【インタビュー】DEATH ANGEL / Rob Cavestany

2019年06月01日 (土) 01:00

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ベイエリアのベテラン・スラッシャー、デス・エンジェル。9枚目となるニュー・アルバム『ヒューマニサイド』がリリースになるということで、オリジナル・メンバーでもあるギタリスト、ロブ・キャヴェスタニィにいろいろと話を聞いてみた。

川嶋未来(以下、川嶋):ニュー・アルバム『ヒューマニサイド』がリリースになります。以前のアルバムと比べて、どのような変化がみられるでしょう。ピアノが使われているなど、新たな要素を感じたのですが。

ロブ:そうだね、間違いなくそういう要素は今回推し進めようと思ったものの1つだよ。このアルバムは、とても良い感じでアレンジメント、音楽性が拡張されていると思う。ストレートなスラッシュ以外の要素が取り入れられていてね。まあ、俺たちはもともとそういうやり方をするバンドだとしても知られているけど、やっぱりスラッシュ以外の要素を取り入れるのには十分な注意が必要だよ。きちんとメタルにフィットするようにしなくてはいけないからね。メタルのヴァイブからは大きく逸脱したくはないから、デリケートにバランスに気をつける必要がある。曲作りについても、俺たちはずっと進化し続けてきている。少なくとも俺たちはそう思っているし、そうなるよう頑張っているんだ。音楽や曲を興味深いものにしたいから、複雑な部分はあるけれど、でも同時に聴く人にとってはあまり複雑なものになりすぎないようにしたい。器用でトリッキーなパートも、さりげないものになるようにしているんだよ。もし君がギター・プレイヤーで、俺たちの曲を弾いてみるならば、これらの曲がパッと聴くほど簡単ではないということに気づくだろう。確かに曲は手数が多くて複雑、というか、少なくとも俺たちレベルでプレイできるくらいには複雑だけど、まあ俺たちはヴィルトゥオーソ的なミュージシャンではなくて、ただロックンロールを愛して育ってきて、とにかく一生懸命楽器を演奏をしてきただけだし(笑)、心の中にはパンクな部分もある。だけど、それぞれのメンバーもここ何年かでミュージシャンとして成長し成熟しているし、マークのヴォーカルも、今回のアルバムでは低い音域、低いスクリームとか、過去にやっていなかった風な歌い方もしている。彼のこのアルバムでの歌い方は、とても気に入っているよ。個人的には、ギター・プレイにとてもフィーリングを込めた。とにかく速く、とにかくテクニカルではなくて、可能な限りエモーショナルにプレイをしたよ。音質についても大きな改善があったと思う。特にドラムが非常に太い音になっているし、ベースの音も素晴らしい。

川嶋:歌詞はどのようなテーマに基づいているのですか。読んだ感じでは、アンチ宗教、アンチ資本主義的な主張を強く感じたのですが。

ロブ:そういうつもりはなかったのだけど、そういう見方もできると思う。極端に解釈すればね。厳密にいうと、「アンチ」というほどのことではないよ。とても状況はシリアスであるという方向性の内容だけど。改善されるべき状況にあるということだけど、まあ確かにストレートに「アンチ」というか「ファックユー」というメッセージも込められてるとも言える。俺たちが今日生きているこの世界で、怒りやフラストレーションを撒き散らすような。

川嶋:具体的には今日の社会には、どのような問題があると考えているのでしょう。

ロブ:俺にとっては、人々がお互いの違いを認めないということだよ。これはもちろんみんなが同じようにあるべきだとか、同じように考えるべきだということではない。そんなことは不可能だし。長い時間、長い世代をかけて人間はここまで進化をしてきたのに、考え方が違うからといって、なぜいまだに憎しみが蔓延しているんだろう?

川嶋:アルバム・ジャケットは、人類滅亡後の世界とのことですが。

ロブ:その通りだよ。問題をきちんと知らされ、適切に解決されなければ、厳しい未来が待っているということさ。それがいつのことなのかはわからないけれど、人類がこのままの状況でいるならば、自らの手による種の浄化は避けられないということ。自分たちの生きている地球にきちんと配慮しないのだからね。人類というこの星の寄生虫が取り除かれた後、地球はもっと美しい自然の場所になり、狼たちは人類から地球を取り戻した人間でないものを表しているんだ。

川嶋:このアートワークは、歌詞の内容と直結しているのですね。

ロブ:間違いなく1曲目、タイトル・トラックの内容を表している。他の曲にも、違った視点でこのアートワークとつながりを持つものもある。例えば「ザ・パック」。これは希望を持った内容になっていて、もしお互いが団結をして一緒に戦い、状況を変えていけば、というもの。「レヴェレイション・ソング」なんかも、希望に満ちたヴァイブがある。ただ暗い状況を指摘するだけではないんだ。暗くフラストレーションに満ちたネガティヴなものの見方と、まだ希望があるというもう少し明るい内容とのバランスに気を配ったんだよ。

川嶋:「ザ・パック」はデス・エンジェル・ファンに向けたメタル・アンセムと解釈していました。

ロブ:その通りだよ。デビュー・アルバム『The Ultra-Violence』に入っていた「キル・アズ・ワン」と同じヴァイブを持った曲さ。団結のアンセムみたいな感じの。みんなで団結するということ。「ザ・パック」というのは、色々な意味がある言葉なんだ。これは俺たちバンド自身のことでもあるし、ジャケットに描かれている狼の群れ(=パック)でもある。バンド自身だけでなく、俺たちの周りにいる人たち、ファンや友達、家族がいてくれるおかげで、俺たちは活動を続けられているわけだからね。それからもちろん俺たちのダイハードなファンたち。というのも、俺たちのファンクラブは、「ザ・パック」という名前なんだ。だからこの曲は、俺たちのファン、ファンクラブへのトリビュートでもあるのさ。彼らがいなければ、俺たちも何者でもないからね。ライヴで俺たちが演奏をするときは、俺たちとお客さん双方でエネルギーのやりとりをする。俺たちのファンだけでなく、ヘヴィメタル全体にまで話を広げれば、音楽を通じてみんなが団結できるということ。そういうことが、この曲に込められているんだよ。

川嶋:今回チルドレン・オブ・ボドムのアレキシ・ライホがギターソロでゲスト参加しています。正直なところ、デス・エンジェルとチルドレン・オブ・ボドムは、ぱっとつながらないというか、かなり印象が異なるという気がするのですが。

ロブ:この話は何年か前からあったんだ。チルドレン・オブ・ボドムとは、一緒にツアーをしたことで知り合った。彼らの北米ツアーで、俺たちがメイン・サポート・アクトをやったのさ。確かにちょっと実験的な組み合わせだったね。俺たちはファンベースも、音楽のスタイルや音自体も違うから。だけど、その実験はとてもうまくいったんだよ。今までやったツアーの中でもお気に入りのものになった。俺たちも驚いたよ。何しろ来ているお客さんは、ほとんどチルドレン・オブ・ボドムのファンで、おそらく俺たちのことは知りもしなかっただろうからね。だいたいライヴをやると、デス・エンジェルのTシャツを着ているお客さんが目に入るんだ。俺たちのロゴはわかりやすいから。ところが、その時のツアーでは、デス・エンジェルTシャツのお客さんが1人もいないこともあった。全員がチルドレン・オブ・ボドムのTシャツを着ているような状況で、「ああ、1人くらい俺たちのことを考えてくれるお客さんができればいいけど」なんて思ったのだけど、結果として彼らは俺たちのことを受け入れてくれた。ツアーは大成功だったよ。マーチャンダイズもたくさん売れて、新しいファンもたくさん増えて。ツアー中、毎晩アレキシがギターを弾いているところを見て、それもステージだけでなく、バックステージでウォームアップしているところなども見て、彼のプレイは本当に素晴らしかったし、彼のスタイルも大好きになった。それで、彼の音楽、チルドレン・オブ・ボドムを聴くようになって、彼のファンになったのさ。このアルバムを作るときに、ゲスト・ミュージシャンとギターソロのやりとりをしたいというアイデアがあって、何人か候補がいたのだけど、そのほとんどは「普通の」、つまりスラッシュの世界のミュージシャンたちだった。もうちょっと面白いことはできないか、もっと違ったスタイルの音楽を混ぜ合わせることはできないか、ということで、アレキシにコンタクトをしてみたんだ。そしたら彼はとても忙しいにもかかわらず、というのもニュー・アルバム『ヘックスド』の発売が迫っていたからね、でも時間を作ってソロを弾いてくれたのさ。とてもハッピーだったよ。意外な人選ではあったかもしれないけど、彼のスタイルは、俺のスタイルとある意味近いなんていう人もいるくらいだからね。とてもしっくりきていると思うよ。

川嶋:そもそものヘヴィメタルとの出会いはどのようなものだったのですか。

ロブ:とても昔のことだから、はっきりは思い出せないけど、とても興奮したと思うよ。何しろ最初にヘヴィメタルを聴き始めてから、今までずっと聴き続けているわけだからね。俺の人生は、完全にヘヴィメタル中心だろ(爆笑)。ちょっと思い出してみよう。子供のころにバンドをやろうということになって、知っていると思うけど、最初のデス・エンジェルのメンバーは、全員従兄同士だったんだ。子供たちがただ一緒に遊んでいるような感じだったのさ。音楽をプレイしたいと思った理由は、KISSだったね。厳密には彼らはヘヴィメタルのバンドではないかもしれないけど、少なくとも見た目的にはヘヴィメタルっぽかったよね。KISSも子供にとってはヘヴィだったけれど、本当の意味でのヘヴィメタルを最初に聴いたのは、おそらくBlack Sabbathだったと思う。『We Sold Our Soul For Rock 'N' Roll』のカセットを持っていて、多分これが初めて手にした本当のヘヴィメタルのカセットだったと思う。とにかくこれを聴きまくって、ヘヴィメタルが大好きになったんだ。それで次に買ったのが『Heaven and Hell』だったのだけど、子供だったからヴォーカリストが違うなんて知らなくてね。あ、ごめん、間違えた。最初に持ってたのが『Heaven and Hell』。それで『We Sold Our Soul For Rock 'N' Roll』を買ってみたら、一曲目が「Black Sabbath」だろ?(爆笑)(オジーのモノマネで)”What is this〜”なんて始まったものだから、「何だこりゃ、ヴォーカリストはどうしちゃったんだ!声がめちゃくちゃになってるぞ!』って(笑)。その後ヴォーカルは別人だとわかったわけだけどさ、そんな風に思ったことを覚えているよ。これが俺にとって最初のヘヴィメタルの経験だったね。

川嶋:その後デス・エンジェルを結成し、どんどん演奏がスピード・アップし過激になっていったきっかけは何だったのでしょう。

ロブ:きっかけは、Motorheadを聴いたことだった。当時のベーシスト、デニスが『No Sleep 'til Hammersmith』を持っていてね。みんなであれを聴いて「こりゃ速いぞ!」って。とても興奮したよ。それで俺たちも速く、あんな風にやろうとなったわけさ。それからアイアン・メイデンとかNWOBHMを聴いて、あとはアクセプトの『Restless and Wild』に入っている「Fast as a Shark」を聴いたことも覚えてる。「シット!これは興奮する!」って。それでどんどん速くなっていったんだ。でも、本当のスラッシュという意味では、きっかけはやっぱりMetallicaだったね。クラブで彼らのライヴを見て、「オーマイゴッド!これこそ俺たちがやりたい音楽だ」と思った。あとはLOUDNESSだよ。子供の頃、本当に大好きだった。間違いなくアキラ・タカサキは俺のオリジナルのギター・ヒーローさ。最初に買ったカスタムのジャクソンのギターをスターシェイプにしたくらいだから。アキラの影響でね。LOUDNESSは間違いなく初期の俺に大きな影響を与えているよ。

川嶋:スピード・アップに関して、ハードコア・パンクからの影響はどうでしたか。当時デス・エンジェルも参加していた『Eastern Front - Live At Ruthie's Inn』というオムニバス・アルバムがあり、D.R.I.やRaw Powerなども参加していましたよね。

ロブ:思い出させてくれてありがとう。間違いなくハードコアからの影響もあるよ。スピードに攻撃性、激しさ、怒りを混ぜるスタイルというのは、パンクロックから来たものさ。ベイエリアにはD.R.I.やDead Kennedys、M.D.C.、Verbal Abuseなどが来ていて、彼らとはよく一緒にライヴをやったよ。パンクとメタルのクロスオーバーというのは、間違いなくスラッシュが生まれた理由の1つさ。俺にとっては、スラッシュはある意味パンクとメタルの合体なんだ。DischargeやG.B.H.なんかも大好きだし、Minor Threatとか、Raw Powerとかね。Raw Powerはずっと昔サンフランシスコにやって来て、とても小さいクラブでプレイしたんだ。まだ俺たちが小さすぎて、クラブに入れない年齢のころ。でもなぜかそのショウには入れてもらえてね。何で入れたのかは覚えていないのだけど、とにかくとても小さい時にRaw Powerを見たことを覚えている。彼らの持っているエネルギーは凄かったよ。パンクにはエネルギーがあるからね。


川嶋:やはり当時、新しいムーヴメントが起きているんだという実感、興奮はありましたか。

ロブ:今振り返ってメタルの歴史を語る時に、俺たちがいたあの時、あの場所というのは伝説の宝庫だよ。「本当にそんなに素晴らしかったのか?」と聞かれることもあるけど、答えはイエス。本当に素晴らしかった。面白いことに、というか良かったのは、俺たちはそのことに気づいていなかったということ。俺たちは、ただティーンエイジャーとしての生活を送っていただけだった。高校生で、ただ面白いことを探していただけで。クラブやショウで、全く新鮮で新しい音楽が作られていてさ。エキサイティングで反抗的で。10代の思春期の子供が求めるものがすべてあった。俺たちはほかのバンドよりもちょっとだけ若かったから、ライヴなんかにも忍び込まなくてはいけなくて。まだ正式に入れる年齢じゃなかったからね。こっそりビールを飲んだりとか。年上の、特にExodusやMetallicaはすごく可愛がってくれた。色々アドバイスや指導をしてくれたよ。カーク・ハメットは俺たちのデモをプロデュースしてくれたし、ゲイリー・ホルトは、俺のギターのトレモロ・システム、フロイド・ローズの直し方を教えてくれた。ただ、当時はまったく新しいことが起こっているのだとは気づかなかったよ。俺たちにとってはいつもの生活で、どんなことが起こっているのかの全体像を掴むには、俺たちは若すぎたのさ。シーンの中で、ただただ楽しんで、そのシーンの一部であるという感覚は確実にあったけどね。年齢を重ねるにつれて、だんだんと何が起こっているのかを理解していった。残念ながらね(笑)。ガキだった頃は、若くてバカで、何も考えなくて、とにかく楽しかったんだけど。あの時期を過ごせたことにはとても感謝しているよ。俺たちのルーツだから。楽しかったね。

川嶋:あなたたちの音楽性やイメージに反して、「デス・エンジェル」というバンド名はとてもイーヴルですよね。なぜこのバンド名にしたのでしょう。

ロブ:そうだろ(笑)。俺たちはイーヴルなのが好きなんだよ。当時、「Black Sabbath」なんて究極のバンド名だと思ったものさ。それで「Black Sabbath」みたいなバンド名にしなくちゃいけないと考えていて、最初は「Dark Theory」というのを思いついた。「Dark Theory」だよ。「Black Sabbath」、「Dark Theory」。近いだろ。それでほんの少しの間、その名前でやっていたんだ。結局「デス・エンジェル」になったのは、実はとてもシンプルな話さ。デニス・ペパと俺でショッピング・モールの本屋をブラついていたんだ。それでちょうど店を出る時に、デニスが「デス・エンジェル」というタイトルの本を見つけて指差してね。「見てみろよ、これはバンド名としてクールなんじゃないか?」って。俺も「そうだな」って。これだけのことだったんだよ。

川嶋:80年代後半は、Metallicaの商業的な成功もあり、スラッシュ・メタル・バンドにとってはある意味難しい時代になったと思います。

ロブ:そうだね。

川嶋:その中で、デス・エンジェルはファンクを取り入れていくという方向性をとりましたよね。これはどのような決断だったのでしょう。

ロブ:『The Ultra-Violence』を出した後、聴く音楽の幅も広がって、音楽的にも急激に成長をしたんだ。『The Ultra-Violence』をリリースして、北米だけでなく、ヨーロッパもツアーをした。あの年で、ヨーロッパに2ヶ月も滞在したんだからね。まだとても若かったから、見たもの、体験したものをすべてスポンジのように吸収していったんだよ。音楽にしても同じで、まだセカンド・アルバムだったとはいえ、バンドとしてのキャリアは長くて、その間ずっと同じヘヴィメタルをみんなで聴いていた。ところがそのツアーの時に、どういうわけか違った音楽も聴き始めるようになっていたんだ。その中に、レッド・ホット・チリ・ペッパーズがあって、彼らからの影響は大きかった。その後すぐにフェイス・ノー・モアを聴いてね。彼らはベイエリアのブラザーでもあったから、その後見る機会も多かったのだけど、ファンキーなグルーヴとロックのヘヴィネスを混ぜ合わせたバンドとしては、この2バンドからとても大きな影響を受けたよ。そのエネルギーに魅かれたんだ。レッド・ホット・チリ・ペッパーズのステージを見てね。「ライヴのパフォーマンスがいかにエネルギッシュでなくてはいけないか」というお手本になった。それに、あれらのアルバムに入れたファンキーなパートは、俺にとってはとても自然なものだったんだ。というのも、ロックやヘヴィメタルを聴き始める前に、親父のレコードを色々と聴いていたのだけど、彼は70年代ロックに混じってソウルのレコードも持っていたんだ。小さい頃は、エルトン・ジョンを聴いて、次はスティーヴィー・ワンダー、そしてピンク・フロイド、アース・ウィンド・アンド・ファイアーなんていう感じだったのさ。スティーヴィーのことはずっと好きだよ。凄まじいグルーヴがあって、そのグルーヴィーさはクレイジーなほどさ。ソウルフルでファンキーで。俺の中にはグルーヴィーな音楽とロックが自然と混在していたということ。そういうグルーヴは、俺の体の中にずっと住みついていたんだよ。それで、レッドホットチリペッパーズが、ヘヴィなギターのロックへのファンキーな要素の取り込み方とか、飛び回ってステージダイヴをして、みたいなこととかを教えてくれたのさ。当時はまだああいうことをやっているバンドは多くなかったのだけど、その後は伝染病みたいになってしまってね。みんなが同じことをやり始めて、手がつけられなくなった。だけど、少なくともあれが新鮮なアイデアである時期はあったのさ。それで、俺たちのスタイルに、ファンキーなものを取り込んでいったんだよ。もちろん今でもファンキーな音楽は大好きだけど、今デス・エンジェルにそれらを取り込もうとは思わない。

川嶋:『Frolic Through the Park』、『Act III』という2枚のアルバムを現在の視点で振り返った場合、どのように評価しますか。

ロブ:そうだな、『Frolic Through the Park』は、一番混乱したサウンドのアルバムだと思う(笑)。俺にとっては、そうだな、制御不能に陥ってるというか。だけど、そういうものだったんだよ。このアルバムが存在することは素晴らしいことさ。当時の自分たちの姿を反映しているわけだからね。本当の自分たちを正直に表現したものだから。一方で、俺たちはまだ若くて、適切に曲をアレンジする方法も理解できていなくて、だけど実験をして限界を推し進めようという勇気、大胆さがあったことについては気に入っているよ。ただ、それを良い曲にする、良い音質にするスキルに欠けていただけで。次の『Act III』は、もっと焦点のあったアルバムになっていると思う。個人的には、デス・エンジェルのベストなアルバムの1つだと思う。もちろん、マックス・ノーマンによって非常によくプロデュースされているし、ゲフィン・レコードのメジャーの予算が使えたし。3枚目のアルバムで、俺たちも燃えていたよ。バンドとして10年目に差し掛かり(注:厳密には7-8年目か)、ちょうどこのアルバムのレコーディング中に、俺は21歳になってね。それで、とても年をとった感じがしたのさ。少なくとも当時はね。今考えれば子供のようなものだけど、あの頃は賢く、大人になって、音楽的にもインテレクチュアルなものをやってる気がして、レコーディングも一生懸命やったのさ。だけど、マネジメントやレコード会社が厳しくて、プロであるとはどういうことか、音楽に打ち込むとはどういうことなのかを叩き込まれたんだよ。アレンジし直し、曲の書き直しを散々やらされて、実際うんざりするほどだった。信じられなかったよ。「もっとやれってどういうこと?これでもう十分だろ!これで出来上がりだよ!」って言っても、「ノーノーノー、作業を続けて」なんていう感じでさ。とても良い勉強になった。『Act III』はとても良い出来になったと思うよ。ファンキーな要素もあって、「A Room with a View」や「Veil of Deception」のようなアコースティックなバラードみたいな曲もあって、あの当時としては非常にうまくできた作品だと思う。だけど、最近は「A Room with a View」みたいな曲はプレイしないんだ。聴きたいという声もあるんだけどね。あの曲は80年代らしいヴァイブを持ったバラードだからさ。今の時代の俺たちのセットに合うかはわからないから。これらのアルバムも、人としての進歩の一部で、それを音楽を通じて表現したものさ。

川嶋:80年代、デス・エンジェルはメンバーの年齢が非常に若いことが取りざたされていましたよね。現在はスラッシュ・メタルのシーン自体も年齢層が高くなっているように思えますが、やはりあの頃と現在では違いますか。

ロブ:まったく違うね。一番違うのは、バンド以外の生活さ。バンドをやっていると、ほとんどそれ以外の生活は無くなってしまうもので、それは今も変わらないけど。俺はもう結婚して20年になる。ありがたいことに、妻はずっと俺についてきてくれているんだ。ツアーだなんだで全然家にもいられないのにさ。息子は14歳になって、高校に入学したところ。高校生の父親というのは、本当に大変だよね。一人息子だから、俺にとっては初体験だし、大変だよ。混乱させられるし、クレイジーなことだよ(笑)。それに年の半分はツアーやスタジオで家をあけているけど、その間も家のことを気にかけなくちゃいけない。こういうことは若い時は必要なかったからね(笑)。ただ「よーし、パーティしよう」なんて言って、走り回って、爆笑して、パーティして、問題を起こしてれば良かった。走り回ってクレイジーなことをして、ツアー中友達と楽しむという部分については、もうそれは再現できないね。まあでもそれは、バンドやミュージシャンに限ったことではないけれど。15歳〜21歳の頃と50歳では、別人みたいなものだから。というか、別人じゃなくちゃいけないだろうし(笑)。少しは成長して責任ある大人にならないとさ(笑)。それから、やっぱり肉体的にもキツくなってきたね。肉体的、精神的、健康の面において、ツアーはキツいよ。最近は、以前にも増して厳しいスケジュールをこなしているし。とてもブルータルなスケジュールなんだよ。この間やったヨーロッパのツアーなんて、17日間で17回のショウをやったんだぜ。オフは一切無し。2ヶ月間スタジオでレコーディングをして、1週間ライヴのリハーサルをして、それで17日間のツアー。ヘトヘトだよ。だけど、こういうことをどうやってこなせばいいかは、経験でわかっている。きちんと自己管理をして、体調を整えて。食事や運動にも気を配って、健康を維持しなくちゃいけない。だってさ、俺たちがやっている音楽というのは、そう、これはいつもあげる例なんだけど、みんな「ローリング・ストーンズを見てみなよ。彼らは70を超えてもプレイしているよ」なんて言う。確かにその通りだし、それは簡単なことじゃないだろう。俺たちよりもずっと年上で、それでもプレイをしているなんて素晴らしいことだ。リスペクトするよ。しかしながら、彼らのプレイしている音楽と、俺たちの音楽の違いがわかる?スラッシュ・メタルをプレイするのに必要なエネルギーは、若者特有のものだよ。格闘技とゴルフを比較するようなものさ。ヘッドバンギングしまくって、飛び回って、時速何百万マイルの楽曲を毎晩タイトに演奏するんだからね。フゥー、これをやり続けるには相当のケアが必要さ。だけど俺たちは、昔と変わらずそれが大好きなんだよ。こういう音楽、バンドのメンバーとの友情、ステージに上がること、お客さんから感じるエネルギー。これらに代わるものなんてないし、かつてもなかったし、これからもないだろう。できるだけ長くバンドを続けたいと思っているよ。

川嶋:お気に入りのメタルのアルバム3枚を教えてください。

ロブ:ウー、マジか!3枚となると、相当絞らなくちゃな。最初に思いつくのは、オジー・オズボーンの『Diary of a Madman』。理由はいろいろあるけれど、一番大切なのはランディ・ローズ。俺がギターを弾き始めた、そしてバンドをやり始めた最大の理由がランディ・ローズだからね。言うまでもなく、曲もオジーのヴォーカルも、すべてが素晴らしい。次は、Metallicaの『Ride the Lightning』。俺たちがスラッシュ・バンドになった原因は、このアルバムさ。俺たちはスラッシュ・バンドとして知られているし、俺たちのレコードにはスラッシュの刻印がいたるところに押されている。このアルバムのツアーの時に、サンフランシスコで2晩Metallicaのオープニングもやったんだ。最高の経験だったよ。このアルバム、そして彼らには本当に大きな影響を受けたよ。だからこの作品は入れないわけにはいかない。

川嶋:MetallicaとArmored Saintのツアーですよね。

ロブ:その通りだよ。Metallica、Armored Saint、そしてデス・エンジェル。素晴らしかったね。おかげで俺たちの名前も一気に広まった。そういうこともあって、このアルバムは俺の心の中で特別な位置を占めているんだ。もちろん、アルバム自体が信じられないくらい素晴らしいものなのだけど。3枚目は、やっぱりBlack Sabbathの『Heaven and Hell』だね。覚えている限り、初めてのヘヴィメタル体験がこのアルバムだったから。今でも大好きなアルバムで、だから「Heaven and Hell」のカバーもやったし。とりあえずこの3枚だね。もちろん他にもたくさん大好きなアルバムはあるけれど。

川嶋:では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

ロブ:先ずは、ずっとサポートしてくれてありがとうと言いたい。俺たちにとって日本に行くというのは、いつも特別な体験だよ。人や文化、そしてライヴでのお客さんのエネルギー。日本でも素晴らしい友達がたくさんできたし。早くまた行きたい。『ヒューマニサイド』が出たら、絶対にまた行くよ。みんなに会えるのを楽しみにしている。まだ具体的な日程は決まっていないけど、このアルバムをリリースして日本に行かないなんて、とんでもないことだからね。日本に行けるまで、ツアーを止めないよ。

取材・文 川嶋未来



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