【インタビュー】フレデリク・ルクレール / SINSAENUM

2016年07月28日 (木) 18:00

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まさにエクストリーム・メタル界のオールスター・バンド、シンセイナム。まず、参加メンバーを見てみよう。

■フレデリク・ルクレール(ドラゴンフォース):ギター、ベース、シンセ、ヴォーカル
■ジョーイ・ジョーディソン(元スリップノット、ヴィミック):ドラム
■アッティラ・シハ−(メイヘム、SUNN 0)))):ヴォーカル
■ショーンZ(ドス、キマイラ):ヴォーカル
■ステファン・ビュリエ(ラウドブラスト):ギター
■ハイモット(セト):ベース


凄まじいメンバーだ。これがオールスター・バンドでないのなら、この世にオールスター・バンドなど存在しない。そんな彼らのデビュー・アルバム『エコーズ・オブ・ザ・トーチャード』がついにリリースとなる。バンドの中心人物、ドラゴンフォースのフレデリク・ルクレールに話を聞いてみた。
川嶋未来(以下、川嶋): このプロジェクト/バンドを始めたのはいつなのでしょう。

フレデリク:今回のアルバムに収録されている曲の中には、1998年頃に書いたものもある。だけど、大半はここ3年くらいで書かれたものだよ。インターリュードは全部去年書いたんだ。

川嶋: そもそもこのプロジェクト/バンドは、あなた個人のものだったのですよね。

フレデリク:そう、最初は俺のワンマン・プロジェクトだったんだ。そのうち他のミュージシャンも見つけなくてはと思い立って、(ラウドブラストの)ステファン・ビュリエにプロジェクトのことを話したんだ。

川嶋: 曲はすべて一人で書いたのですか?

フレデリク:そうだよ。インターリュードもすべてね。もちろん参加したミュージシャンたちも、彼ら独自の演奏スタイルを持ち込んでいるけれど、曲を書いたのは俺一人だね。

川嶋: シンセイナムは、どのようなバンドから音楽的影響を受けているのでしょう。


フレデリク:Morbid Angel、Pestilence、Bolt Thrower、My Dying Bride、Slayer、Dark Funeral、Bartok、Goblin。ラウドブラストやメイヘムからの影響もあるよ。結果的にラウドブラストやメイヘムのメンバーが、シンセイナムの一員になったというのは面白いね。

川嶋: シンセイナムの楽曲に、ドラゴンフォースからの影響というのはあると思いますか。

フレデリク:いや、まったく無い。確かに俺はドラゴンフォースのメイン・コンポーザーの一人ではあるけれども、シンセイナムに関しては、その影響はないよ。もしシンセイナムが、ドラゴンフォースから影響を受けることがあるとすれば、了見の狭い奴らにパワー・メタラーがちゃんとしたデス・メタルをやるなんて無理だって思われるケースくらいだね(笑)。

川嶋: シンセイナムには、元スリップノットのジョーイ・ジョーディソンを始め、メイヘムのアッティラ・シハ−など、多くの有名アーティストが参加しています。まずジョーイはどのような経緯で参加することになったのでしょう。

フレデリク:ジョーイから、「最近何しているの?」ってメールが来たので、このプロジェクトのことを伝えたんだよ。そしたら「ドラマーは決まっているのか?決まっていないのなら是非俺に叩かせてくれ!」って。

川嶋: シンセイナムというのは、ジョーイが思いついた造語なのですよね。

フレデリク:そう、Sin=罪とInsane=狂気の、という二つの単語を組み合わせた造語だよ。俺たちの音楽スタイルをうまく表しているだろう。

川嶋: ギターで参加しているラウドブラストのステファンとは、元々どのように知り合ったのですか。

フレデリク:俺の初めてのバンド、フュージョン・メタル・バンドだったのだけど、Normesが95年にラウドブラストのオープニングをやったんだ。俺のホームタウン近くで行われたフェスでね。その時彼と初めて出会ったんだよ。

川嶋: シンセイナムでは、元ドス、キメイラのショーン・Z、それからメイヘムのアッティラと、ヴォーカリストを2人起用していますよね。これは何故なのでしょう。

フレデリク:成り行きと言えばいいかな。「2人起用しよう」って計画していたわけじゃない。結果としてヴォーカリストを2人にしたことによって、新たな地平が広がって良かったよ。

川嶋: ヴォーカリストをこの2人にしようというのは、どのようにして決めたのでしょう。

フレデリク:ショーンとはずっと一緒にやりたかったんだ。彼の声だけでなく、発音も大好きなんだ。非常にリズミカルだろう。09年のツアーで、(ショーンのバンド)ドスがドラゴンフォースのオープニングをやったんだ。一方アッティラは、声を楽器として使うタイプで、ショーンと比べるとリズミカルではなく、もっと波みたいな、現れては消える感じだ。そういうヴォーカルが、例えば「アンファング・デス・アルプトラウメス」のような曲にはぴったりだった。基本的に、シンセイナムがやっているのはデス・メタルだから、アッティラのヴォーカルはそれほど前面には出ていないけれども。

川嶋: ベースには、ブラック・メタル・バンド、セトのハイモットを起用されていますね。

フレデリク:彼とは何年か前、フランスのフェスで知り合ったんだ。俺はセトが持つオーラが大好きだったから、ベーシストを選ぶにあたって、自然とハイモットのことが頭に浮かんだんだ。

川嶋: シンセイナムは、メンバーがフランス、アメリカ、ハンガリーと離れていますが、リハーサルやレコーディングはどのようにしたのですか。

フレデリク:基本的にすべてインターネット経由さ。俺がすべての曲を書いて、メンバーに送る。彼らは必要があればそれをアレンジして、俺に送り返してくる。俺がそれをチェックして、修正してまた送り返す。インターネットというのは本当に便利だよ。メンバーの半分が別の国に住んでいても、何の問題も無いのだから。まあ俺はドラゴンフォースでそういうやり方に慣れているしね。


川嶋: シンセイナムが音楽でも歌詞の面でも、ホラー映画から影響を受けているのは明らかですが、どのようなホラー映画がお好きなのですか。

フレデリク:俺はホラー映画も、ホラー小説も大好きだよ。若い頃はよく、レンタルビデオ屋に行って、酷いジャケのビデオを選んで借りたものさ。俺は80年代の作品が好きなんだ、『マニアック』、『食人族』、『死霊のしたたり』、『吐きだめの悪魔』、『ドーン・オブ・ザ・デッド』、これは78年だけど。一番好きなものとなると、『死霊のはらわた』かな。これは本当に怖かった。最近の映画も好きだよ、『ホステル』、『マーターズ』、『ディセント』、『ムカデ人間』とか。『リング』、『オーディション』、『仄暗い水の底から』、『殺し屋1』みたいなに日本のホラーも素晴らしい。

川嶋: インターリュードがたくさん収録されていますが、これはどのような意図なのでしょう。

フレデリク:リスナーを旅に連れて行くためさ。俺自身もインターリュードが入っているアルバムをよく聴いていたし。1曲を取り出して聴くのも構わないけど、でもやはりアルバムを最初から最後まで通して聴くことによって、雰囲気が出るだろう。全体として一つの芸術なんだ。特定の意味のないストーリーだよ。Pestilence、Tiamat、Type O NegativeやMorbid Angelのアルバムみたいにね。彼らのアルバムは、インターリュードがあることで、さらに特別な、神秘的な感じになっていただろう。

川嶋: 歌詞はどのようなところからインスピレーションを得たのですか。非常にヴァイオレントなものが多いですが。

フレデリク:俺たちの魂の暗い部分、主に憎しみや悲しみ、苦痛、その他思いつく限りのネガティヴなものからだね。

川嶋: 特定のホラー映画について歌っているものはありますか。

フレデリク:タイトル曲は、同名のフランスの小説(L'echo des Supplici?s)についてだよ。俺はそれのタトゥーも腕に入れているんだ。この小説は、おそらくこの世で最もヴァイオレントで、描写的で、邪悪な作品だと思うよ。ホラー・ファンとしては、それがまたとても楽しいのだけど。

川嶋: 歌詞の中には、「支配者民族」「お前の種の絶滅」「浄化の炎」など、ナチのホロコーストを思い起こさせるフレーズも出てきますが。

フレデリク:いや、それはまったく関係が無い。もちろん第二次世界大戦中に起こった出来事は酷いものだけど、俺たちの歌詞は、具体的、歴史的な出来事について触れているものではないよ。俺たちの歌詞は、何世紀にもわたって人類が犯してきた恐ろしいことすべてにあてはまる内容であって、特定の出来事についてのものではない。

川嶋: H.P.ラヴクラフトからの影響についてはどうでしょう。「アンファング・デス・アプトラウメス」には、ラヴクラフトからの影響があるように思えますが。

フレデリク:俺はラヴクラフトのスタイルや、彼が書く話が大好きなんだ。確かに「アンファング・デス・アプトラウメス」の一部は、ラヴクラフトのテーマに言及しているよ。よくわかったね。

川嶋: この曲のみ、タイトルがドイツ語ですね。

フレデリク:この曲を書いている時に、ふとドイツ語のタイトルが思い浮かんだんだ。何故かはわからないけど、これはドイツ語でなくてはダメだと思った。本能に従った感じさ。この曲は、不気味な中間部でアッティラによるハンガリー語のモノローグも入るので、ドイツ語のタイトルと相まって神秘的な雰囲気が出ていると思うんだ。

川嶋: シンセイナムとしてライヴやツアーをやる予定はありますか。

フレデリク:その時が来たらね。もちろんメンバー全員ライヴをやりたいとは思っているのだけど、何も焦ることはない。まずファンの皆にアルバムをじっくり聴いて、きちんと消化してもらってからだね。

川嶋: お気に入りのデス・メタルのアルバムを5枚教えてください。

フレデリク
Morbid Angel 『Blessed are the Sick』
Pestilence 『Testimony of the Ancients』
Death 『Scream Bloody Gore』
Carcass 『Necrotism-Descanting the Insalubrious』
Bolt Thrower 『Warmaster』

川嶋: では最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。

フレデリク:俺にとって日本は第二の故郷みたいなものさ。日本のファンは、ドラゴンフォースでの俺しか知らないかもしれないけど、是非シンセイナムでの違った側面も体験して欲しいな。どちらもメタルだしね。いつもサポートしてくれて、ドウモアリガトウ!


 シンセイナムは、確かにオールスター・バンドだ。だが、決してよくあるオールスターであることを目的としたオールスター・バンドではない。あくまでフレデリクのソロ・プロジェクトに、彼の友人たちが集まり、結果としてオールスター・バンドになったというだけのこと。ドラゴンフォースというと、メロディックなバンドの代表というイメージがあるだろう。そしてそのバンドのベーシストがデス・メタル・バンドをやることに、違和感を覚える人もいるかもしれない。だが、フレデリクは「プライベートではパワー・メタルは一切聞かない」と公言するほど、筋金入りのエクストリーム・メタル・マニア。彼がデス・メタル、それも90年代初頭のデス・メタル好きであることは、シンセイナムの音を聴けばよくわかるだろう。もう少し直接的に言えば、彼らは確実に古き良き時代のMorbid Angelの後継者である。お気に入りのデス・メタルのアルバムの筆頭に『Blessed are the Sick』を挙げているだけでなく、フレデリクはそのジャケをタトゥーにしているほど、このアルバムに入れ込んでいるのだ。ギター・リフからショーンZの歌い回し、そしてインターリュードの多用など、各所にMorbid Angelからのインスピレーションが感じられる。だがもちろん、これだけのメンバーが揃って、単なるMorbid Angelフォロワーに終わるはずがない。「アーミー・オブ・ケイオス」などはまったく毛色の違う曲であるし、またフレデリクによる非常にメロディックなギター・ソロの数々は、実に耳を引く。「ドラゴンフォースからの音楽的影響は皆無」と言い切っている彼だが、日常的に演奏しているスタイルからの影響を完全に逃れるというのは簡単なことではない。やはりそこは無意識であれ、「昼の顔」が覗いているのではないだろうか。とういわけでこのシンセイナム、デスやブラックのファンだけでなく、パワー・メタルやヘヴィ・メタル・ファンにも十分にアピールする内容である。ドラフォンフォースは大好きだけど、デス・メタルはちょっと怖くて、という人にはちょうど良いきっかけとなるのではないだろうか。

 ここでラウドブラストの話を少々。まあどうしてもドラゴンフォースにスリップノット、メイヘムといった有名バンドに焦点があたりがちだが、シンセイナムでフレデリクの次に重要な役割を果たしているのは、ラウドブラストのステファン・ビュリエである。彼はレコーディング・エンジニアもやっており、音作りなど、様々な面でフレデリクの右腕として活躍しているのだ。ラウドブラストというと、ここ日本ではそれほど知名度が高いようには思われない。だが、彼らは結成は1985年という大ベテラン。91年リリースのセカンド・アルバム『Disincarnate』は、聖地フロリダはタンパのモリサウンド・スタジオでレコーディングされ、フランス初のデス・メタル作品として、本国では高い尊敬を集めているのだ。現在フランスのメタルと言えばGojiraであるが、彼らもラウドブラストを大好きなバンドとして挙げている。私も一度フランスで、ラウドブラストのライヴを見たことがあるが、それはそれは凄まじい盛り上がりであった。ぜひこれを機会にラウドブラストもチェックしてみて欲しい。

 アルバム・リリースの次となると、期待せざるを得ないのがライヴだ。これだけのメンバーが揃ってしまうと、スケジュール調整も容易ではないだろう。だがそこを何とかクリアして、ぜひここ日本でもシンセイナムの勇姿を見せてもらいたいところだ。

取材・文 川嶋未来/SIGH
Photo by Peter Just, Itsvan Bielik




日本盤

Echoes Of The Tortured

CD

Echoes Of The Tortured

Sinsaenum

価格(税込) : ¥2,700

まとめ買い価格(税込) : ¥2,295

会員価格(税込) : ¥2,484

発売日: 2016年07月29日

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