インタビュー:DJ Drez & M. Williams

2007年5月10日 (木)

☆『Complete Moon Bay Sessions』発売記念インタビュー

初期のBlack Eyed PeasのDJとして知られ、 BahamadiaLiving Legends等の作品への参加やライヴDJとしても活躍、ジャンルを超えた多彩な音楽性を反映させた2枚のオリジナル・アルバムをリリースしたこともあるDJ Drezと、サンフランシスコのジャズ・シーンで25年以上も活躍するベテラン・ピアニストのMarty Williams。この2人による見事なケミストリーの結果、それが『Complete Moon Bay Sessions』です。

プライベートでも深い関係(詳細は下記インタビューに!)にあるDJ DrezとMartyに、そもそもの出会いからMoon Bay Sessionsについて、さらにヒップホップとジャズについて突っ込んでお話を伺いました!


Interview with DJ Drez & Marty Williams


お2人の出会いを教えてください。

DJ Drez (以下D): Martyに出会ったのは、偶然にも彼の娘のジャズ/ソウル・シンガーであるNikkoを通してだよ。

Marty Williams(以下M):そう、実はNikkoは僕の娘なんだ。だからNikkoの事はかなりよく知っているよ!彼女がDrezと付き合いだした時に紹介してくれたんだ。DrezとNikkoは結婚して一緒になっているから、俺はこんなに素晴らしい家族に囲まれていてとても幸せに思うよ。

コラボ・アルバムを作ろうと思ったきっかけは?

D: そもそもは、Martyに俺のアルバム『Capture of Sound』で一曲参加してもらったのがきっかけなんだ。それが凄く素晴らしい仕上がりになったので、自然と一緒に曲を創るようになったり、彼の曲のヒップホップ・リミックスを手掛けたりするようになったんだけど、そうこうしているうちに、アルバムになっていたんだ。

M:僕達はお互いの才能に惚れていたし、尊敬し合っていたんだ。それに、お互いのキャリアの転換期にあったし、今までとは違う事をやりたいと思ったんだ。それで、ターンテーブルとピアノを融合させるようになったんだ。

お互いの音楽観を損なわないように気をつけたことは?

D: Martyは俺に、俺のやる事をやってくれと言ったし、俺もMartyに彼のやる事をやってくれとお願いしたくらいさ。俺達はお互いに信頼しあっているし、お互いの音楽を尊敬し合っているからね。それぐらいだよ。

M:彼の言うとおり、お互いの好みや感覚を尊敬する事だね。

クレジットを見るとMartyがプログラミングをしたり、Drezがドラムを叩いたりしていますが、Martyはビートメイキングもされるのですか?Drezは楽器は何でもこなすのですか?
M: ビート・メイキングもちょっとはするけど、Drezには及ばないけどね。

D:俺は基本的には、ターンテーブルとパーカッションだけど、ピアノも少しだけ弾けるよ。まぁ...ほんの少しだけどね。トランペットも持っているけど、どうやって吹くのかはよくわからないんだ。でもときたまナイスな音が出せるぜ。

カヴァー・ソングを何曲か取上げていますが、どちらの選曲(趣味)でしょうか?思い入れなどありましたら教えてください。

D:俺はBillie Holidayの「Don't Explain」を選んだよ。Nikkoが歌うあの曲が大好きだからさ。Martyは前のアルバムでLes McCannの「Maleah」を既にカヴァーしていて、今回は、俺がそのカヴァーをサンプリングして創ったんだ。「Going Out of My Head」はMartyが選んだんだ。凄く良いアイデアだって思ったし、予想出来なかったくらい素晴らしい作品に仕上がったんじゃないかな。

M:二人でアイデアを出し合ったね。僕が「Going Out of My Head」を選んだのは、昔から大好きな曲だったし、最初に聴いた頃はまだピアノを弾いていなかった’60年代だったけど、すごくインスパイアされたっけなぁ。このアルバムでこの曲を特別な形で演奏出来るって思って選んだんだ。もちろん、その通りになったと思うよ。

印象的な歌を披露してくれたNikkoを紹介してください。今後アルバムデビューは?

M: 最初に言っちゃったけど、Nikkoは僕の娘なんだ。自分でも彼女は本当に素晴らしいと思うし、彼女の綺麗な歌声を聴くのが大好きなんだ。Nikkoの歌声は、僕とDrezと彼女の三人で『Not So Standard』というアルバムが控えているんで、そこで聴けるはずだよ。

D:Nikkoはとても温かくて綺麗な声をした、ジャズ/ソウル・シンガーで、ジャズ・ミュージシャンなんかと一緒にクラブで歌って育ったんだ。俺が彼女に出会ったのは'96年、まだAnonymousがMoonshineという名義で活動していた頃で、俺はそのグループでDJをやっていたんだ。彼女はたまにライブに参加してくれて、歌を歌っていたんだ。その時は彼女がヒップホップのトラックで歌うのしか見たことが無かったんだけど、後で俺の友達が、彼女がジャズを歌っているデモを聴かせてくれて...気がついたら結婚してたんだ。マジだぜ!!

2人のコラボレーションを象徴している曲を1曲挙げるとしたらどれ?理由は?

D: 難しい質問だな...でも「Sun Moon」がふと思い浮かぶかな。何故だかはわからないけどね。ひょっとしたら、この曲の制作過程が、アルバム全体の方向性を決めたからかもね。ガイドラインの無い、とても自由な感じでレコーディングしたからな。

M: 悩むなぁ...たくさんあり過ぎるからなぁ。でも一つ選ぶとしたら、僕は「I Look Fly」だね。ファンキーでヒップホップっぽいけど、ジャズの進行だし、とてもメロディックなブリッジもあるからね。




4Dj Drez / Marty Willams 『Complete Moon Bay Sessions』
1 I Look Fly
2 Don't Know Why feat. Nikko
3 Maleah feat. The Grouch & Zaire Black
4 Real Cool Interlude
5 Island Tree
6 Mr Dj Piano
7 Don't Explain feat. Nikko
8 Jazz Funk
9 The Get Down
10 Keep The Feel feat. Abstract Rude & Mikah 9
11 Moon Bay Interlude
12A Reason For Funk feat. Domonic Dean Breaux
13 Sun Moon
14 Going Out Of My Head
15 Black Shine
16 Differences feat. Zaire Black & Apryl Marie
17 The Big Package
18 We Outro
19 Crawl and Scratch Remix feat. Zaire Black
20 Hush


  初回特典:お香


今後もジャズとヒップホップのコラボはますます盛んになるだろう、いやコラボと言 うより、もはやジャズの一部、ヒップホップの一部となっていくのではないだろう か。そうした未来を占う意味で、本作は一つのマイルストーンとなるべきアルバムで ある。
小川充(DMR)
ドレッズ&マーティーさん(ミックステープの魔術師+天才鍵盤馬鹿一代)の"魔可 不思議コンビ(?)"がマタマタやってくれた!その手のフリークの皆が待ち望んだ" 月港共演作"その完全盤がいよいよ公開されるのだ......。ヒップホップとジャズの 最大公約数的なフュージョンを狙うのではなく、"何故、自分はこの音楽にこれほど までに惹かれるのか"という問いに素直に答えた等身大のセッションだからこそ耳に 頭に体に気持ちイイ。"好き者"だけに独占させとくにはあまりにも惜しい"珠玉のア ルバム"。潮風を感じながら、聴き浸って下さい。
二木崇(D-ST.ENT.)


Jazzとヒップホップの融合(ジョイント)とは、お2人にとってどういうものが理想的であったりしますか?

D: 俺の中ではMiles Davisだろ、Ron CarterGuru(Jazzmatazz)、Marty Williams、Lambert, Hendricks & Ross、Terrence Blanchard、John ColtraneAlice ColtraneDigable Planets、Nikko、Kurt Elling、Haiku De Tat、Gil Scott Heron、そして俺がやっている音楽だね。

M:僕の個人的な意見だけど、理想のコラボレーションはやっぱり......『Complete Moon Bay Sessions』だよ!!

今回のアルバムを聴いて、Gangstarr「Jazz Thing」、またはその頃のヒップホップがアタマを過ぎったリスナーはたくさんいると思います。Drezが最前線で体験してきたこの頃のシーンのヴァイヴスを一言(一言じゃなくてもよいです。。)でいうと?

D: ヒップホップ/ジャズ、アシッド・ジャズなんかは、90年代前半から半ば辺りは、めちゃくちゃ流行ってたな。たくさんの実験がされて、素晴らしいモノもあれば、そうでないモノもあったし。ヒップホップの奴等はジャズを取り入れたし、ジャズ・ミュージシャン達もヒップホップをやろうとしていたしね。でもその中で、それをモノに出来たのは極少数だったんじゃないかな。他はみんな本質を見失っていたと思うよ。俺はその頃に本気でジャズを吸収していたんだ。まるで、スポンジみたいだったよ。

好きな(コラボしてみたい)ジャズ・ピアニスト・レジェンド(ピアニストでなくてもOK)を何人か挙げてください。

D:もし出来るなら、俺はHerbie HancockRamsey LewisAhmad Jamalだね。

M:たくさんいるけど、Quincy Jonesと是非やってみたいね。あとは、ピアニスト以上に、グラミー賞にもノミネートされたヴァイオリン奏者、Jeremy Cohenとコラボレーションしたいな。俺は弦楽器と一緒に演奏するのが大好きなんだ。

1st、2ndアルバム、またはミックステープを聴いてもDrezのただならぬレゲエ愛というのが随所に伝わってきますが、(間違っていたらごめんなさい、)もしかしたら音楽への入り口ってレゲエだったりしますか?

D: レゲエは大好きだよ。でもヒップホップが入り口だったな。ヒップホップがレゲエから受けた影響はとても大きくて、俺はヒップホップにのめり込むと同時に、そのルーツでもあるレゲエにものめり込んでいったんだ。だからじゃないかな

クラブでDJする時バッグに入っているレコードと、家などでプライベートに聴くレコード。それぞれ最近のお気に入りを教えてください。

D: こういう質問をされると、なんて答えればいいかよくわからなくなるんだ。俺の場合、ありすぎてとても選ぶ事なんか出来ないよ。とにかく俺は、山ほどのワールド・ミュージック、ジャズ、ソウルを聴きまくっているよ。

M:最近のお気に入りは、Hank Jones『Torch』Ramsey Lewisの『Ivory Pyramid』、Hampton Hawes『Seance』Junior Mance『Sweet and Lovely』Quincy Jones『Back on The Block』辺りだね。どれも素晴らしい作品だよ。


左から:Hank Jones『Torch』、Hampton Hawes『Seance』、Junior Mance『Sweet and Lovely』、Quincy Jones『Back on The Block』

現在西海岸ローカルで、Drezが注目している最も勢いのある(メジャー・ディールをまだ結んでいない)グループ、MC、シンガーをこっそり教えて頂けませんか?

D: 今回のアルバムにも参加してるZaire Blackだね。あいつはヤバいぜ。今度日本に行く時は、ヤツも一緒に連れていこうと思ってるんだ。

今後のお2人の予定を教えてください。

D:『Jahta Beat Vol.2』だろ、それにZaire Blackと一緒に『9.9』というアルバムを創っているとこなんだ。それに、MartyとNikkoと一緒に『Moon Bay Sessions vol.2』も創ろうって話をしてるんだ。今年の7月にはアジア・ツアーがあって、中国、台湾、タイ、日本に行く予定さ。遊びに来てくれよ。One Love!

M:僕は相変わらず、サンフランシスコ、ベイエリアの色んなクラブでプレイしてるよ。ツアーなんかはまだ決まってないけどね。それに今は、シンガー・ソングライターのDeb Silvaというアーティストのプロデュースもしているところさ。あとは夏の終わり頃から、またスタジオに戻って、俺のカルテットで新しいジャズのアルバムをレコーディングし始める予定だよ。

協力:Miclife
www.miclife.com/



*DJ Drez作品


左から:『Rare Sol 1』(05)、『Capture Of Sound』(03)



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