太田剣 インタビューで新作を語る
2006年3月17日 (金)
デビュー作『Swingroove』発売を記念して、hmv.co.jpが太田剣との単独インタビューを敢行。作品やジャズについてetc語る彼は、非常に熱い男だった。購入者の方には抽選で直筆サイン・プレゼント。HMVサイト・オリジナル壁紙特典も。(詳細はこのページの文末をご覧ください)
●満を持したソロ・デビュー作の誕生
「タイミング的にも流れ的にも申し分ない状況でリリースできました。1998年『ジャズ新鮮組』でのCDデビュー以来、8年間の様々なセッション活動なしにはこのソロ・アルバム・リリースはなかったと思います。」
●アルバム『Swingroove』が目指すもの
「脈々と受け継がれるジャズの伝統をリスペクトしつつも、現代的なグルーヴ・ミュージックをクロス・フェイドさせた、未来に向かっていくジャズを作りたいと思いました。
まず第1に[アコースティツク楽器]によるジャズの王道ワンホーン・カルテット・アルバムという事です。アート・ペッパーしかり、ジョン・コルトレーンしかり、キャノンボール・アダレイしかり、ソニー・ロリンズしかり、チャーリー・パーカーしかり、サックス奏者である以上はワン・ホーンはいわば基本ですよね。
そこに僕は2006年の[今の]日本でやっている現代的な感覚を持ち込みました。モダン・ジャズの特徴であるスイング・ビートだけのアルバムを作ることは今の僕には自然じゃなくて、ビート的にも曲調的にも、ひとつのアルバムの中に様々な景色が見えることを出す。つまり、ワンホーン・カルテットでどこまで多彩なカラーが出せるかということがテーマでした。」
●曲の構成はオリジナル7曲、スタンダード1曲、洋楽ロックのカヴァー1曲、洋楽ダンスのカヴァー1曲、そしてJ-Popのカヴァー1曲で構成されています。
「カヴァー曲を選ぶにあたって、マニアックな選曲ではなく、知られている曲をいかに僕なりのワン・ホーン・カルテットで演奏するかにトライしたかった。選曲の基準は今を代表する曲にしたかったんです。
ジョン・コルトレーンが<My Favotite Things>、マイルス・デイヴィスが<If I Were A Bell>をやったのは、アノ頃のポピュラーなミュージカル・ソングや多くの人達に知られている曲をジャズで消化し、[ジャズ・スタンダード]にしたんです。
彼らがスタンダードにしたものを僕がやるのではなく、今現在知られている曲、愛されている曲をジャズに消化したいという事で、Maroon 5、デスティニー・チャイルド、平井堅を選びました。つまり、昔のジャズ・メンたちがやっていた事を現代的にやっているのです。」
●[ジャズ愛]が随所に満ち溢れている。
「<酒とバラの日々>を入れたのは僕の[ジャズ愛]からです。スタンダード・ナンバーは絶対1曲入れたかった。ただ、ここでの<酒バラ>は、非常にハードでちょっと普通ではないですね。とてもアルコール度数の高い、まるでテキーラのよういな<酒バラ>です。」
●リズムは4ビート、8ビート、16ビート、ワルツなど様々なリズムのSwingrooveで溢れています。
「1曲目<Swingroove>では、スィングとグルーヴをクロス・フェイドさせています。ドラマーは右手ではスイングしながらも左手では2.4を刻むファンキーなテイストのリズム。ベースは4ビート。ピアノは特徴的リフを弾く。ジャズとグルーヴ・ミュージックが混在し、そこから4ビート・スイングになることにより、そのスリリングなリズムを感じて欲しかったんです。」
●ここにも[ジャズ愛]が。
「この曲のサックスのメロディーが印象的なのは、マイルス・デイヴィスとミルト・ジャクソンの<バグス・グルーヴ>でのシンクロしたメロデイー・ラインを意識しました。<Swingroove>と<Bags Groove>というダブムミ−ニングにもなっています。いわばこれははジャズへのオマージュなんです。」
●曲作りはいかに?
「曲はピアノで作っています。方法は2パターンあって、まずはメロデイから作るケース。アルバムではD、F、Gのような曲です。それともうひとつはリズム・フィギュアから作るケース。まずドラム・パターンを考え、何のメロディーもない状態で頭の中でリズムパターンをグルグルまわして、その上にメロディーを乗せる方法です。
つまりメロディー先行型とリズム先行型とに分かれます。@、Aなんかはリズム先行型といえますね。コード進行を先に考えると制約が出てしまうので、僕の場合あくまでメロディーかリズムのどちらかから作ります。」
●アルバムの録音方法は同時録音、いわゆる[一発録り]です。
「ジャズの一番おいししいところがオーバー・ダブでなくなってしまうような気がするんです。演奏は[会話]なので、「せぇーの」で話したものを録音したほうがスリリングだし、その時にしか得ることができない貴重なものがあると思います。」
●様々な音楽性、音楽的バックボーン
「幼少時、クラシック・ピアノ、ブラスバンドをやりまして、中学に入ってサックスを始めてザ・スクェア(現T-Square)、マルタさん、渡辺貞夫さんをよく聞きました。スティーヴィー・ワンダーなんかは高校から良く聴きましたね。割とロックよりもソウル・ミュージックの方が多いですね。
ジャズとかファンクが中でも好きでしたが、特に思い入れが強いのは、やはりモダン・ジャズです。チャーリー・パーカー、キャノンボール・アダレイ、ジャッキー・マクリーン、ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズ、ジョー・ヘンダーソン…そういったジャズの伝統や歴史を作った偉大なサックス奏者の演奏が好きなんです。
彼らはその時々にHipなことをやっていましたね。僕もHipなことをやりたいですが、彼らがやっていたのと同じ事をやるのではなく、未来に向け、カッコ良くて本当に広めたいジャズを伝えようと考えています。という事で、音楽的なバックボーンとしてはジャズ、ソウル・ファンクが大きいですね。
ジャズ以外ではスティーヴィー・ワンダーの<Ribbon In The Sky>、ジョン・レノンの<I Will>、Dreams Come Trueの<Winter Song>なんか大好きです。
●キャノンボール・アダレイがルーツ
「キャノンボールのプレイには似てませんが、ルーツがそこにあります。そして彼のアルバムを一番多く持っています。サイドメンを含めたコンプリート・コレクターですね。しかもアナログで。彼の力強いところ、ファンキーなところ、メロディアスだったり、自由自在なところなど、好きなところは一杯ありますが、それをそのまま自分のサックスでやっているわけではもちろんありません。
他にもメイシオ・パーカーとかジャッキー・マクリーン、ケニー・ギャレット、ジョシュア・レッドマン、ブランフォード・マルサリスとかも大好きなんで、それらが僕のプレイには混在しているんです。」
●テナーは男、アルトは女
「テナーは男性、アルトは女性、というイメージが僕にはあります。音の太いアルト・サックスが好きですね。アルトには青年の響きがあるんです。ゲイリー・バーツ、ベニー・カーター、ジョニー・ホッジスなど、どんなに年をとっても、渋いアルトとは言われない。どこか青年の初々しさを音域的にも残している。そんなアルト・サックスが全ての楽器の中で一番好きですね。
逆にテナーは、どんなに若くてもベテランの渋さを出す事ができる楽器。どちらかと言えば、ジョー・ヘンダーソンとか、マーク・ターナー、ジョシュア・レッドマン、ブランフォード・マルサリスみたいのが好きです。ベン・ウェブスターかコルトレーンか、といえばコルトレーン。ヴィヴィッドなサウンドを持っているテナー奏者が好きなんですね。」
●愛用楽器
「22歳のときに買った1969年のアメリカン・セルマー、マーク6。13年間使っています。最近の新しい楽器は完成されつくしてしまっているので、誰が吹いても同じ音程が出せる。50年代60年代に作られた楽器はとても不安定でした。ですが、曖昧な分、ミュージシャンにとって自由度があり、その分ニュアンスをつけやすい。最近の楽器はピッチが安定するよう作られている分、個人の表現の自由度が、もしかしたら減っているのではないか、とも思います。」
◆太田剣 / Swingroove
3/22発売
初回限定盤
[太田剣本人による楽曲解説]
@スウィングルーヴ
「先にグルーヴ、途中スイング、そしてまたグルーヴに戻る構成。ジャズへのオマージュが込められており、タイトル・チューンとして、アルバムのオープニングとして、相応しい曲です。聴き所は50メートル走を走り着るようなアドリヴ、その後リレーで早間美紀のピアノ、大槻カルタのドラムがききものです。」
Aオフ・ザ・トラック
「タイトルは[話題がそれる]という意味。この曲の中ではメロデイーがそれてきます。歌うような曲調が多いですが、この曲に関しては遊びがふんだんにつまっていて。ジャズでいう[Chase]の技法を使ったメロディーと、Medeski Martin And Wood風のグルーヴ・リズムを一緒にしました。」
BEMJ
「エリック・クラプトンのE、マーヴィン・ゲイのM、ジョシュア・レッドマンのJ。メロデイーやフレーズにこの3人の要素があることから命名しました。クラリオンのCM曲で、僕の曲の中では全国区になっているであろう楽曲です。」
C酒とバラの日々
「僕はメロデイーをちゃんと吹いていますが、アレンジがかなりアグレッシヴ。最後のラテン・パートは、スウィングからラテンに移行する<I Remenber April>が持っておる雰囲気が好きでやりました。」
Dセット・ユア・マインド・アット・レスト
「これまで突っ走ったファンキー、スウィンギー路線からほっと一息つく、メロデイーの美しいナンバー。君の心を安心させるという意味です。」
Eサンデー・モーニング
「Maroon 5が大好き。ミディアム・ファンクのハネる感じですね。イントロにゴスペル・タッチのピアノを弾いてもらい、原曲とは違ったアメリカ度が増えました。途中バンブの部分で3回転調し、エンディングが上がっていくのはスティーヴィーの常套手段で、まさにこれをやりたかったんです。」
Fヘヴン・ノウズ
「NY行きの飛行機の中で鼻歌で作った曲です。ちょっとふわふわした感じ。ベースとサックスのユニゾンが好きで、鳥越啓介君のソロを含めた、美しいウッドベースの音色が聴きものです。」
Gスリー・ガールズ・オン・ザ・スリー・リングス
「『キダム』を見て、その[人間美]に感動して、帰り道にメロディーが浮かんで書き留めた曲。大坂昌彦さんのワルツのビートが素晴らしい。アドリブがだんだんと感極まる感じです。」
Hルーズ・マイ・ブレス
「原曲は音数が多かったのですが、今回はカルテット編成だったので他の楽器は入れず、オーヴァー・ダブではなく同じ楽器を一発で同時に演奏してもらいました。ドラムとベースを左右のチャンネルにひとりづつ分けることで左右から違うベースと違うドラムが聞こえる、前代未聞のツイン・ベース、ツイン・ドラム・ジャズ。本作のひとつのハイライトです。ベースは鳥越君が弓で塩田哲嗣さんがピチカート・プレイです。刻み系とエフェクト系という感じですね。」
I思いがかさなるその前に・・・
「大人数だった前曲に対し、いろいろなものが一気になくなります。まずドラム、ベースがいなくなり、ピアノとサックスだけ。サックスもアルトからソプラノにかわる。アドリブもなくなり音色とメロデイーとハーモニー勝負になります。これまであがったテンションを落とし、原曲とはかなりリハーモナイズされ、割りと[ピースフルな印象]から[切ない印象]に変わっているはずです。HとIは全くの正反対な曲をあえて持ってきました。」
Jニュー・バラード(エンド・オブ・ア・デイ)
「1日の終わりは、明日への希望でもあるという意味。眠りにつくような優しいメロディーは[今日もお疲れ]、最後のもうれつな速さのアドリブは[明日もヤルゾ]みたいな感じです。」
●細部に渡り、こだわりと仕掛けを施した、音楽への愛情に満ち溢れた作品
「[雰囲気でものを作る]のと、[コンセプトを決めてものを作る]のは物凄く違いが出るんですよね。たとえばお店で言うと、[こだわり]とか、[言葉で説明できるコンセプト]に真意とか気配りとか細かさとかがあって、そのお店のほうが流行ると信じている。
8年間サイドミュージシャンとしていろんな人のいろんなやり方を見て、いろいろ自分なりに考えた一番良いやり方は、[雰囲気のあるもの]を作るのではなくて、[これにはこういう意味がある]という事を、口で説明できるような骨格を持ち音楽を作る。
ただこれらは聞かれれば答えるけれど、全面に押し出すものではなくて、根底にあればいいいと思っています。聴いた人の受け取り方は自由で、ただそういうものがあるほうが[根底にある意味]が感じ取られたり、伝わったりするんじゃないかと思います。」
●サックスの音色と音楽にこめたスピリット
「サックス・プレイヤーとして大切な事は音色とか音楽に気持ちとかスピリットをこめられているか。カタチだけ気持ちの良いものを作ってもダメだと思う。
偉大なるサックス奏者の音色とか音楽には、人生をかけたスピリットが入っています。だからレジェンダーは[何々風]とかの演奏はしていないんです。何かを追求してやまないスピリットを音色とか音楽に込めたい。だからこのCDを聴いてもらって、あの曲が心から離れないとか、グッとその人の心に入り込むものがあればいいなと思うんですよね。
皆さんが聞いて心の残るいいものは、絶対に物凄く真剣に作られたもので、そういうものが後世に残り、国境とか時間とかを越えられると思います。そういう熱い気持ちが一発目としてのこの作品に入ったんではないかと思っています。」
●では最後に一言お願いします。
「初回盤DVD付きをHMVで購入して壁紙ももらおう!」
★太田剣オススメ・ジャズ・アルバム
●Cannonball Adderley / Takes Charge
「キャノンボールの貴重なワンホーンのアルバム。キャノンボールを純粋に聴きたいならコレ。」
●McCoy Tyner / Real Mccoy
「このジョー・ヘンダーソンが大好き!もう棺桶に入れる1枚です。1曲目<パッション・ダンス>最高。これは凄い!」
●Jacky Mclean / Swing Swang Swingin'
「このアルバムは全曲コピーしました。完コピです。1曲目<What's New>から最高。」
●Charlie Parker / With Strings
「これも凄い!おすすめに入れないわけにはいかない!」
◆HMVオンラインだけの特典として太田剣 直筆サイン入り色紙を抽選で3名様にプレゼント!
HMVオンライン(WEB/モバイルどちらでも)で太田剣『Swingroove』をお買い上げのお客様の中から抽選で3名様に太田剣直筆サイン入り色紙を差し上げます(注文が完了した時点で応募抽選の権利が発生します。別途応募の必要はございません。期間は4/23までの間にオーダーいただいた方が対象となります。) なお当選の発表は賞品の発送をもって替えさせていただきます。
⇒終了いたしました。
オンラインショップオリジナル特典:PC用壁紙 (対象期間:2006年4月23日まで) ・当商品をhmv.co.jpでご予約/購入されたお客様に「特製オリジナルPC用壁紙」を差し上げます。 ・特典の壁紙はオンラインショッピングのみの特典です。通常のHMV店舗でご予約/購入されても、入手できませんのでご了承ください。 ・特典のプレゼントは商品出荷後に、メールにてご連絡いたします。そのメ−ル内容にしたがって、ダウンロード専用サイトにアクセスしていただく形となります。詳しくはメール内容をご覧くださいませ。 ※左画像はイメージです。 |
ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。
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太田剣オススメのジャズ・アルバム
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輸入盤
Cannonball Takes Charge (Remastered)
Cannonball Adderley
ユーザー評価 : 4点 (2件のレビュー)
価格(税込) : ¥1,870
会員価格(税込) : ¥1,051
まとめ買い価格(税込) : ¥1,051発売日:2002年08月12日
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限定盤
Real Mccoy
McCoy Tyner
ユーザー評価 : 4.5点 (6件のレビュー)
価格(税込) : ¥1,572
会員価格(税込) : ¥1,447発売日:2005年06月08日
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販売終了
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限定盤
Swing Swang Swingin'
Jackie Mclean
ユーザー評価 : 5点 (1件のレビュー)
価格(税込) : ¥1,572
会員価格(税込) : ¥1,447発売日:2004年06月09日
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販売終了
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輸入盤
Charlie Parker With Strings: The Master Takes
Charlie Parker
ユーザー評価 : 4.5点 (2件のレビュー)
価格(税込) : ¥2,200
会員価格(税込) : ¥1,507
まとめ買い価格(税込) : ¥1,507発売日:1995年01月24日
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