インタビュー:二階堂和美1/2

2007年11月7日 (水)


 ミニアルバム『ハミングスイッチ』リリース!
  二階堂和美インタビュー 1/2

テレビから流れてくる「トゥルトゥトゥットゥー」の歌声。

今回のHMVインタビューでは日産マーチのCMソングに起用された「ハミング・スイッチ」を含むミニアルバム『ハミング・スイッチ』を10月24日にリリースした二階堂和美にインタビューを敢行。

彼女は間違いなく"シンガー"でありながら、彼女の歌を聴いた事がない者が抱くいわゆる一般的なイメージとしての"シンガー"とは全く異質の存在だといえます。

二階堂和美

メロディーや言葉といった音楽の既成事実に対して縦横無尽で無邪気なアクセスを試み、聴くものにスリルと発見を与える彼女の歌。この歌を聞けば"人間の声"という偉大なる楽器が持つ可能性に驚くはず。

文中でも語られている通り「こだわりがない」という彼女。その「こだわりのなさ」に潜む稀少な個性を面白がるイルリメやYour Song Is Good、渋谷毅、外山明、イリシット・ツボイといったアクの強い面々との共同作業についてお話を聞いてきました。

(interview/text HMV ONLINE staff)


ハミングスイッチ
二階堂和美/ハミングスイッチ



曲目: ハミング・スイッチ / 関白宣言 with Your Song Is Good / つるべおとし / 真夏の果実(ニカセトラ〜夏模様編) / 卒業(ニカセトラ〜卒業編) / Lovers Rock(弾き語りVer)

 

【プロフィール】

 1974年、広島生まれのSSW。97年頃からソロでの活動を開始し、1999年にはインディーズから初の音源「にかたま」をリリース。その後も「たね I」、「またおとしましたよ」とリリースを重ね、各地でのライブ活動から徐々に話題を獲得していく。
2004年からは実家のある広島に在住しながら海外を含めた各地をライブで飛びまわる。さらにフジロックやロウライフといったフェス/イベント、さらに来日アーティストのサポートなどを重ね、2006年には4枚目アルバム『二階堂和美のアルバム』をリリース。多彩なゲストとともに作り上げられたこの作品は、彼女の歌声の魅力を最大級に感じさせる作品となり高い評価を得た。

ソロ名義以外では、テニスコーツのさやとのユニット"にかスープ&さやソース"。さらにイルリメ、Spdill、ニーハオ!といったアーティストとのコラボレーションも積極的に行っている。
また海外での評価も高く、2007年はデンマークの"Roskilde Festival"、スウェーデンの"Full Pull"に出演している。


 

-さっそくですが最近の二階堂さんの近況はどんな感じですか?

近況ですか? ( 笑 )
いやあの今度のワンマンの準備というか、どうしても私は田舎 ... 広島の片田舎に住んでいるので、ほんとに近況は恥ずかしいくらいに普通です。家族とか近所のおばさんとかと過ごしているんですけど、すごく暇そうに聞こえる感じなのですが意外ととっても忙しくて ( 笑 ) 。パソコンを開く間も無い感じ。なんなんでしょうね、あれ、なんとも言えないんですけど …

- そんなに凄く田舎なんですか?

いや ( 笑 ) 、そんなにすごーく田舎ではないんですけど、お年寄りばっかりいるような街なので。しかも私のいま住んでる実家がお寺なんですよ。だからお寺もやっぱり行事だったりなんだったりで、近所のかなり高年齢の方々が来られたりすることが多くて、その方たちとペースをあわせているとなんかこう ( 笑 ) 、訳のわからない時間が流れていって。しかも甥と姪がほぼ毎日、学校からうちに帰ってくるんですよ。うちはなんせ“おばあちゃんち”ですから。まあそんな生活も、パソコンを開きさえしなければ、非常にいい感じなんですけど、パソコンを開くとそこに仕事が詰まってて逃げたくなる ( 笑 ) 。そんな近況です。

- じゃあ音楽制作に向かうときと普段の生活はどんな感じで切り替えているんですか?

うーん、移動中にリハビリしてくる感じで。でも田舎にもどって3年くらいたつんですけど、最初の方は切り替えが全然上手くいかなかったりしてて、ようやく最近どっちにも絵の具が滲んできたというか、そんなに意識して切り替える感じでは無くなってきてます。あっちにいるときは、合間あいまに暇をみつけてデモを録ってみたりするし。

- 結構自然に切り替えられてるんですね。

そんなつもりです ( 笑 ) 。

- では今回の作品のお話なんですが、タイトル曲「ハミング・スイッチ」は全国放映の CM に起用されてますよね。この一報を聞いた時に僕は正直「お!」と思って、実際の CM みても「あぁ、ニカさんの声がホントに流れてる!」という感じだったんですが、今回の起用に至る経緯は?

はい。経緯は本当にタナボタなんですけど、その CM のディレクターさんが前作の『二階堂和美のアルバム』をすごい気に入ってくださっていたみたいで、お忍びで私のワンマンの弾き語りのライブに来てくださっていたらしいんですよ。で、とっても気に入ってくださって、突然「二階堂和美さんにお願いしたい」とお話を頂いて。
( その時点で ) もう曲が出来てたんですよね。それで私はこれを「二階堂さん風に歌って下さい」と言われて最初は CM の 30 秒のところだけ。それを今度はフルバージョンにしよう!って事で作曲家の方が作られて、私は CM で流れた部分にもっていく 1 番 2 番の ( 歌詞を ) を作るということで … 難しい ( 笑 ) 。 テーマは「幸せ」ですといわれて「はー、そうですか … 」みたいな ( 笑 ) 。
でも楽しくできましたね。そういう条件がある程度あるときの方がやり易いというか、私は何でも自由にどうぞって言われると何から手をつけたらいいかわからなくなっちゃうんですけど、ある程度制限されたり要望を言われたりすると、逆に職人魂がでてくるというか「よっしゃ!」みたいな気持ちが出てくるので、そういう作り方は嫌いじゃないですね

- じゃあそういう CM 曲依頼のお話とかは嬉しい?

嬉しいですね。これまでも CM のお仕事って何回か頂いた事はあるんですけど、大体凄くタイトなスケジュールでやられているので。「明日いけますか?」とか「明後日いけますか?」という感じなんですね。そういう状況であるのに、片田舎に住んでる私を呼んで ( 笑 ) 。 30 秒とか 15 秒のものを録るために、呼んでくださるというのは自分の曲が使われるっていうのとまた違って、ご所望下さったというかそういうのは嬉しいです。

-CM を作られた方は二階堂さんの歌声に惚れたんですね。

そう聞いてます ( 笑 ) 。恐縮です。

-( 笑 ) 実際に全国の TV とかで流れて、例えば全然自分の音楽を聴いた事がないひととか、親戚のおばちゃんとかからの反応もあったりしますか?

あぁ ( 笑 ) もうそれはそれは効果絶大で!ほんとに田舎に住んでいるので、余計に説得力がありました ( 笑 ) 。今までは田舎に住んでて「音楽やってるらしいよ」って言われてても、近所の方には趣味でやってる程度だろうと思われてたんですけど、コマーシャルに起用されたというのは非常に、その … 助かりましたね ( 笑 ) 。生活しやすくなりました。

 

- あはは、なるほど。で、ちょっと話はかわるんですけど二階堂さん自身は CM ソングに対して子供の頃の思い出とか体験ってあります?

ありますね!私はほんとに子供の頃、小学生中学生くらいまでは特にテレビからの影響というのがほとんどだったので、 CM とかは必ず真似してたりもう凄い影響受けていました。特にまだビデオとか無かった頃だったりすると、凄い集中力でテレビの歌番組とか CM を観るのでね。凄い効果とかも感じるし、刷り込まれてる感覚とかあるじゃないですか?ナツメロ番組とか、そういうので CM ソングのワンフレーズだけ聴いても「うわー、なつかしい」ってなったり。

「ハミング・スイッチ」は日産マーチのCM曲  
   

- じゃあ音楽の原体験としてそういう影響はあるんですね。

うん、そうですね。

   
「バンドには、もうめちゃくちゃ憧れますね!


- 今回の作品でも邦楽のカヴァー曲を取り上げられてますけど、二階堂さんご自身の思い入れのある歌謡曲とかヒット曲とか、そのへんはどういう音楽遍歴を辿って来たんですか?

あのー、ほんとにベストテンとかトップテンとかのところで、ずっと真似してきたんですよね中学校くらいまで。もうほとんどがそこから来ていて、カセットとかレコードとか CD っていうのは松田聖子さんくらいしか家にはないような感じで、あんまり自分では積極的にいかずに、姉がもってる松田聖子とか、父がもってるなんかとか、友達が持ってるブルーハーツとかそんな感じで。それ以外はもっぱら TV から聴いていたという感じですね。
でも、今回の作品で取り上げている作品っていうのは実はそういう昔からの思い入れっていうのは無くて、逆に大人になってあらためて出会って「わー凄い良い曲なんだな!」って歌わせて頂きたくなったという感じなので、逆に昔から聴いてて前奏まで全部歌えちゃうっていうのはやりづらいですね。オリジナルが沁み込んでいて。

- あぁ、原曲に近づけないといけないとかおもって …

そうそう、真似が下手に得意なもんですから ( 笑 ) 。

- うーん、確かに昔「関白宣言」とか聴いてもそんなにのめりこめなかったけど、今聴くと凄く良い曲に聴こえたりします。

うん ( 笑 ) そうですよね。私は友達の結婚式とかで色々歌わされることが多くて、それは実はゆっくり楽しめなくなるからあんまり嬉しくないんですけど( 笑 )、そこで何を歌うかっていうときに、とある友達に『「関白宣言」歌えばいいじゃん』って言われて『いや一番しか知らんわ』って。それでそのときは流してたんですけど、その半年後くらいにたまたまフルバージョンのさだまさしさんのオリジナルを三番まで聴いて「なんて良い歌詞なんだ!これはちょっと歌いたい!」と。その後、弾き語りでやってたら予想以上に反応が良かったんですよね。
既婚の女性とか … 妙齢の ( 笑 ) 女性がやたら感動してくれるんですよね。で、 Your Song Is Good と一緒にツーマンやろうってときに、これは是非一緒にやってみたいなと思って。 実際は予想以上でした。 今回は一人で歌わせて頂いたんですけど、デュエットバージョンも録ったらいいなーとは思ってるんです。

- なるほど。それで今 Your Song Is Good の話が出たんですけど、二階堂さんから見た彼らの魅力ってどんなところですか?

彼らは仲が良いバンドなんですよね。距離感が傍から見てて丁度いいというか。
私とメンバーとメンバー同士の距離がそう違わないんじゃないか?と一瞬思わせるくらい、なんかダラダラしたところが無いんですよね。男の人のバンドとかだとともするとその辺で疎外感を感じる事もあったりするんですけど、彼らはメンバー同士の会話も、なんていうか ” 喧嘩しそうに無い ” って言うか。
なんていったらいいかわかんないけど ( 笑 ) 。

- 楽しそう?

そうですね。リーダーのジェイジェイさん( サイトウ"JxJx"ジュン ) にみんなが絶対的な信頼を置いてる感じも居心地がいいし、特にこの「関白宣言」をやるっていう事になったときに、メンバーの半分くらいが既婚者でいらっしゃって。その感じもなんかマッチしてるなーと自分では思ったんですけど。

- あ、そういう裏テーマ的なとこもあったんですね。

そうそう ( 笑 ) 、でもほんとに良いバンドですね。もちろんサウンドの好みとか、彼らの方が詳しいですけど、世代も私と同じくらいだし。世代も私と同じくらいだし。とにかく人柄が好きなんです。

- 二階堂さん自身は、そういう「バンド!」っていう感じには憧れがあったりするんですか?

あー、もうめちゃくちゃ憧れますね、うらやましいですよ。「なんで私はできないんだろう」ってちょっと卑屈になりますけど。あははは ( 笑 )

-( 笑 )… ではさらに収録曲についておうかがいしますね。「つるべおとし」という曲、これは渋谷 ( 毅 ) さんと外山 ( 明 ) さんと録音されている曲で、渋谷さんのブログに「これまでお蔵入りしていた曲が遂に陽の目をみる」というようなことが書いてあったんですけど、この曲との出会いというのは?

これはもう何十年かまえに渋谷さんが作られた曲らしいんですけど、ライブで渋谷さんと共演させて頂いたときに、渋谷さんが渋谷さんが「これ二階堂さんが歌ってみたらいいんじゃないかな」と言って楽譜を貸してくださったんです。
「昔アイドルのために作った曲なんだけど、なんかお蔵入りしちゃったんだよねー」とおっしゃってて、それで見てみたら作詞は松本隆さんって書いてあるし、すごくよい曲で、「是非歌わせてください」って。
それ以前も渋谷さんはライブで機嫌が良くなると ( 笑 ) 、ご自身で弾き語りで歌っておられたらしいんで、渋谷さんファンの中では割と知られた曲らしいんですよね。私も凄くこの曲を気に入って『これアイドルじゃなくて、私くらいの ( 笑 ) が歌ったほうが「しあわせはつるべおとし」 ( という歌詞 ) とかいいんじゃないっすかねぇ?』とか言ったりして。 まぁ渋谷さんはそんなこと全然聞いてないんですけど ( 笑 ) 。でも フランクな方なので、今回の初音源化も「全然いいよー」っておっしゃって下さいました。それで松本隆さんにも了解を頂いて、このたびようやく世に出ました。

- 「つるべおとし」って、タイトルからしてインパクトありますよねぇ。

ね? ( 笑 ) 。だからやっぱりアイドルの曲としては渋すぎた( 笑 )。

 
―続く―


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