SIGH 川嶋未来コラム 2016

2016年01月05日 (火) 15:30

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ローチケHMV - ヘヴィーメタル

 新しい年が明け、いまだ正月気分も抜けない人も多いかもしれない。しかしメタル・ファンには早速今週末、2016年最強のイベントの一つが待ち構えている。そう、Thrash Domination 2016だ!もはやメタル・ファンでこのスラッシュの祭典を知らない人はいないだろう。今回の出演はKreatorDestruction、そして何とあのDark Angel!(Death Angelではないですよ。間違いなくあのDark Angelのほう。)Thrash Domination、通称スラドミは、過去にもAgent SteelやArtilleryなど、よもや日本に来ることは無いだろうと皆が諦めていた名バンドを来日させてくれた実績がある。そして今回はついにDark Angelがやって来るのである!!

DARK ANGEL(現在)

 Dark Angelはアメリカ、ロサンゼルスのバンド。結成は1981年にまで遡る。当初はShellshockという名で活動していたが、83年にDark Angelに改名。80年代初頭のアメリカ西海岸というのはMetallicaやSlayerを筆頭に、スラッシュ・メタルが生まれ成長していった場所。そんな中でDark Angelも生まれ育った。そしてその他の多くの西海岸スラッシュ・メタル・バンドと同様、彼らもスラッシュ・メタルの栄枯盛衰そのものを生きた。

 彼らが残したスタジオ・アルバムはわずか4枚。ファースト・アルバム『We Have Arrived』がリリースされたのは85年。ExodusやPossessed、そしてMegadethもこの年デビューをしている。しかしこの『We Have Arrived』は、Dark Angelの歴史の中では番外編と言っても良いかもしれない。もっとストレートに言ってしまえば、あらゆる点において他のDark Angelの作品と比べると、そのクオリティは低いのだ。SlayerやMetallica、Megadethあたりからチョコチョコとアイデアを拝借し、未消化のまま提示したとでも言えば良いのだろうか。(タイトル曲の「Black Magic」度の高さは凄い!)ヴォーカリストのDon Dotyも時にTom Araya風、時にDave Mustaine風と未だ自身のスタイルを決めかねているのがアリアリとわかる。これによく『We Have Arrived』―意訳すれば「お待たせしました!」という感じだろうか―なんてタイトルつけたなあ、と思う。色々と厳しい言葉を並べたが、もちろんこれ、ダメ・スラッシュとして十分アリ。ただあくまでダメ・スラッシュとして評価をせざるをえない。まだこの時点ではDark AngelはDark Angelとは言えないのだ。あの人がいなければ、Dark AngelはDark Angelではないのである。

DARK ANGEL(1986)

 『We Have Arrived』レコーディング直後、Dark Angelに一大転機が訪れる。Gene Hoglanの加入だ。Death、Testament、Devin Townsendなど、様々なバンド・プロジェクトで活躍する、今ではエクストリーム・メタル界を代表するドラマー、あのGene Hoglanである!ファースト・アルバムのリリースから約1年半後、86年11月に発表された『Darkness Descends』は、そのスピード、パワーで多くのスラッシュ・ファンの度肝を抜いた。これが本当に『We Have Arrived』をリリースしたあのバンドなのか。ドラムが変わるだけで、ここまで進化するものなのか。特に「The Burning of Sodom」冒頭のドラミングに驚いた人も少なくなかっただろう。Geneのドラムは速いのはもちろん、パワー(通常スピードが上がればパワーも下がるものである)、さらには正確性まで兼ね備えていたのである。変わったのはドラムだけではない。ヴォーカルからも迷いは消え、リフにもオリジナリティが宿っている。これ程疾走感を持ち、気分を高揚させるアルバムというのはそうそうない。やたら速いアルバムにありがちな、「速いけど全曲同じだよね」感もない。速さに反比例してリフが単純化してしまうこともない。この『Darkness Descends』、Dark Angelの最高傑作、それどころかスラッシュ・メタルの理想型の一つ、100点、パーフェクト、スラッシュ史上に残る金字塔である。(Rateyourmusicあたりを見ても、この作品のレビュー数・評価は他のDark Angel作品を圧倒している。)だが信じられないことに、これ程の名作をもってしても、Dark AngelはBIG 4のような商業的成功を掴むことはできなかった。世の中どうかしている。もちろん『Darkness Descends』は、コアなスラッシュ・メタル・ファンには絶賛された。だが、商業的成功を収める、つまりライトな層まで取り込むには、このアルバムはあまりに速く、激しすぎ、そしてイーヴルすぎたのかもしれない。(当時セールス的には次の『Leave Scars』の方が成功したが、時の審判を経て現在評価されているのは『Darkness Descends』の方。こちらのExodusインタビューの後書きも参照のこと。)そしてもう一つ、85年、86年と連続してアルバムをリリースしたDark Angelだったが、次の『Leave Scars』発売が89年、つまり3年弱を要してしまっているのだ。スラッシュ・メタルというジャンルは、87年くらいをピークとし、その後明確に下り坂に突入していく。87年、せめて88年の早い時期に、サード・アルバムで畳み掛けていれば、とも思うのだが。

DARK ANGEL(1989)

 時間がかかってしまった理由は、おそらくメンバー・チェンジによるものだ。『Darkness Descends』リリース直前にベースが交代。さらに87年後半にはヴォーカリストDon Dotyを解雇、代わりにRon Rinehartが加入。80年代終わり〜90年代初頭、多くのスラッシュ・メタル・バンドが生き残りをかけて音楽性を変更し始めた。Dark Angelは、曲を長く複雑にすることに活路を見出そうとしたと思われる。『Darkness Descends』にも8分を超える大作が1曲ありその予兆はあったのだが、それが『Leave Scars』で一気に開花。9曲中5曲が7分超え、アルバム・トータルで50分超(46分テープに収まらない=プログレッシヴという当時の思想。こちらのSlayerのインタビュー後書きを参照のこと)。しかも「Cauterization」などは7分超えでインストですよ!(そりゃ「Orion」みたいな例もあるにはあるが、「Orion」はスラッシュというカテゴリーに入るかどうか微妙でしょう。その点「Cauterization」はスラッシュもスラッシュ、いつヴォーカルが入るんだろうと思って待っていると7分間インストのままという衝撃なのですから。)

 で、その長くて複雑な曲という思想が極北に達するのが4枚目、91年の『Time Does Not Heal』。このアルバム、リリース当時「9曲入り、67分、リフ246個!」というシールが貼られていた程だ。つまり1曲あたり平均8分弱、27リフという計算である。1曲8分というのが長いというのはわかる。しかし1曲27リフというのはどの程度のものなのだろう。一般的な楽曲が、イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、アウトロくらいで作られているとすると5パート。これと比較すると5〜6倍複雑ということだろうか。極端な例だと、Deathの「Evil Dead」などはリフ3つしかないので、これの9倍は複雑ということになる。まあこの246個というのが本気だったのかジョークだったのかは微妙なところであるのだが。そもそもどの単位をリフ1個とカウントするのか、Aの変形A'は別に数えるのか、など恣意的にどうにでもなってしまう。実際に『Time Does Not Heal』のリフをカウントしてみると良い。アルバム冒頭、アコギのイントロでいきなりつまずくこと必至である。

 92年、5thアルバムの製作途中に一旦解散してしまったDark Angelだが、2002年に復活。だがRon Rinehartにドクターストップがかかり、わずか数年で活動を再停止。そこからさらに10年以上が過ぎた2014年、ついに再再始動と相成ったのだ。だがこの再再始動、完全なフル稼働という訳ではない。やはりGeneが多忙ということもあるのだろう、2014年はフェスにいくつか出演、2015年に至ってはイギリスのBloodstock Open Airに出演したのみ。つまりDark Angel、本国アメリカですら見たくてもそう簡単に見られるものではないのだ。そんな彼らが日本にやって来る!しかも今年の彼らのライヴは、このスラドミのみという可能性もあるらしい!これ、見逃す訳にはいかないでしょう!!見逃したら一生後悔しますよ。果たしてどんなセットリストになるのか。ちなみに昨年のBloodstockでは8曲を演奏、うち4曲が『Darkness Descends』から、残り4曲は他の3枚から1-2曲ずつという配分になっている。

 Dark Angelだけでも大興奮なのに、Destruction、Kreatorまで見られるThrash Domination 2016。Kreatorは、初日と2日目セットリストを変えてくるとのことなので、両日ともに見逃せない。

■Thrash Domination 2016
2016年1月9日(土), 10日(日)【川崎】CLUB CITTA’
OPEN 15:00 / START 16:00
【出演】
KREATOR(クリエイター) /
DESTRUCTION(デストラクション) /
DARK ANGEL(ダーク・エンジェル)


そして大阪では、DestructionとKreatorの単独公演有り!何とDestructionは2時間を超えるセットリストを用意しているとのこと!

■DESTRUCTION (単独公演) (DAY-1)
2016年1月11日(祝・月)
【大阪】梅田Shangri-La
OPEN 16:00 / START 17:00


■KREATOR (単独公演) (DAY-2)
2016年1月12日(火)
【大阪】梅田CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 / START 19:00



 それでは皆さん会場でお会いしましょう。本年もよろしくお願い致します。

川嶋未来 / SIGH

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