フランス・バロック後期の作曲家デュフリのチェンバロ曲全集

2015年2月9日 (月)

ジャック・デュフリ：クラヴサン作品全集（４ＣＤ）
ピーター・ヤン・ベルダー（チェンバロ）

オランダの人気チェンバロ奏者、ピーター・ヤン・ベルダーが、生誕300周年を記念してジャック・デュフリ[1715-1789]のクラヴサン（チェンバロ）曲全集を録音しました。
　デュフリはフランス・バロック後期の作曲家でクラヴサン奏者、オルガン奏者であった人物で、アルベルティ・バスと呼ばれる低音声部の厚みのある書法や、フレーズの効果的な音程変更による繰り返し書法により、非常に聴き映えのするチェンバロ作品を書いたことでも有名な存在。フランス革命勃発の翌日に亡くなったというデュフリの作品は、華やかなロココ文化を象徴するものであったと言えるのかもしれません。
　特にルイ15世の子女ヴィクトワールに献呈されたクラヴサン曲集第3巻は完成度が高く、『シャコンヌ』や『三美神』『フォルクレ』といった作品で、デュフリのチェンバロ音楽の魅力を心ゆくまで味わうことができます。
　なお、この第3巻には、もともとはそのヴィクトワールのために書かれたヴァイオリン付き作品も含まれているのですが、この全集では、バロック・ヴァイオリン奏者の木村理恵が参加して演奏しているのも嬉しいところです（ちなみにモーツァルトが初めて出版したヴァイオリン・ソナタもヴィクトワールに献呈されたものでした）。
　ピーター・ヤン・ベルダーの演奏は、いつもながらの作品様式を大切にしたもので、使用楽器にも、当時のフランスで高名なチェンバロ製作一族であったブランシェの1730年モデルという選択がおこなわれています。なお、2011年に発売された中野振一郎による全集（2巻分売）も、ヴァイオリン付作品を含む完全全集でしたが、使用楽器が1765年のブランシェ2世によるものということなので、今回の全集との響きの違いを楽しむのも面白いかもしれません。
　それはともかく、すでに豊富なレコーディング実績をもつベルダーとしても、今回のデュフリの全集は、非常に力の入ったものなので、作品の希少性だけでなく、演奏・録音の面でも大きなエポックとして、記憶されるものになるのではないかと思われます。（ＨＭＶ）

【収録情報】
Disc1
デュフリ：
● クラヴサン曲集第1巻 (1744)　全14曲
　・アルマンドニ短調 [6:30]
　・クーラントニ短調 [3:41]
　・「ヴァンロ」ニ長調 [4:33]
　・ロンド（上品に）ニ長調 [3:05]
　・「トリボレ」（快活に）ニ短調 [3:32]
　・ロンド（優しく）ニ短調 [2:13]
　・「ダマンジー」ニ長調 [4:17]
　・「カザマジョール」ニ長調 [4:30]
　・アルマンドハ短調 [6:02]
　・クーラント「ブコン」ハ短調 [3:40]
　・「ララール」ハ短調 [4:07]
　・メヌエットハ短調＆ハ長調 [3:51]
　・ロンドハ長調＆ハ短調 [3:13]
　・「ミレッティーナ」（快活に） [6:29]

Disc2
● クラヴサン曲集第2巻 (1748)　全14曲
　・「ヴィクトワール」ニ長調（快活に） [4:56]
　・「ドゥ・ヴィルロワ」ニ長調（勇ましく） [6:04]
　・「フェリクス」ニ短調（気高く） [3:12]
　・「ドゥ・ヴァートル」ニ長調（勇ましく） [4:20]
　・「ランツァ」イ長調（気高く、生き生きと） [5:20]
　・「鳩」ロンドイ短調（優しく） [3:56]
　・「ダマンジー」イ長調（快活に） [5:07]
　・「ドゥ・ブゼヴィル」ロンドホ長調（優しく） [3:20]
　・「デリクール」ホ長調（気高く、生き生きと） [3:43]
　・ガヴォットホ長調＆ホ短調（優しく） [3:57]
　・メヌエットホ短調＆ホ長調（優しく） [3:00]
　・「ドゥ・ルドゥモン」ト短調（勇ましく） [4:30]
　・「ドゥ・カズ」ト長調 [3:34]
　・「ドゥ・ブリサック」ト短調（陽気に） [3:03]

Disc3-4
● クラヴサン曲集第3巻 (1756)　全17曲
　・序曲へ長調（荘重に－速く－遅く）（ヴァイオリン助奏付） [5:11]
　・「ドゥ・メ」上品なロンドへ長調（ヴァイオリン助奏付） [2:31]
　・「修道院長マダン」へ長調（陽気に）（ヴァイオリン助奏付） [3:26]
　・「フォルクレ」へ短調 [6:02]
　・シャコンヌへ長調 [7:14]
　・「メデ」へ短調（快活に、そして激しく） [4:17]
　・「三美神」ニ長調（優しく） [7:15]
　・「ドゥ・ブロムブル」ニ短調（快活に） [4:04]
　・メヌエットニ長調＆ニ短調 [3:58]
　・「ドゥ・カゾーボン」ト長調（快活に）（ヴァイオリン助奏付） [4:00]
　・「デュ・タイイ」ホ短調（上品に、そして朗らかに）（ヴァイオリン助奏付） [4:20]
　・「ドゥ・ヴァルマレット」（陽気に）（ヴァイオリン助奏付） [3:16]
　・「ドゥ・ラ・トゥール」ト長調（快活に） [3:27]
　・「ドゥ・ギヨン」ホ長調（上品に、軽やかに） [3:42]
　・メヌエットホ短調＆ホ長調 [3:34]
　・「ドゥ・シャムレ」上品なロンドイ長調 [3:13]
　・「ドゥ・ヴィルヌーヴ」ガヴォット（優しく） [3:58]

● クラヴサン曲集第4巻 (1768)　全6曲
　・「ドゥ・ジュイニェ公爵夫人」（気高く、優しい風情で）ニ長調 [6:42]
　・「ドゥ・サルティーヌ」ト長調 [4:30]
　・「ドゥ・デュルモン」（上品なロンド）イ短調 [2:41]
　・「ドゥ・ヴォカンソン」変ロ長調 [5:09]
　・「ポチュイン（ロンド）」（節度をもって）ハ短調 [5:23]
　・「デュ・ビュック」ト短調 [4:38]

　ピーター＝ヤン・ベルダー（チェンバロ）
　木村理恵（バロック・ヴァイオリン）

　録音時期：2013年10月、2014年2月
　録音場所：オランダ、Capuchin Monastery in Velp, Grave
　録音方式：ステレオ（デジタル／セッション）