Dan Siegel 極上Acoustic Smooth Jazz

2006年7月7日 (金)

Brian Bromberg(b)、Vinnie Colaiuta(ds)とのトリオを核とした新作は、新たなるオーガニックなサウンドを築いたDan Siegelの傑作。温かな楽器の音色、情景を想起させる見事な楽曲が耳をとらえて離さない。

ダン・シーゲル2年ぶりの新作は、彼のピアノ、ブライアン・ブロンバーグのアコーステイック・ベース、そしてヴィニー・カリウタのドラム、というピアノ・トリオが核となっており、そこにレニー・カストロのパーカッション、ボブ・シェパードのサックスが加わる。ひとつひとつの生の楽器の息吹が随所に生き、極めて人間的で温かみのある、血と魂の通ったサウンドここに存在する。ここ最近のダン・シーゲルのサウンドとは一味違う、でもしっかりとメロディーとアレンジは生かされている。そう、これこそがダンの表現する新たなスタイルなのだ。

これまでの作品では、ダン・シーゲル自身によるプログラミングがサウンドの一部として構成されていたが、今作ではミュージシャンによる生のプレイを、ほぼ一発録りする事、更にアコースティック楽器を使用する事により、オーガニック性が高まった。ダン自身もアコーステイック・ピアノをメインにオルガン、ローズ・ピアノ、メロディカ、ヴィブラフォンのみで、一切シンセ類は使用していない。ストリングスも生で臨んだ。

ブロンバーグ=カリウタというまさにLA最強のテクニシャンに加え、レニー・カストロ(per)、ボブ・シェパード(sax)、そしてノーマン・ブラウン、グラント・ガイスマンというふたりのギタリスト、ビル・カントスのヴォイスを曲によってフィーチュアした。

ブロンバーグとカリウタは全ベーシスト、全ドラマーが憧れる超テクニカル・プレイヤー。しかし、今作ではダン・シーゲルが提唱するオーガニッックなサウンドを、抑揚と表現力に満ち溢れた素晴らしいプレイで、丁寧に作り上げた。単に表向きのテクニカルな技ではなく、ひとつひとつのフレーズ、グルーヴ、インタープレイ、空間=間を最重要視したそのプレイは円熟と貫禄、そして音楽的感動を与えるものだ。

加えて、ボブ・シェパードとレニー・カストロの存在も忘れてはならない。ボブの歌うようなサックス・プレイは本編においてダンとともに重要なメロディー・パートを担う。そしてレニーのパーカッションもコンガやボンゴ、小物類を駆使し、ドラム、ベースと共にリズムを形成しオーガニック・グルーヴを打ち出した。更に、ダンがプレイするメロディカ、ヴィブラフォンも決して派手ではないが、本作における名脇役振りを発揮したと言えよう。

Dan Siegel

◆Dan Siegel 一問一答

Q1:このアルバムを通して、リスナーに伝えたい事とは?

DS:アルバムを作る度、聴いてくれる人がいるかどうか心配になるんです。音楽はコミュニケーションの一つフォームなので聴衆がいなければ、ただの自己満足行為でしかありません。このアルバムを作るにあたって、自分でも聴きたくなるようなものを創りたいと思いました。

そこに問題が起こります。というのは、これまで人生のほとんどを音楽の研究と演奏に費やして来た人間にとって、好みというのは、メインストリームだけなのです。私は、聴衆がこれら楽曲の機微を感じとって、演奏の完成度を楽しんで聴いてくれたらとても嬉しいです。

Q2:アコースティツクなピアノ・トリオが核となっていますが、ブライアンとヴィニーというテクニシャンを起用した理由、また彼らとトリオを組んでの印象を教えてください。

DS:私は、いつでもジャズ・ピアノ・トリオのアンサンブルが大好きでした。そこには音楽的必然性の要素がすべてあるからです。このアルバムを録音する時、ジャズのスタンダード・プロジェクトにするのはやめようと思いました。これまで数々の素晴らしいプレーヤーがたくさんやってきたことだからです。私は、自分の広範囲にわたる経験とテイストを表現するためこのアンサンブル用に音楽を書きたいと思ったのです。

ブライアンとヴィニーはその卓越したテクニックでよく知られていますが、それだけではないとてもバランスのとれた名プレイヤーなのです。グレイト・プレイヤーというのは、速く弾けたり、難しいことができたりということでなく、知識やテイストや技術をいつ使うべきかを知っている人のことだと思います。ブライアンとヴィニーはそういうプレイヤーなのです。

Q3: タイトル『Departure』は収録楽曲ですが、アルバム・タイトルとしてセレクトした意図を教えてください

このアルバムは、自分にとってひとつの出発と言えるのです。それは、ほとんど純粋なアコースティック編成であるということに加え、全曲のベーシック・トラックを1回の週末に皆で同時に録音したことによります。 こうすることで、通常オーバーダビング・プロセスでは失われてしまうオーガニックな自発性が生まれるのです。

Q4: 最近の活動と今後の予定を教えて下さい。

DS:現在、“Departure”のワールド・ツアーを計画中です。自分はいつも多くのプロジェクト(劇場、映画その他音楽の様々なジャンル、教えることも含め)に関わっています。プレイヤーとしてだけでなく、作曲家、オーケストレーター、コンダクターとしての自分の能力を試し、延ばしていくことに喜びを感じます。


Dan Siegel

◆Departure収録楽曲

  @Across The Sea
この上ない美しいピアノ・ソロにて始まり、ふくよかなウッド・ベースとドラム、パーカッションがリズムを刻みだす。続いてメロディカがメロディーを取り、更にビル・カントスの美しいヴォイスが重なる。ストリングスも加わった、壮大なスケールを持つ一大音楽抒情詩。

A Street Talk
ノーマン・ブラウンのギターをフィーチュア。ウェス〜ベンソン直系のオクターブ・プレイとジャジーでハートフルなソロが曲中で大きな存在感を発揮。カリウタのメリハリをつけたドラミングも曲のイメージと進行を司る。

B Mosaic
ミディアム・グルーヴが心地良く、ボブ・シェパードのサックスが見事に歌いまくる。ダン自身がプレイするヴィブラフォンが隠れたアクセントとなっている。

C Friends Forever
美しいピアノのイントロダクションに呼応するサックス。ちょっとだけ切ない感じのメロディーが心に染みる。カリウタの絶妙なブラシ・ワークが静かなるグルーヴを生む。

D Departure
印象的なピアノのリフをそのままサックスが受け継ぐ。リム・ショットとコンガのリズム・コンビネーションが心地よい。ブロンバーグのソロも比較的抑え目だがさすがのフレージングを聴かせる。

E From Here On Out
ノスタルジックな雰囲気をも感じさせる曲で、オルガンが控えめながら響く、ダン・シーゲル流ブルース・ナンバーとも言える。

F A World Away
憂いのあるピアノのメロディーに優しくストリングスが包み込む。この曲もダンのプレイを通してフィーチュア。

G Soliloquy
美しいバラード・チューン。@に続きダンのメロディカが挿入され、ストリングスが透明感と拡がりを与える。聴く者は美しい原風景を思い描くだろう。ここでもブロンバーグのソロをフィーチュア。

H Shades Of Gray
ダンのピアノにフォーカスした非常にシンプルなナンバー。グラント・ガイスマンがバッキングで参加。

I Castles In The Sand
ダンのピアノを中心としたライト・バラード。ヴィブラフォンが隠し味的存在。

J Alone
静寂な雰囲気の中でも、シェパードの吹くソプラノ・サックスの力強いメロディーが印象的。

※表示のポイント倍率は、
ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。

国内盤

Departure: 旅立ち

CD

Departure: 旅立ち

Dan Siegel

ユーザー評価 : 5点 (1件のレビュー) ★★★★★

価格(税込) : ¥2,934
会員価格(税込) : ¥2,699

発売日:2006年07月19日

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輸入盤

Departure

CD 輸入盤

Departure

Dan Siegel

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会員価格(税込) : ¥2,520

発売日:2006年07月18日

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