アルゼンチン音楽をDJ目線で斬ってみた

2009年7月31日 (金)

まずは、昨今のアルゼンチン音楽の傾向をおさらい

もうここ何年も、アルゼンチン新世代の音楽が面白い。

かつて「アルゼンチン音響派」という言葉が世に登場し、アングラ･シーンがにわかに色めきだったのが2002年頃。
そこからかれこれ数年、単なるブームに終始せず、さらに多彩な展開をみせるブエノスアイレス～アルゼンチンの音楽事情。まだまだ飽きないし、ネタも全く尽きることがありません。
かいつまんでそのヴァラエティを紹介すると、まずカブサッキ、アレハンドロ･フラノフ、ファナ･モリーナらいわゆる音響派（エレクトロニカ/フォークトロニカ）。シルヴィア･イリオンドなどアルゼンチン民謡･伝統音楽の素朴な感触を残す良質なネオ･フォルクローレ。ホルヘ･ドレクスレルのように欧米のインディーポップ好きにも刺さるシンガー･ソングライター系。近年では、変態クンビアの始祖ディック･エル･デマシアド。時空を超えたミクスチャー感覚で新しい音楽を作り出す若いアーティストたちも次々と登場しています。

驚くべきことに、音響派の登場以降も、アルゼンチン音楽シーンのポテンシャルは全く低下の気配なし。それどころか、さらなる多様性をもって世界の音楽中枢すら刺激することもしばしば。
たとえばファナ･モリーナがFRANZ FERDINANDやARCTIC MONKEYSを世に送り出した英の名門レーベルDominoと契約したり、また日本でもROVOや沼澤尚らが音響派一座とセッションを繰り広げたり･･･。その活躍はもはやアルゼンチン国内にとどまらないワールドワイドな様相を呈しています。

首都ブエノスアイレスは、南米有数の世界都市。もともと盛んな交易や欧州化･文明化政策の中心で、歴史的観点からみても海外の文化を上手に取り入れることに長けている感があります。そして、この街の若い世代もまた、外国産の音楽を巧みに取り入れ、伝統音楽と融合させたりするのがまたとんでもなく巧い。飄々と、突き抜けたポップセンスで音を紡ぎ上げる超人がやたらに多いのです。

07年頃からの最近のアルゼンチン音楽の傾向としては、先述のディック･エル･デマシアドよろしく、より"ダンスフロア解釈"な音楽が国内外のDJ/クリエイターの間でも話題になり始めたところ。昨今のクンビアの再評価や、ZZKレーベルが放つデジタルクンビアがジャンルを越えて世界中で話題になっているのはご周知の通りです。テクノやハウスといった既存のダンスミュージックに飽きたリスナーから、レゲトン/ダンスホールの亜流を探し求めるレゲエリスナーまでもがっつりロックオン状態。アルゼンチンのアーティストが発する面白音楽の波紋は、今も世界に向けてどんどん広がっているのです。
それならば注目しないわけにはいかないでしょう？！
これから地球規模ムーヴメントになるかもしれない音を。

今最も注目すべきレーベル、LOS ANOS LUZ DISCOS

そして現在、そんなフロア･ミュージックの中心にあるのがブエノスアイレスの気鋭レーベル
ロス･アーニョス･ルス･ディスコス　LOS ANOS LUZ DISCOS。

このレーベルのユニークな所属アーティストは ――
ウルグアイのレジェンドで70年代にはOPAを結成していたウーゴ･ファットルーソ。
スペインのラウンジシーンでも人気の奇才アクセル･クリヒエール。
植物までも操るパーカッショニスト、サンティアーゴ･バスケス。
元祖オーガニックグルーヴ、バイーアからハミロ･ムソット。
最新の感性をジャズとフォルクローレを通して表現したユニット、プエンテ・セレステ。
そして一部ではホセ･ゴンザレスよりも評価の高いリサンドロ・アリスティムーニョ･･･

もはやジャンル分け不可なさまざまな南米の新世代の奇才がズラリと名を連ねています。しかし、タンゴやフォルクローレといった南米のルーツ･ミュージックが彼らの音のコアにあり、リスペクトを込めて新しく解釈している所がこのレーベルの素晴らしさでもあります。

LOS ANOS LUZ DISCOS web site

LOS ANOS LUZ DISCOS　アーティスト

LOS ANOS LUZ DISCOSの音源をDJ目線でコンパイル！
『ウニコリスモ　Unicorismo Selected By Shhhhh』

さて、今回ご紹介するコンピレーション『Unicorismo ウニコリスモ』は、そのLOS ANOS LUZ DISCOSレーベルのダンスミュージック･サイドに着目したセレクトCD。
「ちょっと面白くて、考えずに踊れて、かつて聴いたことない感じの未曾有の音楽って何処かにないかなー？？」とお思いのリスナーの皆さま！コレです！
ツボをシッカリおさえた愛ある選曲は、辺境音楽DJとしてシーンを盛り上げるShhhhh氏。
R&Bやハウスなど既存のクラブミュージックとはまた一味違った生っぽいグルーヴとドーピング感覚、時折顔を出す魔術的レアリスモがいい刺激になりつつ、長時間気持ちよーく身体をゆだねることができるトラックの流れ･･･。まさにDJならではの目線によるセレクション&構成、サスガのお仕事です。

ウニコ（＝ユニーク）なリズム、ウニコなグルーヴ解釈のLOS ANOS LUZ DISCOSの音楽。
ラストトラックには、ローカルパーティからフェスまで、パーティシーンの人気者ALTZがハミロ・ムソットのトラックをRE-EDIT！
やわらかいタッチで、ファンタジックな世界への扉を開く素敵なアートワークは、グリコかるじゃがのCMやOOIOOなどさまざまなバンドのスリーヴやPVを手掛ける映像作家･後藤章治氏。
解説は西新宿のレコードショップLOS APSON?主催･山辺圭司氏。今作のセレクトを担当しているShhhhh氏とともにいち早くこのレーベルに着目し、アンダーグランドに広げた一人であります。ノイズ、ハードコアからハウスミュージックまで遊び尽くし、今山辺氏がLOS ANOS LUZ DISCOSにいく理由とは？

フォルクローレ、音響、そしてダンスミュージックを軽く超越。
今や世界的ブームにまで波及するアルゼンチンのフロアミュージックの勢い、現場の熱気を、身体の全部位で感じる ――。そこには刺激的でファンタジックな音楽体験が待っています。
『Unicorismo ウニコリスモ』で一風変わった音楽旅行をお楽しみください。

ウニコリスモ　Unicorismo
Selected By Shhhhh

08月02日発売
SHOJI GOTOデザインのステッカーを先着でプレゼント！！
※特典は数に限りがございます。予定数に達した時点で終了となります。ご了承くださいませ。

01. Desviado Social / HYPNOFON

02. Zorzal / Axel Krygier

03. Ke Chi Ke Cha / Duo Malambos

04. Dame Mas / Santiago Vazquez

05. Gwyra Mi / Ramiro Musotto

06. M'bala / Ramiro Musotto

07. Nordeste-Beradero / Ramiro Musotto

08. Tres Plumas / La Bomba De Tiempo

09. Sale El Sol / Hugo Fattoruso Y Rey Tambor

10. Loca / Trio Fattoruso

11. Margarita y Azucena / Mariana Baraj

12. La Cocinerita / Silvia Iriondo

13. Jantun Illumani / Mariana Baraj

14. M'bala-Nordeste-Beradero / MPB 3P EDITOS by ALTZ

※曲目をクリックすると試聴できます（Quicktime Playerが起動します）

アートワーク：　後藤章治（ごとうしょうじ / EAGLE DESIGN）
グラフィックデザイナー、画家、映像作家、音楽家などマルチな才能を持つアーティスト。様々なバンドのアルバムジャケット、フライヤー、Tシャツなど音楽に関わるアートワークを多数手がけ、また自身もミュージシャンである。2006年に制作したOOIOOのプロモーションビデオ UMO」が海外の映画祭／アニメーションフェスティバルで高評価を得て数々の賞を受賞。現在はグリコのかるじゃがのCMで立体造形アニメーションがON AIR中。

RE-EDIT：　ALTZ (F＊O＊L / ALTZMUSICA)
FLOWER OF LIFEを核に,トラックライブ・DJ・スタジオワークを様々な名義を使い分け、しかける奇人。U.K.「BEAR FUNK」、US 「DFA」、「LUNAFLICKS」,JP「時空」レーベルからのアルバムやepのリリースで知られる。ローカルからフェスまでを自由に渡り歩き、アルツの愉快で不思議な音世界はゆっくりとだが確実に浸透中!!! さらなるWALTZ、ADaltz名義でのブート制作や、国内外のアーティストの数々のリミックスなど、今後も目がはなせない存在である。近作では、BOREDOMSのリミックス「VOALTZ」「ANT10」、UKAWANIMATIONへの参加やCMのプロダクションなどでも手腕を振るう。今作では、ハミロ・ムソットのトラックをよりダンスフロアな解釈で料理！！！

SELECT：　Shhhhh
LOS ANOS LUZ DISCOSの魅力にいち早く取り憑かれたDJ。活動の拠点は東高円寺グラスルーツ。新しいワールドの価値観をダンスフロアにて提案中。数々のパーティを渡り歩き、伝説のハードコアとダンスミュージックの祭典"SUN"のオーガナイザーとしても知られる。09年3月にはプロモーション来日した、ZZKレコードのAnna BrowneをMOODMANとともに迎える。

マスタリング：　KABAMIX (Takashi Kabashima)
アンダーグラウンドパーティーや多種多様な野外イベントのサウンドデザイン、ALTZの専属ライヴPAとしても知られ、あの細野晴臣氏からも指名を受ける。レコーディング、マスタリングエンジニアとしても多様なアーティストの作品に関わり、最近ではボアダムスのALTZ REMIX"VOALTZ"や赤塚不二夫トリビュート盤のEYEとの共作などがある。

LOS ANOS LUZ DISCOS ･･･『Unicorismo』はこのレーベルの音源からコンパイルされています。

ALTZ web site ･･･ラストトラックのRE-EDITを担当したALTZ。新作『Escape』は8/5発売！

SHOJI GOTO web site ･･･ファンタジックなアートワークを手掛けた後藤章治氏。

OOIOO web site ･･･後藤章治氏と深い関係のOOIOO。新作『ARMONICO HEWA』は8/5発売！