ＶＰＯ首席ヴィオラ奏者 ハインリヒ・コル

2004年10月29日 (金)

ウィーン・フィルの至宝
首席ヴィオラ奏者　ハインリヒ・コル

　ウィーン・フィル団員をフィーチャーしたNAXOSの新シリーズ「フィルハーモニカーの至芸」第3弾は、首席ヴィオラ奏者のハインリヒ・コルの登場です。

　このアルバムは、ヴィオラを中心とした二重奏曲と三重奏曲を多彩な楽器の組合せで楽しませてくれる収録となっているところも魅力の一つです。
　ピアノとの二重奏ではヒンデミットのヴィオラ・ソナタとブリテンのラクリメを収録。
　オーケストラの首席奏者やクァルテットのメンバーを務め、諧謔性を非常に好んだというヒンデミットのソナタは、そのスピリットが十分に盛り込まれた作品。作曲者と同様な嗜好を持つコルによる演奏では、そうした曲の性質が十二分に活かされ、伸びやかで透明感のあるコルの奏でる音色と曲想が見事にマッチした演奏に仕上がっています。

　全く異なる楽想をもつブリテンのラクリメでは、比較的擦れた音色を全面に出し、ハスキーな効果を強調した魅力的な演奏を披露しています。
　一方、チェロとの二重奏では、奇妙なタイトルをもつベートーヴェンの「２つのオブリガート眼鏡付きの二重奏曲」を収録。艶やかでウェットなチェロが、対照的に乾いた感じのヴィオラを引き立て、アンサンブルの妙技を醸し出しています。

　ヴァイオリンとの二重奏は、ヘンデルの鍵盤作品をノルウェーの作曲家、指揮者、ヴァイオリン奏者のハルヴォルセンが、ヴィルトゥオーゾ性を遺憾なく発揮して編曲した「パッサカリア」。刺激的なアンサンブルを娘のアレクサンドラ・コルと繰り広げてます。

　三重奏曲はクラリネット、ピアノとのシューマンの「おとぎ話」を収録。ヴィオラの雄弁な面を押し出し、クラリネットとの対話や、気心知れた仲間とのアンサンブルならではの安定した美しさで作品を物語ってくれます。

　共演は、ウィーン・フィル・メンバーの信頼篤く、「フィルハーモニカーの至芸」シリーズでも活躍するピアニスト、乾まどかと、コルの娘のアレクサンドラ・コル、ウィーン・フィルの木管セクションの「顔」であるクラリネット奏者、ペーター・シュミードル、新進のチェロ奏者カラノヴィチといった面々。

　レコーディングは今までと同じく、ORFのスタッフがウィーンのORFスタジオでおこなっています。オンマイク収録による生々しい音質も素晴らしく、弦による二重奏では左右の分離の良さもあって、アンサンブルの楽しさがよく味わえます。

　また、ライナーノートには、英独文ながらコル自身による、ヴィオラの歴史や、ヴィオラをネタにした「ヴィオラ・ジョーク」などを含む「ヴィオラ論」と曲目解説を掲載。学究肌な面とユーモア好きな面を表し、コルの人柄を感じさせる一枚となっています。


ハインリヒ・コル
　トーンキュンストラー管、ウィーン響の首席を歴任、現在ではウィーン・フィル、国立歌劇場の首席とともに、キュッヒル率いるムジークフェライン四重奏団や、ウィーン・リング・アンサンブルの一員も務めています。


フィルハーモニカーの至芸　第三巻　「ヴィオラの芸術」
・ヒンデミット：ヴィオラ・ソナタ　作品11-4
・ベートーベン：ヴィオラとチェロのための二重奏曲　「２つのオブリガート眼鏡付き」　変ホ長調　WoO.32
・シューマン：おとぎ話　作品132
・ヘンデル/ハルヴォルセン編：ヴァイオリンとヴィオラのための「パッサカリア」
・ブリテン：ラクリメ　作品48

ハインリヒ・コル：ヴィオラ
乾　まどか：ピアノ
ペーター・シュミードル：クラリネット
アレクサンドラ・コル：ヴァイオリン
ミラン・カラノヴィチ：チェロ