LOUDインタビュー: Chase & Status

2009年7月28日 (火)

interview

Chase & Status

ソウル・ミルトンとウィル・ケナードからなるチェイス&ステイタス。'04年のデビュー以来、ミクスチャー感あふれるフロア・キラーを数多く生み出してきた、UKのプロデューサー・デュオだ。今年に入ってからはザ・プロディジー「Omen」のリミキサーに抜擢されたり、スヌープ・ドッグからトラック提供のオファーを受けたりと、ますます目覚ましい活躍を見せている。昨年リリースしたファースト・アルバム『More Than Alot』が、UKのダンス・チャートを席巻したことで、二人の活躍に拍車がかかったのだ。
そんな『More Than Alot』の日本盤が、7/8にリリースされた。ドラムンベースやヒップホップをベースに、最新のダンス・ロックやダブ・ステップを吸収したチェイス&ステイタスのハイブリッド・サウンドは、ここ日本でも幅広い層のリスナーを虜にするだろう。
ダンス・ミュージック・ファン必聴の『More Than Alot』。その制作風景について、メンバーの二人を代表してウィル・ケナードに話を聞いた。

スヌープは僕らがキッズだった頃のヒーローだから、
僕らの曲にボーカルをのせてくれたなんて夢のようだ。
ザ・プロディジーのリミキサーに抜擢されたのも光栄だよ。

ロックもドラムンベースもエネルギッシュな音楽だし、スピード感もある。
だからその融合は自然な流れとも言える。


【チェイス&ステイタスの誕生から大ブレイクまで】

--- まずはプロジェクト名、チェイス&ステイタスの由来から聞かせてください。これは二人のニック・ネームか何かですか?

ウィル・ケナード: ははは、特に意味はないんだ。僕らが若かった頃、二人ともグラフィティーが好きで、僕らが出会う前からそれぞれこの名前で活動していたんだ。DJとしてもその名前を続けて使っていたから、二人で一緒にやるようになった今も、そのままキープしているだけ。特に面白いってこともないよね(笑)。ちなみに僕がステイタスで、ソウルがチェイスだよ。

--- 二人はいつ、どのように知り合い、チェイス&ステイタスを始動させたんですか?

ウィル・ケナード: 共通の友人を通して知り合ったんだ。'99年頃だったかな。はじめは大きなレイヴやパーティーで会った時に話をする感じだったんだけど、音楽の趣味が似ていたことから友達になった。僕の部屋で一緒にDJしながら、当時僕らが憧れていたDJのように、いつの日かなりたいねってよく話していたよ。その後二人とも偶然同じマンチェスターの大学に進んだんだけど、お互い成績がヒドくてね。1年で大学をやめて、共通の夢を追いかけるために、お金を出し合って機材を買いそろえた。その後の1年間はどこへも出かけず、シャワーも浴びずに、どうやって曲をつくるのか二人で研究したよ。

--- チェイス&ステイタスは、ザ・プロディジーのシングル「Omen」をリミックスしたことと、スヌープ・ドッグ「Snoop Dogg Millionaire」のバックトラックにあなた達の「Eastern Jam」が使われたことで、世界的に注目されるようになりましたね。このターニングポイントを二人はどう受け止めていますか?

ウィル・ケナード: 素晴らしいことだと思っている。スヌープは僕らがキッズだった頃のヒーローだから、僕らの曲にボーカルをのせてくれたなんて夢のようだ。そのことで露出が増え、アメリカでも名前が知られるようになったし、いろんなジャンルの人からコンタクトがくるようになった。もちろんザ・プロディジーのリミキサーに抜擢されたのも光栄だよ。彼らは、僕らが初めて聴いたダンス・ミュージック・アーティストの一組だからね。そんなアーティストと実際に会ったり、一緒にステージ入りしたり...まるで現実の出来事じゃないような気分だった。本当に起こったことだなんていまだに信じられない。人から“スゴイじゃん”って言われても、“そうだね”としか言いようがない。他に何も言えないよ。

--- その全てが、『More Than Alot』の大ヒットから始まりましたね。アルバム・タイトルにはどんな意味があるんですか?

ウィル・ケナード: これはストリート・スラングなんだ。ロンドンでは何か良い物事があると、“A LOT”って言うんだ。かっこいい曲があったりしても、“この曲はA LOTだね”みたいな感じで使う。だから友達の間で、何かクールなことがあったり良い曲を聴いたら、“A LOT以上にヤバい”という意味で、“MORE THAN A LOT”って言っているんだけど、その響きがいいなと思って。同時にこのアルバムは、いろんなスタイルに挑戦している、様々なインスピレーションを含んだアルバムにしたかったから、このタイトルがしっくりきたんだ。


【ヒップホップ、ダブ・ステップとの密な関係】

--- トラックのサンプリング・ネタも秀逸ですね。例えばグライムMCのケイノをフィーチャーした先行シングル「Against All Odds」には、ルー・ロウルズによるソウル・クラシック「Dead End Street」と、お馴染みのB-BOYブレイクス「Apache」をネタ使いしていると思うんですが、この面白いアイディアはどうやって思いついたんですか?

ウィル・ケナード: 「Apache」のブレイクはとても有名で、相当な数の曲にサンプルされているよね。そんなお馴染みのブレイクをここでも使いたかったんだ。ルー・ロウルズのアイディアは、もともとケイノのアルバム用に曲を書いていた時に思いついたんだ。レーベル側が“今、ケイノのアルバムに求めているのはこういう感じの音なんだ”と、いくつかアルバムに入る予定の曲を聴かせてくれたんだけど、そのミーティングの帰りに、レコード屋で古いソウルやファンクのレコードを何枚も何枚も聴いてね。その中から見つけたのが、シカゴでライブ録音されたルー・ロウルズのレコードだったのさ。サウンドが素晴らしかったから、サンプルして加工した。完成した曲をケイノに渡したら、とても気に入ってもらえたよ。ただ、タイミング的に彼のアルバムに入れるには遅すぎたから、僕らのアルバムに入れようって話になったんだ。

--- また、スヌープ・ドッグ「Snoop Dogg Millionaire」の土台にもなったダブ・ステップ・チューン「Eastern Jam」には、ボリウッド映画『Devdas』の劇中歌を使用しているそうですね。

ウィル・ケナード: インド人の友達が、その映画を見た直後に“この曲すごくいいから聴いてみて”とスタジオに持って来たんだけど、ちょうど僕らはその時「Eastern Jam」をつくっていたから、上手く合わせられないかなと思ってやってみたんだよね。だから僕らの成功は、その友達のおかげかもね。彼には感謝しなくちゃ(笑)。「Eastern Jam」のもっとメロウなバージョンもあるんだけど、とりあえずダンス・フロア向けの感じにならないかといろいろ試してみて、だんだんハードにしていったんだ。

--- 「Eastern Jam」のダブ・ステップ感や、「Against All Odds」にケイノがフィーチャーされていることから察するに、あなた達にはドラムンベース・シーンだけでなく、ダブ・ステップやグライム界隈との交流も盛んにありそうですね。各々は独立したシーン、もしくは地域色の色濃いシーンのようにも見えるんですが、実際の現場レベルではアーティスト間にパイプが存在するのでしょうか?

ウィル・ケナード: 今はよりそうなっていると思う。インターネットのおかげだね。今の若い人達は昔よりかたよっていないと思う。ジャンルどうこうより、音楽が良いか悪いかだけで判断していると思うな。僕らがDJする時も、ヒップホップ、ドラムンベース、レゲエ、ダブ・ステップ、ロック、エレクトロ、ハウスなど、いろいろ混ぜている。みんな楽しんでくれているよ。僕が若かった頃は、ドラムンベースを聴くってことは、ハウスは嫌いっていうことだった。でも今は、いろんなジャンルを混ぜた面白いイベントがあちこちで行われている。とても良いことだと思うな。僕らがアルバムでやりたかったこともそれと同じ。いろんなスタイルで、純粋に良いヴァイブを注入したかったんだ。ジャンルに関係なく、良い音楽として楽しめるアルバムをつくりたかったんのさ。


【ロック要素の投入】

--- プランBをゲストに迎えた「Pieces」もキラーですね! 「Pieces」のようなロック感を前面に押し出したハードコアなダンス・ビートは、ペンデュラムやザ・ケミスツの活躍もあって、今大きな注目を集めています。こういった現象については、どう捉えていますか?

ウィル・ケナード: ロックもドラムンベースもエネルギッシュな音楽だし、スピード感もある。だからその融合は自然な流れとも言えるね。「Pieces」の構成はソウルで始まって、徐々にロックになっていくんだけど、プランBのおかげでこういう出来になった。彼は才能ある素晴らしいアーティストだよ。ペンデュラムのライブはすごいし、曲もイイよね。でも僕らは彼らみたいにならないよう気をつけている。よりアーバンな感覚が僕らにはあると思うし、もっといろんなサウンドをブレンドしたいからね。ジャンルをクレイジーに合わせて、まだどこにもない新しい音楽をつくりたいと思っているんだ。あらゆる実験はすでにされつくしてしまった感があるから、オリジナルのサウンドをつくるのはとても難しいけど、挑戦しがいがある。

--- ダンス・ミュージックからヒップホップ、ロック・ファンまで、様々なリスナーを魅了する『More Than Alot』は、チェイス&ステイタスがネクスト・レベルに向かっていることを示す重要盤ですね。今後はどんな活動をしていきたいと思っていますか?

ウィル・ケナード: いろんなジャンルのアーティストとコラボレーションしたいね。例えばホワイト・ライズというUKのロック・バンド。'80sロックぽいサウンドを出す若い子達なんだけど、彼らの『To Lose My Life』というアルバムがかなり良くてね。素晴らしいバンドだから、彼らと一緒に何かしたいと思っている。その際は、人が期待していることとは違うことをやりたいし、彼らには普段のスタイルとは違うようなことをやってもらいたいな。人にサプライズを与えるのは面白いことだと思うし、僕ら自身もみんなの期待とは違ったことをやりたいと思っているからね。でも、とりあえず今はまだアイディアの段階だよ。

--- チェイス&ステイタスとしてのライブ・セットにも期待がかかりますが、バンドでパフォーマンスをすることもあるのでしょうか?

ウィル・ケナード: すでに1回、BBC RADIO 1のフェスティバルで3、4週間前にバンドでやったよ。ドラマーを入れたバンド・フォーメーションにして、ケイノやプランBにも出てもらったんだ。素晴らしかったよ。今後はこの方向性をもっと追求していくと思う。もちろんDJも好きだけど、バンドでフェスや野外のステージに立つと、目の前にいろんな人がいるからDJとはまた違ったヴァイブが味わえるんだ。ライブ・ショーの充実が、次のステップだね。

新譜More Than Alot / Chase & Status
ドラムンベースをベースに、ロック・テクノ・ダブステップ・ブレイクビーツ・エレクトロ・HIP HOPなど 様々な音楽の要素をMIXした、噂のUK2人組が遂に日本上陸!そのミクスチャーな音楽性から昨年ブレイクした PendulumやThe Qemistsと比較される事が多い彼らだが、新しいものを取り入れるアンテナ感とフロア度の高さはダントツ。UKチャートを席巻したこのハイパー・サウンド、是非お試しを!
profile

ROCKを基準にHIP HOP/DRUM’N’BASS/BREAK-BEATS/TECHNO/ELECTRO/DUB-STEPを飲み込み、一気にドカッと吐き出し、怒濤のサウンドを奏でるイギリスはロンドン出身の2人組。
2004年にRENEGADE HARDWAREからリリースされたFUTURE CUTの ‘20 / 20’ のリミックスで、ドラムンベース界に彗星のごとく現れたSAUL MILTON とWILL KENNARDからなるCHASE & STATUS.その後ZINC主宰のBINGO BEATSから”LOVE’S THEME” / “IRON FIST” / “HOODRAD” BAD COMPANY UKが主宰するBC PRESENTSから”HABIT”などを立て続けにりりースし、一躍シーンのアップカミングアーティストとして大注目を浴びる。
2005年BREAKBEAT KAOSからリリースされた “DYPPY MAN FEAT. CAPLETON”はANDY CやFRICTIONなどにプレイされた他、RADIO 1 や1EXTRA / KISS FM等クラブのみならず、世界的にラジオ局のトップチャートにもランクインする記録を残した。
2006年にはBINGO BEATSから ”THE DRUIDS EP”をリリース。
同時に同レーベルのMIX CDシリーズ“BINGO SESSIONS VOL.3”ではBINGOのトラックをMIXし、その後もJENNA Gのデビューアルバムに収録されている “IN LOVE”が世界的なヒットを記録した。現在はリミックスワークにも力を入れており、BROCKIE&ED SOLO “REPRESENTS”やPLAN B “NO GOOD”などを手掛けている。
2007年にはANDY C 主宰のRAM RECORDSより “DUMPLING RIDDIM” / “DISCO” をリリース。UK DANCE CHARTでシングルNO.1 を獲得し、翌年の2008年にリリースした最新アルバム “MORE THAN ALOT” は同チャートでNO.2に輝いた。
このアルバムの押し曲(M:3)の先行配信は、わずか2週間で6,000ダウンロードを記録紙、最新アルバム “MORE THAN ALOT”ではイギリスのみで既に4万枚を売り上げるなど、実力はお墨付き。

<avex オフィシャルサイトより>

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