HMVインタビュー: The Orb

2007年8月1日 (水)

  インタビュー
  The Orb
UKクラブミュージックシーンの重鎮、Alex PatersonによるThe Orb。昨年、盟友であるThe KLFのJimmy Cautyらとのユニット Transit Kingsとしてのアルバムリリースはありましたが、The Orbとしては2005年リリースの『Okie Dokie It's The Orb On Kompakt Disco』から2年ぶりとなるアルバム作品『The Dream』が完成。その作品について Alex Patersonにお話をお訊きすることが出来ましたのでお届けします。

The Orb
  The Orb



―― まず新作を作り終え、ご自身で今回の作品をどのように捉えているのでしょうか?


Alex Paterson: 個人的にアルバムの出来には満足しているし、すごく良いアルバムだと思っているよ(笑)。みんなからはThe Orbの最初の2枚に似たような作品だとよくいわれるんだ。


―― The Orbの活動以外にも最近ではTransit Kingsでシングルを出していましたが、この間、どのような活動をし、どのようなことを考えていましたか?




Alex Paterson: Transit KingsはThe Orbとは別のプロジェクトで、またジミー・コーティと一緒に仕事をする口実だったんだ。ガイ・プラットとドム・ベッケンとも一緒だったけど、ジミーはもう音楽をやらないと決め、ガイはコメディアンになったからTransit Kingsはもう終わりだ。ということで残ったのはぼくとドムだけで、彼とは今Dom and AlexからつけたDNAというプロジェクトで、ヒップホップっぽいことをやっているんだ。もうひとつ手掛けているのがニナ・ウォルシュという女性とのRootmastersというバンドで、<Malicious Damage>から10インチ・レコードがもう時期リリースされるよ。


―― Transit Kingsは非常にドリーミーでポップな内容でした。これが今作になんらかの影響を与えていると思いますか?


Alex Paterson: ある意味では影響があったかもしれない。こうして取材を受けたり、ニュー・アルバム用に(新しい)バイオをまとめたりとしているうちに、色々なことを思い出したりするね。学生時代にユースと「誰がスーパートランプの「Crime of the Century」のレコードを買ったのか」と口げんかをしたことを思い出したよ(笑)。1974年の話しだから、ぼくらがどれほど長く付き合っているかわかるだろう?それから様々なことがあったけど、彼とは今でも友達でいるんだ。そして新作の『The Dream』はぼくとユースの40年の歴史の中の1枚なんだ。


―― っていうと『The Dream』はあなたとユースが40年近く歩んできた人生の縮図みたいなものですか?


Alex Paterson: おかしな意味で、そうともそうでないとも言えるね。このアルバムは、ぼくから見たら足りないと思う点もあるけれど、それは作っているぼくらでないとわからないと思う。だけど思っていたことをすべて取り入れてダブル・アルバムにしたら、レコードのセールスに影響がでるなどということも考えなくてはならないので、ダブル・アルバムにはしなかったよ。それに自分たちの持っているものを出しすぎることもしたくなかった。


ファーストやセカンド…サードも…そして4枚目もそうだった。でも『Pomme Fritz』はきちんとしたアルバムといえる作品ではなかった気がする…。『Orbvs Terrarvm』と『Cydonia』は…『Orblivion』をはさんでいるね…ビッグなアルバムだった。『Bicycles & Tricycles』は初めてメジャーなレコード会社から離れてのレコード。2003年にリリースした作品だといっても、4年前のことか。あれ、あのレコードは2004年にリリースしたんだっけ?混乱してきたから次の質問に移ろうか(笑)。


―― あなたの頭の中には様々なタイプの音楽的アイディアが詰まっているので、それをプロジェクト別にリリースするのがあなたなりの表現方法なのでしょうね。


Alex Paterson: そうだと思うよ。ぼくにとってはThe Orbが主な表現方法だ。でも、The Orbではパンクっぽい曲をやったことはなかった、John Peel Session以外ではね。


―― 今回のビッグトピックと言えば、ユースとのコンビが復活していることですが、どのような経緯から彼と再び作業することになったのでしょうか?


Alex Paterson: さっき答えたようなものだけど、彼のことはずいぶんと前から知っているから…どのような経緯でか…彼のスタジオに行ってエンジニアと仕事をさせてもらったところ、すごくいいものができて嬉しい驚きだったんだ。やはりThe Orbには活気があると思い、また一緒にアルバムの制作を開始した。そしてティム(・ブラン)にも参加してもらい…、最初の数曲は他のエンジニアに手掛けてもらいユースのアイディアに加えた。ティムも素晴らしいアイディアを出してくれたよ。どういうアルバムにしようと、みんなでミーティングをして決めるようなことはなく、みんなで集まってできた作品なんだ。


―― その間、シーンはエレクトロの勃興などをきっかけに、よりアップリフティングな盛り上がりを見せていると思います。あなた自身はここ最近のシーンの盛り上がりをどのように捉えているのでしょうか?


Alex Paterson: ダンス・ミュージック、インディー・ロック、ボーイ・バンド…とあるけれど、まぁいいんじゃないかな(笑)。どういうタイプのものでも気にならないね。ぼくはThe Orbがずっと90年代のレイヴ・バンドと思われたら悲しいな。


―― ベテランのアーティストが多い中、若手の台頭も著しくなっています。あなたが最近注目している若きアーティストは誰になるでしょうか? その魅力は?


Alex Paterson: ドイツのレーベル、<Scape>のバンド Deadbeat、またドイツのレーベル、<Kompakt>のThe Field、それからAutolump session。(http://www.autolump.com)をチェックするとわかるよ。それとPrayer Boxは、The Orb初期の頃のベース・プレイヤーのバンドですごくいいんだ


―― まずなんといっても『The Dream』はあなたたちのこれまでのキャリアの中でも屈指の美しさを誇るトラックだと感じました。この楽曲への達成感はかなりのものだったと思うのですが、どのような背景から曲が生まれたのでしょうか?


Alex Paterson: 「『The Dream』はアルバムの収録曲の中でも最後にできた曲なんだ。タイトルはすでに『The Dream』と決まっていたのに、『The Dream』という曲がないことに気がついたのと、アルバムのイントロに聴いている人が引き寄せられるような曲が欲しいと思ったんだ。


―― アルバム・タイトルの話がでたところでの質問ですが…。このアルバムには『The Dream』というタイトルが冠されています、それは未来に向けてのタイトルでしょうか、あるいはノスタルジーへ向けてのでしょうか? タイトルの由来を教えてください。


Alex Paterson: いい質問だね。夢というのは睡眠中に頭の中にあることをDNAパーティクル(微粒子)を通して出てくるものだと思う。DNAを通すということは、つまりDNAとは遺伝情報の担い手なのですでに組み込まれた情報が夢の中で入り混じることもあるから、『The Dream』は過去のものということで、ノスタルジーへ向けてのタイトルだね。


でも"dream on"(=夢でも見てろ)という言い回しがあって、それは未来に向けてのもので、今作の音楽はこういう感じかな…90年代初期にあった音楽的なアイディアを再現しているけれど、インダストリアルな要素やファンキーな要素を取り除き、スライ&ザ・ファミリー・ストーンとロビー・シェイクスピアが融合するような、つまりもっとレゲエ、ソウルっぽいもの。そして今の時代、2007年に使用可能なテクノロジーを使った音楽だと。当時はまだプロトゥールはなく、24トラックにテープを使うという、今のものとは全く違うものだった。まるで古いダブ・レコードのようにね。そういうのをThe Orbのファースト・アルバムで作りたかったんだ。今作ではまたそういうテイストのレコードを作りたいと思ったのだけど、前にはなかった、新しいテクノロジーを使えたというわけだ。今作のタイトルは 『the future academy of noise, rhythm and gardening presents... the dream』という変わったものだけど、このアルバムのタイトルを短く『Dream』にしたんだ。『Adventures Beyond The Ultraworld』を『Ultraworld』と短縮するようにね。みんなタイトルが長いのが好きなようだね。長いタイトルのレコードはしばらく作っていなかったから、久し振りに長くしようと思ったんだ。


―続く―
 
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