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町田昌弘対談!「here,there,everyone!」第3弾!

2005年6月18日 (土)

町田昌弘、対談企画「here,there,everyone!」第3弾!最終回!
  「町田昌弘×中村一義(100s)」

町田昌弘100sのギタリストとして活躍中の町田昌弘が待望のソロ・アルバム『here,there』をリリース!それに伴って特別対談企画をスタート!その名も、「here,there,everyone!」
彼のソロ・アルバムに参加してくれた豪華ゲスト・ミュージャンを交えて対談をするというこの企画。その対談相手は、なんと、100sで演奏を共にしているメンバー! その中から、小谷美紗子Trioとしても大活躍中の玉田豊夢(Dr)、そしてレキシとして『レキシ』なるソロ・アルバムをリリースした池田貴史(Key)、さらに、100sといえばこの人、中村一義の3人を迎えて、3本連続で連載します!
というわけで、とうとうやってきました。これにて終了!第3弾!対談相手はお待ちかね、
中村一義です!予想を遥かに超える二人の濃密な対談から目を逸らさずにぐぐぐいっとのめりこんで、町田昌弘という人間と中村一義という人間の会話をしかと受け止めてください!それではどうぞ!
(司会進行:保坂壮彦)


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Axe Riverboy / Tu Tu To Tango 町田昌弘 / Here, There

 

中村一義(左)、町田昌弘(右)
 
中村一義(左)、町田昌弘(右)



町田(以下文中、まっちぃ)「それでははじめますか?」
中村(以下文中、カズ)「はい!えー、『here,there』発売おめでとうございます!」
町田「ありがとうございます!おかげさまでね。じゃあ、まずは、このアルバムの感想から聞いちゃおうかな?」
中村「いやぁ、素晴らしいじゃないですか。あのね、僕、あんまり音楽に形容詞を付けるの好きじゃないんでもう“素晴らしい!”ということで(笑)。“良いものは良い”、“悪いものは悪い”だからね

町田「うわぁなんか怖いなぁ、いきなり(笑)」
中村まあ世の中には中途半端なものもあるけど。今回のまっちぃのアルバムは“良い!”し、“素晴らしい!”ということで」
町田「嬉しいなぁ…。今回カズにはね、『クラシック』という曲でコーラスをやってもらったんですけど、もう最後のほうは…」
中村俺だけが唄っている場所があるから、コーラスだけということじゃないよね」
町田「そうだね。あの曲のメロディーラインと歌詞は、是非カズに唄って欲しかったから」
中村最初にまっちぃから『クラシック』のデモをもらったじゃん?そのデモでまっちぃが仮で唄ってた『もう 見えない classic』っていうフレーズが良かったから、“これ本当に俺が唄っていいのかな?”って確認したんだよね?」
町田「そうそう。電話かかってきたからね。“俺が唄っていいのか?”って。まあ、逆に、俺から言わせてもらえれば、このフレーズは中村一義にこそ唄って欲しかったから…。ていうか、実は『クラシック』っていう曲は、最初は“何を伝えたいんだろうか?”っていうのが見えなかったんだよね」
中村「コンセプトが?」

町田「うん。メロディーラインも出てきて、歌詞も出てきたんだけど、明確なものが現れなくてね。“なんでこんな歌詞書いているんだろう?”みたいな。『あぁ 綺麗だ いいんだよ』っていうフレーズが出てきたときに、今って、世の中的に“綺麗なものに対して綺麗だ”って言えない世の中になってきてるじゃん?自分の中で “綺麗だ”っていう感情に確信を持てないから。そういう人が多いわけで。だから“綺麗なものを綺麗と言って何かが悪いんだ?”っていう意味合いの歌詞が出てきたのかなぁって思ったんだよね。でもそれでもまだ“何かが足らないなぁ”ってずっと思ってて…。そこで、この楽曲を演奏してもらってアレンジしてもらうには誰がいいんだろうって考えたときに真っ先に思いついたのがやっぱり100sの音だったんだよね。それで演奏してもらって音がポン!と出て。で、その後に、最後の最後になって『もう 見えない classic』っていうフレーズと歌詞が出てきてね。そこでようやく自分の中で“あー、この曲のコンセプトはこういうことだったんだ!”って思うことが出来たんだよね。楽曲に込めた思いがようやく形になって出てきた。」
中村「だからこそなおさら、“それを俺が唄っちゃっていいんかな?”って思ったんだよね(笑)。ま、でも、まっちぃの中の俺だからいいのかなって思って。でも、100sで演奏するって決まった時点でうちらの関係性ってものが出てくるじゃん?1人が欠けても全然違うものになってしまうっていうさ。だからその100sの関係性の中でまっちぃが俺に唄って欲しいっていうのは自然なことなのかなって思ったけどね。それと、参加することによってまっちぃが表現したいことの一部として成り得るからね

町田「ていうか実は、自分のソロ作品であるにも関わらず、自分で唄わなければいけないって思ってなくて。もっと言えばギターも弾かなくてもいいし、ってね。自分の世界が表現できればいいわけで。ソロ作品ってそういうものだと思ったね。そう考えると改めて100sってすげぇなって思った」
中村「やっぱね、まっちぃがギターを選んだ理由と、まっちぃのプロデューサーとしての本質が似てるんだよ。まっちぃがバンドの中で「ボーカリスト」ではない「ギタリスト」として在る本質と、プロデューサーとして“演奏しなくてもいいや”っていうところと繋がってんだよね」
町田「そうなんだよね。結局さ、表現手段としてたまたま俺はギターを弾いているだけでね。ほら、カズが、昔、絵を描いていて、それを辞めて音楽にシフトチェンジして行ったみたいにさ」
中村はいはい」
町田「もし俺が絵が物凄く上手くて、それで表現できるならば、絵を選んでいたと思うしね。書道で表現できてたら書道をやっていたかもしれないし。俺の場合は表現するのにたまたまギターを持ったということであってね。100sのメンバーもみんなそういうところを持っている気がするんだよね。自分を表現するために、ヒロ(山口寛雄)だったらベースをプレイしているし、でもベースだけでは表現しきれない部分もあるから作曲もしているわけじゃん?そういうことだと思うし。池ちゃん(池田貴史)だってキーボードだけじゃなくてもいいはずだし」
中村具体だけを見るメンバーじゃないからね。“俺はギタリストだからギターしか見ない”というメンバーじゃないから。で、そんなメンバーが集まって“俺たちどういう関係性なんだろうか?”というところを突き詰めて、他の物事にもトライして行くじゃない?それは凄いよね、みんな。だからこそ最初に重んじるのは“個人における関係性”なんだよね。まっちぃだったら“ギターと自分”という部分から始まって、それを応用して行けるし。それは凄いと思う、みんな」
町田「そうだね。それとこのことは100sのメンバーだけに言えることじゃなくてね。Lost In timeの海北大輔だってそうであってね。あいつもベース&ヴォーカルなんだけど、今はヴォーカルだけに専念しているんだけど、あいつにとってもベースって手段のひとつなんだよね」




町田昌弘『here,there』
 
町田昌弘『here,there』
 
町田昌弘『here,there』
 
100s『ALL!!!!!!』
 
町田昌弘『here,there』
 
レキシ『レキシ』


-中村さんがこの町田さんの『here,there』というアルバムに参加してみての実際の感想を教えてもらえませんか?


中村「まっちぃのアルバムに参加しているというよりも、まっちぃに触れているという感覚が強かったですね。やっぱり今回の作品は前作の『キャスバル』名義じゃなくて『町田昌弘』名義じゃない?だからこそさっきも言ったけど、最初は“俺が唄っていいの?”って思ったんだよね。パーソナルな作品だから、“触れちゃっていいのかな?”って。そう考えるとさ、まっちぃがようやく『町田昌弘』というものに出会えた、掴めたのかもしれないって思うよ、ほんと。でね、ここで出会ってしまった以上、『町田昌弘』という人間と付き合っていくのは、これから先、長いよ(笑)」
町田「(笑)。なんていうか、マインド的に『キャノンボール』を100sで演ったときと似てるんだよね。中村一義が作った『キャノンボール』に対して5人が向かって行ったじゃん?あの時の感じと。今回は、俺が作った楽曲にみんなが触れ合ってくれているっていうの?そのところが似てるかなぁと。感覚的に」
中村「それが音楽なんだって。だってさ、そういうのがなければ、出会いとかなければ、いくらテクニックを磨いたって発揮する場が無いもん」
町田「そうだよね。難しいところなんだよね」
中村「うん。上手くかみ合えばいいんだけどね。磨いてきたテクニックと自分の“個”のバランスがばっちり合うようになればいいんだけど、なかなか難しい。でも、100sにいるとそのバランスを上手く取れるんだよね…。そう考えると、こういう俺と同じような気持ちをまっちぃも今回の作品で感じたってことなんじゃないかな」
町田「そう思う。それとさ、この作品を制作していたとき、100sの作品も同時進行で進んでいたけど、100sの現場には『here,there』の話題をあからさまには持ち込まないようにしてたんだよね、実は。あえてね。自分の芯が無くなる気がして」
中村「わかるよ。だって、100sでの自分の“個”にあるアウトプットとインプットと、ソロ作品の“個”にあるアウトプットとインプットがバッティングしたら大変なことになるもん。その辺のバランスを取るのはかなり難しかったんじゃないの?」
町田「その通り(笑)」
中村「だよね?(笑)気をつけないとショートしちゃうもんね」
町田「そうそう。かなりバーストしてしまう危険性を孕みながら作品を構築して行ったね。100sの現場で自分のソロ作品のことを頼ってしまったら、“どこかで頓挫してしまうんじゃないか?”って思ってた」
中村「それはソロをやるにあたって、今回の作品でそんだけでかいことを表現しているからだって。だからこそ出来上がって嬉しかったんだよね」
町田「そうだね。それとさ、『ALL!!!!!!』と『レキシ』と『here,there』が同時進行だったじゃん?その奇遇さというか。それも結構大変だったというかね」
中村「そうだよね。俺の中ではその3作品まとめて3枚組みのアルバムって思ってるんだけどね(笑)」
町田「なるほど(笑)。そうなると合計30曲以上の大作になるわけだ」
中村「でもそう考えると働いたよね?俺たち(笑)」
町田「(笑)。またさ、『ALL!!!!!!』と『レキシ』と『here,there』というバラバラな作品を、みんなで出来たというのが凄いよね。みんなが持っているマインドと向かっている先が一緒だったからかなって、改めて思う」
中村「そうだね」



中村一義『金字塔』
 
中村一義『金字塔』

町田「そういえば、歌詞についてカズに言いたかったことがあってさ」
中村「歌詞?」
町田「俺、中村一義と出会うまでは、歌詞を人のものとして見てたんだよね」
中村「客観視していたってこと?」
町田「うん、“歌詞は人が書くもの。自分は書かないもの”ってね。自分で書く必要が無いものだと思ってた。でも、カズと出会ってから歌詞に関して物凄く影響を受けたんだよね。初めて出会った時に既に『金字塔』、『太陽』、『ERA』という3つの作品があったじゃん?その時、カズの唄と歌詞に触れたときに、 “宇宙人みたいな人だ!この人は!”って思ったんだよね(笑)」
中村「ルックス的にもね(笑)」
町田「(笑)。例えば、“愛している”っていう言葉を使うにしてもさ、普通はさ、上辺だけ掴んじゃうと、“愛してる=恋愛感情”ってなっちゃうじゃん?その一般的な“愛してる”という言葉の意味合いを全然違うところに置く事ができるアーティストに初めて会ったんだよね」
中村「違う言葉で言うっていうこと?」
町田「違う言葉というか、 “愛”という概念を、“君の事を愛している”という恋愛感情の表現とは別ものとして、自分の根幹にある“愛”を、“愛ってこうなんだ!”って表現出来る人に初めて出会った。で、“なんだこの人は!?”って思ってしまって。“なんでこの曲のここに愛って言葉を置くんだろう”とかね」
中村「いびつさを感じたってことかな?」
町田「そうだね。それととにかく“すげぇな”と。歌詞の韻の踏み方もそうだしね。だから『here,there』を創りながら、“あ〜、俺、中村一義に影響されてんなぁ”って思いながら歌詞を書いている自分がいた」
中村「それは言うなって!(苦笑)」
町田「いやいやいやいや。言うよ!(笑)言いたいんだもん。ほんとだから。だって俺が影響を受けたミュージシャンの中の1人なんだから」
中村「いやいや。でも、だからこそやっぱこのアルバムが俺の作品と同じようにいびつなんじゃない?なんか化粧を塗りたくったようなものだったら、もっとストレートにスマートに響く作品になっているはずだもん。それだけ“個”の出発点とういかさ、自分と会ったんだな、っていう。一回自分と会ってきたからこそ出来た作品なんじゃないかなって思うよ」
町田
「そうだね。その通りだね。自分と会ってきた…だね…うん…。ていうか会わなければ創れなかったというのが本音かも。自分から会いに行かないと創れなかった…」


―続く―
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