パーヴォ・ヤルヴィ＆パリ管のラフマニノフ

2015年8月1日 (土)

ラフマニノフ：交響曲第３番、交響的舞曲、ヴォカリーズ、『岩』、他（２ＣＤ）
パーヴォ・ヤルヴィ＆パリ管弦楽団

パーヴォ・ヤルヴィは以前、シンシナティ交響楽団音楽監督時代にラフマニノフの交響曲第2番ほかを収録したアルバムをテラーク・レーベルで制作、その音楽のスタイルがラフマニノフの作品と相性が良いことを証明していました。
　シャープで軽快なリズムとフレーズ、ダイナミクスの感覚、各楽器のパート・バランスの巧みなコントロールにより、旋律美一辺倒に陥らないシンフォニックな演奏を聴かせていました。
　今回は、現在音楽監督を務めるパリ管弦楽団を指揮しての2枚組アルバムで、交響曲第3番と『ジプシーの主題による奇想曲 』、そして交響的舞曲に『岩』とヴォカリーズという組み合わせです。
　交響曲第3番は第2番の約30年後、60代で書かれた作品で、リズム動機の積極的な活用と、表現力に富むオーケストレーションの技術が、作品を聴き応えあるものとしています。それは5年後に書かれた『交響的舞曲』にも通じるスタイルでもあります。
　一方、『岩』と『ジプシーの主題による奇想曲』はラフマニノフがモスクワ音楽院卒業直後に書いたもので、ロマン派的な題材と親しみやすい旋律や響きが楽しめます。
　最後の『ヴォカリーズ』はおなじみの名曲。オリジナルは歌曲ですが、現在ではオーケストラ版の方が有名になっています。
　パーヴォ・ヤルヴィはパリ管弦楽団を指揮した前作のデュティユーでは緻密で多彩な響きの演奏を聴かせていたので、このラフマニノフでもそれぞれの作品の持ち味を引き出してくれるのではないかと期待されます。（HMV）

【収録情報】
Disc1
ラフマニノフ：
● 交響曲第3番イ短調 op.44
● ジプシーの主題による奇想曲 op.12

Disc2
● 交響的舞曲 op.45
● 幻想曲『岩』 op.7
● ヴォカリーズ op.34-14（オーケストラ版）

　パリ管弦楽団
　パーヴォ・ヤルヴィ（指揮）

　録音時期：2013年3月27,28日（Disc1）、2011年10月19,29日（Disc2）
　録音場所：パリ、サル・プレイエル
　録音方式：ステレオ（デジタル／ライヴ）

【アーティストプロフィール】
2010年にパリ管弦楽団音楽監督に就任し、現在４期目を迎えているパーヴォ・ヤルヴィは、2012／13シーズンに、フランスでの音楽分野における貢献に対して、フランス文化省よりフランス芸術文化勲章最高位のコマンドゥールを授与されました。2016年夏以降、パリ管との契約更新は行わないとの発表が行われましたが、一方、2015／16シーズンからはＮＨＫ交響楽団首席指揮者に就任します。
　1962年、ソビエト連邦（当時／現エストニア）タリン生まれ。父である指揮者ネーメ・ヤルヴィと同じくタリンの音楽学校に学んだ後、1980年に渡米し、カーティス音楽院に入学。ロサンジェルス・フィルの指揮者コースでレナード・バーンスタインに指揮を学びました。オーマンディ、ドラティ、ショルティらに師事。2004年にドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメンの芸術監督に就任し、ベートーヴェンとシューマン、それぞれの交響曲全曲をリリース（いずれもRCA Red Seal）しており、2007年にドイツ・レコード批評家賞（ベートーヴェン：交響曲第４番＆第７番）を受賞するなど高い評価を得ました。2010年、エコー・クラシック賞指揮者賞を受賞。現在、フランクフルト放送交響楽団（2006〜2014年首席指揮者）の桂冠指揮者、シンシナティ交響楽団（2002〜11年音楽監督）の桂冠音楽監督を兼任。また、ベルリン・フィル、ウィーン・フィル、バイエルン放送響、シカゴ響、ボストン響をはじめとする欧米の主要オーケストラにも定期的に客演しているほか、レコーディングにも積極的で、ソニー・クラシカル、テラーク、ＢＩＳ、シャンドス、ＥＣＭレーベルから数多くのアルバムが発売されています。
　そのキャリアの初期から、アルヴォ・ペルト、エリッキ＝スヴェン・トゥール、レポ・スメラ、エドゥアルド・トゥービンなどのエストニアの作曲家を積極的に取り上げるほか、ヤルヴィ・サマー・フェスティバル、エストニア国立交響楽団の芸術顧問をつとめています。エストニア公共放送局より2012年のミュージシャン・オブ・ザ・イヤーに選ばれ、2013年１月には、エストニア文化への顕著な貢献に対してエストニア大統領から白星章を叙勲されました。（WARNER）