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【特集】エレクトリック・マイルス

2009年7月28日 (火)

 


 『Kind of Blue』や『Four & More』よりも、『On The Corner』や『Bitches Brew』を偏執的に愛する”電化マイルス狂”に捧げる「Waxpoetics JAPAN」最新号。マイルス・デイヴィスの”インプロヴィゼーション・ファンク”時代に焦点を当て、その当時彼のバンドに在籍していたマイケル・ヘンダーソン(b)、ピート・コージー(g)、そして、ジェイムズ・エムトゥーメ(per)に、紙媒体においてはほぼ初という興味深いインタビューを試みている。ファンクともロックとも相容れ、または、相容れることができない、ジャズ史上最大の”電撃バップ”(バップではないんだけれど・・・)。この夏、夜毎風呂あがりに、感電してみる手はない。 


Waxpoetics JAPAN No.5
      
Waxpoetics JAPAN No.5

 有名無名に関わらず本物のブラック・ミュージックを“追求”し続け、世界中の真の音楽好きから最も信頼される音楽誌の日本版第5号。特集は、ブラック・ミュージック・ファンならば目を逸らすことが許されない、マイルス・デイヴィスのエレクトリック期。70年代初期当時のマイルス・バンドの屋台骨を支えたマイケル・ヘンダーソン(b)、ピート・コージー(g)、ジェイムズ・エムトゥーメ(per)へのインタビュー等、貴重写真の掲載(マイルス&エムトゥーメの2ショット@空港ロビー!)と共に”電化マイルス”の伝説を振り返る。


▼マイルス・デイヴィス関連書籍

レコードコレクターズ: 2009年5月号
マイルス・デイヴィスとは誰か
マイルス・デイヴィス自叙伝 1
マイルスを聴け! Version8
マイルス・デイヴィスの生涯
マイルス・デイヴィスの真実
定本マイルス・デイヴィス ジャズ批評ブックス




 2007年にリリースされた6枚組ボックス・セット『The Complete On The Corner Sessions』のライナーノーツを寄稿していることでも知られる音楽ジャーナリスト/写真家のトム・テレルは、マイルスの革命的なエレクトリック・バンド(1972〜75年)をゴミのように扱った音楽評論家たちを許すことができないでいた、と今回の「Waxpoetics JAPAN」特集記事の冒頭に綴っている。新しく誕生した音楽やその流れを、のべつ幕なしにカテゴライズする一部の評論家連中達にとって、この時期のマイルス・バンドの音は、その真意や意図するところを議論(あるいは盲目的な酷評?)するには打ってつけの雑多性・多面性を持っていたことは確かだが、それこそがマイルスの表現したかったジャズだったのではないだろうか(少なくとも70年代初頭〜中期にかけては)。ジミ・ヘンドリックス、スライ・ストーン、ラヴィ・シャンカール、あるいは、ウッドストック・ジェネレーションに大きく共鳴したマイルスは、モードをかなぐり捨て、サイケデリカルなドぎついカラーのトップスに袖を通し、フリー・インプロヴィゼーションを軸としたバンド・マジックを模索し、迷走し、突き詰めた。「マイルスは一日にして成らず」とはよく言ったもので、「一夜にして”アガ・パン”の世界ができたわけではない」(菊地成孔)というのは、ご存知のところではないだろうか。今では、ブラック・ロックやジャム・サウンドの権化のようなせせこましい語彙で扱われることもしばしの”電化マイルス”だが、実はもっと自由で、もっとハイなサウンドを手に入れ放電していたことに疑いの余地はない。実際、マイルスのキュー出しだけを頼りに、ただの一度もリハーサルを行なわずに演奏をしていたということも、本文中のインタビューでマイケル・ヘンダーソンは明かしている。

Miles Davis
 エレクトリック期のマイルスについては、多角的に様々な研究がなされ、毎度喧々諤々の議論が行なわれるというのがパターンなのだが、今回の「Waxpoetics JAPAN」においての特集には、多くが第三者的視点の仮説にとどまるであろうそのテキストを軽く凌駕する、歴史の生き証人とでも呼ぶべき三人のミュージシャンのレミニセンスが、インタビューという形で掲載されている。上述のマイケル・ヘンダーソン(el-b)に、ピート・コージー(g)、そして、ジェイムズ・エムトゥーメ(per)だ。三者三様、その当時のバンド・サウンドを、「この宇宙で供される最高の料理」、「これまで育ったことがないような木」と振り返っている。あまりにも抽象的な表現だが、なぜか的を得ている気にもさせられてしまう。それぐらいこの時期のマイルス・バンド(マイルス自身)は、偶発的でミステリアスだったということだろう。マイルスのバンドに誘われた理由については、いまだ明確な答えは見つかっていない、と三人が口を揃えるのも頷ける話だ。ともかくも、マイルスが自身の感性をフル活用させるために用意したカンバス、すなわち、この時期のエレクトリック・バンドは、わずか3年余りの短い活動期間ながら、アンサンブルのそれからしてすさまじい速度感をもって進化を遂げ、宇宙から地底までのあらゆるデプスにもぐり込み制覇していくことになる。トランペットのハイ・ノートが70年代の闇夜を切り裂いていくための方法、それは帝王のエゴではなく、バンドの司令塔として自らを機能させること。ゆえに、”電化マイルス”は、マイルスであってマイルスでなし。当時代ならではの集団即興芸術エピキュリアンの屯する場だったのかもしれない。もしくは・・・マイルス版「バンドやろうぜ!」・・・のような単純明快さも?あぁ、この深読み具合は、完全に感電してる証拠。





On The Corner

On The Corner

パーソナル:Miles Davis(tp,org)Dave Liebman(ss,ts)Carlos Garnett(ss,ts)Bennie Maupin(bcl)Chick Corea、Herbie Hancock、Harold Williams(el-p,synth)John Mclaughlin(el-g)David Creamer(el-g)Michael Henderson(el-b)Jack Dejohnette、Billy Hart(ds)Don Alias、Mtume(per)Colin Walcott(sitar)Badal Roy(tabla)

<Rec. 1972>




Filles De Kilimanjaro

Filles De Kilimanjaro

パーソナル:Miles Davis(tp)Wayne Shorter(ts)Chick Corea(p,el-p)Herbie Hancock(el-p)Dave Holland(el-b)Ron Carter(b)Tony Williams(ds)

<Rec. 1968>




Get Up With It

Get Up With It

パーソナル:Miles Davis(tp,org,p,el-p)Dave Liebman、Sonny Fortune(fl)John Stubblefield(ss)Walley Chambers(hca)Reggie Lucas、Pete Cosey、Dominique Gaumont、John McLaughlin、Cornell Dupree(el-g)Keith Jarrett、herbie Hancock(key)Cedric Lawson(el-p,org)Michael Henderson(el-b)Al Foster、Jack Dejohnette、Bernard Purdie(ds)Mtume、Airto Moreira(per)Badal Roy(tabla)Khali Balakrishna(el-sitar)

<Rec. 1970,72,73,74>



In Concert

In Concert

パーソナル:Miles Davis(tp,org)Carlos Garnett(ss)Cedric Lawson(key)Reggie Lucas(el-g)Khali Balakrishna(el-sitar)Michael Henderson(el-b)Al Foster(ds)Mtume(per)Badal Roy(tabla)

<Rec. 1972>




In A Silent Way

In A Silent Way

パーソナル:Miles Davis(tp)Wayne Shorter(ss)Chick Corea、Herbie Hancock(el-p)Joe Zawinul(el-p,org)John McLaughlin(el-g)Dave Holland(el-b)Tony Williams(ds)

<Rec. 1969>




Black Beauty

Black Beauty

パーソナル:Miles Davis(tp)Steve Gross man(ss)Chick Corea(el-p)Dave Holland(el-b)Jack Dejohnette(ds)Airto Moreira(per)

<Rec. 1970>




1969 Miles

1969 Miles

パーソナル:Miles Davis(tp)Wayne Shorter(ss)Chick Corea(el-p)Dave Holland(el-b)Jack Dejohnette(ds)

<Rec. 1969>



Dark Magus

Dark Magus

パーソナル:Miles Davis(tp,org)Dave Liebman(ss,ts)Carlos Garnett(ss,ts)Azar Lawrence(ts)Reggie Lucas、Pete Cosey、Dominique Gaumont(el-g)Michael Henderson(el-b)Al Foster(ds)Mtume(per)

<Rec. 1974>




Bitches Brew

Bitches Brew

パーソナル:Miles Davis(tp,org)Wayne Shorter(ss)Bennie Maupin(bcl)John McLaughlin(el-g)Chick Corea、Joe Zawinul(el-p)Larry Young(el-p)Dave Holland(b)Harvey Brooks(el-b)Jack DeJohnette、Lenny White、Charles Alias(ds)Jim Riley(per)

<Rec. 1969>




At Fillmore

At Fillmore

パーソナル:Miles Davis(tp)Steve Gross man(ss)Chick Corea(el-p)Keith Jarrett(org)Dave Holland(el-b)Jack Dejohnette(ds)Airto Moreira(per)

<Rec. 1970>



Agharta

Agharta

パーソナル:Miles Davis(tp,org)Sonny Fortune(ss,as,fl)Pete Cosey(el-g,synth,per)Reggie Lucas(el-g)Michael Henderson(el-b)Al Foster(ds)Mtume(per)

<Rec. 1975>




Big Fun

Big Fun

パーソナル:Miles Davis(tp)Steve Grossman(ss)Sonny Fortune(ss,fl)Carlos Garnett、Wayne Shorter(ss)Bennie Maupin(bcl)Chick Corea、Herbie Hancock、Lonnie Liston Smith、Larry Young(el-p)Harold Williams(synth)Joe Zawinul(el-p,org)John McLaughlin(el-g)Harvey Brooks、Michael Henderson(el-b)Ron Carter、Dave Holland(b)Billy Cobham、Al Foster、Billy Hart、Jack DeJohnette(ds)Airto Moreira、Mtume(per)Khalil Balakrishna、Bihari Sharma(el-sitar,tambura)Badal Roy(tambla)

<Rec. 1969,70,72>




Tribute To Jack Johnson

Tribute To Jack Johnson

パーソナル:Miles Davis(tp)Steve Grossman(ss)Bennie Maupin(bcl)Herbie Hancock(key)John McLaughlin、Sonny Sharrock(el-g)Michael Henderson、Dave Holland(el-b)Billy Cobham、Jack DeJohnette(ds)

<Rec. 1970>



Pangaea

Pangaea

パーソナル:Miles Davis(tp,org)Sonny Fortune(ss,as,fl)Pete Cosey(el-g,synth,per)Reggie Lucas(el-g)Michael Henderson(el-b)Al Foster(ds)Mtume(per)

<Rec. 1975>




Live Evil

Live Evil

パーソナル:Miles Davis(tp)Gary Bartz(as,ss)Steve Grossman(ss)Wayne Shorter(ss)Keith Jarrett(p,el-p)Chick Corea、Herbie Hancock(key)Joe Zawinul(p,org)Hermeto Pascoal(el-p,whistle,voice)John McLaughlin(el-g)Michael Henderson(el-b)Ron Carter、Dave Holland(b)Billy Cobham、Jack DeJohnette(ds)Airto Moreira(per)Khalil Balakrishna(el-sitar)

<Rec. 1970>




Isle Of Wight

Isle Of Wight

パーソナル:Miles Davis(tp)Gary Bartz(as,ss)Chick Corea、Keith Jarrett(key)Dave Holland(el-b)Jack DeJohnette(ds)Airto Moreira(per)

<Rec. 1970>







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