HMVインタビュー:Smooth Current

2009年6月8日 (月)

interview

Smooth Current

現役トップレベルのDJとして圧倒的知名度と人気を誇る一方、数々の楽曲/リミックス提供で国内外から注目を集めるトラックメイカーとして活動するDJ RYOW a.k.a smooth currentが、満を持してトラックメイカー"Smooth Current"名義で待望のデビューアルバムをリリース!
その記念すべきデビューアルバム『Maintain The Focus』の発売を記念してHMV ONLINEエクスクルーシブのインタビューを敢行。聞き手は、日頃からDJ RYOWさんと交流の深い、HMVスタッフでもあるsKiTT。 当初、居酒屋でお話を伺うという予定も、酒の魔力で(?)話が脱線することを恐れ、MiclifeのJ-44さん、DJ RYOWさんのマネージメントTさん同席のもと、 HMV本社会議室という若干お堅い場所で行うことに。しかしそんな心配をよそにリラックスしたムードでインタビューはスタート。 話はあらぬ方向に脱線しながらも盛り上がり、長丁場に・・・。泣く泣くカットした部分もありましたが、他のインタビューでは読むことのできない"Smooth Current"氏の音楽やシーンに対する想いがひしひしと伝わってくる貴重なインタビューとなりました。

まずは「DJが作ったアルバム」という括りを取っ払って、色んな意味で、ルーキーの気持ち、立ち位置で、偏見や先入観をナシにして音を聴いて欲しかったんだよね。

--- 待望のデビューアルバムですね。

DJ Ryow a.k.a. Smooth Current(以下R):どこいっても「一枚目!?」って不思議がられるんだけどね。

--- いろいろなレーベルからオファーあったそうですが...。

R:いくつか話をもらっていたけど、自分の中ではメジャーであったりインディだったりとかはあんまり関係なくて、それよりも、ちゃんと自分の事を理解してくれいて、その上で、ここだったら、って思える所とやりたいって思っていたんだよね。 そもそも、ベタだけど「音を楽しむ」で音楽だし、そうじゃなくなっちゃうんじゃ、やっててもしょうがないからさ(笑)。

--- そうですね。シーン的にもそこが一番足りないと思いますね。そういう意味でもこの作品で、渇を入れてもらえば。

R:最近、ちょっと刹那的になっているっていうか、リリースした次の月にはなくなっているってことがあまりにも多いよね。商品が溢れすぎていて。特にヒップホップだったり、アンダーグラウンドって言われているジャンルは、間口が広く設けられている分、敗れる夢も多いというか...。

--- 生き残り口は狭いですからね。

R:もったいないなぁって。もちろん、逆にもの凄くいいものも多いし、そんな偉そうな事言える立場じゃないけど、流行や作品を出す事にとらわれ過ぎて、自分の本当のカラーや、詳細なディレクションをせずに世に出てしまっている作品も正直多いと思う。 なので、今回のアルバムは、自分的に、今までブレないでやってきた軌跡というのを提示したかったし、それ相当の時間を費やしているっていうのを、作品を通して感じてもらえたら嬉しいかな。

--- それが今、出す意味ですね。

R:う 〜ん、実はアルバムを出すには、正直あまりいい時期じゃないのかなって思ってたりもするんだけど、でも、だからこそっていうか、世界的に不景気で、暗い話題が多い今こそ、そういうのを関係なく、心から楽しんで聞いて欲しいていうか。なので、敢えて出すって感じだね。 『Blue Chronicle』とかShinSight Trioとか色々やっていた時もアルバムの話は出てて、色々悩んだけど。

--- そうなんですか?

R:リミックスとかもそれなりにやっていたし、あとは、DJでそれだけ長くやってれば曲も作るだろうって、延長で見られていたのもあるとは思う。

--- そこはリョウさんの中ではDJとトラックメイカーとしての住み分けができてた?

R:いや、その時はそこまで考えてなくて。ただDJが好きで、楽しくてしょーがなくてさ(笑)。今でも好きだけど、あの頃は作曲するって事よりも、DJをしている、現場(クラブ)でプレイしている時の気持ちの方が全然強くて。ミックスCDも出していたし、もっとDJとしての立ち位置を作ってしっかり形に残して行きたい、っていうのが念頭にあって。DJとしての自分にファンもついてきてくれるし、それに応えたいっていうのも大きかったかな。あと、トラックメイキングは、自分のスキルが納得するクオリティにまで至ってなかったっていうのもあって。そもそも、その頃は、「DJがアルバム?」って、自分のアルバム自体を出すことにあまり意味を感じてなかったっていうのが正直な所かな。自分がリリースしなくても、世の中にはこんなにいっぱい良い曲あるじゃんって(笑)。自分はそれをプレイして、現場に浸透させる側になりたかった。

--- 素晴らしいですね〜。

R:いやいや、ホントDJが楽しいってだけなのよ(照)。 余談だけど、Shin-Skiが日本に帰ってきてから、一緒に活動していくうちに「アルバムやらないん?絶対やったほうがええで」って言われたんだけど「う〜ん、オレはいいよ、そういうんじゃないから」って(笑)。やっぱトラックメイカーとしてより、DJとして、ある意味プレイヤーとしていたかったっていうのが強かったんだろうね。

--- なるほど。でも、今出すタイミングになったと。

R:自分にとっては今だったのかな。

--- リョウさんの言う、出すタイミングじゃないから出すっていう、そういうの、聞いている人にわかってもらえたらいいですよね。

R:まあ、何より、マイクライフから話もらった時にとても熱いものを感じたって言うのが一番だけど、あとは、DJ Ryow名義でなく、Smooth Current名義で出したいっていうのも承諾してくれたっていうのもあったかな。 って言うのも、DJ名義でリリースすると、どうしてもそこからのフィルターや今までの音、活動履歴から連想するものだけで見られてしまいそうというか。それだとヒップホップを聴いている人以外には伝わりにくいと思うし、まずは「DJが作ったアルバム」という括りを取っ払って、色んな意味で、ルーキーの気持ち、立ち位置で、偏見や先入観をナシにして音を聴いて欲しかったんだよね。売り手からすれば、セールスポイントは少しでも多い方がいいワケだし、ワガママな注文なのかもしれないけど...。

J-44 (Miclife)(以下J):その辺りのセールスに繋がる要素は、本当は気にしないといけないところなんでしょうけど、アーティスト名も短い方が覚えやすいから全然いいんじゃないすか?という軽いノリで、全然気にしてなかったですね(笑)。その代わり、Smooth Current=DJ Ryowというのが、アルバムを通してちゃんと浸透するようにしたいとは思ったし、DJとしてトップレベルで活動しつつ、トラックメイキングでもここまで出来る人は、周りを見渡してもそうはいないと思うんで、DJとトラックメイキングが高いレベルでイコールになった作品だと思いますね。そういう意味でも、今がそれを示す時期だと。

profile

東京出身のDJ/トラックメイカー。空間創りに長けた選曲とスキルを交えた流麗なDJプレイで幅広い支持を集め、ホームイベント『Pleasure』のレジデントの他、日本各地のイベントや海外有力アーティスト達の来日時には欠かせない存在だ。数多くのミックス作品も手掛け、収録曲がレコード店でのセールスに影響力を持つなど、DJとしての「確かな耳」を持つカリスマとして注目を浴びている。DJ活動と並行して、Shin-Ski、Mista Donutとの技巧派トリオ=Levitatorzの一員としても活動。トラック制作の他、MPC・ターンテーブルを駆使したライヴも行っている。リミックス・楽曲提供等で交流を深めていたボストンの奇才InsightとShin-Skiとは、国境を越えたヒップホップ・ユニットShinSight Trioを結成し、アルバム『Shallow Nights Blurry Moon』をリリース。全スクラッチを担当し、アルバムの評価を高めた。トラックメイカー"Smooth Current"として、累計1万枚を超えるアナログとしては異例のビッグ・セールスを叩き出した『GEMS EP』シリーズ、その発展形アルバム『Blue Chronicle』のリリースがある他、Insight、Time Machine、Lushlife、Pete Philly、E-Reece & Core Elements、Shade & Blu-Swing、Midicronica、Inhelit(DJ Chika for Cradle)等、国内外アーティストのリミックス・楽曲提供で、オリジナリティ溢れるサウンドを聴かせている。'08年秋には、サンフランシスコのレーベルOMの顔的存在Mark Farinaによる人気シリーズ『Mushroom Jazz』の最新盤にも楽曲提供し、海外からも高い評価・注目を集めている。長いキャリアで築き上げた実績・人気を誇りながらも、アルバム・スケールでのリリースが無く、待望されていた唯一の存在であったこともあり、事実、メジャー/インディー各社からのアルバム・オファーが多数寄せられた実力者だ。'09年1月には、初のオフィシャル・ミックスCD『Optical Axis』をリリースし、流れるように美しい構成美とセレクションでスケールの違いを見せつけた。'09年6月、デビュー・アルバム『Maintain The Focus』をリリース。