カエターノ･ヴェローゾ新作　『Zii e Zie』

2009年3月3日 (火)

60歳半ばを過ぎて今なお世界に向けて最先端の音を発信し続けるブラジルMPB界のカリスマ、カエターノ･ヴェローゾ。

ベックや映画監督ウォン･カーウァイをはじめ、多くの世界中のアーティストからリスペクトされる偉大な存在であり、また"カエターノ･チルドレン"と称されるミュージシャンが、この地球の至るところにいることも否めない。

小沢健二、小山田圭吾、キリンジ、畠山美由紀･･･カエターノの影響を公言する日本のミュージシャンも枚挙に暇がない。彼らのうちの何人かが1曲ずつセレクトした『カエターノ･ラヴァーズ』(2005)なんていうベスト･アルバムもリリースされているのだから、日本での玄人人気もなかなか手堅いものがある。


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カエターノ･ヴェローゾについて記述し始めるときりがないので、こちらでは簡単なプロフィール（ユニヴァーサル･ミュージック社提供）を。

1942年、ブラジル北東部バイーア州生まれ。
1960年代からリオやサンパウロで活動。ジョアン･ジルベルトの出現によりボサノヴァが確立されて以降のブラジル音楽界において、MPB（注:Musica Popular Brasileiraの略。ブラジルのポップスの総称）と呼ばれる新たな流れを生み出した。
1968年に反軍事政権を謳った【トロピカリズモ】をMPBの朋友ジルベルト･ジルらと共に提唱、強烈な政治告発ソングを歌い、その結果投獄へ。ロンドンでの亡命生活を余儀なくされた。
1972年に母国ブラジルに帰国。その半生を、MPBアーティストはもちろん、多方面のアーティストと積極的に交流を続け、現在でもブラジル･ミュージック･シーンのリーダーとして精力的な活動を続けている。


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さて、噂の最新作『Zii e Zie』。
シンプルで大胆なロック･サウンド、トロピカリア･ムーヴメントの中心として活躍していた頃を想起させる先鋭的な前作『Ce』から実に3年ぶりのリリース。

前作に続き息子モレーノ･ヴェローゾと奇才ギタリスト＝ペドロ・サーがプロデュースを務め、またペドロ・サーを中心とする４ピースのバンド編成で録音。つまり前作とまったく同じメンバーで制作されている。

カエターノは2008年5〜6月の2ヶ月間、リオ・デ・ジャイネイロのクラブ「ヴィヴォ・ヒオ」にて、毎週"オブラ・エン・プログレッソ(進行中の作品)"と題する定期ライヴを敢行。まだリリースされていない未知の作品のためのライヴ、ということで当時から大きな話題となっていた。

その公演の終了後には即スタジオ入り。同6月からはオフィシャルHP上にてライヴ同タイトルの特設ブログをもうけ、レコーディングの進行状況を逐一レポート。またYoutubeでも収録曲の動画閲覧を可能とし、誰もが作品の雰囲気を味わえるよう配慮された。

それから約1年の現在にいたるまでファンたちは皆期待を募らせ続け、
2009年4月、いよいよ待望のリリースとなる。

この作品の当初のタイトルは『Transamba』。「Trans」+「Samba」の造語であると思われるのだが･･･いつの間にやらタイトルは『Zii E Zie』へと変わり、先のTransambaはまるでサブタイトルであるかの如く、ジャケットにも小さく記されている。

正式なタイトルとなった『Zii e Zie』とは、イタリア語で「叔父と叔母」の意。カエターノ自身が、トルコの著名な作家Orhan Pamukの本をイタリア語訳で読んでいた際にインスパイアされたとのこと。ZiiとZieを連ねて書いてみると字面も美しく、また面白い感じがしたのだとか何とか。


厚い信頼を寄せる若い世代とのコラボレーションから生み出される、『Ce』の進化形というべき重厚感を増した刺激的なサウンド。いい意味でシンプルなスカスカ感のあるサウンドは、無理に空間を過多な音で埋めることもなく、カエターノの歌を際立たせている。このあたりは気心知れたプレイヤーやプロデューサー陣の見事なまでの手腕！カエターノの深遠な哲学が、まるで語りを聴いているかのように心に入り込んでくる傑作である。

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カエターノ･ヴェローゾ　『ジー･イ･ジー』
Caetano Veloso　/　Zii e Zie

Perdeu　6:49
Sem cais　(Caetano Veloso / Pedro Sá) 2:36
Por quem?　5:43
Lobão tem razão　4:05
A Cor Amarela　2:16
Base de Guantánamo　4:25
Falso Leblon　2:42
Incompatibilidade de Gênios (Jõao Bosco / Aldir Blanc)　5:28
Tarado ni Você　4:31
Menina da Ria　2:19
Ingenuidade (Serafim Adriano Da Silva)　3:54
Lapa　4:39
Diferentemente　2:43


All words & music:
カエターノ･ヴェローゾ （特記あるものを除く）
Arrangements:
カエターノ･ヴェローゾ、ペドロ･サー、
ヒカルド･ヂアス･ゴメス、マルセロ･カラード
Recorded and mixed:
ダニエル・カウバーリョ&モレーノ・ヴェローゾ
Musicians:
カエターノ・ヴェローゾ Nylon string guitar, voice, claps
ペドロ・サー Electric guitar, vocals, claps
ヒカルﾄﾞ・ヂアス・ゴメス Bass, Rhodes, vocals, claps
マルセロ・カラード Drums, vocals, claps

※リオ・デ・ジャネイロ、ARスタジオ及びエストゥディオ・メガにて録音