HMVインタビュー: Richie Hawtin

2007年4月23日 (月)

☆『Nothing Much』発売記念インタビュー!



ドイツ、ベルリンを中心とした中心としたディープ/ミニマルシーンは国境を越え、ジャンルを越え、もはやダンスフロアの中心的サウンドとなっていると言っても過言ではありません。そんなシーンの最重要アーティスト/DJ であるRichie Hawtinによるレーベルがこの<M_nus>の、現在の姿へと進化してきた足跡とこれから進むであろう未来とを纏め上げたものが今回リリースされるこの2枚組CD。

レーベルのベスト盤であるDisc1は<M_nus>の姿を知ってもらうため、特別に日本のファンに向けてコンパイルされ、1999年に新コンセプトとしてリリースされた大ヒット曲「Minus Orange」、世界的に高い人気のDJ/プロデューサーであるRicardo Villalobosによるリミックスでハウス/テクノの跨いだクロスオーバーヒット作品「A Walk In The Park」等を収録。「Orange」以外は初CD化音源という充実した内容。

さらにDisc2では、現在の<M_nus>をイメージさせる Troy PierceによるMixCD作品。最新ヒット曲、未発表曲を交え25曲もの曲を使用し、ミックスによって表情を変える、ミニマルミュージックならではの醍醐味を聴かせ、レーベルの全貌を知るための手助けをしてくれている。間もなく訪れる<M_nus>レーベル10周年に向けて本気で動き出した、テクノ/エレクトロニックミュージックの最重要レーベルを知るにはうってつけの1枚となりました。

そんな作品について、レーベル主宰のRichie Hawtin本人にお話を伺いました!

 


Interview with Richie Hawtin


今回、『Nothing Much』が日本のみの企画としてコンパイルされリリースされることとなった経緯を教えて頂けますか?

Richie Hawtin(以下:R): 我々がやってきたことを集めて、人々に紹介するのに良い時期だと思ったからだよ。昨年もとても興味深い年だったし、僕等がやってきたことを祝って、ファンの人達にCDを楽しんでもらい、好きな曲を再確認してもらったり、また新しい好きな曲を見つけて欲しいと思っているんだ。また、新しい人達にも<<M_nus>が何をやっているかを認識してもらいたかったという事もあるんだ。これにより全てを知ってもらうことは出来ないけれど、でも僕等は誰で、どんなことをしているか、またどういう方向に向かっているかを知ってもらうには、よくまとまったと思っているよ。


『Nothing Much』というタイトルに込められた意味を教えて頂けますか?

R: 『Nothing Much』というタイトルも、色々な意味があるけれど、僕等にとってこのコンピレーションはとてもシリアスなもので、More than Nothing (何よりのもの)なんだ。でも、楽しみもあるから、Nothing Much (たいしたことではない) なんだ。これが僕等がやっていることで、他の誰かになろうとも思っていないし、別にどうやったらビッグ・ヒットが出るかとか成功するかを話し合っているわけでもない。もちろんアイディアを出し合うことはあるけれど、でもこれが、僕等であり、僕等のやっていることで、感じていることなんだ。だからある意味、ライトでイージーなコンピレーションなんだ。冗談っぽくも皮肉的なタイトルで、でもとてもディープで重要なものなんだ。


他の国でも『Nothing Much』はリリースされるのでしょうか?

R: ヨーロッパで発売されるものは、内容が少し違うんだ。Mix CDは一緒だけどね。発売するテリトリーによって違うものにして、コレクトしたくなるようなものにしたかったんだ。どこよりも早く日本で発売することに決めたし、特に日本のバージョンは特別なんだ。<M_nus>の皆は日本をとても身近に感じているし、とても重要な国だと思っている。それを日本の人達にも知ってもらいたかったんだ。


今作のDisc 2でDJ Mixを担当しているTroy Pierceについて紹介していただけますか?

R: 15年来の友達で昔から僕のパーティに来て、よくつるんでいたよ。<M_nus>の中でも重要なプロデューサーであり、不思議なディープでダークなミニマルセットを披露してくれる。このMix CDがあることによって、今回のコンピレーションが完全なものになっていると思うよ。新しい曲を聴きたい人達にも良い内容になっているし、パーティの前後に盛り上がりたい人達にとっても良いと思うしね。

あと『DE9』Magda『She’s A Dancing Machine』ようなクレイジーなカットアップMix CDではないけれど、でも普通のMix CDでもないんだ。複雑なことをしなくても<M_nus>のアーティストは他のアーティストとは少し違うということを見せていると思うし、それが重要だと思う。<M_nus>にはそんなに多くのアーティストはいないけれど、それぞれが新しいものや角度を<M_nus>に吹き込んでいるから、注目を集めることが重要で、だからトロイだったんだ。他の、より認知度のあって、世界中をDJして回っているアーティストではなく、<M_nus>の別の部分、そして新しいファミリーをMix CDを通して、また日本でプレイしてみんなに認識してもらうことが大切なんだ。




Various  『Nothing Much』

Disc 1
01.Heartthrob / Baby Kate (Konrad Black Remix)
02.Troy Pirce vs Heartthrob / Horse Nation Amended
03.Marc Houle / Bay Of Figs
04.Magda / 48 Hours Crack In Your Bass
05.DJ Minx / A Walk In The Park (Villalobos 'Til Thursday' Rmx)
06.Mathew Jonson / Decompression
07.Richie Hawtin / Minus Orange
08.Plastikman / Snark (Ricardo Villalobos Edit)
09.Troy Pierce / 25 Bitches (Gaiser's Too Many Bitches Makeover)
10.Run Stop Restore / Arrows
11.Loco Dice / Seeing Through Shadows

Disc 2
01.Heartthrob / Baby Kate (Troy Pierce Remix)
02.Niederflur / B1
03.Berg Nixon / Victoria Station
04.False / Fed On Youth
05.Troy Pierce / 25 Bitches (Matt John Remix)
06.Heartthrob / Time For Ensor
07.Heartthrob / Baby Kate (Konrad Black Remix)
08.Gaiser / Halflife.4.1
09.Ambivalent / R U Ok Accapella
10.Jpls / Twilight 4
11.Ambivalent / R U Ok
12.Troy Pierce / Horse Nation (Heartthrob Rework)
13.Tractile / To Go
14.Heartthrob / Baby Kate (Robotman Remix)
15.Troy Pierce / King Contrary Man
16.Rojo / R2
17.Rojo / R3
18.Run Stop Restore / Geometry
19.Ambivalent / Cold Hands
20.Jpls / Twilight 8
21.Magda / 48 Hour Crack In Your Bass
22.Gaise vs Heartthrob / Nasty Girl
23.Tractile / Stay Out
24.Jpls / Green 01 (Skoozbot Remix)
25.Marc Houle / Borrwed Gear





今一度、<M_nus>を設立されたキッカケというものをお話頂けますか?

R: 何年も<Plus 8>を運営しているうちに、だんだん大きくなって、会社自体も、10人以上が働くようになり、リリースもとても多くなり、何十人というアーティストを抱えていたんだ。そして1997年から98年にかけてJohn Acquavivaと僕とで、クローズするかスローダウンしようと決めたんだ。やっていても楽しくなくなったんだ、ビジネスのことばかりでね。音楽より仕事が多くなって。だからその状況の逆を作るために<M_nus>を作り、ベーシックに戻りたかったんだ。1人か2人のアーティストだけを扱い、<Plus 8>を始めた頃の楽しさと、少人数での友好関係を再度見出したかったんだよ。ファミリーみたいに、僕と他に2人ほどが手伝ってくれて、初心に戻る機会を作り、変えていったんだ。  


『Nothing Much』にも収録されている「Minus Orange」のリリースは1999年、そこからでも8年という月日が経過していますが、レーベルとして変化したところ、逆に変わっていないところはどういったところですか?

R: もちろん最初とは少しは変わったよ。本来は今よりも小さくしたかったんだ、2、3人のアーティストを扱うぐらいのね。それと今よりも少しだけアートと音楽のコラボレーションという方向性を持っていたかな。今は、当時より少しレーベルが大きくなって、コラボレーションではないけれど、音楽と音楽の持っている審美的な要素、それと生活の一部とをクロスオーバーさせている。それが僕らであり、僕らの仕事であり、やるべきことで、考えや、感じていること。もともとやりたかったことなのさ。10年経って、友人やアーティストと、ファミリーのように仕事ができ、その状況を今作れていることを誇らしく思うよ。  






<M_nus> 関連作品 左から 1. Magda 『She's A Dancing Machine』(2006年) / 2. Various 『Min2max』(2006年) / 3. Various 『Minimize To Maximize』(2005年)/ 4. Richie Hawtin 『De9: Transitions』(2006年)/ 5. Richie Hawtin 『De9: Closer To The Edit』(2001年) 



今現在、ご自身のレーベル以外のアーティストで素晴らしいミニマルミュージックを展開していると思うお気に入りのアーティストを教えていただけますか?

R: 今興味を持っているのは18か19歳の若いイタリアのMassi Doというアーティストだ。本当にクールな音を作り出すんだ。もう1人は僕の友達ケヴィンでAmbivalentという名前で<M_nus>からも今度リリースするんだ。スペシャルなリリースとなるよ。後はちょうどマイアミのコンベンションから帰ってきたばかりだけれど、いろんな人たちからデモをもらったよ。その中には初めて作った、というデモCDもあると思うけれど、とても興味深いものや新しいアイディアがあったよ。


Richie Hawtinさんがテクノ/ミニマルシーンに対して与えた影響というものは計り知れないと思います。そしてここ日本においては他の国以上とも思うのですが、日本のシーンに対して特別思うことはありますか?

R: 今の日本のシーンはとても良いステージにいると思うよ。最初の頃はもっとマーケットが大きいかと感じていたけれど、それはメジャー会社がプロモーションなどに巨額のお金を費やして、必要以上に大きなモノにしてしまっていたんだ。でも今は人々のエネルギーも良いものだし、小さい会社が正しい音楽をきちっとプロモートして、それを理解する人達にコネクトしているよ。あとは、とても興味深い新しい日本人のアーティストが出てきている。僕等も沢山のデモを日本の人達から受け取る。僕の日本人の友達もベルリンに移り住んできて、もっと音楽を学ぼうとしているよ。10年前よりはマーケットは小さくなっているかも知れないけれど、良い状況にあると思うよ。一般的なレベルで言えば、日本は深い伝統があり、それを尊重している。他の多くの文化は、新しいものが入ってくると古い伝統などを捨ててしまう、新しいものだけに興味を向け、古いものは気にしない。日本にはハイテックな文明があり、若い人たちは新しい物に追いかけてはいると思う。でも、古い文化も尊重し、何かしらの形で覚えていて、過去、現在、そして未来のバランスを上手く取ろうとしている。


今度、日本で『Nothing Much』のリリースパーティもありますが、日本でのパーティについてはいかがですか?

<WOMB>等の日本でのパーティでは、来ている人たちのエネルギーを常に感じるよ。僕らや周りの人が盛り上がっているのを見て、その倍盛り上がる。誰かが熱狂していると、その倍熱狂する。時々みんな自分をコントロールできなくなる。それが僕はとても好きなんだ。みんながコントロールを失うと、僕もコントロールを失う、それが繰り返されるとその間にある種の強い熱情・興奮が発生する。それにより新しいレベルに到達できるんだ。日本の人達はいつも新しいレベルに達するし、とても楽しみにしているんだ。

 <M_nus>クルー来日!
 
WOMB MOBILE PROJECT
CLUB PHAZON M_NUS SPECIAL
- NOTHING MUCH -

2007.04.28.SAT @ LAFORET MUSEUM ROPPONGI
OPEN - 21:00  DOOR - ¥6000 / ADV - ¥5000

[DJ] Richie Hawtin, Magda, Troy Pierce [LIVE] Mathew Jonson, Heartthrob, Gaiser [VISUAL PERFOMANCE] Ali.M.Demirel (MAGNETMUS)

http://www.womb.co.jp/



ご自身の今後、そして<M_nus>の今後の活動について教えて頂けますか?

R: 僕らは音楽のみをプロモートしたり、プロデュースをしようとしているわけではなく、感覚的な、審美的なものに興味があるんだ。今は音楽を通してミニマルなアイディアとそのアイディアのバランスによりこの審美的なものを人々は理解している。そして、今年から来年にかけて僕たちは音楽のジャンルに問わず、また音楽以外の芸術、違うエリアのプロダクトデザインを通して、この審美的なものを広げてゆこうと思っているんだ。それが<M_nus>が2007年以降目指していることなんだ。


ありがとうございました!!


協力: Cisco International


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