葉加瀬太郎 インタビュー2014 Part 4
2014年8月14日 (木)
日本のクラシックコンサートで、なおかつステージセットやマイクすら使わないアンプラグドで、客席全体がスタンディンオベーションとなる瞬間は、そうは体感できないもの。葉加瀬太郎さんが2011年から3年間続けたアコースティックコンサート「クラシックシアター」は、生楽器の"音を楽しむ"喜びと、純粋に美しい音楽に浸る多幸感へとリスナーを導きました。このクラシックシアターから生まれたスコアとアレンジ、手応えと自信。その全てを注ぎ込んだ最新作『Etupirka〜Best Acoustic〜』が誕生しました。弦楽五重奏にピアノというアンサンブルを核とした完全なるアコースティックサウンドで、生楽器の息吹はそのままに。これまで多くの人の日常に寄り添ってきた"葉加瀬サウンド"が、本作では"室内楽"へとドレスアップ。進化と深化を続ける葉加瀬太郎さんへのロングインタビューをお届けします。
Part4:「今が一番、僕なりのヴァイオリンを上手に弾ける自信がある」
─来年は、いよいよ25周年を迎えられます。
ですってね(笑)。四半世紀とか言われるとゾっとしますけど(笑)。僕自身は、変わらない一年を着実に重ねていきたいと思っていますが、スタッフたちは色々なイベントを打ち出そうと動いてくれていて、そうも言ってられない。祭りをやるぞと言われたら、神輿に乗って盛り上げて、自分も楽しみ尽くさないと。音楽はもちろん、絵の方も、来年は展覧会も開きたいなとかアイディアは具体的になってきてはいますが、大切なのは先のことより目の前にあること。今は、9月から始まる『Best Acoustic Tourエトピリカ』に全ての情熱を注いでいます。
─47都道府県を回る一大ツアーです。魅せることの達人である葉加瀬さんの構想が、今から楽しみです。
僕も楽しみで仕方ない。この3年間は、ホールで演奏をするクラシックシアターと、バンドスタイルでエンターテインメントに徹するライブ、二つのスタイルをお客様に提示させて頂いてきました。開催時期も変えることによって気持ちの切り替えもでき、それぞれのスタイルに集中できたことは事実ですが、今年は「究極のアコースティックな編成で、どこまでエンターテインできるか」という新しい挑戦をします。曲によって編成の微調整はするものの、基本的にはアルバム同様、弦楽五重奏にピアノというアンサンブルを核にした完全なるアコースティックサウンドで演ります。自分への挑戦でもありますが、自信はあります。
─自信があるということは、最強なことだと思います。
あくまでも僕なりにですが、今が一番ヴァイオリンを上手に弾ける自信があります。ロンドンに拠点を移したあたりから、色々見つめ直し、やり直してきたことの答えが少しずつ出てきた。ひとつクリアしたら、また違う課題が生まれて、こればかりは永遠に正解にはたどり着けないのですが、そこに向かう気力がまだまだ充分にあります。
─葉加瀬さんの、その圧倒的なバイタリティの源にあるものとは?
生き方は毎日の積み重ねだから。この仕事を選んだから、こういう人間になっているわけで。皆さんにおだてられて(笑)、喜んで頂けるのなら、なんだってやりたいし、出来る。だって嫌なことやってないんですから。お陰様としか言いようが無いけど、皆さんあっての自分。身内からは"他力本願寺"って呼ばれているんですが(笑)、本当にそう。周りのサポートに応えるには、基本ポジティブでいなくては。
─毎日の積み重ねの中で、一番刺激を受けているものは何ですか?
それはもう、音楽ですよね。この年になってようやく「音楽っておもしれぇ!」と心底思える。今自分が幸せである理由の芯はそこにあるなと。それこそ「Etupirka」を作った20代の頃は、今ほど音楽に対して真剣ではなかったし、楽しめなかった。何かを発信する人でいたいとはずっと思っていましたが、それが音楽だけではつまらないと考える自分がいたんですよ。クライズラーを解散してから絵を描き始めたり、テレビやラジオでパーソナリティをするようになり、色んなことを打って出た。今では若気の至りだと思いますが、当時は"ヴァイオリニスト"と言われることに拒否感があって、肩書は"アーティスト"にしてくれと主張したりしてね。それが40歳手前から自分の中で価値観が大きく変わってきて、ひとつのことをやり続けることの凄味がわかってきた。職人の美学に覚醒したというか。価値観が音を立てて崩れていく時というのは、自分が変化できる絶好の機会なんですよ。価値観が変わると、物の見方と見え方、音の聴き方と聴こえ方も変わってくる。すると、自分の作品の作り方や演奏に対する姿勢も変わってくる。こうした変化は凄く面白い。
─価値観が変わる、何か決定的なきっかけがあったのでしょうか?
実は、ずっと「40歳になったら一度ヴァイオリンを置こう」と決意していたんです。40代の自分がヴァイオリンを弾いているイメージが全く持てなくて、コンサートも減らし、作曲やプロデュースなどにシフトしようと考えていた。それが、いよいよ40歳になるという時を迎えたら、コンサートの数は増えているし(笑)、ヴァイオリンに対する想いもまったく変わっていなかった。むしろ「もっと弾けるようになりたい」と切実に願う自分がいた。そんな時です、僕が尊敬するヴァイオリニストの古澤巌さんと20年ぶりに再会したのは。僕が14歳の時に古澤さんは華々しくデビューされ、ずっと憧れの存在でした。18歳の頃に僕が初めて頂いた仕事も、彼のバックでセカンドヴァイオリンを弾くというものでした。縁が深い古澤さんと2006年に再会して、その年の古澤さんのツアーに参加させて頂いたのですが、当時50歳近い大先輩の彼が「やっとヴァイオリンの弾き方がわかってきたよ。こんな発見があったんだけどさ」と、毎日嬉しそうにおっしゃるわけです。テクニックで言えば、古澤さんの域には僕はまだまだ到達できていない。それはもう火を見るより明らかなこと。全身全霊ヴァイオリニストのような彼ですら、成長を続けようと研鑽を積む姿を目の当たりにして、僕の意識が完全に変わりました。二人だけで飲んだ夜があったのですが、「葉加瀬、80代になっても一緒にヴァイオリン弾こうぜ」という古澤さんの言葉が忘れられない。自分のヴァイオリンを極めたいと心から思えるようになったのは、古澤さんとの再会が大きいです。
─『Etupirka〜Best Acoustic〜』は、まさに充実の時に誕生した豊かな作品であることを実感します。最後に、葉加瀬さんの音楽と共に成長してきたファンの方々へのメッセージを頂けたら嬉しく思います。
僕にとって『Etupirka〜Best Acoustic〜』は、この先の10年が見えた創作の羅針盤ともいえる大切な作品です。全ての楽曲に深い想いが込められていますが、聴いて下さる皆様には、美しい音楽としてナチュラルに楽しんで頂けたら喜びです。アコースティックという魅せ方により、ヴァイオリンの音色の繊細かつ生命力溢れる音色がダイレクトに伝わると思います。今が一番、僕なりのヴァイオリンを上手に弾ける自信があり、音楽を心より楽しんでいます。その喜びを皆様とシェアできたら光栄です。自分にとって、何より皆さんにとっての日常や人生が少しでも豊かになる音楽を、これからも作り続けていきたいと心より思っています。
ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。
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