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【連載コラム】Akira Kosemura 『細い糸に縋るように』 第61回 細い糸に縋るように Akira Kosemuraへ戻る

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2015年1月13日 (火)

profile

[小瀬村 晶 / AKIRA KOSEMURA]

1985年生まれ、東京出身の作曲家・音楽プロデューサー。
2007年「It's On Everything」でデビュー。同年、音楽レーベル「SCHOLE」を共同設立。
これまでに五枚のオリジナルアルバムを発表、いずれの作品も国内外において高い評価を獲得。
2012年にコンテンポラリーバレエ公演「MANON」(演出/振付:キミホ・ハルバート)の音楽、2014年に映画「最後の命」(監督:松本准平、主演:柳楽優弥)の音楽を担当。
やなぎなぎの楽曲プロデュースや、全日空「ANA LOUNGE」の音楽監修、イケアのテレビCMをはじめとした数々の広告音楽を手掛け、NIKON ASIA、KINFOLK、RADO Switzerlandなど国際企業とのコラボレーションも多数。
これまでに米国最重要音楽メディア「Pitchfork」、豪州最大規模の新聞紙「THE AGE」にてその才能を賞賛されるなど、日本国内に留まらない世界的な活躍が期待される音楽家の一人である。




あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いします。

ということで、2015年がやって参りました。2015年・・・。なんだか、ずいぶんと遠くまで来てしまった気がしますね。僕は1985年生まれなので、2015年はちょうど30歳になる年です。そして、80年代生まれの僕からすれば、2015年というのは、とても近未来のはずでした。映画「BTTF II」では、車は空を飛んでいたので、幼い頃は、2015年にはきっとそういう世界がやってきているものだと思っていましたが、残念ながら、車はいまも地上を走っていますね。しかし、落ち着いて考えてみると、いまのインターネット社会というのは、かなり近未来的ですよね。ちょうどインターネット社会の革命的な変容と共に育ってきた世代としては、思い返すだけで凄い時代を生きてきているなぁと身震いします。いまの時代、携帯電話一つで、どこにいても世界中のあらゆる情報に一瞬でアクセスでき、世界中の友人達と瞬時に連絡を取り合える、そんな時代が到来しているのだから、もしかしたら車が空を飛ぶよりも、実際は凄い時代が到来してしまったのかもしれません。人間の想像し得るあらゆる出来事というのは、将来的にすべて実現可能だという説がありますが、まさにその通りで、僕がこのまま順調に歳を取って、いずれ晩年を迎える頃には、一体どんな世界になっているのか、僕のちっぽけな想像力なんてきっと遥かに凌駕する世界が到来していることでしょう。楽しみのようであり、なんだか恐い気もしますね。その頃には、フォースは覚醒しているのだろうか・・・。

序文にしては、久しぶりにずいぶんとしっかり書けた気がします。2015年のコラム、素晴らしい書出し。そんなわけで今年も頑張っていきたいと思っていますが、なんといっても今年、2015年は僕にとって大きな意味を持つ一年です。30歳というのは、大切な節目の年で、22歳でなんとなく海外のレーベルからデビューすることになって以来、日々、自分の音楽と向き合い、自分の音楽だけを頼りに、社会という未知の共同体のなかで必死にもがいてきたわけですが、始めた当初は、30歳まで頑張ることが出来たら、もしかしたらその先に繋がるなにかを見つけられるかもしれない、そのくらいのささやかな気持ちだったのです。なぜなら、僕にとって作曲家という職業は、思い描いた夢の職業というわけではなく、気がついたらそうなっていた、というくらいのものだったんですね。段々と年を取るにつれて減っていく数少ない選択肢のなかで、唯一、僕のことを人生に導いてくれたのが音楽であり、作曲家という職業だったんです。なので、いまこうして30歳になる、2015年という、22歳の頃の僕からすれば、遥か先の近未来にようやく辿り着いてみて、この7年程の間、変容する自分自身と、自分の音楽と、そして社会という未だ未知の共同体との間で様々な出来事を経験し、それでもまだこうして音楽と生活している、音楽と離れられずにいる自分、というのに出会えて、それだけ音楽に、そしてこの職業に執着できていることを、とても嬉しく思いますし、僕を人生に導いてくれた音楽に、そしてこの運命に感謝すらしています。

なんとなく始まったように思える些細な出来事を、運命と感じられるかどうか、自分の心の導かれるままに、人生を委ねることが出来るかどうか、これが、僕が20代で学んだ大切な真理であり、いまのところ、それだけ心に留めていれば、人生に迷うことはなさそうです。そんな、人生を生きる術を教えてくれたのが音楽であり、いまとなっては僕を形作る大切な、DNAのような存在なので、もう離れることは出来そうにありません。

そんなわけで、30歳を迎える年。これからの10年、どんな出来事が待っているのか。これから生まれてくるであろう自分自身の音楽との出会いを楽しみに、日々を生きていけたらと思います。

2015年も、皆さんにとって素敵な一年となりますように。



  映画「最後の命」公式サイト
  「最後の命 EMBERS」スペシャルサイト
  http://www.akirakosemura.com/
  http://www.scholecultures.net/





Akira Kosemura 最新作

Akira Kosemura 『最後の命 EMBERS』  [2014年10月08日 発売]

劇場映画「最後の命」のオリジナル・サウンドトラックを発表します。
本作品は、芥川賞作家・中村文則の同名小説を新進気鋭の映画監督・松本准平が映画化、主演に柳楽優弥、共演に矢野聖人、比留川游、そして滝藤賢一、りりィ他が出演した純文学作品。
柳楽優弥演じる主人公・桂人を始めとした登場人物の心の機微を、ピアノと弦楽四重奏によって細やかさに、そして丁寧に掬い取った非常に繊細な映画音楽です。
監督から伝えられた「彼らを肯定する。」という決意の言葉を頼りに作曲されたという本作は、かすかな希望と救いを感じさせる、静けさのなかに熱を帯びた小瀬村晶特有の胸を打つ音楽が随所に散りばめられた、ミニマルで且つ豊潤な作品に仕上がっています。



Akira Kosemura 今月のオススメ

[.que] 『Brilliant Hopes』  [2015年02月12日 発売]

[.que]通算5作目となる「Brilliant Hopes」がSCHOLEよりリリースされます。
2013年、SCHOLEからのデビューアルバム「drama」で、[.que]として培ってきた爽やかで心地よいエレクトロニカ的要素とアコースティックサウンドまたはフォークミュージックとの融合で自らのスタイルを確立した後、2014年に、セルフプロデュース作でもあり、故郷でのフィールドレコーディングを用いたプライベートな作品「Water's Edge」を発表してきました。5作目という区切りの作品は、[.que] / Nao Kakimoto のルーツでもあるバンドサウンドに重点を置いた楽曲を多数盛り込むなど、これまでの歴史を全て詰め込んだかの様な仕上がりになりました。
レーベルオーナーでもある小瀬村晶が共同プロデュースした今作は、ポストロックや、ポップスの要素まで幅広く取り入れつつも、一つの作品として昇華させ、[.que]が磨き続けた個性をより輝かせるものとなっています。
冒頭の2曲で彼らしさと新たな1面を垣間見せつつ軽快に幕を開け、affable noise が巧みなギターを加える「Joint」(track:3)、本作にゲストドラマーとして参加しているLOOP POOL等で活躍する水口彰太が刻む軽快なドラムスに[.que]の持ち味でもあるエモーショナルなメロディーラインが合わさった「Anew」(track:4)、波のように揺れつつ背景に馴染むピアノの音色に乗る秀逸なメロディが、切なさの中に独特の温かみを醸し出すピアノ曲「Trivial Lie」(track:5)、これまでの代表曲「flora」でコーラスを担当した unmo が作詞、ボーカルを担当し、姉妹作とでも言えるかの様な透明感を持つ「Himitsu」(track:6)、petitotoによるトイ楽器やヴォーカルが可愛らしさを添える「Lullaby」(track:7)、春の小道に踊る花びらと光の戯れの様に、小瀬村晶と[.que]によるピアノが踊る「Springlike」(track:8)、霧がかる夜の闇に差す一筋の光が現れる瞬間を捉えるための楽曲とでも言うような、後半に登場するギターリフが印象的な小瀬村晶との共作作品「Misty Moon」(track:9)、そしてエンディングへと向かう2曲の後には、[.que]初期に作曲された楽曲「Will」(track:12)と続き、物語の終わりを告げつつ次へと導く「Never End」(track:13)で穏やかなラストを迎えます。以上の楽曲群からも分かる様に[.que]の歴史を総括しつつも新境地へと向かう意気込みを感じる1枚となりました。
SCHOLE作品ではおなじみの井口寛がレコーディングエンジニア・ミックス・マスタリングを、菊地慎が写真・アートディレクションを担当。



次回へ続く…。






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