Pat Metheny Group本年度DVD最高傑作

2006年10月13日 (金)

Pat Metheny始め７人のメンバーが最高の技術とアンサンブル、そしてパフォーマンスをもって体現した『The Way Up Live』は壮大なスケールを放つ映像作品。PMGの集大成がここに存在する。

グループ結成時から、僕たちは挑戦を続けている。いつも可能性と豊富なアイデアにあふれ、新しいものを探求することに喜びを見い出してきた。
『ザ・ウェイ・アップ』は、これまで作ってきた音楽の集大成と言えるだろう。
2004年に録音したこのアルバムは僕たちにとって画期的な作品で、製作後6ヶ月に及ぶ世界ツアーに出たんだ。観客の前で演奏したことがさらに深く作品見つめ直す機会を与えてくれたよ。この映像は、韓国のソウルでのライヴを記録したものだ。最高のライヴ・ドキュメンタリーになったよ。

パット・メセニー

グラミー授賞アルバム『The Way Up』が、ライヴでさらなる高みへと昇華する瞬間を捉えた。躍進し続けるメセニーワールドが全開！１アルバム1曲という大作が各メンバーの超人的パフォーマンスで演じきられる。

楽曲は＜Opening＞、＜Part 1＞、＜Part 2＞、＜Part 3＞というアルバムに収録された4曲。しかしこれはあくまでリスナーが聞きやすいよう便宜上に符号化しただけであって、あくまでも４パートで「１曲」というビジョンを持っていた。

このDVDにおいても同様の分類はしているものの、メセニーが意図する「１楽曲」という意味合いは十二分に我々に伝わってくる。ひとつのメロディー、モチーフが無限大な音楽的可能性をもって、綿密な音楽宇宙へと我々を誘う。オープニングからその世界へと引き込まれ、画面へと釘付けになってしまう事だろう。

メセニーは複数のギターを使い分け、圧倒的プレイを次々と見せていく。その姿には映像上見ても「後光がさす」オーラ、存在感を放つ。ライル・メイズの美しくも神業的鍵盤ワーク、コントラ・バスとエレクトリック・フレットレス・ベースを操るスティーヴ・ロドビー、そしてもはやドラムという枠を越えたメキシコ人ドラマーのアントニオ・サンチェスが紡ぎだす複雑多彩で繊細、そして力強いドラミングがPMGの中核を担う。

そして、歴代のメンバーがそうだったように、ステージ後方に位置する３人のプレイヤー達がPMGに色づけするべく、多種の楽器を縦横無尽に操る姿はこのDVDでも大きな見所となっている。

ベトナム出身のクオン・ヴーはトランペット、スイスのグレゴリー・マレットはハーモニカ、そしてナンド・ローリアはギターをメインにしながら、この３人はヴォーカル、ギター、パーカッション、マリンバ、カリンバなど次々と楽器を持ち替えPMGサウンドに彩りを加えていく。中でもクオン・ヴーのエフェクトされたトランペット、マレットの深い音色のハーモニカは圧倒的な存在感を放っている。

メセニーは特にメンバーに指示を与えるでもなく、ギター・プレイに集中し、見事しかいいようがないフレージング、ソロを聴かせてくれる。これだけ長尺で複雑な楽曲を７人メンバー全員の神がかりな技をもって創り上げた唯一無比なサウンドは、このメンバー以外では有り得ないし、ひょっとしたら２度と再現はできないのでは、とも思わせる完成度をこのDVDで如実に表している。

また、パット・メセニーのインタビューも、このライヴについてや新作について、グループについてなど22分に渡り語られている。こちらもライヴ映像同様見逃す事はできない。