【インタビュー】エヂ・モッタ

2016年02月03日 (水) 08:00

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ローチケHMV - 洋楽

傑作アルバム『AOR』(13年)によってブラジル音楽ファンのみならずウェストコースト/AORファンの心をもガッチリ掴んだブラジルの巨漢グルーヴ・マスター:エヂ・モッタが2年半ぶりとなる待望のニュー・アルバム『パーペチュアル・ゲートウェイズ』を完成させた。グレッグ・フィリンゲインズやパトリース・ラッシェン、ヒューバート・ロウズら、錚々たるミュージシャンと共に作り上げたこの豪華新作について、エヂ本人に話を聞いてみた。
インタビュー:金澤寿和(Light Mellow)

--- 前作『AOR』のワールドツアーはとても忙しそうでしたね。この新作『Perpetual Gateways』に着手したのはいつ頃ですか?またレコーディング期間は?

エヂ・モッタ:『AOR』では世界各地を旅したよ。自分でもビックリするくらいにね。『Perpetual Gateways』は技術面では前作とは真逆と言える作品なんだ。前作がレコーディングとミックスに7ヶ月も掛かったのに対し、新作はL.A.でたった4日間でヴォーカル録りまで終えてしまった。それをブラジルの自宅スタジオに持ち帰って2週間ですべて仕上げたんだ。『AOR』の時はポストプロダクションに時間を割いたから、1曲のミックスだけで2週間掛かることもあったんだけどね。皆が一堂に会して作り上げた『Perpetual Gateways』はグルーヴィーかつスポンテイニャスで、言うなれば昔のCTIのセッションみたいな作品だよ。

--- 新作の楽曲はどのように生まれたのですか?曲づくりのインスピレーションになったものは?

エヂ・モッタ:作曲はピアノでやるんだ。四六時中ピアノを弾きながら、ブロードウェイのワルツからAORやソウル、ジャズバラード、サウンドトラックに使うための小品など、様々なスタイルの曲を書いたよ。インスピレーションはいつも自分のレコード・コレクションから生まれてくる。映画やTVドラマのDVDを観ていて、サウンドトラックに触発されたりね。実生活よりも遥かにインスパイアされるんだ。私の人生の大部分をいつも占めているのはこれらのコレクションさ。

--- 新作で達成したかった音楽的な目標は?

エヂ・モッタ:ポップスやソウル、AOR、そしてジャズ。私が最も敬愛する音楽を、すべてミックスして提示することかな。私にとってはそのどれもが同じ場所で共存している音楽なんだ。

--- アルバムを<SOUL GATE>と<JAZZ GATE>の2パートに分けたのにはどのような意図が?

エヂ・モッタ:収録曲の制作が進むうちに、アートの領域に深くコミットするジャズ寄りのスタイルと、ジャズからの強いインフルエンスを持ったポップスやソウル系のナンバー、そのふたつの方向にセパレイトできるってアイディアが浮かんだんだ。

--- 『AOR』や今作の<SOUL GATE>からはスティーリー・ダン〜ドナルド・フェイゲンの影響が多分に感じられます。あなたにとってスティーリー・ダンはどのような存在ですか?

エヂ・モッタ:ドナルド・フェイゲンは私にとってNo.1 コンポーザーだ。もし家にある3万枚ものレコード・コレクションから1枚だけ選ぶなら、スティーリー・ダンの『Aja』をチョイスするな。私の知る限り、作曲、演奏、録音、すべての面に於いてパーフェクトな作品なんだ。80年代の中頃からジャズのレコードを買い漁るようになったのも、彼らがキッカケだったんだよ。

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--- カマウ・ケニヤッタをプロデューサーに起用した理由は?彼がコ・プロデュースを手掛けたグレゴリー・ポーターのアルバム『Liquid Spirit』(13年)にインスパイアされたのですか?

エヂ・モッタ:いや、カマウはその前からの知り合いなんだ。90年代の初め頃から、彼はカレッジの講義で生徒たちに私の音楽を聴かせていたらしいよ。彼はブラジル文化に明るく、ポルトガル語も喋れるし、読み書きもできる。彼がピアノで参加したフレッド・ジョンソンのライヴ盤なんて、ホントに素晴らしいよね(84年『Live At B.B. Joe’s』)。そこに入っていたクラブ・ジャズ・クラシック<A Child Runs Free>は、カマウの曲なんだ。ウェブ上で彼と仲良くなったのは、90年代の終わり頃。今まで私はプロデューサーを起用したことがなかったけど、今度のアルバムはたくさんの人たちにアプローチしたかったので、ガイド役を探していたんだ。私が信頼とリスペクトを置ける人をね。カマウはそれに最適といえる芸術の知識と明確なヴィジョンを持っていたのさ。

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--- 今作の中核を成すミュージシャンたちについて教えて下さい。グレッグ・フィリンゲインズとパトリース・ラッシェンを招いた理由は?二人とも鍵盤奏者ですが、そこにはどんな狙いが?

エヂ・モッタ:カマウがメンバーを揃えるのを手伝ってくれたんだ。デトロイト出身の彼はグレッグ・フィリンゲインズと幼馴染みで、パトリース・ラッシェン、ヒューバート・ロウズとも親しいんだよ。これまでの私の作品はギター主体のものが多かったから、敢えて今回はギターを使わず、その代わりに音の重ね方や和音感覚が異なる2人の鍵盤奏者を中心に据えてみてはどうか?というアイディアをカマウがくれたんだ。要は、メロディとバックの演奏との間にスペースを作ろう、余裕を持たせよう、ってコトさ。レス・マッキャンっぽくね。

--- 『AOR』にはデヴィッド・T・ウォーカーが参加していましたが、それはファイル交換に拠るもので、実際に初めて彼と対面したのは日本公演の時でしたよね。今作のレコーディングではグレッグやパトリース、ヒューバートとは一緒にスタジオに入ることができたのですか?

エヂ・モッタ:イエス!今回はずっとL.A.に滞在していて、カマウに連れられてヒューバートの自宅にもお邪魔したんだ。彼らはそれほど仲が良いんだね。そこで奥さんがショパンを弾いて、私たちをもてなしてくれた。たった4日の短いセッションだったけど、スタジオには家族のように親密なヴァイブレーションが溢れていたし、素敵な人々に出会えてホントに嬉しかったよ。

--- グレッグ、パトリースと共演してみて特に印象深かったことは?

エヂ・モッタ:グレッグはレコーディング初日から来て、マーヴィン・スミッティ・スミス(ds)やセシル・マクビーJr.(b)と一緒にスタジオへ入った。大抵は私が作曲時のオリジナルのコードをローズか生ピアノで弾いて、グレッグがそれに乗ってくる。でも彼は典型的なセッション・ミュージシャンだから、メチャメチャ仕事が早くて的確なんだ。彼の楽器自体がまるでスタジオだったよ。偉大なるスティーヴィー・ワンダーやドナルド・フェイゲンなど、数多くの名盤に参加してきた彼の仕事はとても知的なものだったね。 パトリースは、彼女のレコードをすべてコレクションするほど大好きなプレイヤーさ。クラシカル・ジャズから来るタッチやハーモニーのセンスがスゴイんだ。自分で書いたコード・シークエンスが彼女の手に掛かるのを目の当たりするのは、まるで魔法をも超越した何かを見ているようだったよ。

--- 伝説的なフルート奏者であるヒューバート・ロウズについてはどんな印象を持っていますか? 私は彼の『Family』(80年)というアルバムが大好きなんです。

エヂ・モッタ:『Family』は名盤だよね。彼の姉妹のエロイーズとデブラ・ロウズも参加していたっけ。私のお気に入りはアトランティックとCTI時代だな。彼は間違いなくポピュラー音楽史上最高のフルート奏者だよ。好きなフルート奏者は他にも大勢いるけど、ヒューバートに限っては、サックスにおける(ジョン)コルトレーンみたいに別格の存在さ。

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--- その他の参加ミュージシャンはどのようにして集めたのですか?

エヂ・モッタ:カマウとSkypeで長時間相談しながらあらゆる可能性を探った結果、まるで昔のジャズ・セッションのようにマジカルでスポンテイニャスなライヴ感覚をもったこのラインアップに行き着いたんだ。自分の長年のヒーローたちと一緒に仕事に取り組み、彼らが私の作品をプレイしてくれたことは、まさしく夢の実現だよ。本当に、ずっと忘れられないギフトになった。

--- 今回のレコーディング・セッションで特に印象に残った点は?

エヂ・モッタ:マーヴィン・スミッティ・スミスの精密さだね。彼のドラムはどんな機械よりも正確なんだ。いつもはリズム・トラックに後からコンピューターで何らかのエディットを加えるんだけど、マーヴィンに関しては何も手を加えなかった。そんなのは初めての経験だったし、最近では滅多にないケースだよ。それに彼は、カマウと僕にとっての音楽監督のような立ち位置でもあったんだ。彼は収録曲のことをとてもよく理解していて、頭の中には明確な設計図が描かれていたよ。

--- 今回リズム・セクションを担ったのはどちらかといえばコンテンポラリー・ジャズ系のミュージシャンたちだと思うのですが、<SOUL GATE>の方にソウル寄りのミュージシャンを呼ばなかった理由は?

エヂ・モッタ:それはジャズが今回のアルバムの本筋だからだね。ソウル・ジャズやジャズ・ファンクに近い感覚とでも言えるかな。つまり純然たるトラディショナル・ソウル作品ではないということさ。もちろんそういう音楽も大好きだけどね。

--- 4ビート・ジャズに本格的に取り組んだのはコレが初めて?

エヂ・モッタ:『Dwitza』(02年)や『Aystelum』(05年)はジャズに強い影響を受けた作品と言えるけど、『Dwitza』は少し微妙な感じで、ジャズ系のサウンドトラックみたいな取り上げ方。でも『Aystelum』ではジャズ色を強く打ち出す曲を書いて、2 ドラム/2 ベースによるコルトレーン・スタイルのオーケストレイションを採用したんだ。

--- ジャズとの出会いとその後を教えて下さい。

エヂ・モッタ: 80年代初めにアントニオーニ監督の映画『欲望(Blow Up)』(66年作品)を観に行ったのがキッカケだったと思う。ロウ・ティーンの頃からジェフ・ベックやレッド・ツェッペリンの大ファンだったから、そこに出演したヤードバーズを観るのが目的だった。ところがハービー・ハンコックのサウンドトラックに打ちのめされてしまったんだ。それ以来、オルガン・ジャズを探すようになった。コレクションに加わった最初のジャズ・アーティストは、ジミー・スミスだったよ。それからチャールズ・カイナード、ラリー・ヤング、シャーリー・スコットなどを買い集めた。スティーヴ・ウィンウッドがいたスペンサー・デイヴィス・グループやトラフィックも、コルトレーンやマイルス(デイヴィス)への近道になったね。それでもスティーリー・ダンやドナルド・フェイゲンが私をジャズに没入させたのは明らかだよ。おかげで今では、世界中のマニアックなジャズ・レコードを集めなくちゃ! という強迫観念に駆られるようになっちゃった。現に日本のジャズ・レコードは私のコレクションでも重要な存在になっていて、日野皓正、板橋文夫、森山威男、三木敏悟など、大好きな作品がたくさんある。クラシックなアルバムなら、松本浩&市川秀男『メガロポリス』(69年)、レジェンダリーなドラマー:白木秀雄の『祭りの幻想(In Fiesta)』(61年)なんて最高だね。

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--- すべての曲がお気に入りだとは思いますが、新作の中から特に気に入っている曲を選ぶとしたら?

エヂ・モッタ:「Captain’s Refusal」が特に気に入っているよ。この曲の歌詞はプロコル・ハルムの『A Salty Dog』(69年)からの影響をしたためたものなんだ。あと「Forgotten Nickname」も好きだね。この曲は『AOR』ツアーの時に私のソロ・コーナーで披露していた曲で、実にダニー・ハサウェイ的な深く悲しい響きをもった歌だよ。

--- 最後に、アルバムタイトルの『Perpetual Gateways』にはどんな想いをこめましたか?

エヂ・モッタ:人生におけるチャンスのようなもの。永遠に開かれたいくつかのドア。アーウィン・アレンのサイエンス・フィクション『Lost In Space』(=宇宙家族ロビンソン)のエピソードのようでもあるかな。 2015年は私と姉にとってとても悲しい年で、母を亡くし、父もまた終末期を迎えている状況なんだ。だから“perpetual”(永遠の/絶え間ない)というのは、私の両親に手向けたLoveを示す言葉でもあるんだよ。

商品情報


エヂ・モッタ/パーペチュアル・ゲートウェイズ
PCD-24471
2016/2/3 日本先行発売
定価:¥2,400+税
ブラジルが世界に誇るグルーヴ・マスター=エヂ・モッタ。特大ヒットの名盤『AOR』の続編とも言うべき 洒脱極まるニュー・アルバムがついに完成。パトリース・ラッシェン、ヒューバート・ロウズ、グレッグ・フィリンゲインズなど今回も超豪華ミュージシャンが参加。プロデュースはグレゴリー・ポーターを手掛けたカマウ・ケニヤッタ。

[収録曲]
SOUL GATE
1. Captain’s Refusal
2. Hypochondriac’s Fun
3. Good Intentions
4. Reader’s Choice
5. Heritage Deja vu
JAZZ GATE
6. Forgotten Nickname
7. The Owner
8. A Town In Flames
9. I Remember Julie
10. Overblown Overweight
11. Forgotten Nickname (alternate flute solo)

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Perpetual Gateways

CD

Perpetual Gateways

Ed Motta

価格(税込) : ¥2,592

まとめ買い価格(税込) : ¥2,203

会員価格(税込) : ¥2,385

発売日: 2016年02月03日



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発行年月: 2013年10月

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