味で、何も知らない俺が書いたリフというのは、レッスンを受けて自覚的に曲を書いている人のものとは違うものになっていると思うんだよ。

川嶋:お好きな好きなヴォーカリストは誰ですか。

ニクラス:もちろんフレディー・マーキュリーさ(笑)。それからトム・ウェイツ。デヴィッド・ボウイも好きだけど、主に90年代の作品だね。とても奇妙なことをやってた頃。違ったところでは、ノスタルジー的側面もあると思うけど、キング・ダイアモンドにはずっと感銘を受けているよ。俺は色々な音楽を聴くからね。だけどブラック・メタルで好きなヴォーカリストとなると難しい。何しろしばらく聴いていないからさ(笑)

川嶋:レーベル(Season of Mist)の資料では、シャイニングは「スーサイダル・メタル」と形容されていますが、これについてはどう思いますか。

ニクラス:シャイニングを始めたころ、他のブラック・メタルと混同されたくないという思いがあったんだ。シャイニングは宗教的な内容を扱っていなかったからね。俺はあまり自分自身を言葉で説明するのがうまくないし。Watainのエリックとかとは違ってね。彼は本当にうまいだろう、みんなに悪魔の道に従うように影響を与えるのが。あれ、質問は何だったっけ?

川嶋:「スーサイダル・メタル」についてです。

ニクラス:ああ、そうだった。12歳のときに、他のバンドとは違うカテゴリーが欲しいと思い、「スーサイダル・ブラック・メタル」という呼称を考えたんだ。そのコンセプトを完璧に説明するのはとても難しいのだけど、リスナーが自らを傷つけるような影響を与える音楽、というつもりだった。ところがシャイニングがファースト・アルバムをリリースするや否や、「スーサイダル・ブラック・メタル」というのがサブジャンルになってしまった。しかもコンセプトは完全に誤解されたまま。俺は、バンドを武器みたいに思っていた。俺自身の体験を使って、人々を精神的に落ち込ませるようなものさ。ところが「俺はとても落ち込んでるんだ。いつも泣いているよ。お金がない。生活費が欲しい」みたいな奴らが大量発生してしまった。俺は自己憐憫みたいのが大嫌いなんだ。誰でも気持ちが落ち込むことなんてあるものさ。「スーサイダル・ブラック・メタル」なんていう言葉を考え出したことを、恥ずかしく思うことすらあるよ。「恋人と別れたからブラック・メタルのレコードを作ろう」とかさ、本当にムカムカくるね。レーベルは「スーサイダル・メタル」と呼んでるけど、俺はただ「ダークネス」とだけ呼びたい。まあレーベルがジャンルを必要とするのは分かるけどさ。

川嶋:お気に入りのアルバムを3枚教えてください。

ニクラス:ガンズ・アンド・ローゼズの『Appetite for Destruction』。Burzumの『Filosofem』。それから間違いなく俺のお気に入りであるDepeche Modeの『Violator』。変な組み合わせだろ(笑)

川嶋:ジャズやポップスだと、どのあたりがお好きなのですか。

ニクラス:ジャズに関しては、ジャズ・クラブにライブを観に行くのが好きなんだ。家でアルバムを聴くというのは興味がないね。ジャズというのはライヴを体験するものだよ。ポップスは、Placeboみたいなイギリスのとか、色々聴くよ。ただ、どんなバンドを好んで聴くかというよりも、影響というのはどんなときでも受けるものだからね。意識する、しないに関わらず。例えばラジオからThe Corrsの「Breathless」が流れているのを聴いて、それからも影響を受けた。俺はアレンジメントに関して、ポップスからとても影響を受けているんだよ。エルトン・ジョンからも多くのインスピレーションを受けたし、ジャンルは関係なく、本物の魂を持っている音楽からは影響を受けるのさ。ヒップホップすら聴くよ。2PacやNecro、Jedi Mind Tricks、NWAとかね。俺が聴いているものは、たとえ俺がその影響を否定したとしても、潜在意識的に影響は与えてくると思う。

川嶋:では最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします。

ニクラス:前回日本に行ったのは、俺の人生の中でも最高の体験だったよ。日本という国は、ロシアともヨーロッパとも、アメリカとも全然違う。特に気に入ったのは、やっぱり食べ物だね。俺は異常にキチっとしているところがあるから、そういう点でも日本の文化というのは俺の性に合っている。俺にとっては、西洋の文化って変に感じる部分があるのさ。ライヴも本当に素晴らしかった。ニュー・アルバムも出るので、ぜひまた日本でプレイしたいよ。ヨーロッパのファンみたいにライヴでベロベロに酔っ払っているのではなくて、日本のファンは音楽を楽しんでくれるからね。アルバムにサインを求められたりして、とてもリスペクトを感じたよ。俺がこんなことを言うと変に思うかもしれないけど、とてもハッピーな体験だった。ぜひまた日本に行きたいね。



シャイニングにゴシップはつきものだ。06年にニクラスが失踪、自殺したのではという噂が流れ、ニクラスの遺言通りグールという新ヴォーカリストが加入。ところがふたを開けてみれば、グールの正体はニクラス、なんていうこともあった。今年の5月に行われたアメリカ・ツアーでも、一悶着を起こしている。ポートランドでのライヴが中止となったのだが、その理由としてライヴハウスが発表した内容が次のとおり。

「信頼できる友人からの情報によると、シャイニングのヴォーカリストは先日のライヴが始まる前、パンクのバーへ行き複数の女性の身体を触ったり、バーの従業員に対し刺すなどと脅迫したために、追い出された。それだけではない。パフォーマンスの最中、彼は人種差別的、そしてホモフォビックなスラングを連発し、レイプするぞと観客を脅したり、顔を叩いたりもした。また繰り返し「ジーク・ハイル」の敬礼も行ったとのこと。飲みものにドラッグを混ぜたという話もある。これらはインターネット上の不確かな情報ではなく、友人から直接聞いたものだ。」

「男を脅したこと以外はすべて作り話」とニクラスが話しているのが、このクレームに対する反論である。真偽のほどはわからない。だが、シャイニングが90年代のブラック・メタルが持っていた危険な面を継承しているバンドであることは確かだ。

最近のシャイニングのスタイルは、「ブラック・メタルを基本に他の音楽もとりいれた」というより、「ロックなどをベースにブラック・メタルで味付けした」という感すらある。だが、それでもシャイニングの音楽がとてつもなく陰鬱なのは、やはりニクラスの精神的苦痛が、すべての原動力であるからだろう。「精神的苦痛を芸術に昇華する」というのは、ある意味手垢のついた表現ではあるが、ニクラスの場合、カッコつけてこんなことを言っているのではない。彼は常にこの世界と折り合いをつけることに苦痛を感じている。シャイニングとして活動することすら苦痛に満ちているのだ。だからこそシャイニングの音楽は、圧倒的なリアリティを持っている。自らの音楽スタイルを問われて「ダークネス」と答えるもの凄いが、それに説得力があるというのがこれまた凄いではないか!

取材・文:川嶋未来/Sigh
Photo by Spela Bergant


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