HMVインタビュー:Othello

2006年9月8日 (金)

『Alive At The Assembly Line』発売記念インタビュー

Othello
… ポートランドの人気ヒップホップ・クルー Lightheadedのメンバーとしても活躍するMC、Othello

Lojique在籍時から温めていた「生演奏とヒップホップを組み合わせた理想のライヴ・ミュージック」を求めてスタートしたライヴ・ヒップホップ・プロジェクト、Othello & The Hipknotics名義でリリースした『Classic』は、クロスオーヴァーなリスナー/DJ/アーティスト達から絶大な支持を集め異例の大ヒットを記録。

その後、クルー作品や客演などを経て、約2年ぶりにセカンド・アルバム『Alive At The Assembly Line』をリリース。今回は新たに凄腕バンドThe Black Notesをフィーチャー。 初期Rootsを彷彿とさせるクールな生演奏とCommonの傑作『Be』を思わせるサン プリング・マジック、カリスマティックなMC = Othelloのラップの魅力が詰まった新作は、生音好きは即死決定の仕上がり!

ジャジーヒップホップという括りを超えた 唯一無二の極上サウンドでリスナーを魅惑の音世界へと誘う若きMC、Othelloにニューアルバムについてはもちろん、音楽的なルーツまでググっと迫ってみました。


Interview with Othello


まずはニューアルバム発売おめでとうございます。 新作を聴いて個人的に前作の『Classic』以上に音楽的に多彩でとてもエキサイティングなアルバムだと思いましたが、ニューアルバムのコンセプトとタイトルに込めた意味を教えてください。

Othello(以下O): 一から十まで僕の考えやコンセプトを反映させてアルバムを作る機会というのは、今回のソロ・アルバムが初めてだったんだけど、僕のこれまでのアーティストとしてのキャリアや焦点、アイデアなんかが全て表現されているんだ。このアルバムは、アーティストとして、ひとりの人間としての僕の経過を、正確に表していると思うんだ。

『Alive At The Assembly Line』というタイトルは、人生を工場の組立ライン(Assembly Line)に例えていて、ベルト・コンベヤーで運ばれてくる部品は、日常生活で起こる良いこと悪いこと...それが絶え間なく送られてくる、って訳。簡単に言うと、組立ラインで働いている僕達は、色々な物事や人の為に貢献しているって事。

皮肉なのは、実際にベルトコンベヤーに乗っている物も、そこで働いている人達も全然「Alive(生きる)」という感じはしないんだ。作業はしてるけど、何をやっているのかはあまり考えてない。だから、僕は単純に人生に目的意識を持とう、って促しているんだ。リスナーにとっては食べ応え十分なボリューム感だと思うよ。まるでフルコースの料理みたいにね。

今回も生バンドを起用し、ジャケット・デザインも前回をなぞったものですが、新作は「Classic」の続編と考えていいのでしょうか?

O:さっきも言ったけど、『Alive At The Assembly Line』は、初めから終わりまで僕のコンセプトや考えを反映させて作った最初のレコードなんだ。シアトルにいた頃に、Othello & The Hipknoticsとしてショーをやるために作ったデモや録り溜めていた曲をベースに、あとから3曲を加えて出来たのが『Classic』なんだ。だから何と言うか、ちょっとランダムな感じでしょ。だから「僕のレコード」という意味では、今回のアルバムが本当の僕のデビュー作って思うんだ。

The HipknoticsではなくThe Black Notes+1を起用した経緯は?またどのようなメンバーで構成されているのですか?

O:『Classic』がリリースされた時には、The Hipknoticsと僕はもうグループとしての活動をしてなかったんだ。僕はシアトル(ワシントン州)からポートランド(オレゴン州)に引っ越して、Lightheadedの活動に専念していたし、The Hipknoticsのメンバー達も学校に行ったり、色々なプロジェクトで活動していたり、みんなで集まって一緒にやるのが難しかったんだ。

The Black Notesとは、僕がソロ活動をしようと思って新しいバンドを捜している最中にポートランドで出会ったんだ。彼らはHip Hopの連中がバンドと一緒に何かやりたいって時に、凄い頼りになるバンドとしてポートランドではかなり有名なんだ。僕がThe Black Notesと会った時、彼らは既に僕がこのアルバムで頭に想い描いて形にしたかったサウンドのテイストを既に持っていたんだ。だから一緒にやるって決めたんだよ、必然的にね。

バンド・メンバーは、リードシンガー/ベース/ギター/プロダクションのBarry Hamptonとドラム/パーカッションのRod Nightingaleの二人が中心で、当時は鍵盤のBeau Bryanもいたね。それにPortlandでジャズやソウル、サルサ…ヒップホップの曲でも演奏したりしているトランペット奏者のFarnell Newtonも連れてきたんだ。あとは、昔からの知り合いで、The Hipknoticsのメンバーでもあった超ドープなサックス奏者Gregor Lothianも、アルバムの生演奏をよりソリッドにする為に参加してもらったんだ。

リスナーからはどのような反応を期待していますか?

O:アルバムを聴いた人には希望や刺激、チャレンジ精神とかを持ってくれることを期待しているよ。僕はただ聴いていてすごく気持ち良いものを作りたかったんだ。このアルバムがリスナーをそんな気持ちにさせられたら良いなって思っているよ。僕がTribeやDe La Soulなんかを聴く時、まぁ、そんな真剣に聴くって訳じゃなくて流す感じだけどさ、ホントに気持ち良い音楽だなーって感じるんだ。すごく自然にいい雰囲気を作ってくれるよね。でも、注意深く耳を傾けて聴くと、その中に秘められた多くの宝物を掘り当てることが出来るんだ。そんな反応を期待しているよ!

「これがOthelloだ!」と言えるような曲をアルバムから選ぶとしたら、どれですか?またその理由は?

O:わぉーー、これは超ハードな質問だよ。だってこのアルバムの全ての曲が、僕の分身なんだから!お気に入りもあるけど、全ての曲が「これがOthello!」なんだよ!笑



*試聴できます。

*Othello/Alive At The Assembly Line
1 ...And Always
2 Let's Just
3 Place To Be
4 Alive At the Assembly Line feat. Propaganda and Vursatyl
5 Cycle feat .Surreal
6 R.A.P.S.
7 Smooth It Out
8 Silhouette feat. D-Minor
9 Peripheral Drift
10 Shallow feat. Pigeon John
11 Rot
12 Work Epic
13 Shoot Past feat. Olivia Warfield
14 Fly feat. OHmega Watts And Braille
15 Farewell





あなたはプロデュースもされますが、ソロ作品では基本的にどのような工程で曲を仕上げていますか?

O:生バンドとやっている曲の半分くらいは、The ProcussionsのStro the 89th Keyと一緒に作業したんだ。僕が曲の骨組みを考えて、それをStroにThe Black Notesが生演奏で再現しやすいようにプロデュースしてもらったんだ。それをベースにブラックノーツとリハーサルを重ねて、ライブ感を出したり、あとからアイデアを色々と加えていくって感じさ。IllmindやM-Phazes、Siamese Sisters、Dminor、Mr.J……僕自身のプロデュース曲なんかは、僕が欲しかったバイブをトラックからキャッチしたってだけ。ラップは、最初にトラックを聴いたときに浮かんだイメージを曲にしていくって感じ。だいたいこんな感じだね。

ゲストMCやビートメイカーの人選はどのように選んでいるのでしょうか?

O:何かにつけ僕の心を動かすような作品を作っていたり、活動をしている人を選んだんだ。基準は、ただ単に彼らがドープだってだけじゃなくて、一緒に腰を据えて音楽以上のものを作り上げることが出来る人かな。つまりは、お互いの存在を高め合えるような人達だね。

生バンドの音にインスパイアされてリリックを書いたりしますか?それとも書きためていたものを曲に合わせてラップするタイプですか?

O:時には書き上げたリリックのアイデアやコンセプトに合ったパーフェクトなトラックに出会うってこともあるけど、そうでない時はたいてい、トラックを聞いて感じる全体のエモーションやヴァイブにインスパイアされてリリックを書くかな。

あなたと他のMC達との違いは何だと思いますか?

O:僕は僕自身、それ以外になろうとは思わない。世界に自分と同じ指紋を持つ人は1人もいないって言うけど、僕もそう思うよ。似ている人はいるかもしれないけど、全く同じって事はない。分かりきったことをやろうとしている訳ではなくて、リスナー達が聴いている音楽のコレクションの一部に居場所を見つけようとしているんだ。オリジナルでいること。ただ自分が良いと感じる物を作っているだけ。それが個性になるんじゃないかな。

あなた自身も楽器は演奏しますか?

O:ドラムやキーボード、ギターなんかはかじってみたけど「弾ける」とは言えないな...。気持ち良い音が出るまで適当に触ってる感じだよ。キーボードやギターで曲を書いたこともあるけど、自分がピアニストやギタリストだなんてことは絶対言えないなー。ヘヘ〜笑

来日されたこともあるのでご存知だと思いますが、あなたやLightheadedは非常に日本で人気があります。この日本の反応をどう思いますか?

O:言葉ではうまく言い表せないよ。日本は間違いなく僕の大好きな国だよ!自分の音楽が日本で認められているからって訳じゃなくて、本当に良いものをちゃんと評価してくれるからなんだ(少なくとも僕の経験ではね)。日本の人々は本当の意味で僕の心を掴んでくれたんだ。日本に来た時に交わしたみんなとのコミュニケーションが、日本のことをもっと好きにさせてくれたし、もちろん文化や人間性、考え方とかもね。日本で活動出来ることを本当に幸せに思うよ。みんなありがとー!

グループとソロ作品の違いは?また他のメンバーのソロ作品についてどのような印象を持っていますか?

O:グループとソロでは、大きな違いがあるよ。僕らはみんな、それぞれのソロ作品に反映されているような個性を持っているんだ。でも、Lightheadedのアルバムを聴けば分かるように、すごく似た部分も勿論あるよ。OhmegaとBrailleの作品は大好きだよ!彼等は僕の創作意欲を掻きたたせるし、音楽以外の生活においてもお互いに刺激しあっているんだ。それは僕にとってすごく大事なことなんだ。Ohmegaの『The Find』を聴いてなかったら、絶対チェックだよ!近い将来、僕らのクルーからすごいプロジェクトがもっと出てくるから楽しみにして欲しいな。

すごい基本的な質問ですが、実は余り知られてないと思います...。あなたのアーティストネーム「Othello」はどこからきたのでしょうか?

O:ただ単にOthelloって名前が気に入っただけ。シェイクスピアの「Othello」はとんでもなく悲劇的な物語だったと思うし、悲劇的な事無しには勝利や成功を掴むのは難しいって思うんだ。僕はどんなに落ちている時でも堂々と自分の人生を送るんだ。だからその「Othello」の話と自分の人生観がぴったり来たんだ。少し皮肉もあるんだけどね。まぁ僕は皮肉が好きだから...

幼い頃はどんな音楽を聴いて育ちましたか?

O:80年代のポップスからヒップホップ、ファンク、ソウル、ジャズなんかはもちろん、他にも色々音楽は聴いたよ。Stevie Wonderでしょ、StingにKRS OneにThe O'Jays...あげていったらキリがないよ!

ラップを始めたのはいつ頃からですか?

O: 8年生(8th grade/中2)の頃には、レコードのインストに自分のラップを乗せて、持っていたカラオケマシンでレコーディングして、学校の食堂(カフェテリア)で売ってたんだ 笑。その頃からだよ。

今のあなたの音楽活動に大きな影響を与えたアーティストとアルバムを5枚教えてください。

O: 5枚かー…難しい質問だなー。でも敢えてあげるなら

・A Tribe Called Quest 『Midnight Marauders』
・Kool Moe Dee 『How Ya Like Me Now』
・Dj Jazzy Jeff and the Fresh Prince 『He's the DJ, I'm the Rapper』
・Common 『One Day It'll All Make Sence』
・De La Soul 『De La Soul Is Dead 』 or 『Buhloone Mind State』




とかかな。他にも色々あるけど。

共演してみたいアーティスト/グループはいますか?

O:Ahmad Jamal、ATCQ、?uestlove、Jazzy Jeff、Dj Spinna、Madlib、De LA Soulは一緒にやってみたいな!

今後の活動について教えてください。

O:今はソロ・アルバムが出たばかりだから、先を急がずにじっくりとやるよ。US、ヨーロッパでのリリースやライヴも予定してるし、アルバムからのシングル・カットやLPのリリースとかもあるから、まだまだ楽しみだよ。 日本にもショーをしに行く予定だから待っていてくれよ!

最後に日本のファンに一言お願いします。

O: 数ある作品の中から僕のアルバムをチェックしてくれてありがとう!!!みんなのサポートには本当に感謝してるよ!すぐに日本に行くから待っていてくれよ!Peace!

ありがとうございました!

協力:Miclife Entertainment, Inc.



*Othelloディスコグラフィー


左から:『Classic』、『Elevator Music』、Lojique『Language Arts』

*Light Headed 関連作


左から:Light Headed 『Pure Thoughts』、『Wrong Way』、Braille 『Shades Of Grey』、Braille 『Box Of Rhymes』、Ohmega Watts 『Find』、『Heavy Rotation』


左から:Acts 29『Under Exposed』、Surreal (Rap) / Dj Balance『Future Classic』、Sivion『Spring Of The Songbird』





*Miclifeレーベル作品


左から:Asheru & Blue Black Of The Unspoken Heard 『48 Months』、Time Machine『Slow Your Roll』、Procussions『Up All Night』、Edan『Beauty And The Beat』、Zimbabwe Legit『Brothers From The Mother』、Project Move『Love Gone Wrong: The Butterfly Theory 』



左から:Dagha『Object In Motion』、Lushlife『Order Of Operations 』、Fresh Air『Slowly Coming Along』、『Blue Chronicle: Generation Of Evolutionally Memorable Story 』、Asheru『Insomnia 』




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