【インタビュー】NE OBLIVISCARIS

2017年10月25日 (水) 20:45

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ローチケHMV - ヘヴィーメタル


 3枚目のアルバム『アーン』をリリースするオーストラリアのエクストリーム・プログレッシヴ・バンド、ネイ・オブリヴィスカリス。ヴァイオリン、そしてクリーン・ヴォーカルを担当するティム・チャールズに、色々と話を聞いてみた。

川嶋未来(以下、川嶋):ニュー・アルバム『アーン』がリリースになりますが、どのような仕上がりでしょう。

ティム:俺たちはアルバムをリリースするごとに、あらゆることを学び成長していっている。演奏、作曲、そしてもちろんレコーディングやプロデュースの仕方もね。『アーン』は、これらのことすべてにおいて、大きく進歩していると思うよ。このアルバムでも俺たちは挑戦を続け、アーティストとして新たな領域に踏み込んでいるし、現時点のネイ・オブリヴィスカリスとして最高のものを仕上げたと思っている。

川嶋:個人的にはエクストリーム・メタル色が多少減った気がしたのですが、いかがでしょう。意図的なものなのでしょうか。

ティム:どうだろう。俺たちが作曲するときに、意図的であることはないんだ。何というか、曲は自ら旅をして、どこであろうとそれが望むところへ俺たちを連れて行ってくれる感じなのさ。それと同時に、俺たちは思いつく限り多くの音楽の街角を探索しようとしているのも事実だ。『Citadel』はエクストリームでヘヴィだったけれども、トータルでは非常にプログレッシヴな感触を持っていたと思う。今回の作品も、例えばタイトル・トラックみたいに、14分間全体が激しいエクストリーム・メタルらしい部分も多く残っている一方、「アイリー」みたいにメロディックな要素もあって、過去の俺たちがやったものとは違う曲もある。「リベラ」なんかは1曲中に、あらゆるネイ・オブリヴィスカリスの要素が出てくるしね(笑)。いずれにしても、自然な発展だよ。俺たちはただミュージシャンとして、自分たちらしくあろうとしているだけなんだ。自分たちの中にユニークな要素を見つけようとトライし続けているのさ。

川嶋:歌詞のテーマはどのようなものですか。「骨壺」というタイトルは、随分と不吉なものですが。

ティム:『アーン』は究極的には、死という俺たちがみな共有している主題についての考察だよ。「骨壺」は死を象徴している。この広大な宇宙の中では、俺たちの生や死というのはほとんど意味をなさない。だけど俺たちは生きている間、みずから生の意味というものを作りだすのさ。

川嶋:コンセプト・アルバムと考えて良いのでしょうか。

ティム:そういうわけではないよ。確かに、ゼンの書いた4曲すべての歌詞が死に関連したテーマにしている。すべて曲が先に書かれていて、後からそれらを関係づける歌詞を書いたんだ。音楽としては様々なスタイルが含まれていてバラバラのものを、歌詞で結びつけて、アートとしての統一感を出すようにしているけれど、コンセプト・アルバムではないな。面白いことにゼンと俺は全く違うタイプで、押し引きがあるんだよ。これもバンドを興味深いものにしている理由の一つだと思う。ゼンは物事を非常にダークな見方をするのだけど、俺はもっとポジティヴなタイプなんだ。例えば「イントラ・ヴィーナス」も死について歌っているんだけど、ラストのクリーン・ヴォーカル・パートは多少明るい感じだろう?(笑)だから歌詞と音楽がフィットするか、ゼンとじっくり話し合う必要があった。

川嶋:人類の絶滅を暗示するようなパートもありますね。

ティム:戦争や飢饉とかね。人類というのは地球を滅ぼしてしまうようなこともしているだろう。

川嶋:あなたたちの歌詞は、非常に詩的で抽象的ですよね。ダイレクトにメッセージを伝えるのではなく。

ティム:歌詞はすべてゼンが書いているんだ。もともと俺はヴァイオリニストとして加入したので、最初はヴォーカルは担当していなかった。やがて俺もヴォーカルを担当するようになったのだけど、彼の書く歌詞は非常に神秘的で、ダイレクトなメッセージを伝えるものではないよね。言葉でイメージを喚起するような感じだろう。ストーリーではなくて。これは非常にバンドのアーティスティックなイメージに合っていると思うんだ。ゼンに歌詞の本当の意味を聞いても、本当のことを言わなかったりするしね(笑)。彼は読む人それぞれに解釈をしてもらいたいと思っているんだ。もちろん彼の頭の中に正解はあるのだろうけど、決してそれは公にせず、みんなに個人的な解釈をさせる方を好んでいるんだよ。

川嶋:歌詞の日本語訳もやっているのですが、解釈が幾通りも可能なパートが多くて。

ティム:そうだろうね(笑)。わからないところがあったらヘルプするよ(笑)。

川嶋:その最たるものが「イントラ・ヴィーナス」ですよね。

ティム:これは言葉の遊びで、'intravenous'=点滴、静脈注射みたいな意味と、'Intra-Venus'=ヴィデオクリップ内の女神、みたいな意味両方に取れる。こういう風に全く違う意味になるものを翻訳するというのは難しいだろうね。そもそも詩というものを翻訳すること自体難しいのだろうけど。

川嶋:Robin Zielhorstがヘルプのベーシストとして参加していますが、彼を起用したのは何故ですか。

ティム:Robinのことを俺たちはずっと尊敬していたからね。今回のアルバムで、彼は単にテクニカルな演奏をしたというだけではなく、音楽的スタイルについても、バンドに非常にマッチしていたと思うよ。彼は自分のバンドExiviousやONEGODLESSをやっていてとても忙しいので、長期バンドに参加してもらうのは難しいことはわかっていた。だけどぜひ彼にはアルバムに参加してもらいたかったので、他の長期参加できそうなベーシストを探すよりも、彼にお願いする方を選んだのさ。彼とやりとりをするのは素晴らしい経験だったよ。俺たちが欲していた音楽的ヴィジョンに的確に答えてくれて。俺たちは、ただギターをなぞるだけのベース・パートではなく、複雑なものやコードやハーモニーに対応するものを求めていたからね。間違いなく彼が参加したことで、アルバムはさらに素晴らしいものになったよ。

川嶋:Robinはツアーには参加するのですか。

ティム:いや、ツアーではイタリア、ミラノのベーシストMartino Garattoniが弾くことになった。この7月、8月に大掛かりなオーディションをやったんだ。世界中から150人くらいのベーシストからコンタクトがあってね(笑)。非常に時間をかけて、たくさんのヴィデオを見たりしたのだけど、正直なところ初見から、個人的にMartinoがずば抜けていると感じたよ。それにしても、世界中にこれほどたくさんの優れたミュージシャンがいるということに驚かされた。中にはバンドをやっていない人物もいたし、有名でないバンドでプレイしていても、素晴らしいテクニックを持っているミュージシャンはたくさんいるんだ。

川嶋:今回は、前2作と違いイェンス・ボグレンではなく、マーク・ルイスがミックスを担当していますね。

ティム:もちろんイェンス・ボグレンは素晴らしいし、彼の手がけた作品にはたくさんのお気に入りがある。彼は非常に複雑なミキシングもやっているよね。だから最初の2枚は彼にお願いしたんだ。もちろんその2枚の仕上がりには非常に満足していているのだけど、一方で、バンドは実際はこれらの作品よりもずっとヘヴィだとも感じていたんだ。『Portal I』や『Citadel』を聴いたファンが、俺たちのライヴを見ると、とてもヘヴィなので驚くんだよ。なので今回は、アルバムのプロダクションやミキシングのアプローチを変えようと思ったんだ。もっとライヴの感触を持ち込みたかったんだ。オーガニックで、それほどクリアではなく、ギターやドラムはさらにパワフルでヘヴィという風に。マーク・ルイスはWhitechapelやCannibal Corpseのような、とてもヘヴィなアルバムも手がけているだろう。Fallujahの『Dreamless』も素晴らしい出来だった。この作品はメロディが豊富であると同時にとてもヘヴィでもあったよね。それでマイクにコンタクトをしてみたところ、驚いたことに彼はすでにネイ・オブリヴィスカリスのファンで、このアルバムを手がけることにとてもエキサイトしていたんだ。これも彼を選んだ理由の一つさ。彼との仕事は本当に素晴らしかったよ。5月にフロリダのオーランドに行って、彼とミキシングのプロセスについて話し合った。クリーン・ヴォーカルは彼と一緒に録ったんだ。だからクリーン・ヴォーカルの部分は彼のプロデュースだよ。彼は俺たちがこのアルバムに求めているものを理解してくれて、作業は非常にスムーズに進んだ。仕上がりは前の2作とは、とても違う音に仕上がっているよ。もちろん良い意味でね。

川嶋:1stアルバムは70分という長さでしたが、前作、そして今回は50分弱という長さに抑えられています。あなたたちのように長い曲をプレイするバンドのアルバムは、1時間を超えることも珍しくないと思うのですが、アルバムの長さについてのポリシーはどのようなものなのでしょう。

ティム:『Portal I』が長いのは、あのアルバムは曲のコレクションだったからさ。つまり、あれはバンド結成の2003年から2010年という、長い期間に書かれたベストな曲を集めたものなんだよ。個人的に70分を超えるアルバムを聴き通すのは大変だし、そこまで長いアルバムは好きではないから、たくさんの曲を詰め込むというアイデアはあまり気に入らなかった。だけど一方で、それらの曲を全部発表したいという欲もあってね(笑)。『Citadel』と『アーン』は、もっと短い期間に書き上げられた楽曲で、アルバムにも統一感を持たせようと作られた作品だ。『Portal I』は7つの楽曲がそれぞれ短いストーリーを持っていたけれど、それぞれに関連はない。『Citadel』はそれぞれの曲の内容が関連していて、『アーン』も同様だ。アルバムの最初から最後まで、綺麗に流れていく作品にしたいんだよ。アップ・ダウンがあって、ずっと動いていくような作品さ。俺たちはアルバムを40−50分くらいにしているけど、俺たちみたいに長い曲をやっているバンドのアルバムは、1時間を超えるような長さになる傾向があるだろ。プログレッシヴ・メタルと呼ばれるバンドではそれが当たり前だ。俺は個人的には40−50分という長さが好きなんだよね。この長さなら、座ってアルバムをきちんと聴き通すことができるだろ。もちろん俺たちも、将来もっと長いアルバムをやることはあるかもしれない。だけど、現状俺たちは量よりも質にこだわっていて、アルバムにも一切の捨て曲を収録していない。不必要にボーナストラックをたくさん入れたりもしない。書く曲は、可能な限りベストなものになるようにしているんだ。最高品質の作品を作ることに主眼を置いているからね。

川嶋:「ネイ・オブリヴィスカリス」というのは「忘れることなかれ」というラテン語なのですよね。何故この名前にしたのでしょう。あなたがおつけになったのではないとは思うのですが。

ティム:おそらくバンドを始める時に、普通のではなく、何か深い意味を持つバンド名にしたかったんだと思う。音楽もアーティスティックなアプローチをしていたからね、それに見合う名前が欲しかったんじゃないかな。

川嶋:あなたがバンドに加入した時、バンドとしてどのような音楽的コンセプトを持っていたのでしょう。例えば「何でもアリのブラック・メタルをやろう」というような感じだったのでしょうか。

ティム:当時ゼンは、俺をヴァイオリニストとして加入させたんだ。彼は「クラシックから影響を受けたブラック・メタル」というコンセプトを持っていたんだよ。オリジナルのラインナップにはソプラノの女性シンガーもいて、ブラック・メタルにクラシカルなアプローチをしていたんだ。だけどその後ラインナップ・チェンジが続いて、俺も曲を書くようになった。当時俺の書いていた曲は、Opethのようなバンドから影響を受けたものだったんだ。13分くらいあったり(笑)の、プログレッシヴなデス・メタルさ。それでだんだんバンドとして持っている要素が広がっていたんだ。「ブラック・メタルやクラシカルなものはもう止めよう」とか、「もっと新しい要素を入れていこう」と決断をしたわけではない。ただ単に俺たちが得意なことをやるようになったら、自然とそれまでとは違うものになっていったというだけのことさ。それでゆっくりと、今のようなあらゆるものをミックスしたスタイルに行き着いたんだ。デス・メタル、スラッシュ・メタル、メロディック・デス・メタルからブラック・メタルまで、あらゆるリフをミックスして、さらにプログレッシヴ・メタルやメロディック・メタル、アコースティックなサウンドにフラメンコやラテン音楽まで入ってきた。これはメンバーがみんな異なる音楽の趣味を持っていた結果だと思う。気に入れば、それがどんなジャンルであるかは関係ない。気に入ったものをどんどん取り入れていった結果、クレイジーなサウンドに行き着いたんだよ(笑)。


川嶋:アルバム・デビューまで時間がかかったのは、やはりラインナップ・チェンジの問題だったのでしょうか。

ティム:色々あったんだ。まず最初のリハーサルから最初のライヴまで3年かかった。俺とゼン以外、全員入れ替わったからなんだけど(笑)。それから07年にギタリストが辞めてしまって、ベンジャミンを見つけるまでに、また時間がかかってしまった。そして10年に『Portal I』のレコーディングが間も無く完了するという段階になって、今度はベンジャミンのビザ延長が認められず、彼はフランスに1年半くらい帰らなくてはいけなくなってしまったんだ。幸い再度オーストラリアに戻ってくることが認められたのだけど、すでに11年の12月になっていた。ベンジャミン抜きでバンドを続けるつもりはなかったので、ずっと待ってたのさ。だから何もできない期間が割と長かったんだ。アルバムが出た時も、それまであまりに時間がかかったので、何かそれ以上の期待というものはバンドには残っていなかった。アルバムをリリースしたいということが全てだったからね。それ以上の希望はなかったんだ。ところが世界中からポジティヴな反応があって、「これならもう1枚アルバム作るべきなんじゃないか?」って思い始めたのさ(笑)。

川嶋:あなたの音楽的バックグラウンドはどのようなものなのですか。

ティム:俺は6歳の頃から高校を卒業するまで、スズキ・メソードでヴァイオリンを習っていたんだ。日本人の先生についたこともあるよ。そして大学ではクラシックのヴァイオリン演奏を専攻して、作曲も学んだ。17歳で高校を卒業する時に、クラシックのヴァイオリン奏者になろうと決断したんだ。だけど、大学在学中にこのバンドに加入して、ヴァイオリニストとして俺が優れている点、すなわち現代的な奏法に磨きをかけていくことになったのさ。メタルの世界では、「アーン」で聴かれるようなヴァイオリンを演奏するプレイヤーは、俺以外にいない。俺は子供の頃からヘヴィ・メタルが大好きだったから、メタルの世界でヴァイオリンの演奏を追求できるというのは非常に楽しいよ。実際18歳の時にバンドに加入したくてギターも始めてみたのだけど、まさかバンドでヴァイオリンでもこんなことができるなんてね。ヘヴィ・メタルへの興味とヴァイオリニストという2つの情熱をミックスできたんだ。

川嶋:ヘヴィ・メタルを初めて聴いたのはいつ頃ですか。

ティム:15歳か16歳、ハイスクールの頃だよ。はじめはPennywiseやNo FX、Bad Religionのようなものが好きで、やがてDeftonesのような、さらにヘヴィなものに興味を持つようになった。そこからPantera、Machine Headを経て、Opeth、Emperor、Soilwork、Immortalのような素晴らしい世界のバンドを発見したんだ。高校に入った頃はNirvanaなどを聴いていたのだけど、卒業する頃にはエクストリーム・メタルにハマっていたのさ(笑)。

川嶋:エクストリーム・メタルにハマったときも、ヴァイオリンでない楽器へ移行しようとはしなかったのですね。

ティム:演奏というものに関しては、ヴァイオリンが俺にとって常に一番の楽器だったからね。俺はDream Theaterのジョン・ペトルーシやNevermore、というか今はArch Enemyのジェフ・ルーミスみたいなギタリストに大きな感銘を受けた。特にジェフ・ルーミスのエネルギッシュなプレイを聴いて、「俺もヴァイオリンでこんな風に演奏したい」なんてトライしてみたよ。ヴァイオリンでもギターみたいなスクリーチやノイズを出してみたりね。『アーン』でも、通常のアプローチではないヴァイオリンの演奏が色々と聴けると思う。だからメタルにハマって、何か他の楽器を始めようというより、自分の楽器であるヴァイオリンで色々試してみようという感じだったね。今ではメタルの世界にもヴァイオリン・プレイヤーは何人かいるけれど、彼は皆クラシカルかフォーキーなアプローチをしているだろう。俺はそれを避けて、もっとメタル・ミュージシャンらしいプレイを心がけているのさ。

川嶋:大学で学んだのは、クラシックの音楽理論ですか。

ティム:そうだよ。

川嶋:その知識は、バンドの作曲でも活用していますか。

ティム:習ったものは、すべて使っていると言えると思う。曲の構成や楽器のチョイスであるとか、「アイリー」でやったような、ヴァイオリンだけでなくヴィオラやチェロも入れたりとか、こういうところではクラシックの勉強が役立っていると思うよ。

川嶋:オーストラリア出身であるということが、ネイ・オブリヴィスカリスの音楽に影響を与えていると思いますか。

ティム:どうだろう。オーストラリアという国は他とは離れたところにあって、同じような音を出しているバンドが集まっているような大きなシーンもなく、その代わりに非常にユニークな音を出すバンドがいるように感じる。だけどオーストラリア人であるということよりも、俺たちが人としてどんな人間であるかという方が、俺たちの音楽に影響していると思うな。

川嶋:オーストラリアのエクストリーム・メタル・シーンはどんな感じですか。

ティム:とても成長してきていると思うよ。オーストラリアのメタル・ファンは、国内よりも海外のバンドをスペシャルであるという風に見る傾向にある。だから海外でビッグになって、オーストラリアに帰ってくると、初めてスペシャルなバンドとして受け入れられるんだ。ヘヴィな音楽のシーンには成功をしているバンドもいるし、エクストリーム・メタル・シーンは大きくないにしても、とてもうまくいっているバンドもいくつかいるよ。デスコア・バンドのThy Art is Murder、それからKing ParrotやPsycropticなどは、素晴らしいことをやっていて、世界中で評価されている。他のヘヴィな音楽のジャンルでも、Karnivool やCaligula's Horseのようなプログレッシヴでヘヴィなバンド、それからインストゥルメンタルのポスト・ロック・バンド、Faitも話題になっているよね。それからParkway DriveやNorthlane、The Amity Afflictionのようなハードコア・バンドは、間違いなく世界中で活躍をしている。これは10年前のオーストラリアのヘヴィ・ミュージック・シーンにはなかったことだよ。どんなタイプのヘヴィなバンドでも、ここまで国際的に活躍していることはなかった。オーストラリアというのは孤立している国だからね。だけど最近はSNSのおかげで、海外のファンもオーストラリアのバンドを見つけやすくなったというのがあるのかもしれないね。それでオーストラリアにも素晴らしいバンドがいることがわかって、オーストラリアのバンドも海外をツアーする機会に恵まれるようになってきたんじゃないかな。

川嶋:お気に入りのアルバムを3枚教えてください。

ティム:それは難しいね(笑)。とりあえず3枚、違ったタイプのものを挙げるよ。まずOpethの『Black Waterpark』。このアルバムは、ネイ・オブリヴィスカリスに加入する少し前に聴いたんだ。これは俺のメタルに対する考え方を完全に変えたアルバムさ。美しいのに、ブルータルでエクストリーム。もちろん俺たちのサウンドはOpethのそれとは全く違うと思うけれど、美しいのと同時にエクストリームというコンセプト自体は、彼らに負っている部分が大きいよ。今でもこのアルバムは大好きだ。それから全く違ったタイプのものだけど、Sigur Rosの『( )』。このアルバムも非常に激しい一方、とても美しい。大学でエストニアの作曲家、アルヴォ・ペルトについて勉強したんだ。彼はポスト・ミニマリストなのだけど、彼の作曲法や曲の構成の仕方は、Sigur Rosのようなバンドからそう遠くない気がする。このアルバムはその良い例だよ。非常にアーティスティックな姿勢とポップ・カルチャーが同居しているんだ。クラシック音楽ではなくバンドなのだけど、非常にシリアスな音楽だ。もう1枚、また違ったものだけど、John Coltraneの『A Love Supreme』。もし誰かみたいに演奏できるとしたら、俺はずっとヴァイオリンでJohn Coltraneみたいにやりたいと思っているんだ。彼の演奏は、彼の脳、音楽的アイデア、そして楽器が直結しているというのかな。それらの間に、一切のフィルタリングが存在しないみたいに聞こえる。普通は曲を書いたりインプロヴァイズするときに、どうしても脳でフィルタリングをする必要があるだろ。イマジネーションの限界であるとか、テクニックの問題でね。だけど彼には一切の限界がないように思えるんだよ(笑)。彼は頭に浮かんだことを全てそのまま演奏している。このアルバムは、彼にとって音楽的なターニング・ポイントになった作品だよね。これ以降さらにアヴァンギャルドなアプローチをとっていくんだ。だけどメロディもきちんと残っていて、完璧なバランスになっている。俺がヴァイオリンの演奏面で新たな領域を探検していく際の、大きなインスピレーションさ。

川嶋:あなたはインプロヴィゼーションもやるのですか。

ティム:やるよ。俺はジャズ・ヴァイオリンもやるからね。18−19歳の頃に、ステファン・グラッペリやジャン=リュック・ポンティ、スタッフ・スミスのようなヴァイオリニストを発見して、大きな衝撃を受けた。彼らから、純粋なクラシカルな奏法から逸脱する方法を学んだんだ。最初はクラシックを演奏して、その後ジャズをやって、そしてヘヴィ・メタルを演奏するようになった。ジャズで学んだ技術を応用することで、ヘヴィ・メタルの演奏をしているのさ。

川嶋:これまでに日本には2度来られていますが、日本の印象はいかがですか。

ティム:日本のことは大好きだよ。できれば明日にでもまた行きたいくらいさ(笑)。俺は日本をツアーするのが一番好きなんだ。ファンもとてもよくサポートしてくれて最高だし、プロモーターも非常によく扱ってくれる。日本の文化はオーストラリアと全く違うけれど、日本という国、文化に大きなリスペクトを持っているよ。ぜひまた行きたいね。次回はツアーだけでなく、何日か余計に滞在したいと思っている。もっと日本のことを知りたいからね。まだ具体的にいつかはわからないけど、来年には行けると思うよ。



 すでに2度の来日を果たしているネイ・オブリヴィスカリスを、生でご覧になられた方も少なくないだろう。エクストリーム・メタルから、ジャズ、フラメンコ、ラテンに至るまで、さまざまな音楽スタイルを貪欲に取り入れている彼らだが、やはりネイ・オブリヴィスカリスと言えばヴァイオリンだ。これだけメタルの世界が多様化している今、ヴァイオリン・プレイヤーがいるというだけでは、特に目新しいことはない。エクストリーム・メタル+ヴァイオリンということであれば、それこそ80年代のCeltic FrostやWarfareにまでさかのぼれるし、90年代にはSkycladやMy Dying Brideなど、ヴァイオリン専属プレイヤーを擁するバンドも登場していた。だが、ネイ・オブリヴィスカリスと、それ以外のバンドとでは、ヴァイオリンの使い方に決定的な差があるのだ。ヴァイオリンというと、どんな音楽のイメージを持つだろう?ヴァイオリンと言えばクラシック、というのが一番多い答えだろう。それから民俗音楽。アイルランドやスカンディナヴィア、インドからカントリーに至るまで、民族音楽でヴァイオリンが活躍する例は少なくない。実際エクストリーム・メタルでヴァイオリンが導入される場合も、クラシック風か民族音楽風の二者択一だ。だが、インタビュー中ティムが語っているとおり、彼はクラシックをバックグラウンドに持ちながらも、ジャズ・ヴァイオリンから大きな影響を受けているのである。これはまったく新しい手法である。ヴァイオリンと聞いて、真っ先にジャズを思い浮かべる人はまれなはず。(もちろんステファン・グラッペリのようなスーパースターもいるが、ヴァイオリンは少なくともジャズの主流にいる楽器ではない。)ティムは、ジャズを通過し、さらにヴァイオリンをヘヴィ・メタルのギターのように演奏しようとしているのだ。これは少なくともメタル界では過去に無かった試みではないだろうか。ジャン=リュック・ポンティなどは、フランク・ザッパのアルバムに参加したり、マハヴィシュヌ・オーケストラでも火の出るような激しいヴァイオリン・プレイを聴かせているが、確かにこのようなスタイルは、エクストリーム・メタルの激しさにもばっちりハマるものだ。もちろん今回の『アーン』でも、ティムの激しいヴァイオリン・プレイがたっぷり堪能できる。

 ネイ・オブリヴィスカリスの音楽は、60〜70年代ロックからの影響色濃いOpethと中身は違う。しかし「美しさと激しさの融合」というコンセプトについてOpethの影響化にあることは、インタビュー中でも語られている通り。Opethがエクストリーム・メタル的要素を放棄したのに対し、ネイ・オブリヴィスカリスはまだまだデス/ブラックらしい色も濃く残っていることを考えると、彼らのカヴァーする音楽的幅広さは、Opethのそれを上回っているとも言えるだろう。それはつまり、ネイ・オブリヴィスカリスは、Opethよりもさらに広い層へとアピールする可能性を秘めていると考えることもできるのだ。『アーン』によって、彼らはさらにネーム・ヴァリューを上げて行くことだろう。

取材・文:川嶋未来/SIGH
Photo by Xenoyr


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発売日: 2017年10月25日

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