【インタビュー】エグベルト・ジスモンチ

2016年02月20日 (土) 09:00

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ローチケHMV - 洋楽

ブラジルが生んだ音楽の千手観音、エグベルト・ジスモンチ&ナナ・ヴァスコンセロス、幻のデュオによる一夜限りのコンサートが4月20日(水)、ここ日本で行われます。 ピアノと多弦ギター、管楽器などさまざまな楽器を自由自在に操るマルチ・ミュージシャンとして、また優れた作曲家として、多くの音楽家が崇拝し、敬愛する天才、エグベルト・ジスモンチ。ブラジルを代表するパーカッショニスト/ビリンバウ奏者で、打楽器の芸術性を世界に知らしめたリズム・マスター、ナナ・ヴァスコンセロス。

2人は1970年代にECMから傑作コラボ作品を何枚も発表しており、現在も親交は深いものの、近年、共にステージに立つことはまれ。世界中のブラジル音楽ファンがうらやむ、両巨匠の共演が実現する日本公演に先駆け、エグベルト・ジスモンチ氏へのメールインタビューが実現。共に来日を果たすナナとの関係性や往年のエピソードの他、作曲・編曲のプロセスなど興味深い話をたくさん伺うことが出来ました。奇跡の来日公演を体験する前にぜひご一読を。

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エグベルト・ジスモンチ&ナナ・ヴァスコンセロス 奇跡の一夜

--- ナナ・ヴァスコンセロスとの共演は、あなたにとってどのような影響やインスピレーションを与えてくれますか?

エグベルト・ジスモンチ(以下ジスモンチ): ナナ・ヴァスコンセロスと一緒に演奏するということは、大きな喜びです。 なかなか会うことのできない親友と会うと嬉しいでしょ? 過去2枚のアルバム:私がリーダーのデュオ作品『Danca das Cabecas 輝く水』と、ナナがリーダーで私も参加している『Saudades』で、既に共演し、アイディアを交わし合っていますので、今は再会の度に、楽しく演奏することで、互いの友情を祝福し合うのです。陽気で楽しい演奏というのは、ブラジル器楽音楽の明るい側面です。

--- ナナ・ヴァスコンセロスとの演奏で一番良いことはどんなことですか?

ジスモンチ:感情を量ることは難しいことですが、言うなれば、ブラジルらしさに溢れ、音楽的才能に溢れ、刺激的であり、非常に創造的であるブラジル人の友達とブラジル音楽を奏でられることは、最高の喜びです。

--- では逆に、ナナ・ヴァスコンセロスとのデュオで一番難しいこととは?

ジスモンチ:ナナとのデュオで難しいのは、ただ一つ。楽器を交換した時ですね。彼がギターを弾き、私がビリンバウを弾き始めると、たちまちデュオは、まるで喧嘩のようであり、滑稽な演奏になります。これが一番難しいと断言できます。

--- あなたは、長きにわたり演奏を続けられていますが、新しい音楽を生みだし続ける秘訣とは何でしょう?

ジスモンチ:素晴らしい質問ですね。新鮮さを保ちながら作曲、探求、演奏し続けるには下記にあげる3つの事が不可欠です。

1.音楽は私たちのより健康で尊厳ある生活を求める中で、助けとなることを信じる事。
2.私がプロの音楽家としての生活を始めたときから、私がより良く演奏できるように手助けして下さる全ての方々への信頼。
3.生まれつき与えられた“音楽的天分”が、私の命、体、感情から決して離れることのない“音楽”を尊重しなければならないということを信じる事。

--- あなたはマルチ楽器奏者であり、またオーケストラのための音楽も作曲されています。作曲をする際に最初に浮かぶ楽器を教えてください。また、オーケストレーションのプロセスを教えてください。

ジスモンチ:私は、弦楽器、金管楽器、木管楽器、パーカッションなどで構成される西洋様式のオーケストラと、編曲と作曲という2つの異なる方法で仕事をしています。

まず編曲のお話をしましょう。小編成、中編成、または大編成のグループのために、元々ある作品に表現を加えていきます。編成は、弦楽器と木管楽器の時もあれば、金管楽器と木管楽器の場合もありますし、あるいは弦楽器だけ、はたまた全ての楽器が一緒になった編成もあります。編曲のアイディアを伝えるために、まずはメロディーや歌のパートをピアノやギター、あるいは他の楽器でデモンストレーションします。

作曲においては、メロディー、歌、対位法が、多かれ少なかれ、同時に現れます。 オーケストラの作曲の過程において、オーケストレーションは、殆どの場合、頭の中で想像できます。実際に演奏していなくても、オーケストラの音を想像することができるのです。聞こえ方を確認する必要があるときにはピアノを使いますが、殆どの場合、楽器は使いません。ピアノは、拡大したり、対位法の可能性を探るという意味では、最もわかりやすい楽器だからです。

オーケストレーションの構想は、編曲や作曲をしている時には既に存在しています。編曲と作曲の違いは、編曲の場合、楽曲を導いていくメロディー要素が明確だということ。しかし作曲している時に頭の中で鳴り響いている音楽は、全体であり、それが楽曲の冒頭なのか、中間なのか、最後なのかということは作曲家の意志次第なのです。この時点ではまだ、作曲家はその楽曲が1分なのか、3分なのか、5分なのか・・・あるいはもっと長いのかをまだ知らないということになります。

--- 4月に日本で『Danca das Cabecas 輝く水』と『Duas Vozes 二つの声』のCDがアンコールプレスされますが、当時の印象深い制作エピソードがあったら教えてください。

ジスモンチ:それは、良いニュースですね。ありがとう。これらのアルバムには良い想い出があります。『Danca das Cabecas 輝く水』は、1976年、マンフレッド・アイヒャーからのインビテーションがきっかけで制作しました。当初は、私のブラジルのバンドによる作品制作というアイディアだったのですが、いつも一緒に演奏していた音楽家、ホベルティーニョ・シルヴァ、ルイス・アルヴェス、ニヴァルド・オルネイラスはブラジルの軍事政策の法律で旅が出来なくなってしまったため、私はソロアルバムを作ることにしました。

ノルウェーのオスロにあるスタジオへ行く事になっていたのですが、オスロは訪れた事のない土地だったのと、当時まだマンフレッドのこともECMのことも知らなかったので、私は、マリー・ラフォーレとの仕事で馴染みのあるパリに、2、3日立ち寄ることにしました。

パリに到着した私は、荷物をホテルにおいて街を散歩しがてら、ラ・クーポール(モンマルトルにあるブラッスリー)で、ビールとサンドイッチを食べていました。すると驚いたことに、そこには俳優のゾージーモ・ブルブルというブラジル人の友達がいたんです。私たちは、この偶然の再会に祝杯をあげました。そしてその晩、彼の自宅でのディナーに招かれたのですが、そこでペルナンブーコの郷土料理「ガリーニャ・カビデイラ」を作ってもらおうと、彼はナナ・ヴァスコンセロスに連絡をとったのです。これがナナとの最初の出逢いになります。私はナナに、何日か時間をくれないか?と頼み、私たちは一緒にアルバムを作ることになりました。

『Danca Das Cabecas』の構想をナナに話すと、彼は大いに喜んで、沢山の重要なアイディアを盛り込んでくれました。そのストーリーとは、2人の子供がさまよい歩きながらアマゾンの熱帯雨林を発見していく・・・というものでした。2日後、私たちはオスロに向かい、スタジオに入り、レコード制作を開始しました。最終的に、全く性質の違うピアノとコンガ、ギターとビリンバウのコンビネーションが驚くほど合うことに喜んだものです。そして、レーベルが提示したアートワークのコンセプトを変更したり、ECMとしては初となるラテン語のアルバム・タイトルを付ける事ができたのは、マンフレッドの献身的なサポートのおかげです。

世界各地の人々のサポートと、幸運に恵まれたこの作品は、大きなパズルの1ピース、1ピースが重なり合うように、このスタジオで完成したのです。

--- ECMと他レコードレーベルでの作品の制作方法に大きな違いはありましたか。戸惑った事や感心した事などあれば教えてください。

ジスモンチ:私とECMは、これまでに沢山の作品を作ってきましたが、常に音楽的に新しいアイディア、あるいはプロフェッショナルな関係性だからこそ生まれる企画を追求してきました。例えば、最初のCDは、ECMと私の関係にとって大変重要な作品でした。私たちは、もともとあったアイディアを壊すことなく、新しい限界に挑戦しました。写真を使った色鮮やかなカバーアート、ブラジルのアーティストによる絵や表現、ポルトガル語、ブラジルの言葉をタイトルに取り入れ、さらに、ラルフ・タウナーや、コリン・ウォルコット、そしてヤン・ガルバレク、チャーリー・ヘイデンなどとの新たなコンビネーションが生まれました。ガルバレクとヘイデンと私のトリオによる作品は数多くありますし、リトアニアのオーケストラと共演した『Musica de Sobrevivencia』も制作しました。そして私は、リトアニアの首都ヴィリニュスでのレコーディングの芸術監督も務めました。

マンフレッド自身がプロデュースしない作品というのはECMに殆どありませんが、私は彼と話し合って、ヨーロッパ経由ではない2つのレコーディング:1つは私の息子とのデュオ、そして、キューバのオーケストラとの2枚組アルバム『Saudacoes』をリリースすることができました。こうして私が作品プロデュースの権利をいただくことができたのは、彼と私の中にある友情と信頼関係が深いという証でしょう。そして今年は、これまでにヒットしたリイシューの作品を、未発表の音源と共に新しいデザインでリリースする予定です。このように、私とECMは、非常に前向きでユニークな関係を築いてきました。

--- 以前アンドレ・メマーリが来日した際にあなたから大きな影響を受けたと語っていました。彼らのような若い音楽家に影響を与えているあなたは、ブラジル音楽シーンでどのような役割を担っていると思われますか?

ジスモンチ:それは光栄なことです。これまで私の音楽は、国内外の音楽家、演劇監督、バレー団や映画の演出に刺激と影響を与えてきました。80年代、私はどのレーベルにも所属していない音楽家達のために、カルモという自己のレーベルを立ち上げました。そしてまた、私自身の作曲家としての生活を整え、新しい作曲家たちの作品を一時的に管理するのを助けるために、Editions Gismonti and Branquinho Edicoes Musiciansという出版社も作りました。

さらに、新しい作曲家や音楽家たちの、劇版音楽、映画音楽、そしてCDをフレキシブルで低価格な条件で作れるようにするために、70年代にはスタジオPoraoを作りました。 そして現在は、若い音楽家たちと2つのウィンド・オーケストラを作り、日々作品作りに励んでおります。この仕事が、少しでも認識されて、新世代の音楽家たちの手助けになればと思っています。このように、私は多くの若い音楽家と友情を深めておりますが、アンドレ・メマーリもその一人です。

--- ジスモンチさんにとって日本という国はどんな存在ですか?

ジスモンチ:ブラジルでは、家の後ろにスペースがあって、そこにはフルーツの木などが植えられていて、ブラジル人はそのような場所を“キンタル”と呼びます。いわゆる裏庭ですが、制限なくイマジネーションを広げられる空間という意味で使います。 “キンタル”というのは夢と想像力を膨らませられる家のことであると私は考えているのですが、ここ数年日本を訪れるようになり、日本こそ私の大人になってからの人生においての “キンタル”であると感じています。

--- 2人の来日を楽しみに待っているファンにメッセージをお願いいたします。

ジスモンチ:Thank you so much for follow faithful to all kinds of music, including mine. I am looking forward to the concert with Nana Vasconcelos.

私の音楽も含めて、あらゆる種類の音楽に対して真摯に向き合って下さり有難うございます。 ナナ・ヴァスコンセロスと共に、コンサートでお会いできることを楽しみにしております。

Egberto Gismonti(エグベルト・ジスモンチ)

1947年、リオデジャネイロ州カルモ出身。1967年、アントニオ・カルロス・ジョビンの助言で、単身渡仏。パリでコープランド、バーンスタイン、ピアソラ等を教えたナディア・ブーランジェ女史から、作曲とオーケストレーションを学ぶ。1969年、デビュー作『EGBERTO G ISMONTI』をブラジルでリリース。翌年、『SONHO 7 0』、『ORFEO N OVO』で欧州デビュー。1971年、ブラジルに帰国。アマゾンの密林でインディオと共に生活し、ブラジルの土着音楽に対する造詣を深め、独自の音楽性を身につけた。1973年、ラヴェルのオーケストレーションの構想と、ブラジルの大衆器楽音楽ショーロを自分の音楽性に取り込むために多弦ギターの奏法を習得。 1975 年、アイアート・モレイラを介して、ハービー・ハンコックやウェイン・ショーター、ジョン・マクラフリンなどと出逢い、ジャズとブラジル音楽との関係性を追及。 1976年末、ECMからナナ・ヴァスコンセロスとのデュオ『Danca D as C abecas』をリリース。以来、ヤン・ガルバレク、ラルフ・タウナー、コリン・ワルコット、チャーリー・ヘイデン、ジャキス・モレレンバウム、リトアニア交響楽団などと20作品以上をECM からリリース。その他、自己のレーベルCARMO や、EMI-Odeon より30 以上の作品をリリースし、世界中をさまざまなプロジェクトで駆けめぐった。 2002年、世界最高峰のチェリスト、ヨーヨー・マから熱いラブコールを受けて「オブリガード・ブラジル」(Sony) の録音に参加。2007年、16年ぶり奇跡の来日を果たし、ソロ・コンサートを行った。2008年には、東京フィルハーモニー交響楽団、指揮:沼尻竜典と共演。その様子は、NHK「芸術劇場」でも放送され、好評を博す。2009年には、新日本フィルハーモニー交響楽団、指揮:広上淳一と共演。2013年には、息子アレッシャンドレ・ジスモンチとデュオで来日した。

来日公演概要


エグベルト・ジスモンチ&ナナ・ヴァスコンセロス〜ブラジルが生んだ音楽の千手観音〜 日程:2016 年4月20日(水)
会場:練馬文化センター 大ホール(こぶしホール)
出演:エグベルト・ジスモンチ(Piano、Guitar)、ナナ・ヴァスコンセロス(Percussion)
料金:全席指定 前売:8,500円[税込]当日:9,000 円[税込]

■チケット一般発売日
2016年2月20日(土)〜



奇跡の一夜

来日公演詳細はこちら

エグベルト・ジスモンチ&ナナ・ヴァスコンセロス 奇跡の一夜

ブラジルが生んだ音楽の千手観音、エグベルト・ジスモンチ&ナナ・ヴァスコンセロス、幻のデュオによる一夜限りのコンサートが実現。

ローチケHMV-洋楽|2016年02月01日 (月) 08:00

来日記念アンコールプレス

Danca Das Cabecas: 輝く水

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Danca Das Cabecas: 輝く水

Egberto Gismonti

価格(税込) : ¥1,728

まとめ買い価格(税込) : ¥1,469

会員価格(税込) : ¥1,590

発売日: 2016年04月06日

来日記念アンコールプレス

Duas Vozes: ふたつの声

SHM-CD

Duas Vozes: ふたつの声

Egberto Gismonti

価格(税込) : ¥1,728

まとめ買い価格(税込) : ¥1,469

会員価格(税込) : ¥1,590

発売日: 2016年04月06日

来日記念アンコールプレス

Nana Nelson Angelo Novelli / Africadeus

CD

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Nana Vasconcelos

価格(税込) : ¥1,944

まとめ買い価格(税込) : ¥1,652

会員価格(税込) : ¥1,788

発売日: 2016年04月06日

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