【インタビュー】HEATWAVE『Your Songs』

2017年12月22日 (金) 10:59

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HEATWAVEの新作『Your Songs』は、長いキャリアの中で初めてのセルフカヴァー・アルバムとなった。数え切れないほどの楽曲の中から選ばれた23曲の珠玉のナンバーが、2枚のディスクに収められている。媚びることなく、ブレることなく、自分たちの信じる道をかたくなに歩み続けたHEATWAVEの38年間が凝縮された、日本のロック・シーンにとって金字塔とも言える内容だ。このアルバムの意味や意義、そして今、山口洋が考えていることを縦横無尽に語ってもらった。

--- セルフカヴァーというのは、ただ道のりを振り返るだけではなく、総括という意味もあるでしょうし、次に進むための決意ということもあると思います。そこには一種の覚悟みたいなものがないとできないのではないかと思うのですが、今回あえてそれをやろうとしたのはどういう意味があったのでしょうか?

僕は甚だ一本気な人間で、普通は38年も音楽をやっていたら、いろんなバンドをやっていると思うんですけど、僕は高校の授業中に結成したバンドをそのまま今までやっています。その間にレーベルもあちこち変わっているし、もう手に入れたくても手に入らない作品とかもたくさんありますし。それも、セルフカヴァーをやってみようと思ったひとつの理由ですね。もうひとつは、次の東京オリンピック(2020年)の前年に、HEATWAVE は結成40年になります。普通はその時に過去を総括するようなことをするんでしょうけど、僕は先にそういうことをやって、40年目には前進していくことしか考えないという姿勢でいたいと思った。これまでは、まったく後ろのことには興味のない人間だったんですけど、これはこれで一回ちゃんと向き合ってみるのもいいかなと思ったこともありましたしね。

--- タイトルは "My Songs" でも "Our songs" でもなく、"Your Songs" です。それはつまり、ここに収録されているのは HEATWAVE の曲でありながらも、ファンを含めみんなの曲なんだという思いがあるからでしょうか?

そういう気持ちは明確にありましたね。キャリアの中で初めて、自分のものではなく、みんなの心の中にあるものを表現するという気持ちで作れたアルバムになりました。アルバムを作ることが決定した時点で、すでにコンセプトが見えていて…Disc1とDisc2はコンセプトが全く違うんです。Disc1は、会社で嫌なことがあって、営業車で帰っている最中の人が聴いているイメージがすごくあって。「ああ、明日も仕事行かなきゃか〜」とか言いながら聴いているというね。Disc2の方は、シングルマザーのお母さんが仕事から疲れて帰ってきて、ひとり娘がようやく寝て、キッチンで片チャンが壊れたラジカセで、「はあ、もうやってらんないよ」っていう感じで聴いているという…そういうイメージが明確に見えていたんです。そういう人たちの日々に響くようなアルバムにしたいというか。で、僕のコンセプトはさらに言うと、心の深いところに届いたあと、4曲目くらいで寝てしまうっていう。「もういいじゃん」みたいな感じで(笑)。そういうコンセプトを保ってないと、"Your Songs" ではなくなってしまって、自分の表現になってしまうので、それは避けたかったですね。だから、皆さんに一番歌ってほしいところでは、あえて僕のヴォーカルを入れていなかったりも、実はしています。

--- そうしたコンセプトがあったとは言え、これだけ長いキャリアがあると、選曲に関してはかなり悩んだのではないでしょうか?

選曲にしても曲順にしても、そんなに悩まなかったです。ツアーをひとりでやっているうちに、「これは本当に望まれているな」という曲が分かっていたということもあったし、レーベルからアイデアを出してもらったりもしたし。それこそ、いろんな人の "Your Songs" ですよね。だから逆に、本当は入れたかったけど、これは "My Songs" になっちゃうからと外した曲もありました。あえて自分の表現力じゃないというところをコンセプトにして、自分がやってきた38年間に徹底的に向き合ってみたという感じですね。これでもう、すっからかん(笑)。何の一点の曇りもなく、次に行くしかないですね。もう胸を張って、全力で生きさせていただいていることに感謝しています。それがファンへのメッセージでもありますね。やろうと思えば、好きに、自由に生きられるんだよって。実は、Disc2の最後の曲に、ものすごく小声で僕からのメッセージを入れてあるんです。大声で言ってないところがすごく好きで…。本当はみんな自由だと思うし、自分を不自由にしてるのは自分自身なんだよ、ってね。こういう世知辛い世の中だけど、僕は自由に生きられると信じてやっているので、このアルバムをそのための燃料にしていただいてもいいし、起爆剤なのかもしれないし、安らかな寝床なのかもしれないし…いろんな風に音楽が機能すればいいなって思って作りました。

--- ゲストとして矢井田瞳さんがバッキング・ボーカルで、美央がヴァイオリンで参加していて、それぞれ楽曲に鮮やかな色を添えていますね。

ヤイコちゃん(矢井田瞳)は、あんまり好きな言葉ではないけど、"同志" というか。志が同じ人、という気持ちを持っています。今回、ほぼゲストを入れるつもりはなかったんですけど、矢井田瞳と美央は、本当にワン・アンド・オンリーな才能なので。それに、彼女たちがいないとおっさんばかりなので(笑)、掃き溜めに鶴というか、おっさん臭を消してもらいたいというか(笑)。それにしても、本当に素晴らしい歌と演奏をしてくれましたね。僕はふたりに、音楽的なことは何も言わなかったんですよ。こういうフレーズを弾いてくれとか、歌ってくれとか、一切。言うとしたら、「ここは、鳥が飛ぶんだよね」とか、「ここ、霧がかかるんだ」とか、「霧が晴れて光が差してさあ」とか、抽象的なことばかり(笑)。それで、「分かりました」って言ってくれる稀有な人たちなんです。ミュージシャンとして、こういう共通言語を理解してくれる人がいるっていうのはうれしいですよね。

--- バンドの他のメンバーからは、本作を制作するにあたって、どういう意見が出たのですか?

バンドっていうのは、同じ方向を向いているから良いというわけではなく、おじさんのバンドになってくると、ちっちゃな社会みたいになるっていうか…。いろんな方向性を持つ4人がいるから何かが生まれるわけでね。今回も、過去のものをセルフカヴァーするということに関して、能動的だったのは僕ただひとりで。鍵盤の細海君からは、「2017年の山口洋は、後ろばっか向いててつまんない」とまで言われましたから(笑)。でもそれも、彼の今の気持ちの向き方がそうなんだなってって思うし、それを僕たちはまたリスペクトするわけだし。でもまあ、みんなそういう感じだったから、僕がひとりで頑張った部分がすごくデカくってね。リズム隊に至っては、何を録ったかもう覚えてないんじゃないかな(笑)。でも、それはそれでいいと僕は思うしね。

--- 本作はファンにとって待望の内容だと思います。ですが、もしかしたら中には、それぞれの曲への思い入れが強すぎて、セルフカヴァーとは言え聴くのが怖い、オリジナルと変わっていたら嫌だと思う人もいるかもしれないと思うんです。そういう方々に対して、山口さんはどう言いたいですか?

人は変わるし、変わらないですよ。両方だと思うんです。自分でやっていても思うけど、不変という変化すらある気がしますしね。それは聴いてくれる人も同じだろうと思っています。変わることを怖がっちゃいけないけど、変わらないものはそんなに変わらないですから。だから、そういうことも含めて…だって僕は今53歳ですけど、25歳の時に書いた曲もここには入っているわけです。そんな鼻たらしてるみたいなやつが書いた曲でも、53歳が歌ってもリアリティがあったからこそ、ここに入ってるわけだからね。まあ、中にはこのアレンジは許せねえとかいうのもあるかもしれないけど、そんなの知るか!って(笑)。僕の拡大解釈では、ファンに誠実であるっていうことは、好きなことを全力でやり切るっていうことだと思う。それぞれの人たちの気持ちは本当にありがたいと思うんだけど、そこに単に寄り添うというのは、いい音楽にはならないと僕は思うからね。

--- このアルバムを作って、改めて HEATWAVE とはどんなバンドだと思いましたか?

少なくとも、日本を代表する個性の持ち主が4人いて、そのベクトルがものすごく違う方向に行ってて…。全然パーソナリティが違うから、そんな仲がいいわけでもないし、グッと会ってパッと別れるっていうか。会わなかったときのことは、ライブをやってるときに、「あ、そうだったんだ?」って自然にわかるし。肉体性と精神性、俊敏性と即興性、そういう根本にあるものと、その日のヴァイブとか、お客さんとか、天候とか、いろんなものに影響されながら、その日にしかないものを作るんだっていう意思の統一だけは図れているバンドだと思います。ただ、僕の夢はね、38年このバンドをやってるんですけど、メンバーに一度でいいから「いい曲書いたね」って言われることなんです(笑)。一度も言われたことがなくてね。たぶん、社会不適格者じゃなかったら曲なんて書かないわけで、だから、認めてほしいんですよ。「お前いろいろあったけど、いい曲書いたね」って。それでもう、死んでもいいですよ。「やった…!」って言いながら死にます(笑)。

--- 山口さんが今、このアルバムを通してファンの皆さんへ一番伝えたいことは何でしょうか?

マスタリングのときに、全曲を通して聴くじゃないですか。これだけ頑張ったから、いろんな種類の曲があるよなとか思ってたんですけど、聴いてみると、意外と山口洋って人が言ってることって1個か2個しかなくって(笑)。言い方を変えれば首尾一貫ってことでもあるんですけど。まあでも、いつ死ぬかは分からないですけど、死んだときに、「あの人は一生かけてひとつのことしか言わなかったよね」って言われるのも、俺はそれでいいと思うし、それしかできないんだろうし、それを貫ければいいんじゃないかと思って。今回はそんな風に思いながら作らせていただきましたね。あとは、さっきも少し言ったけど、みんなだって、家庭の中でも、会社の中でも、実は自由なんだよってことを一番伝えたいですね。自由というのは、責任とかいろんなものを伴うけど、そういうものをしっかりと引き受けたうえで、昔ドアーズが言った、"Break on through to the other side"、反対側に行くことだってできるんだよっていうことをね。

レコーディングの様子

撮影:三浦麻旅子

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HMV&BOOKS online-邦楽・K-POP|2017年12月21日 (木) 14:00



作品情報


2枚組CDとしてリリースされる今作には、これまでに発表した全ての楽曲の中から全23曲を収録。美央(バイオリン)、矢井田瞳(コーラス)を迎えて録音された名曲「満月の夕(ゆうべ)」を始め、「新しい風」「灯り」「銀の花」といった楽曲が並ぶ。どれも今の HEATWAVE にしか出せないサウンドでのセルフカヴァーとなる。

HEATWAVE
セルフカヴァーアルバム『Your Songs』(2CD)
12月26日(火)発売
¥5,000+税

<収録楽曲>
-Disc1-
1. 新しい風
2. 荒野の風
3. 灯り
4. 遠い声
5. TOKYO CITY HIERARCHY
6. MR.SONGWRITER
7. POWER
8. 明日のために靴を磨こう
9. ガーディアンエンジェル
10. エピタフ
11. NO FEAR
12. STILL BURNING

-Disc2-
1. ハピネス
2. NORTHERN LIGHTS
3. 僕は僕のうたを歌おう
4. CARRY ON
5. ガールフレンド
6. SWEET REVOLUTION (No.2017)
7. 銀の花
8. ナタリー
9. 出発の歌
10. 満月の夕
11. 馬車は走る


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Your Songs

CD

Your Songs

HEATWAVE

価格(税込) : ¥5,400

発売日: 2017年12月26日



レコーディングの様子


HEATWAVE(ヒートウェイヴ) プロフィール

山口洋(Vocal, Guitar)
渡辺圭一(Bass)
細海魚(Keyboard)
池畑潤二 (Drums)

1979年 福岡にて山口洋を中心に結成。
90年 アルバム『柱』でエピック・ソニーからメジャーデビュー。
92年 3枚目のアルバム『陽はまた昇る』のレコーディングで、キーボーディスト細海魚と出会う。
また、バンドとは別に、山口洋がひとりでツアーを廻り、旅路の中で新たな歌を書き、バンドに持ち帰るというスタイルもこの頃、生まれる。バンドは幾多のメンバーチェンジを繰り返す。山口は、ニューヨークやアイルランドへの旅を重ね、その心象を『NO FEAR』(1994)『1995』(1995)などで作品に結実させていく。中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)と共作「満月の夕」は、世代を越え、広く歌われる歌となった。
レコード会社移籍を経て、1998年に発表した『月に吠える』では山口洋、THE BOOM の山川浩正、元モット・ザ・フープルのモーガン・フィッシャー、伴慶充の布陣で全てのレコーディングを行った。翌年の『日々なる直感』にはアイルランド音楽の重鎮、ドーナル・ラニーも参加している。
2003年 現メンバーで新生ヒートウェイヴの活動を開始。2017年5月17日には、結成38年目、2年半ぶり14枚目のオリジナル・アルバム『CARPE DIEM』をリリース。全国ツアー、数々のフェスへの参加、TV番組への出演など。個人の活動も、それぞれ異才ぶりを発揮しながら、現在も精力的に活動中。

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