―― お二人の出会いから、Fusik 結成に至る経緯を教えてください。
藤枝: Why Sheep? 参加当時から薫さんの存在を存じ上げていましたが、なかなかお会いして話すきっかけはありませんでした。でも薫さんの活動や作品を体験した時に、いつか一緒に音を作ってみたい、一緒にやれたらきっといいものが産まれるというような直感が働いていました。
昨年の5/7、井出靖さん主催 Grand Gallaryの 「Holiday」というイベントにi-depで出演の際に薫さんとご一緒させて貰ったのですが、その際の打ち上げの席で「是非一緒に音を出してみたい」と伝えたところ快くOKしてくれ て、その時薫さんやDSKさんが参加する「Silverstone」のリハーサルに遊びに行ったのを皮切りに、その後代官山Unitで隔月で開催されている彼と岩城健太郎さんのレギュラーイベント「Floatribe」で結成された「Floatribe Live Session」や代官山Airでの「groundrhythm」でのライブに誘って頂いたりと定期的に一緒に音を出すようになりました。今年二月の薫さんのMix CD「groundrhythm 2」のリリパでのライブの帰り道、このライブがとても良かったのですが、いい機会だと思い以前から抱いていた「一緒に作品を作ってみたい」という想いを伝え、Fusik結成となりました。
井上: 藤枝と出会い音楽的な付き合いが始まって、彼のsax奏者としてのハードコアな生き様と技術に触れ、ハウス・ミュージック・セッションと言える上記「groundrhythm 2」リリース・パーティでの演奏とパフォーマンスに決定的に圧倒されたので、話を受けてから自然と彼のサポートをすべきだという思いが芽生え、それまでやっていたことを中断してFusikとして制作をスタートさせました。家が近かったこともポイントだと思います。
―― 本作のレコーディングに際し、音楽的知識の豊富なお二人が、それぞれ異なったアイデアを持ち寄った部分はどんなところでしょうか?
藤枝: 薫さんのイベントや家にお邪魔した際に様々な時代の色々な音を聴かせて貰うのですが、その全ての音に共通するのは独特の「バレアリック感」、そして「フィジカル感」。DJ、ダンスミュージックという視点からの音観はとても素晴らしい体験でした。
井上: お互いのジャズの好みの共通項から始まり、技術は確かなので後はハウス〜ダンス・ミュージック独特の美学やDJ的な視点、身体性にどっぷりハマってもらおうと、ウチでいろいろ聴いたり、パーティーに遊びに来てもらったりしました。70年代後半あたりのジャズ・ミュージシャンがやっているディスコとか、盛り 上がりましたね。
―― 本作のタイトル『Sunset Dance』や、収録曲タイトルに散りばめられた「Rainbow」、「Island」、「Summer」といった共通項を感じさせるキーワードから連想できるイメージについてお聞かせください。
藤枝: アルバムの制作が進行するにつれ、「架空のアイランド・ミュージック」というようなコンセプトが見えてきました。とある島の、様々な儀式や出来事、風景、自然。その島に降り注ぐ光や海岸線に沈みゆく太陽、そしてそこに存在する人々によって行われている祭りだったり、休日の午後のとある風景。ある程度音が出来上がってくると曲の方からタイトルとして相応しいイメージを与えてくれました。
井上: インストの曲にタイトルを付けるアイディア、イメージ力が枯渇していたので、ほとんどのタイトルを藤枝につけてもらいました。20代の時、南国、島、に偏執的に傾倒していたせいか「バレアリック」的な音楽表現が常に自分にはつきまとうので、「架空のアイランド・ミュージック」というコンセプト、イメージに自然と転写していったんだと思います。あと個人的に「Freedom Sunset」という江ノ島展望灯台でやっているフリー・パーティーが制作中にあって、その時に受けたバイブレーションを落とし込んだ部分もあります。
―― 藤枝さんのSax と、井上さんとの作曲のプロセスを教えてください。
藤枝: 様々な方法で作りました。共通しているのはいいアイデアが浮かんだらとりあえずやってみる。そこに産まれたムードを二人で発展させていく、というのは全ての曲に共通していると思います。その作業はセッションにも似た感覚だったかもしれません。白いキャンバスにあるアイデアをとりあえず乗せ、そこに見えてくる色や線を描いているような気持ちでした。
井上: 音楽的な共通体験と会話による擦り合わせと、藤枝伸介のsaxという原点から立ち上がってくるものを煎じ詰めて行く、という感じ。
―― ジャンルやカテゴリーを超える事が、お二人に共通する音楽的ポリシーのひとつかと思いますが、いかがですか?
藤枝: 特にそれを超えることが音楽的なポリシーだとは思っていないのですが、自分がいいと感じられるもの、また直感で閃いたアイデアを信じきる事が大切だと思っていました。それをやり遂げた時、自然とオリジナリティに富んだ作品が出来るはずだと思います。様々なジャンルやカテゴリーはありますが、聴いた後最終的に浮かび上がってくるものが作り手の人間性であったり、またはそれに対する興味だったりというものである時、その垣根を超えたと言えるのかもしれません。逆にある特定のジャンルを想起させるような質感を利用して、映像的、距離的な効果を得ることも出来ると思います。
井上: ジャンルやカテゴリーを超えることはとても必然的であって、かつ偶発的なことでポリシーではありません。
―― お二人それぞれの、これまでの音楽的キャリアとは異なる点、Fusik ならではの効果とは?
藤枝: 薫さんとの制作活動は、今までの自分の音楽キャリアの中で最も自然で且つ発想、演奏に自信を与え続けてくれました。リラックスしながら、自分の興味や直感を素直にぶつける事ができたと感謝しています。
井上: サックスという、とてもフィジカルでリリカルな楽器に影響を受けながら音を作っていくこと。
―― 新ユニット Fusik としての、今後の展望についてお聞かせください。
藤枝: 信頼するミュージシャンを加えた形でのライブを現在構想中です。制作の方も定期的にやって行きたいと思っています。いつか映画のサウンドトラックを作ってみたいです。映像と音の距離感や効果に興味があります。
井上: ライブを展開していくことで、よりリアルに活動していきたいですね。
―― ありがとうございました!