【インタビュー】向井太一『BLUE』

2017年11月23日 (木) 00:00

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ローチケHMV - 邦楽・K-POP

向井太一の新作『BLUE』を聴いて感じていたのは「これはシンガーソングライターの作品だ」という事だった。決してアコースティックな弾き語り作品になったというわけではなく、精神的な部分において。前作EP『24』から約1年間。24歳から25歳というある意味人生の中で分岐点のような時期を過ごす中で、彼自身が内側で感じていた事が丁寧に描き出されているように感じたのだ。「向井太一にとってこの1年間とは?」今回はそこにピントを合わせインタビューを敢行。新作『BLUE』を紐解いていきたいと思う。
取材・文: 松井 剛(ローチケHMVニュース)

『24』以降、変わる状況、ブレない思い


--- 前作EP『24』は、多くの人に向井太一という存在を示す作品となったので、この1年間は状況の変化だったり目まぐるしい1年だったんじゃないですか?

2016年はサウンドクラウドで月1で定期的に新曲を公開していく活動もあって、常に曲作りをしていましたね。曲作り自体は今も継続しています。ただ、その曲作りも、ずっと同じことをやっているわけではなくて、その内容が変わってきていると思います。新しい挑戦をしていく中で、新しい人との出会いもありますし、ライブする機会も増えたので「ライブではこういう曲が欲しいな」とか。曲作りのきっかけとか視点は少し変わった気がします。

--- 状況もかなり変化したんじゃないですか?

本当に無名な状態でしたからね。去年は『24』をリリースして、まずは音楽的に感度の高い人に認知して貰えるような活動をしてたんです。そういう活動が、例えば客演とかフェス出演に繋がって、少しづつですけど実っている実感はあります。知って頂ける範囲はぐっと広がりましたね。

--- 『24』をリリースした時点で、向井さんはどんな未来を想像していましたか?

ざっくりとしか想像していなかったですね。でもあの時よく言っていたのは「もっと幅広く知ってもらいたい」「色んな所でライブしたい」っていう事。それは今ちょっとずつ実現してきているところです。後はブランディングも大事にしているので、そこに関してもブレていないかなと思います。

--- わりと順調というか。

そうですね。その過程で悩んだり試行錯誤する事はありますけど、結果としては自分が思い描いた方向に進んでいると思います。

芯の通ったアーティストに、"青い炎" のように


--- 楽曲を聴いていると、なにかをブレイクスルー出来ないもどかしさとか、「なんかうまくいかないな」みたいな感情が描かれている場面も多いかと思います。

それは制作段階での自分の感情が反映されていると思います。歌詞がまったく書けなくなったりとか、作る事が難しかった時期があって、今回のアルバムの歌詞の世界観には、それが表現されていると思います。

--- そういう心情が『BLUE』というタイトルに繋がっているのでしょうか?

そうですね。それに今って音楽的なトレンドのサイクルも早いし、アーティストもどんどん消費されていく時代じゃないですか。そういう事ではない、芯の通ったアーティストでありたい。今は静かに燃えているように見えるけど、赤く派手に燃える炎よりも熱をもっていて、簡単には消えない "青い炎" のようなアーティストになりたいっていう願いも込められています。

--- タイトル曲の「Blue」は、アルバムの中でキーとなっている楽曲でもあり決意の曲と言うか。

そうですね。この曲は先ほど言った "歌詞が書けなかった時期" 真っ只中の曲なんです。ブランディングを含め「順調」って思えるのは、悩んでいた時期を乗り越えたからこそなんですよね。今回のアルバムは、そういうものを乗り越えて糧にしたからこそ完成したと感じています。「ネガティブをポジティブに変える力は人にとってパワーになる」っていうのは、『24』の時からずっと言っている事なんですけど、それがこの「Blue」っていう楽曲には、よりダイレクトにメッセージとして表現出来ていると思います。

SALU 客演曲に込めたメッセージ


--- "この道で生きていくんだと決めたから 後は上に上がるだけさ" と歌う「Blue」は、悩みから凄く吹っ切れた印象というか。そこから「空 feat. SALU」の軽快な流れは、このアルバムにおいて一つのハイライトだと思います。

アルバム全体として聴いた時の "緩急" みたいなところを一番大事にして構成していったので、自然とそうなったのかなって思います。「Blue」は内側に向かって歌っているんですけど、「空 feat. SALU」は悩んでいる人に向けて包み込むような優しさがある歌になりましたね。

--- SALU さんとは、どういう風に歌詞の世界観を共有したのでしょう?

この楽曲は、ラップを入れる事を想定しないで作っていた曲だったんです。でも完成に近づいた段階で「ラップを入れたいな」って思って。SALUさんは、僕自身がずっとファンだった事もありますし、あのフローの引き出しの多さって凄いじゃないですか?だから SALUさんには、僕の歌が入った曲を渡して「このバース蹴って下さい」「この曲を聴いて、この世界観でリリックを書いてください」とだけ伝えました。

--- SALUさん流石ですね。

僕、本当にこのバースを貰った時に「ヤバい」と思って涙が出ちゃって。感動しましたね。

--- MVでも共演しましたよね。アーティストを夢見る役どころの向井さんとアーティストとして苦悩を抱える役どころの SALUさんという対比が、昼と夜、晴れと雨という構図で描かれた内容になっています。

変わりゆく中で不安になったりすることも、変わらないものがある事によって自分を見失ったりせずに保っていけるという事を "空" に充てていて。変わらないものがあるからこそ、自分の居場所が大丈夫だって言ってくれるような。そんな世界観が込められています。


バランス感は特にを重視した点のひとつ


--- 向井さんは、歌詞の世界観とトラックのバランスって考える方ですか?

僕はメチャメチャ考えますね。バランスは、今回のアルバムで特にを重視した点のひとつです。さっきも話にあがった「空 feat. SALU」ってトラック面でいうと、感度高く最近のUSのトレンドを追ってる人にも「いいよね」って思ってくれるような新しいアレンジだったり展開の面白さがあると思うんですよ。でも、歌詞の方は結構わかり易くて伝わりやすい世界観を意識しています。そういう風に、歌詞の世界観とトラックの世界観を敢えてズラしたりもしているし、そのバランス感は大事にしてますね。

--- 例えば前半に収録されている「FLY」とかもそうですよね。

「FLY」はスゴくわかり易い例ですね。この曲はサマーチューンにしたくなかったんですよ(笑)。(高橋)海くんの疾走感があるトラックに、熱のある気持ちを込めた歌詞を乗せるっていうのは、僕のアマノジャク的な性格が出ているんだと思います。


--- アマノジャクっていう点では「Teenage」もそうですよね。

「Teenage」のトラックは BACHLOGICさんなんですよね。BACHLOGICさんはヒップホップのトラックメイカーで、どちらかと言うと男気のあるトラックが多いと思うんです。そんな中で僕は、メローなラブソングを BACHLOGICさんとやっちゃうみたいな(笑)。その "してやったり感" は出したいと思っていて。実際やってみたら、やっぱり BACHLOGICさん素晴らしくて、僕にとっても凄く大好きな曲になりました。

--- 恋愛における最も幸福な瞬間をパッケージしたような歌詞もいいですよね。

誰もが感じた事があるような青臭くて、でも自分たちの中にあるしっかりした気持ちみたいなものを表現したくて書きました。

アルバムの最後に置かれた力強い「ONE」


--- このアルバムの本編は、次に続く「ONE」という楽曲で締めくくられます。"僕は今 歩いている選んだ道を" と、自分の現在地をはっきりと示して終わるわけじゃないですか?この終わり方も痺れるものがあります。

僕は今までに凄く絶望した経験も無いんですけど、2011年の震災からだんだんと復興していく様子をニュースを観ていて、ご家族が亡くなったりとか、自分の家をなくした人が多い中で、ああやって先に進む事が出来るパワーは凄いなと思ったんです。自分が生きてるっていうシンプルな事を大切に思う人、痛みや悲しさを知っている人こそ未来に進む力があるんだなと。そういう "強さ" を表現したくてこの「ONE」っていう曲を作りました。

--- アルバムの最後に、そういう力強さを感じさせる楽曲が据えられているというのは凄く意義深いと思いました。

もし今後自分が、見失って悩んだとしても、シンプルに自分が今生きてるっていう事を理解する事によって、先に進む力になればいいなと。自分に置き換えるとそういう事ですね。

ボーナストラックは贅沢な2曲


--- アルバムはここで終わらず、2曲のボーナストラックが収録されるんですよね。まずは「君にキスして」この曲をボーナストラックという扱いにしたのは何故ですか?

この曲は18歳の時に所属していたバンド時代から大事に歌い続けている楽曲で、もう7年くらい歌ってるんです。初めて自分が作詞作曲でメロディーを作った曲で、ファンの皆さんも「好きだ」って言って下さるんですね。だからいつかリアレンジしてちゃんとパッケージにしたいなっていう事をずっと思ったんです。1stアルバムっていうのは決意表明と言うか、初心にかえるっていう意味でも今回収録しようと決めました。

--- アレンジャーは Kan Sanoさんですよね?

実は Kan Sanoさんのリリースツアーに呼んでもらった時に、セッションでこの曲をやったんですよ。それが凄く良くて。音源化する時は絶対に Kan Sanoさんにお願いしようと思っていて、今回それが実現した感じです。

--- もう1曲のボーナストラック「FREER」に関してはいかがですか?

「FREER」は、Galaxy Note8のCMソングっていうオファーが来て作った曲なんです。だから最初にコンセプトを頂いた上で書いてるんですけど、「今まで出来なかったことをやろう」「自分たちが作り上げている今この時をより自由に解き放っていこう」っていうメッセージが込められています。

--- しかも英語詞っていうのも新しいですよね。

メチャメチャ、レコーディングに時間かかりましたね(笑)。今までに無かった曲調ですし、また未来に繋がるような曲になったかなと思います。自分の中でも結構 "挑戦" した曲ですね。

参加クレジットにはコピーライターの名前も


--- "挑戦" という意味では、アルバム全体を見てもバリエーションが増えているし、幅も広がっているように思います。参加アーティストも大勢いらっしゃいますが、どういった感じでオファーしていったのでしょうか?

基本的には僕が観て「やりたい!」って思った人と繋いで頂いた感じです。

--- 歌詞をコピーライターの阿部広太郎さんと一緒に書いてるっていうのも面白いなと感じました。

自分が伝えたいメッセージがあるからこそ、よりそれを深いところに届けていきたいと思っていて、それで阿部さんを紹介して頂いたんです。阿部さんは言葉のセレクトが、僕らのようなシンガーとは違っていて、それがいい意味で引っ掛かりになって面白いなと思いました。ちゃんと自分の気持ちを汲み取って書いて下さるんで、「そういう事が言いたかったんです!」っていうのを何度も感じましたね。

--- 例えば、それは歌詞の中でどういうところなんですか?

例えば "あがきもがいて 飛び越えて行こうよ"(「FLY」より)とかですね。"あがきもがいて" って自分じゃ絶対に使わないなと思って。サウンドとのギャップも強くて新鮮でしたね。阿部さんは「空 feat. SALU」「Blue」でも少しお手伝いしてくれています。僕は阿部さんの体温を感じる言葉選びが好きなんですよね。人の温もりだったり、切なさ、そういう "生きた言葉" がすごく好きで。だからご一緒出来て良かったと思います。

これまでとまったく違う事をやっている意識は無い


--- 前作『24』のサウンド面は、yahyel がリードしていた印象があって、尖った印象もある作品だったと思うのですが、今作は幅を広げてある意味ポップな印象も受ける作品になっているかと思います。その辺で何か狙いはあったのでしょうか?

「より多くの人に聴いて頂くためにはどうすればよいか?」っていう事は常に意識の中にはあります。でもその為にダサくしたり、変な意味でキャッチーにしたりっていう選択肢は無いんですよね。やっぱり「空 feat. SALU」がいい例なんですけど、あのキャッチーさと新しさのバランス。そこは凄く考えていました。アルバム全体として言うと、今回も yahyelチームが関わっていたり、継続している事をベースにより幅を広げた感じですかね。これまでとまったく違う事をやっている意識は無いです。音色に関しては、今の海外のサウンドもそうなんですけど、生音の配分が増えていたり、ジャンル的に自分がインプットしてきたものが素直に表れている部分もあります。

--- アルバムの制作時には、どのような音楽を聴いていましたか?

単純にハマっていたのはケラーニです。ケラーニの音楽は、オントレンドな感じとメジャー感のあるキャッチーさのバランスが凄く好きで、加えてあのメッセージ性。"伝えたい" っていうパワーが凄いなと思うんです。僕とは、ジャンルとか、やってる音色は違えど、そういうバランス感みたいなものは参考になりますね。オントレンドなものって、中にはすぐに聴かなくなるものもあるんですけど、ケラーニは歌力としてしっかりしている分、ずっと聴けましたね。

Kehlani(ケラーニ)最新作



"持っていたい" って思われる作品に


--- 今回はフィジカルでのリリースとなりますが、8月にリリースしたEP『PLAY』はサブスク限定だったじゃないですか?向井さんの中で、フィジカルとデジタルの区分けというか、何かありますか?

僕はデジタルでリリースする事にそんなに抵抗は無いんです。でも一方で、アートワークも含めた多方面で自分の事を表現したいっていう気持ちも大きい。今回は、ある意味 "グッズ" みたいな感じでCDとして形に残したかったっていうのがあります。目に見えるものと、耳で聴くだけのものって、捉え方も違うじゃないですか?今作はアートワークに関して、フォトグラファーもタイポグラフィーも自分でセレクトしています。そういった意味でも『BLUE』は、僕の今の感性、表現したいものがギュッと詰まった1枚になってるんです。デジタルでリリースしたものとは、また違った思い入れの作品ではありますね。

--- ご自身でもCDって聴きます?

聴きます。僕結構、アートワークから入る事も多くて、適当にジャケットで目についたものを聴いてみたりとかするんです。だからCDショップもよく行きますよ。好きなアーティストに関しては "持っていたい" っていう気持ちになりますしね。聴いてもらえるチャンスって、サブスクリプションでぐっと広がったと思うんですよ。でも、一度聴いてそのまま流されてしまう事がすごく多いと思う。僕が今回「"青い炎" になりたい」っていう気持ちになったのも、自分自身がそういう時代性を肌で体験する中で生まれてきたんだと思います。

--- 本編最後の楽曲「ONE」では、"胸に描いた理想とは ほど遠い今" というフレーズもありますが、向井さんは今、どのような未来を思い描いているのでしょう?

今は変化をあまり恐れていない自分がいるんです。それは継続して保っていきたいですね。音楽をやる以上は、新しい事にどんどん挑戦していきたいので。そのためには、常に自分を見つめ直す事の繰り返しかなって。自分のアーティストとして持っているものを、より広く深くそして色濃くしていくだけだと思います。たくさんの人に聴いてもらいたいし、ライブを観てもらいたいですね。

--- 今作の楽曲はライブ映えしそうですしね。

そうですね。パフォーマンスもどんどん進化していると思います。一番変わったのは、お客さんがいるっていう意識を凄く持つようになった事。そうすると、自分に向かって歌っている曲と誰かに対して歌っている曲とで全然歌いまわしも変わってきました。声の飛距離みたいなものも意識するようになりましたし。それに自分自身が凄く楽しみながら出来るようになりました。ライブは本当に得るものが大きいですね。

--- 今後も楽しみにしています。今日はありがとうございました。

作品情報


向井太一
1stアルバム『BLUE』
11月29日(水)発売
¥2,500 (税込)

<トラックリスト>
01. 楽園 (Co-Produced by Julian-Quan Viet Le / LeJkeys)
02. FLY (Co-Produced by Kai Takahashi)
03. Can't Wait Anymore (Co-Produced by MONJOE / MIRU / 荘子it)
04. Lost & Found (Co-Produced by CELSIOR COUPE)
05. Great Yard (Co-Produced by starRo)
06. BLUE (Co-Produced by CELSIOR COUPE)
07. 空 feat. SALU (Co-Produced by mabanua)
08. 眠らない街 (Co-Produced by mabanua)
09. Conditional (Co-Produced by grooveman Spot)
10. Teenage (Co-Produced by BACHLOGIC)
11. ONE (Co-Produced by CELSIOR COUPE)
Bonus Track1. 君にキスして (Co-Produced by Kan Sano)
Bonus Track2. FREER (Co-Produced by Masahiro Tobinai)

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BLUE

CD

BLUE

向井太一

価格(税込) : ¥2,500

発売日: 2017年11月29日



ライブ情報


- 向井太一 “BLUE" TOUR 2018 -
<大阪公演>
日時:2018年1月13日(土)
会場:心斎橋VARON
開場 / 開演:18:30 / 19:00
金額:前売り 3,500円 / 当日 4,000円 (ドリンク代別)

<東京公演>
日時:2018年1月19日(金)
会場:Shibuya WWW
開場 / 開演:18:30 / 19:30
金額:前売り 3,500円 / 当日 4,000円

一般発売:11月29日



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1992年3月13日 福岡生まれ A型 シンガーソングライター。 幼少期より家族の影響でブラックミュージックを聴...

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