―― 『Sceneries Not Songs Vol.1 & 2』の制作前の時期について。もしよければ、メジャー・レーベルを離れた理由を教えていただけますか?
Larry Heard: 初めから分かっていたよ。メジャー・レーベルっていうのは、特にこの20年というもの、ほとんどの場合において、大多数のオーディエンスに対して素早く大量に売れるプロダクトにフォーカスしているのさ。<Alleviated>という小さなレーベルを運営して、<Gherkin>というシカゴのディストリビューション会社と仕事をしていたから、メジャーのやり方を見るのは自分にとって勉強になるのも分かっていた。結局のところ、メジャー・カンパニーと僕はただフィットしなかったというだけさ。人とはちょっと違う音楽を作るアーティストや、メイン・ストリームとみなされないスタイルに没頭しているアーティストの多くは、絶対同じようなことを経験していると思うよ。よくあることさ。
事が進むにつれ、<Mca>には僕がやっていたスタイルの持つポテンシャルについて考える時間なんてないってことが見えてきた。ああいう大きな会社になると、僕の音楽に興味を持ちそうなオーディエンスを探し出して、どうやって彼らに届けるかを計画する時間を割くために他のビジネスをストップすることなんてできないんだよ。彼らは(少なくともUKとUSの部門は)関わりを持つことに興味を持っていた、なぜならその時期“ハウス・ミュージック”のムーヴメント全体、そしてその中の何人かのアーティストについて世間はかなり熱狂していたからね。もしそういう大きさの会社と関わったら、一人の人間として君が「誰」であるのか、君が何をしたいと駆り立てられ、クリエイティヴに表現するのかなんてことは一切考慮されないんだ。大会社っていうのは、音楽を売りはするけど、そこにパーソナルな側面が入り込む余地は無いし、僕にはただ、株主や従業員に対する責任を持っている企業では望めないフリーダムが必要だっただけで、それは今でも同じさ。
―― 『Sceneries Not Songs – Vol.2』を制作した当時のあなたの状況はどのようなものでしたか?
Larry Heard: 特筆すべき状況は無かった。僕はただ、いつもそうしているように、人々が話題にしたり評価してくれたりするような音楽のアイデアを曲にするよう努力していただけだよ。その当時は“スムース・ジャズ”的なスタイルでもっと実験することに興味があったから、このアルバムの多くの曲でそれが顕著だと思う。
―― UKのレーベル、<Mecca>から『Ice Castles』としてリリースされる前、『Sceneries Not Songs – Vol.2』はどういった形でリリースされていたのですか?(というのも、僕は当時まったくVol.2が出ていたのを知らなかったので)
Larry Heard: 元々は『Sceneries Not Songs – Vol.2』というタイトルで、1995年に<Mia Music Group>というUSのレーベルからリリースされた。このレーベルは、その当時僕のマネージメントをしていた2人の人物が始めたものだ。レーベルを手掛けるという点では、彼らにとって最初のベンチャーだった。多分日本までは流通されなかったんだろうけど、市場には出回っていたよ。
―― UKでライセンスされるにあたり、なぜ『Ide Castles』というアルバム・タイトルに変わったのですか?アルバムのエグゼクティヴ・プロデューサーとして、日本でも有名なBill Brewsterの名前がありますが
Larry Heard: その件は、Bill Brewsterが<Mecca Recordings>のディレクターであるRene Gelstonから仕事を任されていた。
―― 今回『Sceneries Not Songs – Vol.2』が10年以上の歳月を経てアートワークも新装してリイシューされるわけですが、あなたはこれについてどう思っていらっしゃいますか?
Larry Heard: 勿論とても嬉しいよ。どんなアーティスト、プロデューサー、ソングライターでもそうだろうけど、最初のリリースから12年経ってもこのアルバムへの関心が存在するなんて、とても嬉しい。
―― 話が少し逸れますが、『Sceneries Not Songs – Vol.1』のアートワークを中西俊夫氏が担当したのはどういった経緯があったのでしょうか?
Larry Heard: 彼は(<Black Market Records>の)Rene Gelstonからデザインを依頼されたんだ。その頃<Major Force>、<Mo’Wax>、そして<Black Market Records>はオフィスをシェアしていた。
―― あなたが鍵盤を弾くとき、頭の中にはどういった風景・イメージが広がっているのでしょうか?また、インストの場合も曲ごとに何かテーマやメッセージのようなものはありますか?
Larry Heard: そのどれでもないよ。どんな曲に取りかかっている時も、“サウンド”そのものが、僕が集中して作業している以上のものなんだ。なぜなら、それがどの曲であれ、曲のムードを創り出すのはサウンドだからさ。あれこれ考えることはしない。それよりもっと“聴いて”、“感じる”のが大事だ。説明するのは難しいけどね。音楽的なアイデアを形作ったら、その後は、それを聴いて自分が思いつくものを心に描くことができる。
―― あなたは鍵盤を弾くことができますが、幼少時代から音楽的な教育を受けていたのでしょうか?
Larry Heard: いや、特には。学校の音楽の授業で2つの楽器のクラスを選択しなければならなくて、でもその時には興味が湧きそうなものは何もなかったんだ。ただ単位を取るためにしなければならないことで。楽器(ドラム)をやるのに興味が湧いたのは、その2年後の17歳の時だった。
―― 最後に。昔あなたの引退説が流れたことがありましたが、あなたが今もこうして活動していることは一ファンとして非常に嬉しく思っています。あなたの作り出す音楽をいつも楽しみに待っている人たちがいる限り、是非作品を作り続けて欲しいと願っています。今後のプランやヴィジョンがあれば、教えて頂けますか?
Larry Heard: 今の時点で言える“プラン”は特に無いよ。僕の興味は、単純にもっと音楽をやること、自分のレーベル<Alleviated>とともに継続していくこと、そして願わくば他のアーティストやヴォーカリストたちとコラボレーションすること。“プラン”を持たない方が安全だよ。もし“プラン”がうまくいかなかったらがっかりするからね。機会が与えられたら、その都度それにアプローチするだけさ。
―― ありがとうございました。