【インタビュー】S.D.I. / Reinhard Kruse

2017年02月17日 (金) 20:45

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ローチケHMV - ヘヴィーメタル


スラッシュ・ファンお馴染みのTrue Thrash Fest。今年はいずれもドイツ出身であるS.D.I.とDarknessのダブル・ヘッドライナーという、驚愕のラインナップでの開催となった!こんなチャンスを逃す手はない。謎多きスピード・メタル・バンド、S.D.I.のリーダー、Reinhard Kruseに色々と話を聞いてみた。

川嶋未来(以下、川嶋): 日本は初めてですか。印象はいかがでしょう。

Reinhard:初めてだよ。皆とても親切だね。あととても寒い(笑)。非常に楽しんでいるよ。昨日のライヴでもお客さんは皆狂ったように盛り上がっていたしね。

川嶋: 今回は正式なドラマーのRalfは来られなかったんですよね。

R:そうなんだ、S.D.I.を再結成した時に彼は非常に仕事が忙しかったので、参加はするけど2年限定という話になっていたんだ。(訳注:後で出て来る話と合わせると、おそらくこれはライヴ活動限定の話のよう。)それで去年の夏がちょうど2年目だった。だけど4月にTTFのプロモーターからこのライヴのオファーをもらったから、Ralfにすぐに確認したんだ。このライヴだけ特別にやってくれないかって。そしたら「もちろんだ、日本にもぜひ行きたいし」って。だけど残念ながら仕事が忙しすぎて来られなかった。今回来ているChristophは、Ralfが参加できないときの控えのドラマーで、ドラマーとしての腕は二人とも同じレベルだよ。二人とも仲の良い友達だし。


川嶋:S.D.I.のスタイルというのは非常にオリジナルで、他に類似のバンドが見つかりません。一体どのようなバンドから影響を受けたのでしょう。

R:主な音楽的影響というと、やはり14−5歳の頃に聴いていたDeep Purpleや、Whitesnakeなどブルースにルーツがるやつとか、Ritchie Blackmoreのようにクラシックの要素がある音楽だね。古い音楽だよ。その後は皆と同じように、70年代後半のNWOBHMなども聴いた。他のバンドとS.D.I.が違うのは、俺は曲そのものを信頼しているという点だ。一緒に口ずさる、展開がきちんとしている曲だ。本当に良い曲というのは、スタイルを変えても成立している。例えば「Comin' Again」などはレゲエにしても良いだろう。(歌いだす。)S.D.I.の曲はすべて、スタイルが変わっても大丈夫なんだ。俺たちはきちんと歌っているからね、グロウルしているのではなくて。もちろんやりたいことは人それぞれだから、グロウルが悪いわけではないけど。他のバンドとS.D.I.が違っていたのは、俺たちは凄く速くプレイをしていたということさ。俺たちはスピード・メタル・バンドだからね。なぜTrue Thrash Festivalに呼ばれたのかはわからないけど、スラッシュ・バンドと認識されているのかもしれないね。だけど俺たちは結局ロックンロール・バンドなのさ。速く演奏しているだけで。

川嶋:そもそも速く演奏しようと思ったきっかけは何だったのでしょう。

R:俺とRalfはもともとBlack Jack Co.というロックンロール・バンドをやっていたんだ。もっとポピュラーなスタイルで、Bon Joviみたいなことをやっていて、アルバムを出したり、ロックスターになりたいと思っていたのさ。当時は皆ロックスターを夢見ていたからね。ライヴもうまくやっていたし、年齢もルックスも悪くなった。でも結局Bon Joviには敵わなかったのさ。で、当時スラッシュ・メタルやスピード・メタルが盛り上がっていていた。俺はフラストレーションを感じていたので、リハーサルのときにRalfに、できる限り速く演奏してみてくれって言い、ツーバスの練習をさせてみたら、凄く速く演奏できるようになったのさ。それで二人だけでデモを作ったんだ。このデモ『Bloodsucker』は2015年にLPでリリースされたよ。このデモをレーベルに送ってみたら、何と契約できてしまったんだ。バンドもないのに(笑)。ギターがいなかったからね。このスピードでは、俺もギターとヴォーカルを同時にやるのは不可能だと分かっていたから、ベースを選んだんだ。そしてBlack Jack Co.のギタリストをS.D.I.に誘って、ファースト・アルバムを作った。たった6週間でね。4曲しかなくてバンドもなかったのに。

川嶋:そのレーベルというのがScratchcoreだったのですね。

R:そうだよ。

川嶋:ScratchcoreはGamaのサブレーベルだったのですよね。

R:そう。

川嶋:GamaはScratch、Scratchcore、Hot Bloodなど、やたらとたくさんサブレーベルを持っていましたが、なぜだったのでしょう。

R:おそらくビジネス上の理由だろうね。奴らはバンドからできるだけ多くの金お巻き上げようとしていたし。契約の関係だと思うよ。Scratchcoreというサブレーベルを通じてワールドワイドでディストリービュートして。詳しいことは彼らに直接聞いてもらうしかないけど。何故か俺たちのサードはHot Bloodからリリースされたけど、そもそも契約はずっとGamaとしていた。

川嶋:ScratchcoreもHot Bloodもなんの違いもなかったのですか。

R:まったくなかったね。


川嶋:S.D.I.の音楽は、ふとWitchfinder Generalを思い出させる部分があるのですが、影響は受けているのでしょうか。

R:俺は横入りしたというのかな、だからスラッシュやスピード・メタルのことは殆ど知らないんだ。これは、こういうインタビューのような場では問題となる。質問にさっぱり答えられないからね。だけど一方で、何も知らない結果、君が言ったように他のバンドとは違う音が出せている。俺たちはMetallicaからもSodomからも影響を受けていない。彼らの音楽を知らないからね。これは80年代当時からそうだった。だから当時ライヴハウスで、「新しいSlayerどう思う?」なんて聞かれて困ったものさ(笑)。インタビュアーには嫌われたものだよ、何しろ答えの半分に答えられないんだからね(笑)。しかしそれが真実だからさ。Darknessはシーンの中にいて、Kreatorや皆と知り合いだったけど、俺たちは本当に誰とも知り合いじゃなかったんだ。S.D.I.は91年に解散して14年に復活するまで25年くらいブランクがあるけど、その間に音楽業界はCDが出て来たり、そしてそのCDが売れなくなったりと、大きな変動があった。誰もCDを買わなくなってしまっただろう。俺たちがファースト・アルバムを出したころは、アルバムをたくさん売るというのはそんなに難しいことではなかった。ドイツの音楽業界の売り上げは、今やクリスマスツリーの売り上げより小さいんだよ。だから今、多くのバンドがライヴをやり始めている。それ以外にお金を得る方法がないんだからね。

川嶋:あなたのベース・プレイは非常にテクニカルですが、どのようなベーシストから影響を受けたのですか。

R:好きなベーシストはいるけれども、影響を受けたわけではないよ。俺はスティーヴ・ハリスの大ファンなんだ。それからグレン・ヒューズも大好きだ。彼はベーシストとして優れているだけでなく、シンガーとしても素晴らしいよね。俺がベースを弾いているときは、ベースを弾いているわけではない。俺はベースでギターを弾いているんだよ。俺はもともとギタリストなんだ。テクニカルに聞こえるかもしれないけど、ベースを使ってギターを弾いているだけなのさ。ベースは弦が太いからノイズが出やすいけどね。テクニカルだと言われるのはとてもうれしいけど、本当にテクニカルなのかどうかはわからないな。


川嶋:80年代もライヴ活動は頻繁に行っていたのですか。

R:やってはいたけど、あくまでドイツのローカルだよ。89年に鉄のカーテンが消えた時に初めて、東側にたくさんS.D.I.のファンがいることがわかったんだ。その頃はハンガリーやチェコ、イタリアなどでもライヴをやった。だけど91年に解散してしまったからね。その後若いギタリストを入れて、デモを録ったりもしたのだけど、うまくいかなかった。93年頃はヘヴィ・メタルも死に、音楽業界もすっかり変わってしまったから。この時のデモは05年にリリースされたリマスター盤に、ボーナス・トラックとして収録されているよ。だから4枚目のアルバムを聴きたければ、リマスターの3枚を聴いてもらえれば何曲かずつ収録されている。ただのデモだけどね。ファイナル・ヴァージョンではなくて。4トラックで録られたデモだから、リマスターで音質改善するのが大変だったみたいだけど。

川嶋:4枚目のアルバム用デモを録音した時点では、ディールはあったのですか。

R:あった。ただ彼らは、ディストリビューションを確保できるか確認したがったんだ。何しろヘヴィ・メタルは死にかかっていたからね。Judas PriestやIron Maidenすら、当時は問題を抱えていた。ヘヴィ・メタルはただの繰り返しになってしまって、新しいものは何もなくなってしまったんだ。俺たちもデモを録音した時点で、これ以上はもうどうしようもないという結論に達したのさ。そのラインナップで3回ドイツでライヴをやったけれど、お客さんは結局古い曲ばかりを聴きたがっていた。あの当時、古い曲だけではもうやっていけないことは明白だったので、解散したのさ。

川嶋:インターネット上の情報によると、あなたたちは91年にいったん解散して、92年に再結成という風になっていますよね。

R:そう。91年に解散して、翌年にさっき言ったデモを録音したんだ。Christophがドラマーだったけど、ただのデモなのでドラムマシンも使ったし、99%は俺の部屋で作ったんだ。

川嶋:S.D.I.というバンド名ですが、80年代当時これはStrategic Defense Initiative(戦略防衛構想、スターウォーズ計画)を意味していて、非常に政治的な響きがありましたが、なぜこの名前にしたのでしょう。

R:いくつか理由はあるけど、一番の理由は、結成した時俺が23歳で最年長だったので、名前を決めなくてはいけなくてね、それでとてもブルータルでユニークな名前にしようということになって、最悪なものというサタン、サタンに起こりうる最悪のことというと彼がレイプされること、ということでSatans Defloration(=サタンの純潔を奪うこと)にしたんだ。俺たちも若くて深く考えていなかったからね。それでレーベルと契約した時に、Satans Deflorationは長いから何とかしてくれと言われたので、Inc.を加えてS.D.I.と略したんだよ。一度S.D.I.と決めてしまったらもう変えられないし、変える理由もなかったし。この質問は良くされるんだけどね。3文字というのは見た目も良いし。フェスのポスターなどでも、ほとんどのバンドは何が書いてあるのかわからないだろ。S.D.I.だと例え小さくプリントされてもはっきり認識できる。

川嶋:つまり政治的意図は全くなかったのですね。

R:もちろんないよ。S.D.I.というのはレーガンが考えた戦略的な宇宙構想だろ。完全に狂ってるよ。当時S.D.I.がとても話題になっていただろう。だから『Sign of the Wicked』ではトルコ語のニュースを入れたんだ。「誰もがS.D.I.の話をしている。ゴルバチョフもS.D.I.を非常にリスペクトしている」という内容さ。もちろんジョークとして入れたんだ。

川嶋:あなたたちの歌詞は、例えば「I Wanna Fuck Ya」のようなめちゃくちゃなものがありますが。

R:俺も若かったから、とにかくヤリたかったんだよ。


川嶋:今でもですよね。

R:まあ今もだけど、もう若くないからね(笑)。例えば1000年も前のことに起こったことについて歌うなんて、恥ずかしかったんだよ。14世紀のスコットランドの戦争について何も知らないし、興味もない。俺の生活には何の関係もない。女性と一緒にいてヤリまくるということこそ、俺の生活だったからね。特に若いときは。さっきも言ったように、ファースト・アルバムは6週間で作らなくてはいけなかったから、俺が持つものすべてを一気に集めてきたんだ。のんびりと「皆はこれについてどう思うだろう?」なんて考えている暇がなかった。この曲を知らない奴らは「何て歌ってるの? I wanna fuck you.って聞こえるけど」なんて言ってきたけどさ、そう歌ってるし実際ヤリたかったし、ヤリまくっていたしね。

川嶋:「Quick Shot」の内容も酷いですよね。

R:あれは大成功だったよ。ある程度ヒットしたんだ。あれは『Sign of the Wicked』のハイライトじゃないかな。

川嶋:サード・アルバム『Mistreated』は最初の2枚とだいぶ音が変わっていますが、故意だったのですか。

R:いや、違う。Rainer Rageがバンドに加わって、彼はレコーディングの際にギターをすべて弾きたがったんだ。プライドの問題でね。最初の2枚は、実はギターもすべて俺が弾いて、ギタリストはソロを足しただけだったんだ。だけど結局Rainerはレコーディングに慣れていなくて、うまく行かなかった。それで慌てて最初の2枚と同じように、俺がギターを入れ直して、ベースも弾いて、歌も入れてと、10日間ロクに眠りもせずに作業したんだ。それであまりに疲れていたので、ミックスに立ち合えなかったんだよ。プロデューサーを信用していたんだけど、仕上がりは酷いものだった。聴いた時には驚いたよ。しかしレーベルからは、もう予算も使ってしまったし、これで終わりだと言われ、そのままリリースせざるを得なかった。今でもこのミックスは好きじゃない。愛も情熱もない出来だね。ただ仕事をこなしただけで、最初の2枚のような新鮮さもない。本当は最初の2枚と同じエンジニア、Tom Kr?gerと仕事をしたかったんだけどね、彼は忙しくて。俺たちのこともメタルのことも知らない奴とやらざるをえなかったんだ。だけどミックスの悪さがあのアルバムが『Sign of the Wicked』ほど成功しなかった理由ではない。問題は曲が複雑すぎたということだ。

川嶋:複雑にしようと思ったんですか。

R:いや、思っていなかった。だけど年をとってくると、変化を求めるものだろう。ファースト・アルバムの時、俺は23歳だったけど、サードの時点では26になっていた。思い出してもらえばわかると思うけど、その頃は非常に変化が大きい時期だろ。23の時には考えもしなかった結婚や子供のことが視野に入ってきたり。この時期に変化するというのはS.D.I.特有のことではなくて、どんなバンドにも起こることさ。ファースト・アルバムはフレッシュだが粗削り。セカンドになると、例えばIron Maidenの『Killers』などでもわかる通り、すべてがしっくりくるようになる。そしてサードの『The Number of the Beast』で音が完成して、今も同じスタイルと言えるだろう。S.D.I.の場合はファーストは急いで作って、非常に楽しんでうまくいった。セカンドの時は時間もあって、俺たちはファーストよりも良い曲を作れるとわかり、やはりうまくいった。ところがサードの時は、おそらく考えすぎたのだと思う。多くを望みすぎたというのかな。ファーストを聴いて「I Wanna Fuck Yaか、いい曲だね」と思う。で『Mistreated』を聴くと、まるで別のバンドのようだ。だから今でもライヴで最初の2枚の曲を中心に演奏するようにしている。ファンは速い曲やヘヴィな曲が好きだからね。だけど昨日は「The Deal」(『Mistreated』の1曲目)を聴きたいというファンがいたな。でもあの曲でモッシュピットができるのは想像できないね。速くてヘヴィな曲こそ、ライヴ・バンドとしてのS.D.I.の持ち味だから。ファンもそれを望んでいるだろう。

川嶋:やはりサードはあまりお好きではない?

R:当時は好きだったよ。だけど今となってはちょっとね。今年の終わりか来年初めに4枚目のアルバムを作るつもりだけど、もちろん速い曲をたくさん入れるよ。それこそがS.D.I.だからね。

川嶋:ニュー・アルバムを今作っているのですか?

R:そうだよ、Ralfとね。S.D.I.は今ライヴ・セクションとレコーディング・セクションがあって、レコーディング・セクションの方は俺とRalfでやってるんだ。レコーディングできる状態にある曲が4曲あって、年末に向けて残りの曲も仕上げようと思っている。

川嶋:すでにディールはあるのですか。

R:いや、まだだ。プレッシャーを感じたくないからね。俺も仕事があるから、空いている時間に作業をしているんだ。さっきも言ったようにRalfも忙しいし。だから年末までかけてゆっくりやるんだよ。

川嶋:14年にバンドを再結成しようと思ったのは何故ですか。

R:生活に退屈していたというのかな。すべて順調で子供たちも独立し、時間を持て余したんだ。それでRalfと試しにスタジオに入ってS.D.I.の曲25年ぶりに合わせてみたら、最高に楽しかった。それでRainer Rageを探してみようということになったんだよ。見つけるのは大変だったけどね。


川嶋:レコーディングされてから30年経っている曲を今でもファンたちが愛していることをどう思いますか。バンドを始めた頃、30年後も演奏していると思っていましたか。

R:当時は何一つ期待していなかったよ。今日みたいなライヴに呼んでもらえることについて非常に誇りに思っているし、光栄に思っている。最高に楽しいしね。一番素晴らしいことは、ファンが俺たちを見に来てくれるということさ。特にヘッドライナーの時はね。S.D.I.を見に、S.D.I.の曲を聴きに来てくれるんだから。ミュージシャン冥利に尽きるよ。

川嶋:先ほど『Bloodsucker』デモがLPでリリースされたという話が出ましたが、他にも今後未発表の作品をリリースする予定などはありますか。

R:あるよ、さっき言ったとおり4曲の新曲がね(笑)。全部で7−8曲にはしたいね。もちろん他にもライヴ映像などはあるよ。だけどライヴをやるとすぐにFacebookに動画がアップロードされる時代に、ライヴCDを出すというのもどうかと思って。皆スマートフォンを持っていて、時にはものすごく音質が良かったりもするからね。80年代の凄く良いライヴ録音もあるけど。でもこれは良すぎるから自分だけのものにしておこうと思ってる。まあ60歳くらいになったらリリースするかもしれないけど(笑)。

川嶋:ありがとうございました。では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

R:ありがとうと言いたい。そしてもし時間があったら、あ、今これを言っても間に合わないか(笑)。(訳注:おそらく今晩のライヴを見に来てくれと言おうとしたと思われる。)日本人を愛しているよ。そのままでいてくれ。

取材協力:ROCK STAKK RECORDS



 これまでも何度か触れてきたが、インターネットなんてあるはずもない80年代当時、子供たちは色々と知恵を絞って新しいバンドを見つけていたものだ。例えば自分のお気に入りのバンドがどんなTシャツを着ているのかとか、好きなアルバムのサンクス・リストにどんなバンドが載っているか、などを細かくチェックするなどして、関係ありそうなバンドを探したものだ。ところがこのS.D.I.、他のバンドがTシャツを着ていたのを見た記憶もなければ、サンクス・リストにあった覚えもない。腕にカミソリでS.D.I.と刻み付けているジャケットのLPはインパクトも強く、そしてディストリビューションも良かったのか、輸入盤店ではやたらと目にする機会があった。だが、S.D.I.が他のスラッシュ・メタル・バンドとツアーをしたというような記事を目にすることもなく、とにかく当時のドイツ、あるいはヨーロッパのシーンとのつながりが一切感じられないバンドという印象が強かったのだ。そして実際に音を聴いてみると、さらにその印象は強くなる。確かに相当に速いのだが、変にメロディックであり、スラッシュと呼んで良いのかも微妙。かと言って他にしっくりくるジャンルがある訳でもなく、類似のバンドも見つからない。「メガモッシュ」などという曲があったり、数秒しかない曲をやっていたり、そもそもS.D.I.というバンド名からはS.O.D.やD.R.I.を思い出させるし、と狙いはクロスオーヴァーなのかと思わせる面もあった。S.D.I.はすべてにおいて、どういう文脈で捉えたら良いのかわからない正体不明のバンド、とでも言うべき存在だった。冒頭「謎多きバンド」と書いたのは、そういうことである。そして今回のこのインタビューで明らかになったのは、その認識は決して間違っていなかったということだ。元々はロックンロールのバンドをやっていて、スラッシュ・メタルが流行っていたからという、スピード・アップをした。スラッシュに興味があった訳でも、スラッシュ・シーンにいた訳でもない。S.D.I.は不純な動機を持った、それこそ完全に部外者だったのだ!しかしReinhardも言っているとおり、その部外者ぶりがプラスに働いているのである。スラッシュの公式、美学を知らないからこそ逆に、S.D.I.という非常にオリジナリティの強いバンドが生まれたのだ。特に初めの2枚にあふれる自由な空気は、下手にスラッシュを研究していたら、作れなかったものだろう。

 いずれにせよ、S.D.I.のライヴを日本で見られるなんて、まるで夢のような話である。80年代当時もかなりのスピードに感じられた楽曲を、さらにスピード・アップして演奏しており、実にエネルギーあふれる素晴らしいライヴであった。

 もしS.D.I.未体験という方がいたら、ぜひファースト・アルバム『Satans Deloration Incorporated』とセカンドの『Sign of the Wicked』は聴いてみて欲しい。速くてメロディックで、そしてバカ。スラッシュ・メタル・ファンはもちろん、ジャーマン・メタルのファンも楽しめる名作だ。S.D.I.というとメガモッシュの印象が強すぎるが、インタビュー中でも触れた「Quick Shot」なども実に酷い。「お前の名前も出身地も知りたくない。会話にも興味は無い。ヤラせるのかヤラせないのか、さっさと決めろ」という下劣極まりない内容だ!


 Exciter、Blood Feast、Possessed、At War、Sacrifice、Razorなど、常にスラッシュ・ファンを驚愕させるようなラインナップを提供し続けてきたTrue Thrash Festだが、今年はS.D.I.とDarknessという、これまた卒倒してしまうような渋すぎるチョイスであった。このような場を、10年にも渡り提供し続けているTTFには敬服するしかない。エクストリーム・メタルという音楽を愛する人の多くは、世の中流行りで皆が同じような音楽を聴こうとする風潮に違和感を覚えているに違いない。ところが一方で、そのエクストリーム・メタルという世間的には異様な世界においても、やはり数の論理が支配している感は免れない。皆が同じバンド、同じ音楽を好む世界の何が面白いのか。数の論理に流されないと主張するのは容易い。しかし一方でライヴはビジネスの面もある。大赤字を続けていては存続することはできない。だからこそ独自の美学を貫きながら、10年近くも続いているTTFの存在は貴重なのだ。そして来年はついに10周年ということで3日間に拡大して開催される予定になっている。先日のライヴ会場ではそのラインナップ予定が発表されたが、これが実現すれば、日本のスラッシュ・メタル・フェス史上最強の内容になること間違い無し。いずれ正式発表されることと思うが、スラッシュ・ファンは来年が楽しみすぎて眠れなくなることだろう。というよりも、あのラインナップを聞いて眠れなくならない人は、スラッシュ・ファンとして修業が足りないということだ!!!

取材・文:川嶋未来(SIGH)


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