【インタビュー】ENSLAVED / Grutle Kjellson

2017年10月13日 (金) 19:30

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ローチケHMV - ヘヴィーメタル


14枚目となるニュー・アルバム『E』をリリースする、ノルウェーのエンスレイヴド。ベース・ヴォーカルを担当するグリュートレ・チェルソンに、色々と話を聞いてみた。

川嶋未来(以下、川嶋):この週末(8月26日)はBeyond the Gates(ノルウェーのベルゲンで行われたブラック・メタル・フェスティヴァル)に出演したんですよね。

グリュートレ:そうなんだよ。ファースト・アルバム『Vikingligr Veldi』の完全再現をやったんだ。

川嶋:それはぜひ見たかったです。さて、ニュー・アルバム『E』がリリースになりますが、過去の作品と比べてどのようなものになっていますか。

グリュートレ:今回は、「普通の」曲構成という概念を完全に捨てて、あらゆる枠組み、境界線、ルールをはみだすような曲作りをしたんだ。非常に新鮮な体験だったよ。バンドに実際に新しい血も加わったからね。(新加入のキーボーディストの)ホーコンは、彼の魔法のようなキーボード・プレイで、バンドに新たな次元を加えたと思う。あらゆる方向に、何の躊躇もなく挑戦したのが今回のアルバムだよ。

川嶋:タイトルは随分とシンプルですよね。なぜこのタイトルにしたのでしょう。

グリュートレ:シンプルで、シンボリックで、抽象的なタイトルにしたかったんだ。色々な意味に解釈できるだろう。もちろんエンスレイヴドのEだし、ルーン文字としてはEhwazだ。この文字はラテンのアルファベットでは’M’として書かれるのだけど、この文字が持つ一つの意味は馬なんだ。8本の脚を持った聖なる馬。つまりアルバムのコンセプトは、人間と自然の関わりだよ。馬はその一例で、他にも海であるとか道具や家族など、人はたくさんのものと関わっているだろ。

川嶋:読み方としては普通に「イー」で良いのですか?それともルーン文字風に「イーワズ」?

グリュートレ:シンプルに「イー」だよ。とてもわかりにくいけど(笑)。

川嶋:これはコンセプト・アルバムであると考えて良いのでしょうか。

グリュートレ:俺たちがこれまでにリリースしたアルバムは、すべてコンセプト・アルバムだと考えているよ。もちろんストーリーがあったりするわけではないけれど、どれも一つのテーマを持っているからね。アルバム内の曲の歌詞はそれぞれ関連を持っているので、そういう意味でコンセプト・アルバムと捉えている。

川嶋:「普通の曲構成という概念を完全に捨てる」となると、必要以上に曲が複雑になってしまう恐れはないですか?聴きやすさも担保するために、何らかの工夫もしていますか。

グリュートレ:そもそも俺たちは自分たちの作品が、それほど複雑であるとは思っていないよ。アイデアが浮かんだら、まずそれを試してみる。そのアイデアが自然に発展していくようにするのさ。まるで曲自体が鼓動や生命を持っているかのように扱うんだ。「よし、長さが10分になったからこれで完成だ!」ということにはならない。さらに曲が発展していくのであれば12分になっても良いし、逆に3分で完結する曲もある。これこそが曲のアレンジの秘訣だと思う。自然に発展させて、どこで終わりなのかを見極めるんだ。「これは良い曲になった」と思ったらそれ以上はいじらない。自分たちのために曲を書いているわけだからね。もし他人のために曲を書くとなると、曲を「作る」という行為になってしまって、心から湧き上がるままに任せるというわけにはいかないだろうけど。ルールなんてどうでも良くて、あくまでゴールを見極めるんだ。自然に任せるというのが、作曲で最も重要な部分だと思う。

川嶋:今回も、ミキシング、マスタリングをイェンス・ボグレンが手掛けていますが、彼を起用し続けているのはなぜですか。

グリュートレ:『Axioma Ethica Odini』からずっと一緒にやっているから、エンスレイヴドとの作業はどんなものなのか、イェンスもよくわかってきているからね。俺たちが何を欲しているか、どんなことをやりたいのか、完全にわかってくれている。それから、バンドの外部の人間にミキシングを任せるというのはとても大事なことだと思っているんだ。もし自分たちでミックスをやったら、全体像をつかめなくなってしまうというのかな。大して重要でもない細部にこだわりすぎてしまったりしかねない。ずっとアルバムの作業をしていると、自分自身のことがわからなくなって、大枠を見失ってしまうのさ。だからスキルのある外部の人間にミックスをやってもらうというのが、賢い選択だと思う。だってさ、バンドのメンバーでスタジオに座ってミキシングをやると、みんな自分のパートばかりデカくしようとして、とてもイライラするだろ?(笑)

川嶋:それはありますね。

グリュートレ:人間だから仕方ないんだけどさ(笑)。

川嶋:アートワークは何を意味しているのでしょうか。

グリュートレ:これ、何だと思う?何が見える?

川嶋:何でしょう、難しいですね。非常にシンボリックですが。

グリュートレ:確かにシンボリックなのだけど、古い壁画を想像してみてほしい。あるいは象徴文字みたいなものとか。これはシンボリックに描かれている馬だよ。古代の絵画みたいなタッチだけどね。

川嶋:なるほど。確かに馬ですね。今回もアートワークを手掛けたのはTruls Espedalですよね。

グリュートレ:Trulsには『Monumension』からアートワークをお願いしているから、もう17年も一緒にやっているね。彼はもはやバンドのメンバーみたいなものさ。「新作の予定はないの?新しい絵を描きたいと思ってるんだ」なんて電話してくるくらいさ(笑)。もはや彼のアートワークは、エンスレイヴドの作品のサインみたいなものだろ。彼は俺やイヴァーのアイデアを具体化してくれる、ベストな人物なのさ。まるで俺たちの脳みその中を描いてくれているみたいだよ(笑)。俺とイヴァーでアルバムのコンセプトや歌詞の骨子を決めて、Trulsとミーティングをするんだ。もちろんビールを飲みながらね。すると彼はそこでスケッチを始めて、その中から採用する図柄を決める。彼はそれを持ち帰って作業をするんだよ。彼の作品はとても気に入っているからね。レイアウトも素晴らしい。なので、わざわざ別の人を起用する理由もないんだ。

川嶋:ボーナス・トラックとして、ロイクソップのカヴァーを収録しています。さすがに意外なチョイスだと思ったのですが、彼らもベルゲン出身なのですよね。

グリュートレ:ベルゲンにはBRAKというミュージシャンの組織があって、それの20周年パーティがあったんだ。コンサートもあって、そこでベルゲンのミュージシャン同士カヴァーをやるという企画があった。それで俺たちはロイクソップの曲をやってくれと頼まれたのさ。メタルっぽくアレンジはしたけれど、ロイクソップの要素は残っていると思うよ。完全に破壊はしていないつもりさ。

川嶋:ということは、ロイクソップのファンでカヴァーをしたというわけではないのですね。

グリュートレ:まあ「彼らのアルバムを持っている」というと嘘になってしまうけど(笑)。もちろんカヴァーした曲はとても気に入ったし、個人的にエレクトロニック・ミュージックも聴くよ。KraftwerkやKlaus Schulze、Tangerine Dreamとか70年代のドイツの作品だけれど。だからエレクトリニック・ミュージックに初めて接したというわけではないよ。とても良いエレクトロニカもあるしね。良い音楽は良い音楽さ。カヴァーした曲はとても良い曲だし、俺たちのバージョンもとても良い仕上がりだと思うよ。

川嶋:10年以上一緒にやってきたキーボーディスト、ヘルブランド・ラルセンが脱退しています。理由は何だったのですか。

グリュートレ:あいつは完全なプッシーだからだよ(笑)。冗談はさておき、結局彼はツアーに疲れてしまったんだ。ツアー・バスに空港、サウンドチェックといった、ライヴに付属するものにね。ライヴ自体は好きだったのだけど。まあ理解できるよ。それで彼は電話してきて、理由を説明して、バンドを抜けたいと。もちろん言い争うこともなく、フレンドリーに了承したよ。やる気がなくなってしまったのなら、強制することはできないからね。決してドラマチックな脱退劇ではないんだ。

川嶋:脱退を決めたのはいつだったのでしょう?日本では非常に楽しそうに見えたので、まさかその後脱退するとは思いもしなかったのですが。

グリュートレ:実を言うと、彼がバンドをやめたいと電話してきたのは1年以上前、確か去年の7月だった。だから日本でプレイした時は、彼がバンドを去ることはすでに決まっていた。ブッキング済のショウについては参加すると言うことで話がついていたんだ。

川嶋:代わりに新しく加入したホーコン・ヴィンイェですが、彼はとても若いのですよね。

グリュートレ:そうなんだよ、彼はエンスレイヴドより1歳若いんだ(笑)。ヘルブランドの脱退が決まった時に、何人か候補はいてコンタクトしてみたのだけど、彼らは参加したいけれど残念ながら他のバンドで忙しすぎるということだった。それで俺たちのコ・プロデューサーでエンジニアのIver Sand?yに、「ベルゲンで誰か良い候補はいないか」とたずねたところ、ホーコンを試してはということになった。彼はホーコンがやっていたSeven Impaleというバンドのプロデュースをやったことがあったからね。それでスタジオで、エンスレイヴドのライヴ・レコーディングやシンセパートをミュートしたアルバムのトラックを使ってオーディションをしたのだけど、とても良い出来だった。その後一緒にリハーサルをやり、今年の2月26日に、ベルゲンのあるお店の救済コンサートでもプレイしてもらった。それからずっと一緒にやってるのさ。彼はアルバムのレコーディングでも素晴らしいプレイをしたしね。とても満足しているよ。彼は非常に若いから、若さというエネルギーももらえるし(笑)。とても良い影響を受けている。ビタミン注射みたいなものさ。

川嶋:さすがにこれだけ年齢差があると、ジェネレーション・ギャップがあったりはしませんか。

グリュートレ:ただ命令して、「やらないとケツを蹴り上げるぞ!」って脅すだけだから(笑)。真面目な話、ホーコンのスキルはすごいよ。エンスレイヴドで一番のミュージシャンさ。彼がとても小さい頃に、彼のお父さんが彼にDeep Purple、ジョン・ロードを聞かせたんだ。それで彼はキーボード・プレイヤーになろうと決心したらしい。彼は、俺が会った唯一のピュアな本当のキーボーディストだよ。他のやつはたいてい無理やりキーボードをプレイさせられてるからさ、ヘルブランドみたいに(笑)。ヘルブランドは本当はヴォーカリストだから(笑)。

川嶋:エンスレイヴドがプログレッシヴな方向性へと舵を切るきっかけとなったアルバムは、どれだと思いますか。

グリュートレ:プログレの要素というのは、露骨ではなかったにしても最初からあったと思うよ。みんなで座って「よし、もっとプログレっぽいアプローチをしよう」と話し合った訳ではなくて、もっと自然に変化してきたんだ。プレイヤーとしてのスキルやアレンジメントのスキルも向上してきたし。マイルストーンとなったのは『Below the Lights』(03年)じゃないかな。あれはとても重要なアルバムであると同時に、大きなメンバーチェンジもあって、バンドの再スタートにもなった作品だ。Dirge Repがドラムを叩いたのだけど、彼はレコーディングが終わってすぐに脱退してしまった。だからアイス・デイルが一部リード・ギターを弾いているけれども、基本的に俺とイヴァー二人だけで作ったアルバムなんだ。それで俺たちの好きなようにやろうという感じになった。2002年の時点で、外部のノイズが一切ない純粋なエンスレイヴドのアルバムを作ったんだ。だからこのアルバムがターニング・ポイントというか、エンスレイヴドの新たな時代に向けた重要なマイルストーンだと言えるんじゃないかな。

川嶋:なるほど。『Eld』(97年)はオープニング・ナンバーからして16分の大曲だったので、これが方向転換の始まりかと思ったのですが。

グリュートレ:確かにあの曲は、既存の枠組みを超えたものを作るという試みで書かれたんだ。まあさっきも言ったとおり、プログレ的要素は最初からずっとあったと思うよ。露骨ではなかったにしてもね。俺たちはとてつもない速度で演奏していたから、そういう要素があっても見つけるのは難しかったんじゃないかな(笑)。

川嶋:今のエンスレイヴドを、無理やりカテゴライズするとしたら、どうなりますか。

グリュートレ:うーん、そうだな、君もミュージシャンだからカテゴライズが鬱陶しいのは知ってるだろ(笑)。まあ今でもエクストリームだし、今でもメタルだよ。プログ・メタルと言われることも多いけれど、そのカテゴリーに分類されている他のバンドと比較すると、俺たちはそこにはハマらないと思っているんだ。俺たちは楽器を使ってマスターベーションをしているわけじゃないしね。今でも十分にメロディックだし、めちゃくちゃなことをやっているわけではなく、きちんとした曲を演奏している。俺としては「プログレッシヴ」という言葉は使いたくないな。The Mars Voltaというバンドがいただろう?彼らが面白いことを言っていたんだ。「プログレッシヴという言葉は骨抜きになっている。心から湧き上がる音楽を作っていて、それがプログレッシヴでないことなんてあり得るだろうか」と。自分が過去にやったことをただ繰り返したり、他人のモノマネをしたりしているのでなければ、それは必ずプログレッシウなものさ。だからわざわざ音楽の呼称に「プログレッシヴ」なんていう言葉を追加する必要はないんだよ。だから俺たちのスタイルは「70年代ロックにインスパイアされたメタル」というのがいいかな(笑)。


川嶋:イヴァーも「プログレッシヴという言葉は好まない。アヴァンギャルド・メタルという呼称の方が良い」と言っていました。

グリュートレ:アヴァンギャルド・メタルというのはいいね。まあエッセンスはロックなんだけどね(笑)。結局はロックさ。

川嶋:古ノルド語で歌うという発想はどこから出てきたのでしょう。当時全く新しい試みでしたよね。

グリュートレ:そうだね。最初は頑張ってやっていたのだけど、あまりに大変だからやめてしまったよ。言語としても難しいし、歌うのも難しすぎるんだ。最初は、俺たちがインスピレーションを受けた神話が書かれた言語で歌おうとトライをしていたんだよ。若かったからその分理想も高かったのさ(笑)。ただそれをやり続けるのは、あまりにキツすぎた。

川嶋:古ノルド語は現在のノルウェー語とは全然違うのですか。

グリュートレ:全然違う。どちらかというとアイスランド語やフェロー諸島で使われている言葉に近いんだ。ノルウェー西部には古ノルド語に由来する方言が残っているけどね。地名にも多く残っている。ノルウェー語で意味のわからない地名を見たら、古ノルド語だと思えば間違いない(笑)。

川嶋:古ノルド語、アイスランド語、ノルウェー語、英語と変遷してきたのですね。

グリュートレ:そうだよ。少しずつね(笑)。

川嶋:使う言語によって、作る音楽も変わってきたりしますか。

グリュートレ:うーん、ヴォーカルとしては、間違いなく英語が一番歌いやすいよ。この週末は(1stの完全再現で)古ノルド語とアイスランド語で歌ったけど、本当に大変だった。1時間分の歌詞を覚えなくてはいけなかったし(笑)。音節も多いし、発音もクレイジーなんだよ。今のゲルマン系の言語と全く発音も違う。ノルウェー語はそれよりもマシだけど、俺としては母国語より英語の方が歌いやすい。何でかわからないけどね。英語だと母国語でない分、少し距離をとって歌えるというのもあるかもしれない。ノルウェー語だとダイレクトすぎて、個人的になりすぎるというか。

川嶋:「ヴァイキングが持っていた音楽がどんなものであったのかはよくわかっていない」という発言をされているのを読んだことがあるのですが。

グリュートレ:そうなんだよ。ヴァイキングは、多くの楽器を持ってはいなくて、音楽は基本的にアカペラだったようだ。ただそれがどんなものだったのかは、ほとんどわからない。唯一、フェロー諸島にある歌の文化の一部に、ヴァイキング音楽が少し残っているだけのようだ。Kva?というやつさ。

川嶋:つまりあなたたちが「ヴァイキング・メタル」と呼んでいたものは、あくまで歌詞の面だけでヴァイキングを参照していたということなんですね。

グリュートレ:そう、歌詞だけさ。多くのヴァイキング・メタル・バンドは南ヨーロッパのフォーク・ミュージックをヴァイキングの音楽と勘違いして使っているけどね。毛皮を着たりバカみたいなヘルメットをかぶったり、そういうのとは関わりたくなかったので、俺たちはすぐにヴァイキングのイメージも捨ててしまったけど。ああいうのは漫画みたいだろ。ヴァイキング・メタルという言葉を使うのもやめたよ。

川嶋:90年代の初め、ノルウェーではインナーサークルが色々な犯罪行為を行っていました。あなたたちはシーンの一部である一方、そういった行為とは一線を引いていましたよね。

グリュートレ:もちろん俺たちは彼らの活動に直接関わることはなかったけれど、ノルウェーのシーンというのは非常に小さかったからね。バンドも多くなくて。だから俺たちも、そういう活動に直接関わっていた奴ら全員知っていたよ。放火とかをやっていた奴らさ。俺たちにとっては、そういう行為は自分たちを表現する手段ではなかったのさ。刑務所で過ごすより、音楽を作る方に興味があったからさ(笑)。ああいうバカなことに関わらなくて本当に良かったと思ってる。バンドとしてのキャリアや個人的なもの、家族なども失ってしまう可能性があったからね。

川嶋:エンスレイヴドの曲は長いものが多いですよね。以前、ライヴでは「お客さんが寝てしまうから、ライヴでは曲を短くしている」と、冗談めかして言っていましたが。

グリュートレ:今でもやるよ。ファンは古い曲を聴きたがるからね。例えば日本でプレイしたときは、持ち時間が40分だった。それで古い曲を演奏したら、3曲でお終いだよ(笑)。それなら曲を短くして、たくさんの曲を演奏した方がいいだろう。だから古い曲は短くすることがあるんだ。だけど今週末は全曲カットせずに演奏したよ。「Norvegr」(11分のインスト)もね。この曲は本当に同じパートの繰り返しだから、普通のセットリストでやるには時間を取りすぎなのだけど。

川嶋:ファースト・アルバムは5曲中4曲が10分超ですよね。今週末はそれも全部アルバム通り演奏したんですね。

グリュートレ:そう。完全にアルバム通りに演奏した(笑)。

川嶋:お気に入りのアルバムをメタルとプログレ、それぞれ3枚ずつ教えてください。

グリュートレ:好きなアルバムというのは時間とともに変わるからね。あくまで今日の時点でのトップ3ということにしてくれ。まずMayhemの『De Mysteriis Dom Sathanas』。それからAutopsyの『Severed Survival』。Black Sabbathの影響も大きい素晴らしいデス・メタルだよ。そしてKing Diamondの『Abigail』。この3枚が、現時点での俺のお気に入りのメタル・アルバムだ。プログレだとまずRush。どのアルバムも好きだけど、とりあえず『Hemispheres』かな。Genesisの『Selling England by the Pound』も素晴らしいアルバムだ。それからKing Crimsonの『Red』を入れないわけにはいかないな。King Crimsonは他にもたくさん良いアルバムがあるけれど、今挙げるとしたらこれだね。

川嶋:あれはヘヴィですよね。

グリュートレ:本当にヘヴィだよ。

川嶋:この間イタリアのプログレをよく聞いていると言ってましたが。

グリュートレ:イタリアだとPFMが最高だよ。さっきも『The World Became the World』のイタリア語盤の方を聴いてたところだよ。

川嶋:イタリア語のタイトル覚えられないですよね(笑)。

グリュートレ:そうなんだよ(笑)。英語盤とイタリア語盤は収録曲も違うんだよね。1番好きなのは72年に出たやつだよ。イタリア語のタイトル覚えてないけど(笑)。

川嶋:72年だと『Storia di un minuto』か『Per un’amica』ですかね。

グリュートレ:『Storia di un minuto』だ。

川嶋:では最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします。

グリュートレ:昨年は日本に呼んでくれてどうもありがとう。日本でプレイするのがずっと夢だったから、素晴らしい経験ができたよ。オーディエンスも素晴らしかったし、オーガナイザーもプロフェッショナルだった。ラウドパークは、今までプレイした中で最高のフェスティヴァルだったよ。またすぐに日本に行きたいね。東京で過ごした時間も最高だった。次回は他の都市でもプレイしたいと思ってる。アリガト!


 エンスレイヴドは、一度も悪魔主義を標榜したことはなく、また早々にプログレッシヴ/アヴァンギャルドな方向へと舵を切ったこともあり、あまり「ブラック・メタル・バンド」というイメージは無いかもしれない。おそらく彼ら自身も自分たちをブラック・メタル・バンドと思ったことはないだろうが、エンスレイヴドがシンフォニック・ブラック・メタルというジャンルのパイオニアの一つであることは間違いない。92年に発表されたセカンド・デモ『Yggdrasill』で彼らが提示した、ブラストビート+シンセサイザーという新スタイルの衝撃は、凄まじいものだった。一般にシンフォニック・ブラック・メタルというジャンルを世に知らしめたのは、翌93年にリリースされたEmperorとエンスレイヴドのスプリットCDであるが、現在シンフォニック・ブラックの元祖というと、Emeperorの名の方が先に挙がるように思う。だが、そのEmperorですら、おそらくは『Yggdrasill』から大きなインスピレーションを受けたのではないだろうか。『Yggdrasill』製作時、ギター、ヴォーカル、そしてシンセサイザー担当のイヴァー・ビョルンソンは、わずかに14歳。つまり日本で言ったら中学生だ。恐るべき神童である。エンスレイヴドの前身は、Phobiaというデス・メタル・バンドだったのだが、90年に結成されたこのPhobia、デス・メタル・バンドでありながら、すでにイヴァーの手によりシンセサイザーが導入されていたのだ。

Master's Hammer

 その若きイヴァーに大きな影響を与えたのが、チェコスロバキア(当時)のMaster's Hammerである。シンセサイザーを使って不気味な雰囲気を出せることを初めて証明したのは、Bathoryの『Under the Sign of the Black Mark』(87年)である。87年あたりから、エクストリーム・メタル・シーンは、デス/グラインド一色に塗りつぶされてしまったため、残念ながらBathoryの試みがすぐに評価されることはなかった。その影響が、CDという目に見える形で登場するのは、93年のEmperorとエンスレイヴドのスプリットを待たねばならなかった。つまり、『Under the Sign of the Black Mark』の偉大さがきちんと理解されるには、6年もの時間が必要だったということだ。だが、これは『Under the Sign of the Black Mark』とEmperor/エンスレイヴドのスプリットCDをつなぐ6年間が、完全な空白期間だったという訳ではないのだ。その間も、チェコのMaster’s HammerやハンガリーのTormentor、ギリシャのRotting Christなどに見られるように、エクストリーム・メタルの中心地とは言えない国々の地下で、Bathoryの影響を受けたバンドが密かに蠢いていたのだ。当時はまだインターネットもなかった時代。チェコスロバキアやハンガリーは共産主義国であり、西側の情報を得るのも容易ではなかったはず。89年まで共産党政権であったチェコスロバキアには、当時はナチュラルな情報の遅れも存在し、そのおかげでデス/グラインド全盛の中、Master's Hammerのような西側では時代遅れとされていたBathoryの影響化にあるイーヴルなメタルを演奏するバンドがまだまだ健在であったようだ。そしてそれがPhobia〜エンスレイヴドのようなノルウェーという西側の国のバンドに影響を与え、果たしてシンセサイザーはエクストリーム・メタルにおいても標準楽器となっていったのだ。もし80年代後半にインターネットがあったら、もし当時世界的に情報格差がなかったら、チェコスロバキアのアンダーグラウンド・シーンも、デス/ブラック一色になっていただろう。その場合、Bathory空白の6年間は、本物の空白となり、Master's Hammerの音楽性も違い、イヴァーもシンセサイザーの導入を思いつかなかったかもしれない。となると、シンフォニック・ブラック・メタルというスタイルすら誕生しなかった可能性すら出て来るのだ。西欧と東欧との情報格差が、イヴァーという天才のインスピレーションの源になった可能性があるというのはとても面白い。

 インタビュー中、グリュートレも語っているとおり、『E』は実にエンスレイヴドらしい、自由な発想に基づいたプログレッシヴな作品に仕上がっている。確かに彼らは「プログレッシヴ」という表現を好んでいないようだが、どうも「アヴァンギャルド」というと、聴きにくさを含意しているようで、これもまたエンスレイヴドにはふさわしくない気がしてしまう。彼らの曲は長く、常軌を逸した展開も多い。まったくエクストリーム・メタルらしからぬパートも少なくないが、それが聴きにくさにつながることはまったくないのである。彼らはテクニカルな演奏をひけらかすわけでも、難解な理論を押し付けてくるわけでもない。ただただ感じるままに曲を書き、演奏する。ただそれだけだ。エンスレイヴドは、「心から湧き上がる音楽を作っていれば、それはプログレッシヴなものになって当然である」という言葉通りの音楽をやっているのだ。

 『E』の日本盤には、私の7,000字を超えるライナーノーツも付属しているので、こちらもぜひ読んでみてほしい。

取材・文:川嶋未来/SIGH
Photo by Christian Misje


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発売日: 2017年10月13日

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