本田美奈子.さん白血病で死去

2005年11月6日 (日)

本田美奈子.さんは、1985年に「殺意のバカンス」で歌手デビュー。「1986年のマリリン」、ドラマの主題歌になった「One way Generation」などが大ヒットし、アイドル、ロック歌手として活躍してきましたが、やがて、歌唱力にさらに磨きをかけてミュージカル分野に進出、「ミス・サイゴン」「レ・ミゼラブル」「屋根の上のヴァイオリン弾き」などで大当たりをとります。その後、さらなる歌の鍛錬を経てクラシック・ジャンルに挑戦を開始し、2003年の「アヴェ・マリア」、2004年の「時」と順調にアルバムもリリースしていました。
　悲劇が始まったのは、そのセカンド・アルバム「時」をリリースした直後のことでした。アルバム・プロモーションの真っ最中の2005年1月、年末から続いていた熱っぽいなどの症状を風邪と思って受診した病院で、突然、血液のガン「白血病」であるとの診断を受けてしまうのです。30代なかばでのガン発病に、本人のショックは、いかばかりのものだったでしょう。
　病気の重大さを自覚した本田美奈子.さんは、全力で病魔と闘うことを決意し、1月12日に入院。3度の化学療法の治療、全身の血液の入れ替えなど、苦しい闘いが続きますが、最初の抗ガン剤投与では50％残っていたガン細胞も、3回目の投与後は5％以下に減少するなど希望の光が見出されてきました。そして医師の薦めにより、白血病の新しい治療法である「臍帯血移植(造血管細胞移植)」手術がおこなわれ、7月30日には一時退院、7月31日に自宅で誕生日を迎え、とても幸せな日々を送ります。彼女の所属事務所などが、白血病に苦しむ患者を支援する民間非営利団体「LIVE FOR LIFE」を立ち上げたというニュースも伝えられていました。
　当時の彼女は、移植手術について聞かれ、「怖くないと言ったら“ウソ”になりますが、移植もチャレンジすれば、きっと、輝く健康な自分が待っていてくれる。そう信じています」と病魔を克服する強い決意を綴っています。今回のアルバム『アメイジング・グレイス』の発売決定もそうした状況を反映しておこなわれたものだったのでしょう。
　しかしその後、8月24日の定期検診で骨髄移植を行ったものの、8月31日の検査結果では再び染色体に異常が発見され、9月7日には再入院、検査結果でガンの再発が判明、9月24日、アメリカから急遽到着した新薬の抗ガン剤投与がおこなわれたのですが、結果が良好とのことで、10月には2度の帰宅をすることができ、食欲も旺盛で彼女は大変に喜んでいたとのことでした。
　ところが状況は暗転します。10月21日の骨髄検査で再び染色体の異常が発見され治療を開始、懸命な闘病がおこなわれるものの、その甲斐なく11月6日午前4時38分に亡くなってしまうのです。最先端の抗ガン剤も臍帯血移植手術も、結局は彼女の命を救うことができなかったのです。

本田美奈子./アメイジング・グレイス

白血病での入院前に大当たりをとったミュージカル「十二夜」から未発表音源を特別収録。本田美奈子.のピュアなソプラノ・ヴォイスを堪能できる夢見るような「子守唄」です。付属のDVDには、2004年秋にライヴ収録された「アメイジング・グレイス」の映像が収録されています。スタジオ・レコーディングされたCDの音源と、ライヴ・パフォーマンスの映像という比較も興味深いところです。

CD：
①アメイジング・グレイス
　［作曲：ニュートン　日本語詞：岩谷時子］
②タイスの瞑想曲
　［作曲：マスネ　作詞：本田美奈子.］
③タイム・トゥ・セイ・グッバイ
　［作詞・作曲：サルトリ、カラントット＆ピーターソン］
④風のくちづけ（イタリアーナ）～「リュートのための古代舞曲とアリア」より
　［作曲：レスピーギ　作詞：本田美奈子.］
⑤この素晴らしき世界
　［作曲：ワイス＆ダグラス　日本語詞：森寧子］
⑥ララバイ～ミュージカル「十二夜」より
　［作曲：八幡茂　作詞：斉藤由貴］

　①②③：アルバム「アヴェ・マリア」より
　④⑤：アルバム「時」より
　⑥：初出音源（2004年12月27日録音）

DVD：
①アメイジング・グレイス
　　［ライヴ映像：2004年10月14日、六本木スイートベイジル］
②白鳥
　　［プロモーション映像］

　本田美奈子.（ヴォーカル）

　収録時間：8分
　画面：カラー、4:3
　音声：リニアPCMステレオ
　REGION ALL
　NTSC

本田美奈子.プロフィール
1985年、ポップス歌手としてデビュー以来、数々の音楽賞を受賞し、同年には武道館においてのファーストコンサートを成功に収めた。また88年には女性ロックバンドを結成するなど、音楽の世界で常に新しいジャンルに挑戦してきた。

　92年、ミュージカル「ミス・サイゴン」のヒロイン「キム」役を12000人の中から射止め1年6ヶ月のロングランを演じきったのをきっかけに、以後「レ・ミゼラブル」のエポニーヌ役、「屋根の上のバイオリン弾き」でのホーデル役、「王様と私」のタプチム役など数々の役柄を好演し、ミュージカル界から高い評価を得ている。

　2000年8月、シドニーのオペラハウスで「日豪親善コンサート」に参加。10月には東京青山劇場においてデビュー15周年記念リサイタル「歌革命」を開催し、大きな反響を呼んだ。

　2003年5月、ソプラノ・ヴォイスを用いた初のクラシックアルバム「AVE MARIA」をリリース。岩谷時子のサポート得て、クラシックの楽曲に全編日本語の詩を編みこみ、新しいクラシックの世界を切り拓き、各方面で大きな話題を呼んだ。

　2004年5月、ドヴォルザーク没後100年として「新世界」に本田美奈子.自身が新しい詩をつけシングルとしてリリース。また全国規模で行われた地球ゴージャスプロデュースのミュージカル「クラウディア」でのクラウディア役も好演。
そしていよいよ11月25日、クラシックアルバム第２弾「時」をリリース。
クラシックの革命児として、今後さらなる注目を集めるアーティストである。（Columbia Music Entertainment）