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『どこに行くの?』 松井良彦監督インタビュー

2008年2月26日 (火)

無題ドキュメント
「どこ行くの?」 松井良彦監督 インタビュー

 

「どこに行くの?」
 松井良彦監督 インタビュ- 1/7


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2008年3月1日(土) ユーロスペースにて、レイトショー!
初日3月1日(土)、松井良彦監督、柏原収史、あんず、佐野和宏、長澤奈央ほかによる舞台挨拶を予定


--- 『追悼のざわめき』から、22年ぶりの新作ですが、ここまでに至る経緯を教えて頂きたいのですが・・・。

松井良彦(以下、松井) えーっとね、『追悼のざわめき』が終わってから、いろんな会社から企画をもらったんですよ。ただその時にやっぱりね、『追悼のざわめき』の流れのお話が多かったんですよね。だけど僕は、あれで一つの形は終えたと思ったんで。
 それ以降の脚本の話っていうのは、東京の月島のおじいちゃんとおばあちゃんの事件が何にも起こらない、天気の話と近所の誰それが成人式を迎えたとかね、本当、日記のような映画を撮りたいなあって思ってたんですよね。『追悼のざわめき』と真逆の世界って、表面的には見られてたんですね。僕自身は一緒なんですけどもね。
 ハードな映画で孤独感を出すっていうのは、なまいきなようですが、僕には簡単なように思えるんですよ。それよりも、淡々とした映画の中で孤独感を出すっていうのは本当、小津安二郎さんとか成瀬巳喜男さんの力量でないと出せない、難しい世界だと思えるんです、僕には。淡々としていて、孤独感を出して、人をしんみりさせるとか、切なさを味わわせるっていうのは、さらなる才能がないと出来ない。それにチャレンジしたいなって思ったんです。
 『追悼のざわめき』の頃20代の僕は、大島渚さんとか寺山修司さんっていう、とんでもない才能の持ち主である彼らをびっくりさせるような映画を撮りたいなって思って、やってたんですね。
 それ以降は、今お話した通り、淡々とした映画の中で孤独感を出したいなと。自分の中でのさらなるステップアップを図りたいなって思ったんですけど。
 でも世間的にはやはり、『追悼のざわめき』の流れで、表面的にしか受け止められてなかったなと。
 ですから、僕自身が書いた脚本を書いていっても、「これ本当に、松井さんが書いたんですか?」って言うような話になって、噛み合わなかったんですね、世間と僕との意図が。決してね、さぼってたわけではないんですよ。それで20年くらい時間が経ってしまった。
 そういう状況の中ね、毎年『追悼のざわめき』を京都で上映してくれていたこの会社、エースデュース・エンタテインメントの社長の小林くんから、「『追悼のざわめき』をDVDにしませんか?」というお話が来て。

--- そこから、DVD化のお話が?

松井 そうです。それにあたって、「『追悼のざわめき』のDVDをいい成績を出すためにも、新作を作って欲しい」と。ただ、「予算は1000万円で限られてる」と。ただ、「好きなものを撮って下さい」と言われて。
 それまでは、そういうことを言われなかったんですよ。それがとてもうれしくて。
 それで今回急遽、脚本を2ヶ月くらいかけて考えたんです。その時に一番興味があったのが、ニューハーフという人たちでして。『追悼のざわめき』でも、疎外されてる人たち・・・マネキンを愛する人たちとか、小人症の妹を愛してしまう人とか、そういう疎外されてる人たちの中の愛情を撮りたいなと。で、まあニューハーフですから、いろんな偏見を経て、現在に至って生活しているわけですよね?
 それに誰を絡ませたらいいかっていうのを考えた場合に、やはり、何かトラウマを背負っているような人を出したいと。それで、柏原(収史)くん演じるアキラは、孤児院で育って、子供のいない夫婦がやってきて、養子にもらわれたと。で、そこの奥さんは、「いい息子が出来た」「かわいい息子が出来た」と喜ぶんですが、お父さんはそうじゃなかったと。
 で、ホモセクシャルのような状況になって、まともな恋愛なんて、たぶんしてないんですね。香里も香里で、偏見の中で生きてきましたから、まともな恋愛をしてないと。
 まともな恋愛をしたことがない2人が、あることで出会って、そこからお互いのやさしい気持ちである初恋心を抱いて、本来ならやってはいけないあることをしちゃうんですね。それでまあ、この初恋は、成就するのかしないのか・・・と。
 映画ご覧になったんですよね?

--- はい、拝見させて頂きました。

松井 それで、ああいう形で終わりました。ですから、「どうなるのかな?こいつら」ってことで、タイトルがこれですね。

--- 『どこに行くの?』と・・・。

松井 はい、そうですね。それが、これまでの経緯ですかね。

--- 最新作『どこに行くの?』も含めて、今まで一貫して、原作ものではなく、監督のオリジナル・ストーリーから構築されていますが、原作ものに対して、あまりいい印象はありませんか?

松井 いえいえ、それはないですね。いい原作はあったんですよ。だけどそれは、金がかかると。1000万円じゃ到底無理と。そういう原作が3つ4つあるんですよ。なので、オリジナルで書こうと。

--- いい原作で、製作費も多くあれば、今後はそういった作品も撮られるということですか?

松井 そうですね。その辺のこだわりというか、違いは全くないですね。いい原作があって、それを気に入ってしまったら、そこに気持ちの思い込み、ないしは、こだわりはもうそこで生まれたわけなんでね、それを映画にしたいという。それはもう、これまでとさらに違う松井が出てくるかもしれませんし、これまでと一緒かもしれないし。ただもうそれを「創りたい!」と思ったら創りたいんですよ。
 「おもしろい!」「映画にしたい!」と思ったら、「それを映画にしたい!」と、ただそれだけです。


続く・・・

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