夏はクールに、岸部一徳。

2006年8月7日 (月)

一徳さんをご存知の方も、そうでない方も。
彼のプロフィール、ご紹介します。

1947年、京都生まれ。

67年、グループサウンズ「ザ・タイガース」のメンバーとしてデビュー。
75年、ＴＢＳドラマ「悪魔のようなあいつ」で俳優に転向。

映画作品では、伊丹十三監督作品『お葬式』や、
北野武監督作品『その男、凶暴につき』などに出演。

90年、小栗康平監督作品『死の棘』でキネマ旬報主演男優賞、
日本アカデミー主演男優賞、全国映速主演男優賞を受賞。
同作品は、カンヌ国際映画祭グランプリを受賞した。

93年には、滝田洋二郎監督作品『僕らはみんな生きている』、
市川準監督作品『病院で死ぬということ』、
大林宣彦監督作品『水の旅人－侍　ＫＩＤＳ』などにより、
報知映画賞最優秀助演男優賞、大阪映画祭最優秀助演男優賞、
高崎映画祭最優秀主演男優賞、キネマ旬報助演男優賞を受賞。

以来、日本映画になくてはならない俳優として、
多くの監督と映画ファンに愛され続け、
同時にテレビドラマやＣＭでも、個性を光らせている。

FMVのCMで、木村拓哉さんと共演したり、
キンチョールのCMでは、大滝秀治さんとのかけあいがおもしろく、
シュールで、コミカルな演技を披露しています。

森崎東監督『ニワトリはハダシだ』、
塚本晋也監督作品『ヴィタール』、
大林宣彦監督作品『理由』など、04年の公開作品は、10本を数えた。

こんな一徳さんですが、特におすすめしたいのが、
『死の棘』の小栗康平監督による、『埋もれ木』。

素晴らしい映画を上映し続けている、こだわりのある映画館、
シネマライズで、公開された作品です。

映画の物語の舞台は、山に近い小さな町。
女子高校生のまちは、女友達と短い物語をつくり、
それをリレーして遊ぶことを思いつく。
次々と、紡がれる物語は、未来へと向かう夢－。
町に住む大人たちにも物語はある。
でもそれらはみな、現実の歩みがつくった自分史。過去－。
ふたつの物語は、山、森、雨、くじら、らくだ、馬、
さまざまなアイテムと出会い、ファンタジーへと姿を変える。
夢、過去、現実、未来が溶け合って、
人々は、埋もれ木のカーニバルへと行きつく。

どこかで出会った景色のような、でも出会ったことがないような。

静かなトーンで展開されていく物語に
そっと身をゆだねていると、
突然飛び込んでくる色彩豊かなオブジェや、
懐かしさを感じる寂れた商店街、
この村の中以外では、現れないであろうエピソードが散りばめられ、
ただただ美しく、そこにある風景に、うれしささえ覚えます。

日本人が忘れてしまった心を、
静かに呼び起こしてくれるような、
古き良き、夏の原風景。

世界に誇れる文化を持っている日本。
海外のものばかりを、追っている場合ではありません。
日本人として、この映画に出会えたことを、しあわせに思います。

どこかで出会った景色のような、でも出会ったことがないような。
そんなデジャブの様な体験が、ここにはあります。

日本人の持つ雰囲気って、好きなんです。
一徳さんの表情やたたずまいが、やさしく寄り添って存在しています。

そしてもう1本、おすすめしたいのが、
『 Survive Style 5+』。

5つのストーリーが存在し、展開され、
１つのエンディングを迎える作品。

殺しても殺しても、なぜかより凶暴になって蘇ってくる妻（橋本麗香）。
その妻を殺し続けようとする男・石垣（浅野忠信）。
一方的な愛のカタチ（？）を強要する妻を、繰り返し殺害していく内、
なぜか二人には、奇妙な愛情が芽生え始めていくのだが・・。

観客に催眠術をかけたまま、殺し屋に殺されてしまう
人気催眠術師・青山（阿部寛）。
その青山の恋人CMプランナー・洋子（小泉今日子）。
「面白くなければCMじゃない！」がモットーの洋子は、
肌身離さず携帯用のテープレコーダーを持ち歩き、
頭に浮かんだ、新CMのアイデアを吹き込んでは、1人悦に入る。
自分の力量に自信を持ち、持ち過ぎる余り、
他人の力不足を許容できない、仕事人間の洋子だったが、
相棒であるテープレコーダーを紛失してしまったことで・・。

ショーのステージで、催眠術をかけられてしまい、
自分を鳥！だと思い込んで暮らす、小林（岸部一徳）。
屋根の上から飛び立とうとして庭に落ち、
クリスマスの日に、こんがり焼けた七面鳥を見て、
暴れだしてしまう始末。そんな父親の姿に、
妻（麻生祐未）と長女（貫地谷しほり）は、戸惑うばかり。
ただ、長男（神木隆之介）だけは、
「お父さんでもあり、鳥でもある」父を、
あるがままに受けとめようとするのだが・・。

空き巣をして生活する津田（津田寛治）と
森下（森下能幸）とＪ（JAI WAST）の3人組。
泥棒家業をしながら、カタギのサラリーマンに憧れる津田。
イケメンのＪに憧れる、ホモっ気の森下。
そんな森下の想いを、捉えかねているＪ。
そんな3人は、サウナでごつい外人と、
変な通訳のコンビに出会って・・・。

いつも同時通訳（荒川良々）を連れて行動する、
ロンドンからやってきた殺し屋（ヴィニー・ジョーンズ）。
彼の口癖は、「What's your function here?
お前の役割は何だ？」
殺しのテクニックは完璧！彼の通訳もパーフェクト？

CMプランナーから、ぶっとんだコマーシャルを提案され、
断固拒否する、恐妻家の製薬会社社長（千葉真一）。
そのプレゼンの最中にも奥さんからの電話が・・。

交わるはずのない、彼らの運命が、
時に複雑に、時に微妙に絡み合い、
物語は、思いもよらないクライマックスを迎える。

この中で、特に、今でも心に残ってしまうお話が、
一徳さんが、催眠術で鳥になってしまうお話です。

考えてみて下さい。
姿かたちは同じ、スーツ姿のお父さんが、ある日突然鳥ですよ！

始めはおもしろおかしく、笑いながら見てられるのですが、
一徳さんが、家の屋根の上で飛ぼうとしている姿や、
ポーポー言って、部屋を歩きまわっている姿を見ると、
だんだん、切なくなってくるんです。

この役柄は、他の役者さんじゃ考えられません。

コミカルだけど、シュール。
ありえないけど、存在する。

このシーンを見たら、思うはずです。
この人、一体どんな人なんだろうって。

同じく、さまざまな役柄で日本映画界で活躍している、
浅野忠信さんと、本当に多くの作品で、共演しています。

先ほどご紹介した2作品、
『埋もれ木』、『Survive Style 5+』のほか、
『ヴィタール』、『五条霊戦記 Gojoe』、
『座頭市』、『青春デンデケデケデケ』、『あいつ』、
『鮫肌男と桃尻女』など。

少しだけの出演で、見逃してしまう映画もあるかもしれません。
あ、いた！なんて、一徳さんを探せ、をやってみてもおもしろいのでは。

『 私立探偵濱マイク 4 サクラサクヒ』の一徳さんも、すてき。

出演最新作は、『寝ずの番』。
10月18日、発売。

いい役者さんです、岸部一徳！

4岸部一徳

4 ページTopへ戻る

4 カスバの女 Online TOPページへ