【インタビュー】 今泉総之輔 『凛』

2015年08月21日 (金) 16:00

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クオシモードのメンバーとして、またジャズ・ドラマーとして活躍する今泉総之輔が、9月9日に自身初となるリーダー・アルバムをリリースする。そんな彼と、本アルバムにベーシストとして参加している、同じくクオシモードの須長和広氏にも同席してもらい、本作について、また今泉自身の音楽的なルーツについても聞いてみた。

ジャズのスタンダードもヒップホップも、僕の中で同列に存在しているんです。やはりこの辺りが僕らの世代観だと思う


--- まず、今泉さんの音楽体験から、プロ・ミュージシャンとして活躍するまでの事をお聞かせ下さい。

今泉(以下、I):元々スケーターだったんです。中学生の頃にスケーターのビデオを良く観ていたんだけど、そこで流れている音楽がヒップホップで、CasualとかSouls Of Mischief、Pharcydeとかが流れてて、そこからガッツリヒップホップにハマっていきました。高校に入ると、DJセットも揃えて、レコードもかなり買っていましたね。ラップもやってて、ライムもたくさん書いたし、地元のクラブのパーティでラッパーとして出演したりしていました。ちょうど93年くらいから96年くらいだったかな。

--- 時期的に日本のヒップホップが大きく盛り上がっていた頃ですね。

I : そうです。ただ、その時はラッパーで身を立てようとか、そうは思っていなかったけど楽しかった、特にライヴが楽しい、という経験をしたのは、大きかったですね。

--- ではひたすらヒップホップを聴いていたんですか?また、影響を受けたアーティストは?

I : ヒップホップって、いろんなジャンルの音楽をサンプリングしてたりするじゃないですか。なので、ヒップホップのサンプリング・ネタを通じてジャズやソウルも聴くようになりましたね。そんな中でデビューしたてのThe Rootsの音に出会い、クエスト・ラヴのサウンドに衝撃を受けて、友人が持っていたドラムセットを借りて、自宅で練習し始めました。勿論The Rootsのコピーから。今考えるとかなり難しい事してましたね(笑)なので、クエスト・ラヴには大きな影響を受けましたね。

--- それでドラマーになろうと?

I : いや、まだその頃はプロのドラマーを志した訳ではなく、ただなんとなくやっていた。高校を卒業して、美大に進みたくて、上京して美大の予備校に通い始めたんだけど、ある日たまたま池袋の公園で遭遇したジャズのライヴ、特にそのドラムに、またまた衝撃を受けたんです。それからそのドラマーの出演するライヴに通うようになりました。そうこうしているうちにジャズ・ドラマーになる決心がついた。ただ、その頃の僕はまだまだ経験も練習量も足りなかったので、予備校を辞めて地元の青森に戻りました。実家の家業を手伝いながら、毎日練習に明け暮れる日々が始まりました。19歳くらいから、だいたい5-6年くらいかな。
そうこうしているうちに、地元の年配ジャズメンに出会い、その人のバンドに参加させてもらって、毎週末ライヴをやっていましたね、その頃の体験は大きかった。 そんな生活を しているときに、地元に石井彰さんのトリオが来たんだけど、ファンだったドラムの江藤良人さんが一緒だったんです。その日の打ち上げに参加させてもらったんだけど、その時に「お前、そんなにプロのドラマーになりたいんだったら、すぐに東京に出て来て江藤に弟子入りしなよ」と言われて、当時江藤さんは弟子を取っていなかったんだけど、その場でいきなりドラムを叩かせられました、全然下手だったけどラッキーなことに弟子入りさせてもらえました。その翌日からのツアーに運転手兼ボーヤとして、東北ツアーにご一緒させてもらい、ツアー終了して1週間後には、東京に引越しました、25歳の終わり頃かな。

--- 早い展開ですね、それからは東京で?

I : そうです、江藤さんに師事しながら、少しずつですが、演奏する機会も増えて行きましたね。それから1年半くらいした頃に、メジャー系ポップ・アーティストのツアーの話なんかも貰えるようになり、河口恭吾さんなどのツアーに参加するようになりましたね。その辺りからようやく演奏で食べて行けるようになった。

--- ボーヤを続けながら、個人の仕事も増えて行ったんですね。

I : そうですね、ただ、僕の仕事が増えたのも、師匠のサポートが大きかったと思います。それで27歳くらいのときに師匠から「もう大丈夫だな、しっかり頑張れよ」と言って頂き、ボーヤを卒業しました。それからはセッションドラマーとしてポップスの仕事もやりつつ、でもやっぱりジャズの現場はずっと立ち続けていましたね。そこはどんなに忙しくても外さなかった。そして30歳くらいの頃にquasimodeから声を掛けられて、メンバーとしてバンドに合流しました。

--- quasimodeでの活動はどうでしたか?

I : いろんな意味で良い経験をしましたね。特にメンバーになってから曲作りをするようになったのは大きい。それまでは自分で作曲とかしていなかったので、quasimodeと合流しなければ、今回のアルバムも生まれなかったかも知れない。quasimodeに入る前はパソコンすら持っていなかったし(笑)

--- 曲作りはどのように?

I : Apple MacBook Proと、Logicという音楽ソフト、それにMIDIキーボードで作っています。コードの勉強もして、でも僕はメロディを先に作る事が多いかな。それからコードを付けて、譜面を起こして、、出来るだけ具体的に譜面に書いて、メンバーに渡していますね。

須長和広(以下、S) : かなりしっかりしたメロ譜とコード譜を用意してくれますよ。ベースラインも具体的なイメージを伝えてくる事が多いですね、とても丁寧だなと、いつも感心しています。

--- 今回のアルバムを作ったきっかけは?

I : quasimodeとしての活動と同時に、以前からのジャズクラブでの演奏も並行してやっていたんですが、やはりquasimodeのお客さんは若い人が多い印象があったんです。quasimodeの音楽は基本ダンサブルなナンバーが並び、それがバンドとしての魅力でもあるんだけど、quasimodeに来てくれる若い人たちにも、所謂リアルジャズの楽しさを伝えたい、という思いがありました。実際に、自分のトリオを作って、コンスタントにライヴ活動をしようと思い、その時にカズ(須長和広)を誘いました。

S : そうちゃん(今泉総之輔)がquasimodeに合流して、だいたい1年くらいした頃に誘われましたね。ちょうど僕ももっと上達したい意欲も強かったし、誘ってもらって嬉しかったし、実際に良い経験になっていますね、そうちゃんの愛を感じました(笑)

I : そこでのライヴ活動のメンバーが、今回の3人です。収録されている楽曲も、実際にライヴで演奏して来た楽曲ですね。一方、ピアノの田村君は28歳の頃に対バンで初めて彼のプレイを聴いて、凄く感動したんですね。それで僕から声をかけて、そしたら同じ年齢だという事が分かったりして、急速に仲良くなりました。彼はまさにストレートアヘッドなジャズ・ミュージシャンで、それからずっと一緒にやっていますね。

--- それでは収録されている各楽曲についてお聞かせ下さい。まずはピアノトリオで演奏した曲から、1曲目のNag Champa、これタイトルはどういう意味ですか?

I : これはインドのサイババがプロデュースしたお香の名前なんですけど、この香りが大好きなんですね。実はこの曲、僕が初めて作曲した曲で、出来上がった時の達成感が、大好きなNag Chanpaのお香の香りのように心地よくて、それでこのタイトルになりました。

--- 2曲のFair Weatherと11曲目のSoonはカバーですね。

I : 僕はジャズをやる上でスタンダードを演奏するということは、とても重要な事だと考えています。僕自身、沢山のスタンダードを演奏する事で、いろんな経験を積むことが出来たし、単純に好きな楽曲も多いです。特に今回収録した2曲はその中でもとても大好きな2曲です。Fair Weatherは、元々は2管の楽曲なんだけど、これをピアノトリオでアレンジしたヴァージョンを楽しんでもらえれば。

--- 4曲のPink Tubは?

I : これはわりと可愛らしい楽曲になったので、ピンクという言葉を使いたいなぁと思ったんですね。それで実家のバスタブがピンクだったのを思い出して、、わりとこんな感じで曲名を付ける事が多いかな、重たく考えるよりも、漠然としたイメージで付けますね。

--- 6曲目の1993 Misawa Air Baseと7曲目のHip Hop Medleyが続きますが、これらは、少年時代のことをイメージしているのですか?

I : そうですね、この6曲目はかなりヒップホップ・フィールを意識した楽曲で、少年時代にハマったヒップホップへのオマージュですね。特に1993年頃のそれは、自分にとってかなり重要な年代です。僕はジャズ・ドラマーですけど、完全に音楽のベースにはヒップホップがしっかり根付いているんです。僕、というより僕ら世代にはそういう感覚、多いと思うんですけどね。7曲目のメドレーは、NasのCarry On TraditionからSiennaのEach And Every Thursdayへと続くメドレーなんですが、これも自分自身のルーツを表現しています。この原曲のループ感が大好きで。ライヴでも凄く盛り上がる曲ですね。

--- 須長さんはヒップホップは聴いてましたか。

S : 僕はあまりしっかり聴いては来なかったんですけど、それでもThe RootsとかPete Rock、Erykah BaduとかD’angeloなんかは良く聴いてましたね。僕はヒップホップのリズムに、生演奏が乗っているのとかが好きですね。

--- この2曲に関して、今泉さんからベースラインへのオーダーはありましたか?

S : 僕も好きなベーシストの一人なんですけど、D’angeloとかのライヴでも演奏しているPino Palladinoをイメージ演奏して欲しいと言われましたね、彼はエレクトリック・ベースで、こちらはウッドですけど(笑)

I : カズが元からPinoの事が好きだというのを知っていたので、共通のイメージを持ちやすかったですね、カズは本当に上手いしね。

--- 9曲目のYou So Kindは?

I : 80年代後半から提唱された、ニューヨークのM-Baseというジャズの理論があって、そこにはカサンドラ・ウイルソンやグレッグ・オズビーとかが名を連ねているんだけど、彼らにも凄くヒップホップの匂いを感じ取ることが出来て、その雰囲気を出したいなと思って、且つスイングしている曲を作りたくて作った曲です。タイトルも「あなたはとてもヒドい人なんだけど、優しい人ね」というような皮肉を込めて付けました。

--- 13曲目のBlack Folkは、最後に持ってくるのに相応しい曲だと感じました。

I : 僕はスローなテンポの8ビートが大好きで、それをやりたくて書いた曲です。 でもハーモニーにひと癖あって、フォーキーなんだけどローカルじゃなくて、ブラックとフォークを掛け合わせたタイトルにしましたね。  

--- 須長さんに質問です。今回アルバムに参加した感想などありますか?

S : どの曲もライヴで良く演奏している楽曲なので、録音でも普段通りに臨みましたね。ただ、ライヴだとどうしてもソロ・ワークが長くなってしまうんだけど、そこは割とコンパクトにまとめよう、という意識はしましたね。

--- それでは、ピアノトリオ以外の、BLAHMUZIKさんと作った楽曲群についてお聞かせ下さい。今回、ピアノトリオだけではなく。サンプラーとのセッションを入れた意図は?

I : やはり僕自身、先にも触れている通り、ヒップホップの影響をとても受けていて、そんな僕が作るアルバムなので、普通にピアノトリオだけで作るんだったら、僕じゃなくても良いのかなと、自分らしさをしっかり出したかった。そこは自分のリーダー・アルバムなので、実現出来ましたね。 ヒップホップのアルバムによくあるスキットの手法を用いて、BLAHMUZIK君と作りましたね。

--- BLAHMUZIKさんとは?

I : 元々サンプラーの音が大好きで、26-7歳くらいの頃に、知り合いから紹介してもらって知り合ったのがBLAHMUZIK君です。池袋のBedというクラブでのライヴを観て、一緒にやろうよと誘いました。以来今でもコンスタントにライヴをやっています。ただ、現在彼が東京を離れたので、今は2-3ヶ月に1度くらいのペースですね。

--- レコーディングは?

I : エンジニアさんにレコーダーを回しっぱなしにしてもらって、沢山のテイクを録りましたね。実際使われているのはトータルで10分にも満たないですが、録ったテイクは合計4時間くらい録りました。

--- ぱっと聴いたところ、ピアノトリオとサンプラーとの楽曲はかなり違いがあるように感じますが、聴き進んで行くうちに、良い案配で同居していると感じました。

I : 90年代前半のジャジーなヒップホップが青春のど真ん中にあった世代を代弁したかった。そのフィーリングは反映したかったし、僕にとってはとても自然に同居してて、特にドラミングに関してはジャズのスタンダードもヒップホップも、僕の中で同列に存在しているんです。やはりこの辺りが僕らの世代観だったりすると思うんですね。日本国内ではまだそれほどでもないけど、海外だとロバート・グラスパーなど、ジャズとヒップホップが互いに共鳴し合っている、それが僕らの世代なんだと思います。それをリスナーにも問いかけたい、という気持ちは強くありますね。

--- なるほど、良く理解出来ました。今回のレコーディング全般で気をつけた部分は?

I : やはりサウンドにはかなり気を使いました。あざとくならず、生々しさを大事にしましたね。なので、マイキングには結構時間を掛けました。僕は、ぱっと聴いた時にキャッチーなサウンドの作品は、何故か繰り返し聴かないんですね。だからそうならないように気をつけましたね。

--- アルバム・リリースに合わせて、ライヴも決定しましたね。

I : 10月下旬にCotton Clubでやります。その箱は僕自身とても大好きな会場で、良くライヴを聴きに行く箱です。今回そこでライヴをやらせて頂けるのはとても嬉しいし、今からかなり気合いが入っています。BLAHMUZIK君は参加しませんが、レコーディングと同じメンバーでやるので、是非楽しんで頂けたらと思います。

10.20.tue アルバム『凛』発売記念ライヴ / Cotton Club 詳細はこちら

--- ファンの皆さんが気になることとして、今後quasimodeが再始動するのは?

I : 今年の2月に活動休止をして、僕も自分の作品をこうしてリリースしたり、カズも同じ日にソロ・アルバムをリリースするし、平戸さんも春に出したし、マッツさんもTres-Menでの活動をしています。現在はそれぞれ個人の活動を充実させる時期だと感じているので、現段階で具体的な話は、まだしていないですね。時期がくれば4人で話し合って再始動すると思いますが、それがいつなのかは、僕にも分かりません。恐らくもう少し先になるのではないでしょうか。

--- 最後になりますが、リスナーの方々へメッセージをお願いします。

I : 今回のアルバムは、僕の考えるリアル・ジャズだし、その中でのグルーヴをとても重視したアルバムです。普段ライヴハウスに足を運んでくれる方は勿論ですが、quasimodeを応援してくれる方々にも、是非とも聴いてもらいたいですね。 決してマニアックな内容のアルバムではないし、きっと楽しんで頂けると思います。

S : このアルバムは、そうちゃんらしさがとても良く出ている作品だと思います。 僕自身この作品に関われてとても楽しかったし、これからも一緒に音を出したいと思います。多くの音楽ファンに楽しんでもらえると嬉しいですね。

quasimodeのドラマー、今泉総之輔によるリアルジャズ

待望の初リーダー・アルバム

凛

CD

今泉総之輔

価格(税込) : ¥2,484

会員価格(税込) : ¥1,242

発売日: 2015年09月09日

【HMV限定特典】 Trio Of quasimode ライヴ音源CDR(HMVヴァージョン)


9月9日に発売される今泉総之輔1st ソロ・アルバム 『凛』をHMV 各店舗及びオンラインストアでご予約・ご購入された方を対象に、正規音源リリースが存在しない、Trio Of quasimode(平戸祐介、須長和広、今泉総之輔)のライヴ音源をプレゼント致します! 特典の数には限りがございますので、ご了承ください。

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