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ペッカー『i・RASTA - Rebooted by Makoto Kubota -』発売記念座談会 [ペッカーx久保田麻琴x吉田美奈子x中原仁x上野勉]

2015年6月9日 (火)



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日本初のサルサ・バンド、オルケスタ・デル・ソルを作ったパーカッショニスト、ペッカーが1980年に作った日本最初のダブ作品『ペッカー・パワー』。そして、同時に制作された企画盤としての『インスタント・ラスタ』。当時としても今の時代においても特殊なスタイルを持つこの2作品が合体し、6月24日に新装リイシューされる。
これらの作品に当時関わった当事者である、ペッカー、吉田美奈子、経緯を知る中原仁、担当ディレクターだった上野勉、そして今回リマスタリングを担当する久保田麻琴に集まってもらい、いかにしてこの突然変異のモンスターのような作品が生まれたのかを語ってもらった。


--- この『ペッカー・パワー』『インスタント・ラスタ』が出た1980年はザ・クラッシュやローリング・ストーンズらイギリスのロック・バンドがダブを取り入れ始めた年ですから、かなり先進的ですよね。そもそもどういうきっかけでこの作品を作ることになったのでしょうか。

中原:もともとはKYLYN Vol.2 featuring PECKER みたいな企画で始まったんだよね。
79年にKYLYN(註:渡辺香津美を中心に坂本龍一、矢野顕子、ペッカーらが参加したフュージョン界のスーパー・ユニット)のレコーディングがあって、ツアーがあって、夏フェスに出た。レコーディングはボブ・マーリーの来日もあった4月に始まって、レコードが出る前にツアーで何箇所か回っていて、ちょうどウォークマンが出た年でもあって、みんなでカセットテープを旅中にガンガン聴いてたんですよ。よく聴いてたのがレゲエで、それもジミー・クリフとかボブ・マーリーだけじゃなくて、すでにスライ・ダンバーも、これは面白い!って。KYLYN BANDのライヴでもレゲエの曲があって、バンド自体は夏で終わったんだけど、その後KYLYN NEW YORKみたいなのをやろうという企画もあって。だけどそのあと急にYMOのヒットで周辺がグワーってなっちゃってね。

ペッカー:六本木PIT INN かなんかのライヴで教授(註:坂本龍一)がいきなり「ペッカーのアルバムをジャマイカで作ります!」とか始まっちゃって、僕何にも聞いてなくて「え?何のはなし?」ってなったんだけど、お客さんがどーって沸いて、「教授がやってくれるのか、よかったよかった」って思ってたらYMOがどかーんって売れて、あ、ナシね・・・みたいな。 でも企画はそのまま引き継がれていって、生田くん(註:生田朗 (イクタ アキラ) ・・・プロデューサー、コーディネーターとして数々の作品を制作。1988年メキシコでの交通事故によりこの世を去った。)とか美奈子ちゃんとかみんなが頑張ってくれて、勢いでいっちゃったみたいな。

中原:あとKYLYNと並行して、教授名義のアルバム「カクトウギ・セッション」。ライヴは2回しかやってないけど。

ペッカー:(高橋)幸宏のドラムがすごいレゲエっぽくカッチリなんですよ。

中原:あれがかなりレゲエに近いですね。

ペッカー:あれがレゲエ・フレーバーをどっかどっか出してきて、“カクトウギ”にもレゲエっぽいのがどんどん入ってて、僕もそれが大好きだったから。いいなぁと思ってて、あのノリが。

上野:具体的にペッカーのセッションが動き出したのは、やっぱり生田なんだよね。生田がアイランド(註:ISLAND RECORS・・・ジャマイカで設立されイギリスに進出したレコード会社。ボブ・マーリーやジミー・クリフを発掘し、世界にレゲエを広めた)のニューヨーク・オフィスのパブリシスト、リスター・ヘワン・ロウ(註:Lister Hewan-Lowe・・・現在は、NYに於ける最長寿レゲエラジオ番組のパーソナリティー)と知り合いになって、彼の方からタフ・ゴングも押えてもらってスライ&ロビーもコンタクトとってもらって。ただ肝心のボブ・マーリーのところまで話がいっていたかは疑問だけど。

吉田:でもあそこのスタジオ行ったら2階から降りてきてね。

久保田:ボブ・マーリーいたんだ!?

ペッカー:いたいた。よく来たな!って引き出し開けたら書類が全く無くて草がバーッとあって。
(一同笑)
僕のことペッキーていうんだけど「ペッキー、よく来た。ヤーマン!」って。
その前にボブ・マーリーには会ってたから。

久保田:え!なんで?

ペッカー:来日のときにお土産持ってホテルに押しかけて遊びに行って仲良くなって。 そういうのがあって、アイランドからオファーしてもらったときに、誰だそいつは!?ってなって、ペッカーて言ったら、「ペッキーか、そいつなら知ってる」っていうので決まったっていうのは、後から誰かに聞いたんだよね。直接ボブ・マーリーから聞いたわけではないけど。

上野:普通に我々がやるような常識的に契約書を取り交わしてっていう段取りでは全くなかったんだよ。

久保田:でも当時世界的なスーパースターじゃないですか。そういうレベルで話がまとまって、ジャマイカまで行って録音が可能になるっていう、それは時代のマジックだよね!

ペッカー:勢い(笑)

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上野:そうはいっても、当時はキングストンは非常に治安が悪いしホテルもアテにならないから、住宅街に家を一件借りて、そこでみんなで合宿しましょうというはなしになった。
ニューヨークで日本食の食材からトイレットペーパーまで買出しして、つづらいっぱいにして持ちこんで。

久保田:どれぐらいいたの

吉田:10日ぐらいかな

--- 美奈子さんはどういう経緯でこのレコーディングに参加されたんですか?

吉田:生田に頼まれて。まとまりがなさそうだからまとめてって言われて(笑)

ペッカー:一日目の夜にウェルカム・パーティをやったんだよね。僕らがセッションするジャマイカのミュージシャンを呼んで、美奈子ちゃんが料理して。車で空港の近くの漁港までロブスターとかを買いだしに行ったり。
そこにはオーガスタス・パブロとかもいて、これはレゲエ好きならたまらない状況だよね。

久保田:すごい文化交流だよね。素晴らしい!

ペッカー:パブロが連れてきたラスタがまた強烈なヤツで、アタッシュケースからこんなでかいココナッツのパイプ出してバシバシバシーって焚火状態!(笑)
それで松岡(直也)さんがピアノ弾いて、パブロがピアニカ持ってきて、僕が持っていったスルドをそのラスタがズンズンって叩いてナイアビンギはじめたら、とにかくすごいの!ドッカーンって世界ができちゃって。

久保田:今だったらDATでそのまま録るのになぁ。カセットテープ回さなかったの?

ペッカー:そんなの全くなかったね。写真すら撮ってない。せっかくボブに表敬訪問行ったのに、肩組んでとかも全然なかったね。

久保田:もったいないなぁ。

上野:松岡さん、完全に目が宙に浮いてたよね。

ペッカー:ほとんど拉致に近い状態(笑) 向井滋春の『プレジャー』でニューヨークに来てるのに、こっち来てくださいって。

中原:しかも、あの時すでにベテランだった松岡さん、あれが初海外だったんですよ。

一同:えー!ほんとに!?

中原:僕も松岡さんも神奈川県に住んでたから、一緒にパスポート取りに行ったんですよ。

久保田:初海外がジャマイカってトラウマになりますよ!(笑)

吉田:それで、ジャマイカは治安が悪いからカバンは肌身離さず持ってなきゃダメですよ!ってみんなでよってたかっておどかしてたら、スタジオの中でもカバン持ってるんですよ。それで山からラスタが下りてくるんですね。そしたら妙なおじさんがカバン抱えて立ってるっていうんで真前に来てガンジャやるんだよね。

久保田:かなりシュールな状態だね(笑)

吉田:ニューヨークでは指図しすぎてスティーヴ・ガッドを怒らせるぐらいテンション高かったのが、一気に下がっちゃった(笑)

上野:そんな状態だから、生田が「上野さん、段取りもついたし、松岡さん連れて先に帰りませんか」ってなって、いきなりそのまま帰らせるのもアレだっていうことで、モンテゴベイに1、2泊寄って帰ったんだよ。

吉田:えー私たちは、ちっともリゾートなんてなかった。
あのときはちょうど大統領選だったの。それで国に訴えるためのストで電気は突然消えるし、水道は出なくなるし。マルチを乗っけたテレコがいつバンって止まっちゃうかってドキドキして。それから道を挟んでの撃ち合いがあったり、そういう時代だったの。3メートルぐらいの鉄板の門があってそこにセキュリティがいるんだけど、誰が入れていい人なのかだめな人なのか見分けがつかないの。

ペッカー:スタッフなのか、そこらへんのラスタなのか見分けつかないよね。いつのまにか一緒に食事してたりね(笑)

久保田:でもそんな中で、ウェイラーズが入り、アイスリー・マイナスワン(註:ジュディ・モワットとマーシャ・グリフィス)が入り。
たしかにアイスリーの声なんだけど、中に美奈子の倍音がビビビビッーと聞こえるのが、やっぱりすごいなと。しかも飛び込んでくるんだよね。

ペッカー:アイスリー・マイナスワンは美奈子ちゃんがいなかったら絶対にまとまってない。ビシビシッ、ササッとまとめたの。すごかった。

吉田:だってほったらかしてたら全然進まないもんね(笑)

久保田:その戦時下みたいな中でちゃんとそういう状況をみんなで作り出したんだなぁって。

ペッカー:すごくありがたかった。僕はただふわーって浮いてたから(笑)。いつの間にかアルバムが出来ちゃってた(笑)

久保田:でもワンアルバムでウェイラーズとスラロビが両方ちゃんと等分で入ってるって結構めずらしいよな。

ペッカー:それはね、ラッキーというか。スラロビがちょうど売り出そうとしてて、ヨーロッパから声がかかりだし、みたいなときで。やっぱり兄弟子がファミリーマン(註:アストン・バレット・・・ウェイラーズのベーシスト)でしょ?ファミリーマンのベースの影響を受けてロビーが始まっているので、なにくそ先輩に負けてなるか、という。 チャンネル・ワン・サイドはチャンネル・ワン・サイドでそういうライバルがいるチーム・ビルディングがビシッと出来ていて、ウェイラーズはウェイラーズでもうすぐジンバブエに独立の記念日で行くっていうときで、早めにやっちゃわないとギャラもらえないしっていうのがあって、そういうのがうまく相乗効果になったのかな。

久保田:いろんないいタイミングが重なったんだなぁ。

吉田:あとはカシオの安い時計とか百円ライターをたくさん買っていってお土産にしたのが利いたかな(笑)

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--- 楽曲は予め用意していったんですか?

吉田:曲は作ってあって、もちろんセッションもありますけど、コーラスのあるようなものは歌詞も構成もニューヨークで作ったの。

ペッカー:(高橋)ゲタ夫とうちの奥さんと僕と、このレコーディングの前1ヶ月ぐらいハワイにいてコンドミディアム借りて、カリンバでぽこぽこ曲作ったんですよ。それをゲタ夫が譜面にしてくれて色々やったのをジャマイカ行くときにニューヨークの空港で全部盗まれて、8ミリのカメラも全部!ちょっと置いてカウンター行ってふっと見たらもうないの。もうしょうがないや、なるようになれって、口でロビーとかにトゥントゥトゥントゥットゥって歌って伝えるしかなくて。 トロンボーンでパーパパーパパーというフレーズがリコ(・ロドリゲス)がなかなか吹けなくて、リコの頭を真ん中にして僕とスライではさんで耳元でパーパパーパパーってステレオで教えて、この図って面白いなぁって(笑)

--- コーラスの部分は楽譜で?

吉田:楽譜はできないので口でパートを伝えて。 ニューヨークで作っていって、現場で高いほう低いほうって振り分けて。
それから全部がアナログだから卓でみんなでスイッチングをしたりね。それが非常に手作り感があって。

ペッカー:卓が楽器ですよね。

久保田:ジャマイカ人ってなんでも楽器なんだよね。
スタジオとPAにまず垣根がない。その垣根を壊すとかそこがやっぱりジャマイカの革新的なところなんだよね。誰が決めたんだそんなことっていうね。関係ねぇよ、音楽好きだったら誰が何をやったっていいんだっていうのがジャマイカン・スピリットなんだよね。

ペッカー:レゲエのテンポ感、あの手を出せる隙間がダブに繋がるんじゃないかな。キューバン・ラテンでは手が出せない。 スライにしてもハイハットもスネアもキックもそれぞれ単品にしたときに聴き応えがある。単品にしたときにつまらない音だったらダブにならない。
ファミリーマンが言ってたんだけど、宗主国がイギリスということもあってベースを始めたときのアイドルはやっぱりポール・マッカートニーなんですよ。ポールは歌ってるときは細かいフレーズができない。で、歌い終わったとき細かいフレーズを弾く。それを勉強した。だからボブ・マーリーが歌ってるときは余計なことはしない。空間が来たら細かいフレーズをやって、結局レゲエはベースが作曲者だと。だからポール・マッカートニーのベースラインがなければたぶんレゲエはなかった。

吉田:でもロビーはあのベース奏法は俺のだって言ってたよね。

久保田:お互い俺が元祖だって言ってるんだ(笑)

ペッカー:ボブ・マーリーの『キャッチ・ア・ファイアー』で「コンクリート・ジャングル」を弾いてるヘフナーのベースが実はいまゲタ夫のところにあるんだよ。すごくない?

久保田:それはすごいね。

ペッカー:どうもラジカセと交換したらしいよ(笑) ファミリーマンからロビーにわたって、ロビーからゲタ夫にきた。レゲエ博物館ができたら寄贈しろって言ってるんだけどね。

久保田:ジャマイカで最初びっくりしたのが、楽器屋がないんだよ。教材用とかの店はあるんだけど、レゲエのミュージシャンが行くような楽器屋はないの。それでレゲエがあそこまでなったってのがこれもやっぱりものすごくガーンとくるよね。

ペッカー:はじめてスライに会ってセッションした時、ドラム・スティックにガムテープが巻きつけられてバットみたいな形になってるの。先端のチップはちゃんと残ってるんだけどね。それがものすごいニュアンスを出すの。こいついいなぁって思って。一発の重みがあってすごかった。

久保田:いやぁ発明の才もあるよね。
ところで、当然アナログで録ったはずだけどテープは全部で何本ぐらいあった。

吉田:よく覚えてないけど、マルチは8本はあったかな?
4本ずつ生田と二人で持ったような気がする。重すぎた!

ペッカー:日本まで持って帰ってくれたの!? ありがとうございますっ!

久保田:あれ1個5キロですから20キロぐらいか。大変だ。

ペッカー:それの10年ぐらいあとどこかでまこっちゃんと会って、あのマルチ残ってたらあれに色々入れたいよねって盛り上がって。

久保田:そのとき既に目をつけてたんだ!憶えてなかった。

ペッカー:ウェイラーズのマルチでカーリーのドラムが単独であるっておいしいよねって言ってたよ。

久保田:言いそうなだなぁ、いかにも(笑)

ペッカー:ちょっとあとに後藤さん(註:後藤博・・・日本コロムビアのエンジニア)に聞いたら、そんなもんもうねぇよって言われて。

久保田:もったいねぇなぁ!
これ日本で後藤くんがミックスしたわけだよね?十分ダブ的なことになってるよね。

上野:ニューヨークのジャマイカン・コミュニティで生田が山ほどレコードを買ったんだよね。だからすごく研究はしたんだろうね。

久保田:今回リマスタリングで更に太くするけど、当時日本のレコードでこんなにベースが太いのはないでしょ。ここまででかくていいんだと、そこまでやろうとした後藤さんもすごいよね。ジャマイカン・ベースに挑戦したというのが。

上野:たぶん何枚か聴かされて、じゃあ俺も負けてたまるかってなったんじゃないかな。彼も負けず嫌いだから。

久保田:そう思う。コロムビアで出した夕焼け楽団の2枚(註:『ラッキー・オールド・サン』『セカンド・ライン』)は彼だったんだよ。私も相当言うけど、絶対不敵な笑いで対応してたんですよ。

吉田:何時まででもね(笑)

ペッカー:スーパーマンって名前付けてたよ。

久保田:最終的にはそれくらいになったね。
ものすごいチャレンジ・スピリットというかね、ここにはそれも入っているわけだよね。

ペッカー:チャンネル・ワンでミックスしたのもいくつかあって、それはロビーが立ち会ってたね。

--- 最初から2枚作る計画だったんですか。

吉田:最初からそういう目論見があって。

ペッカー:画期的だったのは、『ペッカー・パワー』で録ったものを、使い回しというか発展系でダブでやってるから、それはすごい頭のいいやり方だと思ったな。

久保田:今回全部入れるの?

--- 基本的に全部。で一曲抜きます。

ペッカー:いや、僕のリクエストで・・

久保田:なんかあったの?

ペッカー:いや墓に入る前に消しておきたいのが一曲あったんで。

吉田中原:あ、アレ(註:Pecker Power Pt. 1)だ!

ペッカー:アレです・・

久保田:1がミッシング!
(一同笑)

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ペッカー:流れとしてさKYLYNのあたまから知ってるじゃん当然。ここで俺の中ではプツっと切れてるんだけど。

中原:ただ、この年80年のサマー・フォーカス・イン(註:毎年夏に日比谷の野音で開催されていたジャズ・フュージョン・フェス)でパフォーマンスしたよね?最初、コンガ叩きながらソロで始まって、だんだん人が増えてきて、しかもライヴでダブをやった。ペッカーさんが指差すとその人が演奏をやめるっていう、マニュアル・ダブみたいな。

久保田:あー、生ダブ! すごいね! それミックスしたかったわ!

ペッカー:ギター(大村)憲司くんじゃなかったっけ? 結構いいメンバーでやってくれて。

中原:それが、このプロジェクトの唯一のライヴ・パフォーマンスだった。

久保田:たしかにまだディレイをそうやって使うっていうのはPAエンジニアには、そういうアイデアは一切なかった。

中原:まだダブ・マスター(註:DUB MASTER X・・・ミュート・ビートのライヴ・ダブ・エンジニア)もいなかったですから。

久保田:でも生でやろうとしたチャレンジ精神がすごいな!

ペッカー:ダブって、当然リー・ペリーとかキング・タビーとかから聴いていたんだけども、生田と美奈子ちゃんがチャンネル・ワンも含めて、現地のダブ的なものをすごい吸収しているのを僕は見たんですよ。スタジオでほらこうだろこうだろって教えてもらっているのを見て「おお、受け継がれていってる」って。

久保田:私は85年に最初にジャマイカに呼ばれて、それから5年ぐらいジャマイカべったりの時期があったんですよ。

ペッカー:そのころスラロビいた?

久保田:いたいた。録音すると彼らベターっとスタジオに来るわけですよ。で、ものすごい仲良くなって。AKAI MPC60というドラム・サンプラーの情報交換したりとか、ほんとうにスタジオで音作ることに関しては私にとってジャマイカは学校のようなものなんですよ。

ペッカー:ロビー大好きだよね、こういうのいじるの。

久保田:スライもすっごい好きだよ。最初私はAKAI教えたんだけど、途中で彼すごくうまくなって、サンプルもいっぱい持ってたし。私がインドネシア/ダンドウットのタブラをあげたんだけど、最終的に彼のコレクションは何十倍に増えてた。

ペッカー:東海楽器のシンセ・ドラムがあってスライにあげてきたんですよ。あいつだったら面白い方法を考えるんじゃないかって思って。その後レコーディングでいっぱい使ってたよ。
アイランドの社長のクリス・ブラックも来てて、そのシンセ・ドラムをブーンってならしたらクリスが「いい音だな、これ今度グレース・ジョーンズに使っていいか?」って。

久保田:じゃあ入ってるんじゃない。それがそのあとグレース・ジョーンズ・サウンドになったんだ。
そういえば、最近カセットが若い人たちの間でキテるよね。

--- そういう意味では、この作品はいち早くカセット・オンリーで再発されてますからね。

ペッカー:1987年にアメリカのROIR LABELからカセットのみで再発されたんだよね。『21st Century Dub』っていうタイトルで。

久保田:へぇ、そうなんだ!ナウかったんだよ、やっぱり! 日本では無視されても、やっぱりちゃんとね。

ペッカー:いや、無視されてるわけではないんですけど・・
(一同笑)
久保田:いやでも当時は、意味が不明だったんじゃないの? ペッカーおかしくなったんじゃないかって(笑)

ペッカー:ラテン系のやつがなにやってんだって(笑)

--- 当時ダブなんて日本ではほぼ誰も知らない状況の中でこれを出して、どんな反応がありました。

久保田:(即答で)ないですよ!絶対。
(一同笑)
吉田:制作側はそれ作って面白かったねっていって終了しちゃうんで、一般がどうとか考えなかったですよ。

ペッカー:『ペッカー・パワー』の方はロンドンのディスコで何週間か連続でチャートに入ってるっていう噂は聞いてたな。

久保田:事故のように出来上がってしまって、出来た後も誰もどうやってハンドルしていいかわからないままずっと存在してたんだね。でもこうやって残ったっていうのがすごい、日本人がジャマイカでここまで音楽的な体験してそれがちゃんと形に残ったのが。

ペッカー:これたぶん奇跡だと思いますよ。奇跡が重ならないとこうはならないと思う。

上野:しかし、よくできたね。

ペッカー:奇跡ですよ。美奈子ちゃんがキュット締めてくれて。

--- これが今になって出るのってどうですか?

吉田:面白い作品だから聴いていただいた方がいいですよ。でも作ってる方は作った時点でもう終わっちゃうんですよ。ただ、参加してる人たちが誰かって、聴いてる人たちに掘り下げてほしいよね、興味をちゃんと持って。興味を持つって本当は上辺じゃないじゃない。今の人たちって興味持つと例えばこれ聴いて終了とか。なんでこの時代にこれが出来てるのかとか、面白がってもらえればいいけど。

中原:でもこれを録った時点でなんかダブって面白いよねっていうリアルタイム感は間違いなくあったから。

久保田:そしてまたダブが一過性のもんじゃなくて、いまだにずっと生きてる。逆に言うと、ダブとかジャマイカ的な音作りがなければ、今のダンス・ミュージックもない、ヒップホップもないぐらいだから、そういう意味ではイノベーションのルーツみたいなものでもあるんだよね。

−2015年4月12日 都内某所にて


PECKERがジャマイカで作り上げた日本のDUBオリジネーター作品が、“音の錬金術師”久保田麻琴のリマスタリングでドープに生まれ変わる!

ペッカーが1980年に作った日本最初のダブ作品『ペッカー・パワー』。そして、同時に制作された企画盤としての『インスタント・ラスタ』。ボブ・マーリーのスタジオTUFF GONGでのザ・ウェイラーズとのセッションと、CHANNEL ONE STUDIOでのスライ&ロビーとのセッションから生まれたこの無国籍なダブ・サウンドは『21st Century Dub』というタイトルで1987年にアメリカで流通し、以降世界中のダブ・ファンに知られる作品となった。
この伝説的な作品に“音の錬金術師”久保田麻琴がリマスタリンを施し、よりドープにダブ感を増した新たなサウンドで登場。
そして嬉しいヴァイナル化も!

『i・RASTA -Rebooted by Makoto Kubota -』【CD盤:紙ジャケ仕様】[2015年06月24日]
 『i・RASTA -Rebooted by Makoto Kubota -』【アナログ盤】[2015年07月01日]

i・RASTA -Rebooted by Makoto Kubota -


<Musicians>

ペッカー、吉田美奈子、オーガスタス・パブロ、リコ・ロドリゲス、マーシャ・グリフィス、ジュディ・モワット、ロビー・シェイクスピア、スライ・ダンバー、松岡直也、大村憲司、坂田明、向井滋春

<CD盤 収録曲>

01. Mystical Cosmic Vibration / 02. Dub Jam Rock / 03. Mystical Electro Harakiri / 04. Dr. Dr. Humanity / 05. Concrete Jungle / 06. KYLYN / 07. International Orchitis / 08. Jamming / 09. Militant Sniff / 10. Pecker Power Pt. 2 / 11. Beggar Suite Pt. 1 / 12. Beggar Suite Pt. 2 / 13. Beggar Suite Pt. 3

<アナログ盤 収録曲>

[SIDE-A]
01. Dr. Dr. Humanity / 02. Mystical Cosmic Vibration / 03. International Orchitis / 04. Dub Jam Rock / 05. Mystical Electro Harakiri / 06. Pecker Power Pt. 2
[SIDE-B]
07. KYLYN / 08. Beggar Suite Pt. 1 / 09. Beggar Suite Pt. 2 / 10. Jamming / 11. Concrete Jungle

CHANNEL ONE session(Sly & Robbie):A-2, 3, 5, B-1, 2, 3 TUFF GONG session(The Wailers):A-4, B-4, 5 TOKYO session:A-1, 6
●日本のダブ・オリジネーター
ジャマイカで生まれたダブをザ・クラッシュやローリング・ストーンズらイギリスのロック・バンドが取り入れ始めたのが1980年。ペッカーはこれと同時期にこのダブ作品を生み出した。ちなみに日本最初のダブ・バンドとして知られるMUTE BEATが活動を開始したのが1982年。このことからもこの作品の先進性が伺える。

●本場のダブ・セッション
この作品のベースとなっているのがTUFF GONGスタジオにおけるザ・ウェイラーズとのセッションと、CHANNEL ONEスタジオにおけるスライ&ロビーとのセッション。前者はアストン&カールトンのバレット兄弟のリズム隊やアイ・スリーのマーシャ・グリフィス、ジュディ・モワットら、ボブ・マーリーの黄金期を支えた猛者ぞろい。後者はその時期勢いと知名度を増していた、まだ20代のスライ・ダンバーとロビー・シェイクスピアの鉄壁のリズム隊にオーガスタス・パブロのピアノ。さらに両セッションにベルリンから駆けつけたザ・スペシャルズのトロンボーン奏者リコ・ロドリゲスが参加。当時互いにライバル視していた両チームがポテンシャルの高い演奏を競い合い、最高のパフォーマンスを引き出した奇跡のレコーディングとなった。

●日本側のミュージシャンも豪華
当初KYLYNセッションの第2弾としてNY録音の企画だったが、中心メンバーだった、渡辺香津美、坂本龍一が多忙になり、ペッカーのソロ作としてのジャマイカ録音に企画変更となった。ペッカー以外にジャマイカには吉田美奈子と松岡直也が同行。前出の伝説のセッションを行った。帰国後コロムビア・スタジオで大村憲司のギター、坂田明のアルト・クラリネット、向井滋春のコントラバス・トロンボーンがオーヴァー・ダビングされた。

●世界で認められたDUB from TOKYO
こうして完成したアルバム『ペッカー・パワー』(1980/7/25発売)と10インチ盤『インスタント・ラスタ』(1980/9/25発売)は、一部で高い評価を受けるが、その内容が時代を先取りしすぎたためか、売上には結びつかなかった。しかし1987年にニューヨークのレーベル“ROIR”から『21st Century Dub』というタイトルでカセットが発売され、他にはない無国籍なDUBが高い評価を受ける。その後1999年にCD化され世界のDUBマニアに知られることとなった。

●DUB MIXに定評のある久保田麻琴によるリマスタリング
今回この伝説の作品をリマスタリングするのは、これまで数々の作品やライヴでDUB MIXを行ってきた“音の錬金術師”久保田麻琴。よりドープによりダビーに、まさに“21世紀のDUB”として生まれ変わる。
※表示のポイント倍率は、
ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。

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i・RASTA -Rebooted by Makoto Kubota -【CD盤:紙ジャケ仕様】

CD

i・RASTA -Rebooted by Makoto Kubota -【CD盤:紙ジャケ仕様】

ペッカー

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発売日:2015年06月24日
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i・RASTA -Rebooted by Makoto Kubota -(アナログLP)

LPレコード

i・RASTA -Rebooted by Makoto Kubota -(アナログLP)

ペッカー

価格(税込) : ¥4,000

発売日:2015年07月01日

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