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2015年5月14日 (木)

EXODUS
EXODUS L to R : Tom Hunting(dr), Jack Gibson(ba), Steve "Zetro" Souza(vo),
Lee Altus(gt), Gary Holt(gt)
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< 〜スラッシュメタルの栄枯盛衰はExodusの歴史そのものである〜 >

 Exodusに前置きは必要ないでしょう。先日来日したGary HoltSteve "Zetro" Souzaに話を聞いた。



--- Mirai Kawashima (以下、M): それでは始めましょう。日本の印象はいかがですか。


Gary Holt(以下、Gary):日本は俺のお気に入りの国だよ。

Steve "Zetro" Souza(以下、Zetro):人々も素晴らしいしね。皆メタルを本気で愛しているのがわかるよ。Exodusをとても良くサポートしてくれるし。戻ってこられてうれしいよ。

--- M : ニューアルバム"Blood In Blood Out"ですが、最近のアルバムに比べると速い曲が多めのように感じたのですが。


Gary:いや、他のアルバムより速いということはないと思うよ。曲が前のアルバムに比べれば短め、とは言っても十分長いのだけど、そのせいで急いでいる印象があるのかもしれない。BPMで言ったら、前のアルバムはクソ速かったからね。

--- M : このアルバムも非常に素晴らしい音質ですが、Exodusのアルバムの音作りというのは、すべてのメタルバンドにとって理想ですよね。どのような秘密があるのか、教えてもらえますか。それともトップシークレットでしょうか。


Gary:別にトップシークレットではないよ(笑)。俺自身ギタリストとしては、音というのは右手の弾き方ですべて決まると思ってる。

--- M : ドラムはどうでしょう。ドラムもいつも素晴らしい音を出してますよね。


Gary:そうなんだよ、そりゃTom Huntingみたいな素晴らしいドラマーがいれば、簡単に良い音が出るものだよ(笑)。ああいう素晴らしいドラマーを見つけるのが秘訣だね。

--- M : Exodusのアルバムタイトルには'Blood'という単語が使われることが多いですね。


Gary:あれはわざとではないんだ。俺自身何でかわからないんだよ。ヴォーカリストが変わって、今回のアルバムに'Blood'とついているのは何か意図があるのではないかと思う人もいるようだけど、それは不測の事態で、曲はその前にすべて書き上がっていたんだよ。

Zetro:俺たちは血が大好きだからね。

--- M : (Steveに)10年の時を経て、Exodus復帰するというのはどのような気持ちでしたか。


Zetro:とてもエキサイティングだったよ。今回の方がヴォーカルなど肉体面、そして精神面でも調子が良いしね。俺も含め、全員にとって一番良い状況だと思う。

--- M : できあがっていた新曲を聴いて、どう思われましたか。


Zetro「え、この曲を歌うのか、これは最高だね!」って感じだった。実際にレコーディングしてみて、Exodusの最高傑作になったと思うし、ファンのリアクションもとても良い。収録されている11曲、頭から最後まで全部好きだよ。

--- M : Hatriotの活動もあると思いますが、両立は難しいですか。


Zetro:いや、大丈夫だよ、彼らは理解してくれてる。俺がExodusに復帰したことで、Hatriotもバンドとして成長するだろうし、俺がExodusでいない時は、息子がヴォーカルパートもやりながら練習しているようだ。彼らは非常に才能もあるしね、大変だけど両立はできるよ。

--- M : お子さんと一緒にバンドをやるというのはどのような感じですか。


Zetro:素晴らしいことだよ、もちろんお互いを良く知っている訳だしね。

--- M : お子さん達は、あなたが伝説的なスラッシュメタルシンガーであることをどう思っていますか。


Zetro:いやいや、彼らは伝説的なシンガーだなんてまったく思ってないよ(笑)。彼らにとっては、ただの親父さ。もちろんExodusの影響力はわかっていると思うのだけど、決して口には出さないね。

--- M : Exodusの結成当時は、どんなバンドから影響を受けていましたか。


GaryJudas PriestBlack SabbathAC/DCVan Halen、それからNWOBHMMotorheadDischargeAnti-Nowhere LeagueUK Subsなどイギリスのハードコアパンク。

ZetroThe Exploitedとかね。

Gary:Venom、Mercyful Fate

--- M : その後どんどんスピードアップしていきますが、そのきっかけは。


Gary:Dischargeみたいなスーパーファストなハードコアパンクだね。

--- M : アメリカ西海岸のメタルバンドは、Circle JerksDead Kennedys、それにサンフランシスコにやってきたMDCDRIなどのハードコアバンドから影響を受けているという印象を持っていたのですが、あなたたちはむしろイギリスのバンドからの影響が大きかったのでしょうか。


Gary:そうだね、俺はイギリスのバンドが好きだった。

Zetro:ハードコアだけでなく、Oi-Punkも好きだったよ。スラッシュメタルというのは、ハードなロックンロールと、パンクのエネルギーや獰猛さが合体したものだと思っている。俺は当時Dead KennedysやCircle Jerks、Wasted YouthMinor ThreatAngry SamoansLos Olvidadosなど、全部見たよ。MDCはMulti Death Corporationだとか、Millions of Damned Christianとか、色んな言葉遊びをやってたよね。最高だったよ。

Gary:Millions of Dead Copsとかね。

--- M : 当時"Live at Ruthie's Inn"というコンピレーションアルバムがあって、あなたのバンドLegacyも収録されていましたよね。あれを聴くと、あの当時何か新しいムーヴメントが始まっていたんだという熱気を感じるのですが。あの頃のサンフランシスコというのはどんな雰囲気だったのでしょう。


Gary:最高だったよ。最初はThe Old Waldorf、Wolfgang's、On Broadway、Mabuhay Gardens、The Stoneとかでライヴをやっていて、それからRuthie's Innがオープンしてね。

Zetro:The Old Waldorfでは、月曜日にMetal Mondayという企画をやってた、そこで初めてMetallicaを見たんだ。Metal Mondayは、月曜日の夜だというのに、いつも超満員だった。何か新しいことが始まっているという雰囲気は、確実にあったよ。

--- M : あなたたち自身も、何か新しい物を作っているんだという意識はありましたか。


Gary:うん、あったね。もちろん俺たちもただやりたいことをやっているだけのガキで、それほど深くは考えていなかったけど、新しいムーヴメントの一部なんだという自覚はあったね。80〜81年の時点でスラッシュメタルをプレイしているなんてクレイジーなことだったし。俺も若かったよ、Exodusに入ったときはまだ17歳だったからね。一番下の子とほぼ同じ年だよ。

--- M : お子さんたちはおいくつなのですか。


Gary:22歳、20歳、一番下がもうすぐ17歳。

Zetro:うちは25歳、21歳、17歳、それから15歳と16歳の養子が2人。俺たちの子どもたちはわりと大きいんだよ。すでに仕事を持っていたり、大学に行ったりで自立しているからね、色々と心配をする必要は最早ないんだ。

--- M : なるほど、それならばバンドに集中することができますね。


Zetro:そうなんだよ。余計な心配をする必要がないからね。

--- M : それにしてもお子さんがへヴィメタル好きというのは素晴らしいですね。うちのはまったく興味がありませんよ。


Gary:うちもだよ!うちのはJ-POP大好きなんだよ。だからいつか日本に来るときは、一緒に連れて来てやろうと思っているのだけど。

Zetro:うちは娘ですらメタルを聴くよ。

--- M : 子どもをメタル好きに育てる秘訣は何なのでしょう。


Zetro:俺はとにかくへヴィメタルが大好きで、家や車でもいつもメタルを聴いているからね。Michael SchenkerUFOIron MaidenからSodomSlayerまで、メタルなら何でも聴く。一番上の息子は、Black Dahlia Murderとか、新しめのバンドが好きなんだ。

--- M : ファーストアルバム"Bonded by Blood"からすでに30年が経っていますが、30年後の今振り返ってみて、あのアルバムについてどのような気持ちをお持ちですか。


Gary:もちろん今でも大好きだよ。まさか30年後も、スラッシュメタルの金字塔としてたたえられるなんて想像もできなかった。もし明日死んだら、間違いなくこのアルバムを墓場に持っていくよ。

--- M : ではセカンドアルバムをリリースした1987年頃は、"Bonded by Blood"についてどのように感じていましたか。セカンドアルバムではすべてが変わった気がするんですよ。Steveが加入したというだけではなく、例えばリフのスタイルにしてもトレモロ主体からパームミュートを多用したクランチーなものになり、歌詞ももっと社会的になりましたよね。


Gary:多分その通りだね。振り返って考えてみると、当時はさすがにサタンについてばかり歌うことにウンザリしていたというか。結局その後またサタンに帰ってきてしまうのだけど(笑)。



--- M : 中には、"Bonded by Blood"しか認めないような頑強なファンもいますよね。そのようなファンについてどう思いますか。


Gary:理解できるよ。あれは素晴らしいし、へヴィメタルにとっても非常に重要なアルバムだからね。

--- M : なるほど。もっと寛容になれよ、とは思わないということですか。


Gary:ああ、思わないよ。

Zetro:"Bonded by Blood"が出たときは、俺もまだExodusにいなかったら客観的に聴いていたわけだけど、すべての曲が素晴らしい。全部シングルとしてリリースできるんじゃないかという感じだった。当時覚えているのはJudas Priestを見に行った時に、駐車場で飲みながらショウが始まるのを待っていたら、入ってくる車という車、全部がBonded by Bloodをかけているんだよ。本当に全部だよ。

--- M : そんなExodusに加入した直後というのは、やはり苦労もありましたか。


Zetro:最初のいくつかのショウは大変だったよ!ファンは飲むためじゃなくて、俺に投げつけるためだけにデカいビールを買うような状況でさ。ビールの缶が頭にぶつかることが何度かあったよ。

--- M : あの頃のファンは激しかったですからね。


Zetro:彼らは変化というものが我慢できなかったようだ。俺はLegacyのシンガーで、PaulがExodusのシンガーという認識だったんだろうね。もちろん俺もそれは理解できるし、例えば今でもRobがヴォーカルのExodusの方が好きな人もいるだろうしね。全員を満足させることはできないからさ。"Fabulous Disaster"が出る頃には、そういうファンもいなくなっていたよ。

--- M : 今や伝説となっている、Venom、SlayerとのCombat Tourについて教えてもらえますか。何か面白いエピソードはありましたでしょうか。


Gary:あれはツアー全部が面白いエピソードだよ!とにかく飲みまくってベロベロに酔っ払っていたから、詳しい状況は思い出せないんだよ。とても楽しかったけど。Jeffなんかと飲みまくってね、サウンドチェックからライヴ開始までずっと飲んでたよ。俺たちも若かったし、とにかく楽しかった。

--- M : Tom ArayaがCronosの頭にオシッコをひっかけて、CronosにKOされたというエピソードを聞いたことがあるのですが、それは本当ですか。


Gary:ああ、本当だよ。

Zetro:その話は聞いたことがなかったよ!

Gary:俺は詳細全部知ってるよ。

--- M : 実際に目撃したんですか。


Gary:詳しいことは明かせないけど、CronosがTomの顔面をぶん殴ったんだよ。

Zetro:その場に居合わせなくて良かったよ。

Gary:顔面をぶん殴って、でも次の日には仲直りして、わだかりもなく、でもTomは目の周りが黒くなっていてね。

--- M : 本気で殴った感じだったのですか。


Gary:Cronosはビッグガイだからね。

Zetro:Cronosだからね、きっと本気で行っただろう。

--- M : (Steveに)あなたの声はとても特徴的ですが、お好きなシンガーは誰ですか。


Zetro:Bon Scottだね。死ぬほど好きさ。影響を受けたという意味ではLemmy、Jello Biafra、Johnny Rotten、Phil Mogg、Robert Plantとか、それから彼みたいには歌えないけどDio。Rainbowは最高だったね。Rainbowは一度聴き始めたら、止まらなくなってしまう。

--- M : 高音のへヴィメタルシンガーがお好きなんですね。


Zetro:初期のSlayerなんかでも、Tomは物凄い高音出してるだろ。最近はあまりやらなくなってしまったけど。俺は高音で歌うのが心地よいし、"Blood In Blood Out"でもかなりの高い声出してるしね。

--- M : (Garyに)SlayerとExodusという二つのバンドでプレイするのは大変ですか。


Gary:大変だよ、二つのバンドに加えて家庭もあるし、簡単なことじゃない。SlayerとExodusというバンドでプレイできることは素晴らしいけど、さすがに50になると一晩で2バンド分プレイするというのは肉体的にキツいよ!25歳の頃とは違うね。

Zetro:Exodusでプレイして、1時間休んで、今度はSlayerというのも19回もやったんだよね。一晩で2時間半やるということだろ。

Gary:大そのあとヘッドライナーのツアーもやった。

Zetro:そうそう続けざまに12日間のヘッドライナーショウをやったね。

Gary:6日間に11セットやった時もあったな。体はボロボロだよ。

--- M : 若いスラッシュメタルバンドでお気に入りはいますか。


Gary:ポーランド(注・正しくはフィンランド)のLost Societyが素晴らしいよ。

ZetroHavokがいいね。あとはHatriot(笑)。良いバンドはたくさんいるよ。

GaryWarbringer

ZetroEvileとかね。多くのバンドがスラッシュメタルというものを継承してる。ヴェテランのバンドも良い作品をリリースし続けていると思うしね。Overkillの新作も素晴らしかったし、Anthrax"Worship Music"も良かった。Testamentも良い作品をリリースし続けているし、Slayerの新作にも期待している。"World Painted Blood"も良かったからね。Megadethも好きだよ。スラッシュメタルというジャンル全体が「まあ悪くないね」というような状態ではなく、非常にストロングだと思う。

--- M : 確かに現在のスラッシュメタルの状況は非常に良いですよね。一方で80年代終わりから90年代にかけて、デスメタルやグラインドコアなどが登場した時は、本当にスラッシュメタルは消滅してしまうのではないかと心配したのですが。


Gary:あれは自然な発展だったと思うよ。俺たちは、俺たちより前にあった音楽を発展させてスラッシュメタルを作ったわけで、デスメタルやブラックメタルも同じように発展していったものだ。既存の音楽からインスピレーションを受けて、そこから新しい物を産み出すんだよ。

--- M : 確かに今でこそ、スラッシュメタルもデスメタルもブラックメタルも共存していますが、当時はスラッシュメタルは消えてしまうのではないかという感じでしたよね。


Gary:それはスラッシュメタルがアンダーグラウンドを離れ、メジャーな存在になったせいだよ。まだデスメタルがアンダーグラウンドだった頃すでに、メジャーレーベルはスラッシュメタルを殺し始めていたんだ。メジャーを切られたスラッシュメタルバンドが、一からやり直そうとしていた時期だった。

Zetro:俺はデスメタルこそがメタルを救ったんだと思ってる。90年代初めはグランジがブームになり、へヴィメタルというものをシーンから消し去ってしまっただろ。でも、Cannibal Corpseのようなバンドが触媒となって、新しいタイプのメタルが生み出されることになった。さっきも言ったように、今はスラッシュメタルの状況は非常に良い。当時は「よし俺が一番に頂上に登ってやる」みたいな競争があったけど、今では皆で一緒に頂上を目指そうという連帯があるからね。この間ExodusはSlayer、Suicidal Tendenciesとツアーをしたけど、これは1987年には考えらないことだったよ。競争があったからね。今では一緒に素晴らしいことをやろうという風になっている。

--- M : それでは最後に日本のファンにメッセージをお願いします。


Gary:ファンの皆、愛しているよ。また日本に戻ってこられて最高さ。

Zetro:日本に来られてうれしいよ、お気に入りの国だからね。日本で一週間くらい過ごしたいね。

--- M : お子さんを連れて。


Gary:そうだね、子どもたちと一緒に。いつも俺が日本に行くっていうとうらやましがられるんだよ、子どもたちは日本に来たことがないから。

Zetro:昨日は原宿に行って買い物をしたんだ。最高だったよ。アイスクリーム入りのクレープ食べてさ。

Gary:エンジェルクレープだっけ。

Zetro:日本ではいつも最高のもてなしをしてくれるからね。

Gary::俺もBODYLINEで大量の買い物をしたよ(笑)。娘のために、ハラジュクガールのものをね。

--- M : どうもありがとうございました。






 まず、スラッシュメタルというジャンルの成り立ち、展開について、説明しよう。スラッシュメタルとは、簡単に言ってしまえばNWOBHMハードコアパンクが掛け合わされることによって、1980年代初頭に発生したヘヴィメタルの一ジャンルである。ヴォーカルにはメロディが無く、一般的な音楽に比べそのテンポは桁外れに速い。歌詞もサタニックなもの、暴力的なものが多く、元々過激な音楽とされるヘヴィメタルの中でも際立って過激であり、いわゆるエクストリームメタルのさきがけのなったジャンルだ。80年代初頭から中盤にかけては、誰が一番速いか、誰が一番邪悪であるかを競っていた気配もあり、スラッシュメタルは過激化の一途を辿っていたと言える。だが、この果てしない過激化競争に待ったをかける出来事が起きる。Metallicaの商業的成功だ。スラッシュメタルという、どう考えても反商業的な音楽と思われていたものが売れる。しかもMetallicaの成功は、小規模なものではなかった。となると二匹目のどじょうを狙うレーベル、そしてバンドが大量発生するのも当然のこと。多くの、特にアメリカのスラッシュメタルバンドが音楽も歌詞もマイルドにすることでメインストリームへの接近を図り、いくつかのバンドは実際にメジャーレーベルとの契約にも成功した。だが、スラッシュメタルのメジャー化というのは、表面的な華やかさとは正反対に、実は棺桶に片足を踏み入れるような出来事だったのである。スラッシュメタル凋落のきっかけは二つ、グランジデスメタル・グラインドコアだ。Nirvanaら、グランジと呼ばれるジャンルがメジャーの音楽界を席巻、スラッシュメタルを含むヘヴィメタルは一気にカヤの外へ押し出されてしまった。そしてヘヴィメタル内部の世界では、デスメタルやグラインドコアと呼ばれる、スラッシュメタルを遥かに上回る過激さを持つジャンルが台頭していたのだ。おかげでスラッシュメタルというジャンルの居場所は、世界のどこにもなくなり、多くのスラッシュメタルバンドが解散。当時は本当にスラッシュメタルというジャンルは消滅してしまうのではないか、という雰囲気であった。だが、結局スラッシュメタルは2015年の今も生き残っている。デスメタル・グラインドコアの後に発生した、90年代初頭から中盤にスカンジナヴィアを中心に興ったブラックメタルを契機とし、80年代スラッシュメタルの見直しが図られた。デスメタルはスラッシュメタルの上位互換ではなく、それぞれがそれぞれの良さを持った別のジャンルである、という認識が共有され始めたのである。「そんなの当たり前のことだろ!」と多くの人は思うかもしれない。だが当時はそうではなかったのだ。現在のようなスラッシュメタル、ブラックメタル、デスメタルなどのエクストリームメタル共存繁栄というのはなかなか想像できないものであった。


 スラッシュメタルの歴史をざっと振り返るとこんな感じなのだが、Exodusのインタビュー記事で、何でわざわざスラッシュメタルの解説をするんだと思われるかもしれない。この解説、実は「スラッシュメタル」「Exodus」に置き換えても、まったくそのまま成立するのだ。つまり、スラッシュメタルの栄枯盛衰の歴史は、Exodusの歴史そのものなのである。1979年現Tom Hunting及びMetallicaのKirk HammettらによってExodusは結成される。初期はJudas Priestのカヴァーなどをやっていたようだ。最初の公式音源となる1982年のデモにおいても、まだやっているのは十分ヘヴィメタルの範疇で語れるもの。Exodusがさらなるスピードアップを図り、後にスラッシュメタルと呼ばれることになる形態への進化が顕著となるのが翌83年。83年時点でのリハーサルテープやライブテープがいくつか出回っているが、すでに"Bonded by Blood"なども演奏されており、スラッシュメタルバンドとしてのExodusは完成に近づきつつあるのがわかる。ちなみにVenomのデビューアルバム"Welcome to Hell"のリリースが81年、セカンドアルバム"Black Metal"は翌82年。83年にはMetallicaとSlayerのデビューアルバムリリースなので、この3年間というのは正にスラッシュメタルという音楽が生まれ、完成された瞬間と言える。スラッシュメタル史上最高のアルバムとは何か、というアンケートをとったらおそらくは相当の票数を集めるであろう歴史的名盤となるExodusのデビューアルバム、"Bonded by Blood"が満を持してリリースされたのが85年。実際は84年の夏にはレコーディングを終えていたものの、ジャケがなかなか決まらず翌年まで発売がずれ込んだと言われている。翌86年には、先にも触れた通りMetallicaが商業的に大成功をしているのだが、これがExodusに影響を与えなかったとは考えづらい。何しろKirk Hammettは、元Exodusのメンバーだ。「自分たちも後に続け」とならない方がおかしい。速い、激しい、邪悪というスラッシュメタルの特徴(特長)を大幅に減じたセカンドアルバム"Pleasures of the Flesh"はヴォーカリストを変え、87年にリリース。この辺りの経緯については、後程改めて触れたい。89年のサード"Fabulous Disaster"を経て、ExodusはCapitol Recordsとメジャー契約。スラッシュ的要素はどんどん薄くなり、92年の"Force of Habit"ではそのような部分を見つけるのが難しい程。スラッシュメタルというジャンルが眠りにつくと同時に、Exodusも活動を休止した。それから数年が過ぎ、一周したスラッシュメタルが最早時代遅れの音楽とは見做されなくなった時、Exodusも目を覚ます。しかも、一度は切り捨てたはずのヴォーカリスト、Paul Baloffを伴ってである。その後頻繁にヴォーカリストは変わりつつも、Exodusがスラッシュメタルの最前線を走り続けているのはご存じの通り。スラッシュが生まれ成長し、一度は栄光を極めるものの転落、だが不死鳥のように蘇るという歴史は、Exodusのそれそのものなのがおわかり頂けるだろう。というよりも、Exodusこそがスラッシュメタルの歴史を作ったというべきなのかもしれない。

 さて、今でこそスラッシュメタルだけでなく、ヘヴィメタルの歴史上燦然と輝く名盤として名高いExodusのデビューアルバム"Bonded by Blood"だが、リリース当時は決して手放しに絶賛されていたわけではない。新しい時代を切り開く者の宿命ではあるが、特にここ日本における受容は酷いものであった。先見の明などあるはずもないメディアが酷評したことを受け、一部の熱心なスラッシュファンを除き、"Bonded by Blood"は黙殺されていた。音楽の好き嫌いすら自分で判断できない「メタルファン」が、商業誌が次の"Pleasures of the Flesh"に高得点を与えると、手のひらを返したように「Exodusいいよね!」と騒ぎ立てるのを見て、居心地の悪さを覚えた人も少なくないだろう。21世紀の今、"Bonded by Blood"のような歴史的名盤が酷評されたことはにわかに信じがたいかもしれない。だが、当時はExodus自身ですら、"Bonded by Blood"を恥ずかしい過去として捉えていたように、私には思えてならないのだ。"Bonded by Blood"を否定することにより生み出された"Pleasures of the Flesh"。そしてそれが後のメジャー契約への足掛かりとなったことは間違いない。だが30年という時の審判を経た今、歴史的名盤とされたの"Bonded by Blood"の方。今回の来日公演においても、"Bonded by Blood"からは2日間で6曲も披露されたにもかかわらず、"Pleasures of the Flesh"については二日目にタイトル曲が演奏されただけ。つまりはExodus自身も、一度は否定したはずのファーストを重視しているということだ。一体何故なのか。

 86年のMetallicaの商業的成功を挟んで存在する"Bonded by Blood"と、セカンドアルバム"Pleasures of the Flesh"。この2作の隔たりは非常に大きい。変わったと考えられる点は、大きく分けて次の3つ。

1. ヴォーカル
2. リフのスタイル及びテンポ
3. 歌詞


ってこれ、変わってないところないじゃないかよ、というくらいの変わりようだ。


 まず最も顕著なヴォーカル。Paul Baloffがクビになり、Legacy(現Testament)からSteve Zetro Souzaが引き抜かれる。Paulの解雇については、公式には薬物乱用が理由になっているが、おそらくはそれだけではないだろう。明らかにExodusは「歌える」ヴォーカリストを欲していたと思われる。つまり、ヴォーカルにメロディを復活させようとしたのだ。Paul Baloffという非常にインパクトのあるヴォーカリストの後釜となったSteveに強い抵抗感を示したファンが少なからずいたことは、今回のインタビューでも語られている通り。SteveのExodusへの加入は、Legacyのファンからの反発を呼んでしまったのだ。あれから30年経った今でもPaul原理主義とでも言うべきファンは世界中に存在する。だが、もし"Pleasures of the Flesh"が、Paulのヴォーカルで作られていたら、もっと素晴らしいものに仕上がっていたかという問いには、私は否定的にならざるを得ない。セカンドアルバムに収録された楽曲のうち3曲は、Paulのヴォーカルでのデモも作られているのだ。おそらくはYouTubeなどにもあると思うので、是非探して聞いてみて欲しい。実力以上のメロディラインを無理やり歌わされている感満載のこのデモを聞けば、やはり"Pleasures of the Flesh"のヴォーカルはSteveしかなかったと納得できるのではないか。Exodusをクビになった当時のPaulは、ヴォイストレーニングに通っているという噂などもあり、「きちんとメロディを歌え」という要求を突き付けられていたと想像できる。つまり、単にヴォーカリストが交代になった結果ヴォーカルスタイルが変わったのではなく、「きちんと歌うヴォーカル」が必要とされ、その結果Steveが抜擢されたのだ。それに、例えば今回のライヴなどでもわかるように、Steveが歌うファーストの曲には大きな違和感は無い。つまり、耳が行きがちなヴォーカリストの交代は、Exodusの方向転換には騒ぎ立てるほどの影響を与えてないとみることもできる。

 むしろ肝心の楽曲だが、1stと2ndでの差異は非常に大きい。まず、明らかに速い曲の占める割合が下がり、スピードよりもノリを重視したミドルテンポの曲が増える。速い曲にしても、1stほどの疾走感は無い。というのも、1st当時のExodusの代名詞とも言えるトレモロ主体のリフはすっかり鳴りを潜め、パームミュートを多用したいわゆるクランチーなリフ主体という、そもそものリフの作り自体が変わっているのだ。実際のBPMだけでなく、体感速度も下がっているのである。

 そして歌詞。これがおそらくExodusの心境の変化を如実に物語っているだろう。

邪魔する奴は殺してやる
顔面を蹴り上げ、お前のワイフをレイプし殺してやる
お前の町を、家を荒らし、焼き尽くしてやる
音も立てずに俺のナイフがお前の背中を貫く
エクソダスアタック!


なんて歌詞を書いていたバンドが、次のアルバムではこの調子だ。

政治家なんて皆賄賂をもらっているのさ
公害を垂れ流し癌をばら撒く
政治献金なんて所詮は賄賂
俺たちの命と引き換えに、奴らのポケットは膨らんでいく


どうですか、この前者の歌詞の酷さ!メジャーになることが目標でないことは火を見るより明らか。こんな歌詞、MTVなどで流せるわけがないことは、誰でもわかる。スラッシュメタルという音楽がメインストリームに成りうるなど、誰も想像していなかったからこそ書けた歌詞だ。ところがMetallicaの成功を目の当たりにしては、根本的に目標変更を迫られずにはいられない。確かにタイトル曲である"Pleasures of the Flesh"などは、食人について歌っていたり、表面上ブルータリティを保持しているように見せてはいるが、その実歌詞内容のマイルド化は相当なものだ。

 ヴォーカルにメロディを復活し、楽曲のテンポを落とし、社会的な歌詞を書く。スラッシュメタルというものが、非常識に速い楽曲を奏で、邪悪な歌詞をがなり立てる音楽だとすると、"Pleasures of the Flesh"は、そのすべてを否定したのだ。そして当時はそれをメディアが「スラッシュメタルの進化」「スラッシュメタルのインテリジェント化」と囃し立てたのだ。スラッシュメタルは幼稚で低レベルな音楽、いや音楽とも呼べない代物。それがやっとまともになってきた。そんな風潮である。そしてそんなスラッシュメタルを愛するファン、さらにはそれをプレイする側にも、多かれ少なかれそんな劣等感があったことは否定できない。だが、現在の視点で振り返れば、そんな見下し、劣等感は明らかな誤解であったと断言できる。メロディの無いヴォーカル、調性を逸脱した楽曲、常軌を逸したスピード。これらはすべて伝統的なヘヴィメタルからの「進化」だ。仮にそれが音楽的無知に起因しようと、メロディを歌えないことが理由であろうと、進化は進化だ。(これらの「進化」はヘヴィメタル特有のものではない。パンクにおけるハードコアパンク、ジャズにおけるフリージャズ、そしてクラシックですら19世紀終わりからこれらの方向への「進化」が起こっている。)ヴォーカルにメロディを復活し、楽曲のテンポを落とすということは、せっかく獲得した進化を捨て去る、つまり後退でしかない。だが、歴史というのは歴史になって初めて認識できるもの。あの当時、「何かExodusは後退してるなあ」なんて思ってる人は誰もいなかったのではないか。私も"Pleasures of the Flesh"には言葉にできない違和感を感じるだけで、その違和感の正体を具体的に掴むことはできなかった。

 誤解をしないで頂きたいが、私は何も"Pleasures of the Flesh"が悪いアルバムだと言いたいのではない。間違いなく良質な作品の一つである。だが、それは既に確立された枠組みの中での優れたアルバムでしかない。一方で"Bonded by Blood"は、Exodus自らが新たな枠組みを提示して見せた作品。革新性の次元が違いすぎるのだ。だからこそ"Bonded by Blood"は、既存の枠組みでしか物事を判断できない人間には酷評された。しかし30年という時を経た今、"Pleasures of the Flesh"が優れたスラッシュメタルのアルバムの1枚という位置に留まる一方、"Bonded by Blood"は歴史を作った別格作品として崇拝の対象となっているのである。そしてまた、Exodusが道を誤ったなどと言うつもりも毛頭ない。あの時代、Exodusがとるべき道は、あれしかなかったのだ。スラッシュメタルは一旦消滅しかかったが、現在の隆盛を見る限り、それも必要な回り道だったのだろう。

 今回も盛り上がりっぱなしであったExodusのライヴだが、1stの楽曲が演奏されたときのファンのリアクションは特に凄まじかった。「Exodusの1stって名盤だよね。」などと改めて発言する必要は最早ないくらい、それはメタルファン、そしてExodus自身にとっても当たり前のことになっているのだ。



 それにしても80年代初頭のサンフランシスコの雰囲気というのは、話を聞くだけでワクワクする。何か新しいものが確実に生まれつつあるのだが、それが後にどれほど大きなムーヴメントに発展していくのはまだわかっていない頃。月曜の夜にMetallicaを満員のライヴハウスで演奏し、Exodusを筆頭に後にベイエリアスラッシュメタルというムーヴメントを生み出すバンドたちが、「俺たちの方が速い」「俺たちの方がヘヴィだ」としのぎを削っていた時代。そんな時代、場所で十代を過ごした人たちがいるなんて、嫉妬するなという方が無理でしょう!


Gary , Mirai , Zetro


川嶋未来/SIGH
https://twitter.com/sighmirai
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    発売日:2015年04月27日


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  • Graveward

    CD 輸入盤

    Graveward

    Sigh

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    発売日:2015年05月04日


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