【インタビュー】LACRIMOSA ティロ・ウルフ

2015年12月09日 (水) 17:00

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ローチケHMV - ヘヴィーメタル

 先日2度目の来日を果たしたLacrimosa。中心人物のTilo Wolffに話を聞いてみた。

川嶋未来(以下、Mirai)--- 日本は2度目ですか。印象はいかがでしょう。

Tilo Wolff(以下、Tilo):残念ながら今回はまだ何も見られていない(訳注:当日に台湾から到着、そのままライヴだった。)のだけど、前回来たときの印象としては、他の国と比べてすべてがとても綺麗で整然としていて、人々が皆とても礼儀正しいと感じた。礼儀が正しくてフレンドリーで、そこがとても気にった点だね。最高の印象を持ったよ。

Mirai---あなたはドイツ出身なのですよね。そして現在はスイスにお住まいと聞いていますが。

Tilo:そうだね、殆どスイスにいるよ。

Mirai---スイスに移られたのは何故なのですか。

Tilo:私は一年の殆どツアーに出ているので、そうでない時は誰も私を知らないところで過ごしたいんだ。

Mirai---プライヴェートな時間が持てるところということですね。

Tilo:そうなんだ。

Mirai---Lacrimosaの音楽というのは非常多様な要素が感じられ、大きく言ってゴシック・ロック、クラシック、へヴィ・メタルの3つの影響があると思うのですが。

Tilo:私はゴシック・ロックを聴くと、もっとハードなギターが欲しいと感じる。一方メタルを聴くと、もっとエモーションが欲しいと思うんだ。そしてクラシックを聴くと、やはりギターやドラムが欲しいと感じる。なので元々バンドを始めた動機というのは、これらの音楽をすべてを混ぜ合わせたバンドというのが見当たらなかったので、自分でやろうというものだったんだ。

Mirai---つまりあなたが聴きたいと思う音楽を、自分で作ってしまおうと思われたということでしょうか。

Tilo:正にその通り。

Mirai---具体的にはどのようなアーティスト、あるいは作曲家から影響が大きいのでしょう。

Tilo:クラシックで言えばMozart。メタルということであれば間違いなくMetallica。ゴシック・ロックではBauhausJoy Divisionといったルーツのバンドだね。

Mirai---Lacrimosaというバンド名は、やはりMozartの「Requiem」からとられたのですか。

Tilo:その通り。

Mirai---クラシック音楽の作曲については勉強をされたのですか。

Tilo:いや、一度もレッスンのようなものは受けたことはない。

Mirai---クラシック風のアレンジメントもご自分の方法でやられているのですね。

Tilo:そうだね、25年もこのバンドをやり続けているからね。

Mirai---Lacrimosaの音楽をどのように定義されますか。私は元々Lacrimosaを、いわゆるNeues Deutsche Todeskunstの流れで聴いたのですが。

Tilo:あれは元々ジャーナリストのジョークだったんだよ!元々80年代のドイツにはNeue Deutsche Welleというものがあって、これはNew German Waveというような意味なんだけど、大切なのは歌詞がドイツ語であるという点だったんだ。それ以前はドイツ語で歌っているアーティストというのは殆どいなかったからね。なのでLacrimosaや他のいくつかのバンドがドイツ語で歌い始めたときに、あるジャーナリストが、「これはゴシックのNeue Deutsche Welleだ!」ということで、冗談でNeues Deutsche Todeskunstと呼んだんだよ。当の本人たちは、誰も自分たちのやっていることがNeues Deutsche Todeskunstだなんて思っていなかった。私としてはLacrimosaは非常に多くの音楽を混ぜ合わせているけれども、「どんな音楽をやっているのですか?」と聞かれたら単に「クラシックの影響を受けたロック」と答えるようにしている。

Mirai---Metallica以外にも色々とへヴィ・メタルは聴かれるのでしょうか。

Tilo:特に90年代はデス・メタルが大好きで、GorefestParadise LostBenedictionとかね。今ハマっているのは、果たしてジャンル名があるのかわからないけど、Butcher BabiesIn This MomentArch Enemyのような女性ヴォーカルのエクストリーム系だね。

Mirai---エクストリーム・メタルもお好きなのですね。

Tilo:もちろんだよ。音楽はとにかくエクストリームでハードでディープでなければ面白くない。確かにLacrimosaがやっていることはもっとポップだけれども、私にとってはLacrimosaというのは非常にエクストリームな表現の方法なんだ。いわゆるエクストリーム・メタルとはジャンルが違うけれどね。私はただ耳を通過してしまうような音楽は好きではないんだ。

Mirai---ただのBGMでしかないような音楽ですね。

Tilo:そう。

Mirai---Lacrimosaはヨーロッパで非常に人気がありますが、それ以外でもメキシコや中国などにも多くのファンがいるとのことですが。

Tilo:そうなんだ。メキシコやその他のラテン・アメリカにもたくさんのファンがいる。


Mirai---ゴシックというのはラテン・アメリカで人気があるスタイルなのでしょうか。あまりイメージが結び付かないのですが。

Tilo:初めてメキシコでライヴをやった時、お客さんの女性たちはMegadethやMetallicaのTシャツを着て、でも顔はゴシックのメイクをしていたことを覚えているよ。おそらく彼女たちはどうすれば良くわからなくて、きっとダークなイメージのライヴだからこんな風にすれば良いのかなと、手探りだったんだと思う。あの時はまだゴシックのシーンというものはメキシコにはなかったんだろうね。おそらく今でもシーンと言える程のものはないと思うのだけど、Lacrimosaの音楽は非常にエモーショナルなので、その点をとても気に入ってくれているのだと思うよ。ラテン・アメリカというのは非常にエモーショナルな文化を持ったところだからね。

Mirai---中国はいかがでしょう。

Tilo:実を言うと、中国のファンが何故Lacrimosaを気に入ってくれているのか、いまだにわかっていないんだ。もしかすると、彼らは感情(エモーション)を表に出すということに慣れていないのかもしれない。それでLacrimosaのライヴで「もっと自分に素直になれ。」と言われると、それによって彼らの扉が開かれるというのかな。Lacrimosaのライヴは他のアーティストよりもエモーショナルな面が強いからね。

Mirai---なるほど。やはりヨーロッパのファンと、例えばメキシコのような国のファンとは違いますか。

Tilo:違うね。メキシコやロシア、Lacrimosaはロシアでも非常に人気があるのだけど、それらの国のファンにとってはLacrimosaがすべてなんだ。ヨーロッパでは、Lacrimosaは良いバンドだよね、でもあのバンドも良いし、このバンドも良いし、みたいな感じなんだ。数日前中国でのライヴだったのだけど、彼らもLacrimosaのロゴやTilo Wolffなんていうタトゥーを入れたり、メキシコのファンのように非常にエクストリームになってきているのを感じたよ。

Mirai---あなたはドイツ人ですが、ドイツ人であることがLacrimosaの音楽に影響していると思いますか。

Tilo:いや、思わない。唯一主にドイツ語で歌っているというだけで、これは自分の表現したいことをベストの方法で伝えるには母国語を使うのが一番であるからなんだ。音楽に関してはドイツ的な要素はないと思う。

Mirai---ドイツ人だと、クラシック音楽が生活の一部だと聞いたことがあります。例えばアメリカなどに住んでいると、クラシックに接する機会はずっと少なく、例えばMozartやBeethovenの有名な曲ですらまったく知らないという人が大勢いるとのことですが。

Tilo:言われてみればその通りだね。クラシック音楽が身近だというのがあまりに当たり前すぎて、そのことを考えもしなかったよ(笑)。ごめんごめん。

Mirai---お気に入りのアルバム3枚を教えてください。

Tilo:Metallicaの『Black Album』Pink Floyd『Final Cut』。それからこれはアルバムとは言えないけれども是非挙げたいのがMozart「Requiem」

Mirai---どの録音がお好きというのはありますか。

Tilo:Herbert Von Karajanだね。彼は2枚録音しているのだけど、76年のベルフィン・フィル(訳注:おそらく75年が正。商品はコチラ)が一番だよ。

Mirai---最近の若いバンドでお勧めはありますか。

Tilo:若いバンドか。最近新しいバンドというのは聴いていないんだよ。専ら古いものばかりで。若いバンドは全然わからない。もちろん音楽はたくさん聴いているのだけど、基本的にすでに馴染みのあるものばかりなんだ。このツアー中にMP3プレイヤーが壊れてしまったので、何枚かCDを買う必要があったのだけど、「これは良いだろうか?これはどうだろう?」という風ではなく、自分で気に入るであろうとわかっているアルバムを買ったんだ。Arch Enemyの新作とかね。

Mirai---ではシンパシーを感じるバンドというのはいますか。Lacrimosaというのは非常にユニークなバンドで、同じスタイルのバンドというのが他に見当たりませんが。

Tilo:そうだね、他のバンドのマネをするのではなく、自分たちのアプローチをしているバンド。80年代のゴシック・バンドは皆The Sisters of Mercyを聴いていただけではなくて、出してる音もThe Sisters of Mercyみたいだっただろう。あるいはFields of the Nephilim。自分たちのアプローチをしているバンドということであればVNV Nationだね。Lacrimosaとは全然違う音楽をやっていて、Lacrimosaのファンは彼らが大嫌いで、彼らのファンはLacrimosaが大嫌いなのだけど、私たちはとても仲が良いんだ(笑)。

Mirai---では最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします。

Tilo:日本に戻って来られてうれしいよ。インタビューの冒頭にも言った通り、今回はあまり時間がないのが残念だ。是非今回の来日が最後にならないようにしたいのだけど、そのためには君たちのサポートが必要なんだ。今日までサポートしてくれてどうもありがとう。また次回も会えることを期待しているよ。

取材協力:Evoken de Valhall Production
 実はこのインタビュー後の雑談でも、非常に面白い話があった。ご存じの通り、ヨーロッパには数えきれないほどのメタル・フェスティヴァルが存在するが、Lacrimosaはそれらには出演しないのかという話になったところ、「生粋のヘヴィ・メタル・ファンからのLacrimosaに対する反発は凄いんだよ!」と語り始めたTilo。彼はKreatorの1999年のアルバム『Endorama』にゲスト参加しているのだが、これはKreatorがゴシック化したという悪名高い作品だ。つまりTiloこそがKreatorをゴシックの世界に誘惑し、道を誤らせたA級戦犯と言うのが、ヨーロッパのスラッシュ・ファンやゴリゴリのメタル・ファンの認識なのだそうだ。80年代から活動しているスラッシュ・メタル・バンドが、スラッシュ・メタルが低迷していた80年代終わり〜90年代にかけて、今となっては気の迷いとしか思えないような迷作を産み出してしまうというのはそれ程珍しい現象ではなかった。その代表作がCeltic Frost『Cold Lake』だが、Celtic FrostにしてもKreatorにしても、迷作リリース→凄まじいファンの反発→原点回帰、という道を辿るのが一つのお約束となっていた。その後原点回帰をするからこそ、迷作はより迷作となり、一時の気の迷い感が倍増してしまうのだ。しかしTiloによれば、Kreatorのゴシック愛はそんな一時的なものではないのだそうだ。Mille Petrozzaは決してTiloに誘惑されたわけでもなく、以前からゴシック・ロックの大ファンであり、本来はゴシック路線を貫きたかったものの、あまりにファンからの反発が大きかったため、「やむを得ず」スラッシュに回帰をしたそうなのだ!にもかかわらず、Lacrimosaに対する反感はメタル・ファンのみならず、ジャーナリズムの世界にまで及んでいるらしい。以前Lacrimosaがドイツのメタル・フェスティヴァルのヘッドライナーを務めた際、大手ヘヴィ・メタル誌は大々的にそのフェスを記事にしているものの、Lacrimosaについては一言も触れられていないなどということもあったそうだ。


 これは私にとっては少々意外な告白であった。そもそも欧州においてゴシック・メタルというのは日本では想像もできないほど絶大な人気を誇っているものである、つまりゴシック・メタルはヘヴィ・メタルのむしろ本流に位置していると言っても良いのではないかと想像していたというのが理由の一つ。もう一つは、私が初めてLacrimosaというユニットの存在を認識した経緯による。90年代の半ば頃、ブラック・メタル界隈で世界的にLacrimosaやDas IchGoethe's ErbenRelatives MenschseinといったNeue Deutsche Todeskunst(New German Death Art)と称されるジャンルが注目されたのだ。(当時はNeue Deutsche Todeskunstなどという言葉は知らなくて、単にドイツのDarkwaveと呼んでいたが。)詳細は忘れてしまったが、私も誰かノルウェーあたりのミュージシャンから、このジャンルについて聞かされたのだったと思う。シンセサイザーを多用し暗い世界を表現するという点において、ブラック・メタルとこれらのバンド/ユニットは確実に親和性があったのだ。なのでLacrimosaもエクストリーム・メタル・ファンからの支持も厚いのかと思っていたのだが、世の中そう単純ではないらしい。ちなみにTilo自身は、当時ブラック・メタル・バンドから注目を浴びていたということはまったく知らなかったとのこと。しかし「Neue Deutsche Todeskunstなんてジョークだ。」という発言も、今回のステージを見れば納得。確かに死のアートなどという側面は、一切感じさせない2時間のステージであった。

 それにしてもエクストリーム・メタルと言って一番に名前を挙げるバンドがGorefestBenedictionって渋すぎると思うのですが。

Mirai & Tilo

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