HMVインタビュー:As One (Kirk Degiorgio)

2006年12月11日 (月)

☆『Planetary Folklore 2』発売記念インタビュー!



Carl CraigIan O'Brienらと共鳴するように、デトロイトテクノをルーツとし、そこにジャズの要素を色濃く表現するサウンドを推し進めてきたAs OneことKirk Degiorgio

そのAs Oneの最新アルバムは、彼のなかでも最高傑作との呼び声高い1997年に<Mo Wax>からリリースした名作『Planetary Folklore』から10年経った今、待望の続編『Planetary Folklore 2』

そして、そのタイミングでKirk Degiorgioにインタビューさせて頂きました!

影響を受けたアルバム、よく聴いているアルバム等、作品のことに限らずいろいろ教えて頂いたので、とても濃い内容になっています!なのでじっくりお楽しみください!




 


Interview with Kirk Degiorgio(As One)


まず、1997年に<Mo Wax>よりリリースされた『Planetary Folklore』はここ日本でもあなたの知名度を飛躍的に上げた傑作だったと思いますが、あなたにとって当時『Planetary Folklore』をリリースすることで何か変化したことはありましたか?ご自身では『Planetary Folklore』をどう評価しますか?

Kirk Degiorgio(以下:K):アルバム『Planetary Folklore』は私の最初のメジャーレーベルからのリリース作品でした。この作品で私はいつもの作品よりも多くの予算を制作に使う事が出来てさまざまな試みを行う事が出来たと思っています。数々のアナログシンセを使い、いつも以上に豊富なセッション・ミュージシャンをフューチャーする事が出来ました。私はこの作品の特にドラムプログラミングについてとても良い物が出来たと誇りに思っています。


As One
『Planetary Folklore』

上記で触れている、1997年に<Mo Wax>からリリースされたアルバム。
※現在は廃盤で入手不可です。


その傑作『Planetary Folklore』から10年間の間に様々なレーベルから素晴らしい作品を作られていますが、なぜ今このタイミングで『Planetary Folklore U』をリリースすることになったか、その経緯を教えて頂けますでしょうか?あなたにとってこのタイトルを冠することに特別な意味はありますか?

K:アルバムをリリースして10年を経た今、この作品の続編にトライしようと思いました。リリース当時の1997年以来、テクノロジーはかなり発展しています。今回私はこの作品で、自分自身のプロダクションが私の使用しているテクノロジーの発展に対してどの程度進化したかを見つめる事が出来ましたが、同時にまだ最初の作品をリリースした時に用いた生の要素が今回の作品にも反映された事は自分を見つめる面白い発見でした。


『Planetary Folklore』はデトロイトテクノの新たな形とでも言うべきな、より「ジャズやソウル」にクローズアップした作品だったと思うのですが、そこは何かあなたのバックグラウンドが影響しているような気がしたのですがいかがでしょうか?それを通過して辿り着いた今作はあなた自身何かテーマを持って制作されたのですか?

K:今回の作品のテーマは前作同様、ドラムブレイクを緻密に構築する事からスタートしました。今回、私はサンプリングしたドラムサンプルを細かく刻んでいくというこれまでの作業方法よりも私自身のドラムセッションを録音した物を今回多く用いました。従ってこれまでの作品よりも”私自身”をこの作品により多く投影出来たと思っています。今回の作品はビートレストラックのM-3「Germanium」の様にデトロイトテクノに非常に影響されたサウンドを取り入れた作品もあります。又、私はオーケストレーションとそのアレンジに関しても深く勉強をしているので、ブラスやストリングスをフューチャーしたトラックは今回の作品で更に進化を遂げたと思います。





As One 
 『Planetary Folklore 2』

01.Blueshift
02.Seyfert's Sextet
03.Germanium
04.It's All Turning Blue
05.Irradiant
06.To See With Your Eyes
07.I Used To Live Here
08.Pastorale

Bonus Track For Japan Only
09.Interrupt





やはりあなたは「デトロイトテクノ」を通過したアーティストのように感じるのですが、あなたにとって「デトロイトテクノ」とは?それとヨーロッパとデトロイトにおけるクラブミュージックの違いをあなたはどう考えますか?

K:デトロイトテクノはテクノロジーの新しくユニークな使用方法でエモーショナルなエレクトロニックサウンドを構築する事に成功しました。デトロイトテクノは私にとってクラブミュージックであると同時にリスニングミュージックとしても興味深いサウンドなのです。ヨーロッパのテクノサウンドはデトロイトテクノよりもハードなサウンドでエモーショナルな感覚がデトロイト産のテクノミュージックよりも希薄な気がします。デトロイトテクノが何故その様なサウンドになったのか?恐らくそれはデトロイトテクノの歴史がデトロイトのソウルやジャズの歴史とリンクしているからだと思います。


その観点であなたの音楽をあなた自身はどう捉えていますか?

K:私は私のサウンドのルーツとして、ソウル、ジャズ、ファンク、エレクトロ等々のアメリカで作られたブラックミュージックがある事を強く意識しています。私はこれらの音楽ばかりを聴きながら育ちました。デトロイトテクノと私のサウンドの類似性は共通のルーツミュージック持ってエレクトロニクスサウンドに投影しているからかもしれませんね。


アーティストとしてのキャリアに影響を与えた3枚のアルバムをあげていただくことは出来ますでしょうか?可能であれば、それに対してのコメントもお願いいたします。

1.Steely Dan 『Aja.』

K:この作品は70年代のアナログサウンドの頂点を極めたプロダクションだと思います。ミュージシャンシップが素晴らしく、楽曲も非常に高度な作品ですが非常にキャッチーなアルバムです。

2.Joni Mitchell 『For The Roses』

K:この作品はSteely Danとは反対にプロダクションは非常にシンプルで歌、ヒューマンボイスが際立つ作品になっています。このアルバムは私にとってリリカルなマスターピース作品です。

3.Miles Davis 『In A Silent Way』

K:美しく暖かいサウンドに満ちた抑制に基づく最上級の作品。エレクトリックピアノとテープエディットのテクノロジーを用いた革新的な作品だと思います。



上記とはまた別に、最近好んで聴いている3枚のアルバムをあげて頂けますか?こちらも可能でしたらコメントもお願いいたします。

1.The Beatles 『Abbey Road』

K:現在ビートルズの当時のレコーディングに関する書籍「Recording The Beatles」(www.recordingthebeatles.com)を読んでいる最中で、再びこの作品を聴いています。私は <Peacefrog>のBeauty Roomのプロジェクトで幸運にもビートルズと同じアビーロードスタジオでオーケストラのパートを録音して、彼等と同じコンソールを使用する事が出来た事を嬉しく思ってます。

2.Beach Boys 『Pet Sounds - 40th Anniversary Edition』

K:40周年記念盤としてリマスターされたこの作品を最近再び購入しました。この作品は本当に美しい作品で、同時にBrian Wilsonのさまざまな実験的な試みが行われた非常に素晴らしい作品だと思います。

3.Herbie Hancock 『Crossings』

K:これからUKの<Waner>からリリースされる彼の1969年〜1972年の作品を収録したボックスセットでライナーノーツの執筆を現在依頼されていて、再度このアルバムを注意深く聴き直しています。このアルバムは私の大好きなアルバムで Patrick Gleeson博士による素晴らしいシンセのプログラミングがフューチャーされています。



話は今作と離れますが、前述の『Planetary Folklore』を発表する以前に<New Electronica>、<Clear>レーベルから発表した3作を、日本では来年クラブミュージック/エレクトロニカの名盤再発企画 [Elactric Soul Classics]として 再発されることになりましたが、それについてあなたは何を思いますか?RockやJazzの名盤と同様に、現在日本ではHiphopやClub Musicにおける過去の名作を再発する動きが非常に増えているのですが、この動きをあなたはどう思いますか?

K:私は今回の日本での私の作品の復刻をとても誇りに思います。近年の音楽作品の多くが以前よりも楽しまれるタームが短くなっている(音楽の消費サイクルが短くなっている)この時代に、私の昔の作品が新しいリスナーに手にとって貰える事はとても嬉しいです。近年のデジタルリマスター技術は年々向上しているので(私もよく古い作品のデジタルリマスター作品を購入しています。)、今回のCD再発はオリジナルがリリースされた時よりも音質が向上してリスナーにとって新しい発見があると思っています。




☆再発企画[Electric Soul Classics] As One再発アイテム! 



左から 
1.As One 1997年作品 『In With Their Arps, And Moogs, And Jazz, And Things』 2007年1月11日発売
2.As One 1995年作品 『Celestial Soul』 2007年7月4日発売
3.As One 1994年作品 『Reflections』 2007年10月3日発売予定 ※予約を受け付けておりません。



>クラブミュージック/エレクトロニカの名盤再発企画 [Electric Soul Classics] !




あなたの廃盤になってしまった過去の作品を日本人は時代を超えて味わえるわけですが、今作と共に再発される3タイトルについて何かコメントを頂けますでしょうか?

K:私はこれらの作品も含む全ての作品で広範囲のジャンルとスタイルを横断しながらユニークな独自のエレクトロニクスサウンドを探求しています。それをもしリスナーがこれらのアルバムで”発見”してくれたらとても嬉しいです。それが何かを自分で的確に表現する事は難しいのですが、このユニークなサウンドが、私自身が音楽の本質を探究する上でいつも大切にしている事です。


今後の予定やリリースについて教えていただけますか?

K:現在<Freerange>からリリース予定のニューシングルを制作しています。そして長年構想していたAs Oneのバンドスタイルでのライヴを実現したいと思っています。そして前述のSpiralからリリースされる3枚のアルバムの復刻作品がリリースされます。今回の新作と復刻作品のプロモーションで春頃に日本を訪れたいと思います。あと、Beauty Roomの次作にとりかかる予定です。


ありがとうございました!



協力:ULTRA-VYBE,INC




☆Kirk Degiorgio 関連作品 



左から 1.As One名義 2001年作品 『21st Century Soul』/2.As One名義 2003年のベスト盤 『So Far (So Good)』/3.As One名義 2004年作品 『Out Of The Darkness』/4.As One名義 2005年作品 『Elegant Systems』




左から 1.Offworld名義 2001年作品 『Two Worlds』/2.Kirkが編纂したコンピレーション 2005年作品 『Electric Institute』/3.Beauty Room名義 2006年作品 『Beauty Room』



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