コレは嬉しい。エリス晩年のライヴも登場

2005年11月16日 (水)

エリスが最期に放った一筋の眩い光...

Elis Reginaエリス・レジーナ1973年のTVショウ映像を収録したDVDElis Especial1973。ピアノに元夫Cesar Camargo Marianoセザル・カマルゴ・マリアーノ、ベースはLuizaoルイザォン、ドラムにパウロ・ブラーガ、という強力ピアノトリオをバックに敷き、完璧なサポートの中で画面に語りかけるように歌うエリス。

まるで魔法にでもかかったように一瞬にして心を奪われるエリス全盛期の歌を収めた貴重な映像に続いて、同じくTramaから晩年のライヴもDVDで登場します。

エリスが80年にリオのTV局グローボの番組である『Serie Grandes Nomes』のために行なったライヴを収録したDVDElis Regina Carvalho Costa : Tvグローボ・ライヴ1980がリリースされることになりました。

収録曲数は15曲で、このTVライヴでは、Joyceジョイスの’或る女’や、Milton Nascimentoミルトン・ナシメントの’コンヴェルサンド・ノ・バール（バーでの会話）’、Jobimジョビン＆Viniciusヴィニシウスの’モジーニャ’、そしてAry Barrosoアリ・バローゾによる’アクアレラ・ド・ブラジル（ブラジルの水彩画）’など中期から後期にかけてエリスが好んで歌ってきたナンバーがレパートリーとして選ばれています。

エリスは82年に亡くなってしまっているので、最晩年のライヴの一つにも挙げられます。またエリスがスタジオ・レコーディングしたのもこのライヴが収録された80年。まさにブラジル～エリス・ファンにとって要となる1980年の映像ということで、なんとも感慨深い映像であります。

アルコール、コカインのオーヴァードーズにより36歳という若さでこの世を去った天使が魅せた最期の光..このライヴ映像は間違いなく貴重な貴重なお宝映像。『エスペシャル』同様、素敵なジャケの本作もコレクターズ･アイテムとして手元に置いておきたい作品です。

【プロフィール】

時には偏執とも汲める頑固さと凄まじい個性をギラギラと発散、音楽、思想のこととあらばすぐさま一触即発...。そんな攻撃性と対極にあるセンシティヴで女性的な芳香も放つ魅力溢れる天才肌ブラジル最高峰シンガーElis Reginaエリス・レジーナ。

1945年3月17日、リオ・グランデ・ド・スール州ポルト・アレグレ市の労働階級生の家庭に生まれ、幼い頃から歌手を夢見る。12歳の時にブラジルで放映されていたTVプログラム『Clube de Guri』に出演したことをきっかけに飛躍、同番組もレギュラー出演するようになり、着実にその才能を育んでいく。

そして16歳でデビューを遂げ、Jair Rodriguesジャイル・ロドリゲスとのデュエット’ドイス・ナ・ボッサ／Dois na Bossa２人でボサノヴァ’（アルバムは現在Vol.2と、Vol.3のみ取扱い有）が大ヒットを記録、その後も’アハスタゥン’で一躍スターダムへとのし上がり、一家で一番の稼ぎ手として生計を支える。

1965年、リオ一番の音楽フェスティバル『Arrastao』に出演した際に魅せたパフォーマンスが話題を呼ぶ（十字架に張り付けられたキリストのポーズで、涙を零しながら歌い上げた...という伝説は余りにも有名）。

音楽で思想を表現しあい会話をすることが儘ならぬ時代が到来してしまった60年代中期以降、ブラジルを変えようとトロピカリズモが勃発、Caetano Velosoカエターノ・ヴェローゾやGilberto Gilジルベルト・ジルらと共に表現者としてシーンを切開く核として活動。しかしながら親政府の陰謀によって国の「独立」の記念日を祝うための儀式でブラジルの国歌を歌わされ左翼からの重圧を受け非難を浴びてしまう...。

トロピカリズモも終戦を迎えた70年代、エリスは再びその才能を開花、Antonio Carlos Jobimアントニオ・カルロス・ジョビンと作り上げたElis & Tomはブラジル内外でも高い評価を獲得しますが、実はプライベート面で精神状態はボロボロになってゆく。

3人の子供に恵まれ母としての喜びは満たされたものの2度の結婚に失敗し、女としての成功を得る事ができなかった彼女は、2番目の夫であるCesar Camargo Marianoセザル・カマルゴ・マリアーノと離婚した70年代後半から、コカインを常用するようになってしまう。

でもそんな中、1982年には3度目の結婚もし、新たなレーベルとも契約、再生の始まりであったと思われた矢先、同年1月19日、アルコールとコカイン中毒で死体となって発見されました。自殺説も流れましたが真実は誰も知りません。

エリスの死後、沢山のブラジルのシンガーや仲間達による追悼コンサートがサン・パウロで開催され、ブラジル最高峰シンガーでった彼女の永遠の歌声を偲び10万人の聴衆が涙に濡れました。

わずか20歳で名声を築き頂点へ登りつめた彼女が早すぎたのか、時代が遅かったのか...。彼女の歌声は、彼女が天昇して20年以上の時が過ぎた現在も人々の心を魅了し続けています。

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