世紀の大発見！コルトレーン最晩年の音源がオリジナル･マスターテープから作品化！

Special Collections & Archives, University of California, Santa Cruz & The Frank Kofsky Archives

世紀の大発見！1966年11月フィラデルフィアのテンプル大学で行なわれたコルトレーン・クインテットのコンサート音源が、Resonance/Impulse!より完全版にて正規音盤化！

　1966年11月11日コルトレーン唯一の来日公演から4ヶ月、そして天に召される半年前、真実を追究した巨人の魂の叫びが炸裂！

　1966年11月にフィラデルフィアのテンプル大学で行われたコルトレーン・クインテットのコンサート音源。このコンサートの模様は、2010年にFreeFactoryから「Naima」、「Crescent」、「Leo」の3曲がリリースされ、非公式ながら大きな話題を呼びましたが、今度はそれら3曲の他、「Offering」と「My Favorite Things」（共に世界初）を含むコンプリート・ヴァージョンが、ResonanceとImpulse / Universalの手によって 2枚組CD及び重量盤アナログとして登場します。音源は当時の放送音源によるもので、ラインからとったオフィシャル・ソース。

　最初で最後の来日公演から約4カ月、コルトレーンの体調はすでにかなり悪化していたはずですが、異様な切迫感に満ちた演奏からは一切そんなことは感じられません。来日公演でのステージが目に浮かぶ天上的／悪魔的名演と言えましょう。日本公演盤とオラトゥンジ・センターでの録音との間にあるライヴ・パフォーマンスはこれだけなので、大変貴重な完全発掘。最晩年のコルトレーンによる”命がけのプレイ”がまさに圧巻！

　生涯、真実を追究し、来日時の記者会見で「聖者になりたい」と語ったコルトレーン。26歳、若きファラオ・サンダースも参加。魂の叫び、うねりが溢れ出る世紀の発掘音源です。

『Offering: Live At Temple University』 CD収録曲

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「オファリング（魂の奉納）」

　11月11日の夕方、オーディトリアムには様々な人種の700人近い聴衆が集まったものの、半分以上は空席だった。客席には、地元ミュージシャン、サックス奏者のバイヤード・ランカスター、ピアニストのアルフィー・ポリット、コルトレーンの旧友であるサックス奏者たちが居並び、その中には前妻ナイーマのいとこでもある、カール＆アール・グラブス兄弟の姿もあった。その中に、この夜の演奏によって人生が一変した人物が2人いる。
　 一人はジャーナリスト、フランシス・デイヴィス、当時テンプル大文学部の学生だった。彼は数年後に、当夜の“流れ”でやって来た聴衆について回想している。

　デイヴィス：「一番鮮烈に覚えているのが会場の雰囲気だ。まるで政治集会だった。コルトレーン支持者が全員結集して、各人がコルトレーンに今までとは違った何かを期待していた。クスリをやってる連中は、同じ夜、やはりキャンパス内で行われたアレン・ギンズバーグの詩の朗読会に行ってしまった。（1960年代、ギンズバーグの活動場所はいつもキャンパスだった。）ギンズバーグのイベントが満員だったため、あぶれた群集が、コルトレーンのコンサートに流れて来たんだ。彼らの内訳は、半分が白人と黒人の学生、残りの半分がノース・フィラデルフィアの黒人で、当時この街でブラック・パンサーより党員の多い過激派公民権運動グループ「革命的行動運動 (RAM)」の支部メンバーがたくさん居た。そんな過激派の連中は出入り口の近くに陣取って、ステージに近い折りたたみ椅子に座る観客を恨みがましく睨みつけていた。座席の政治問題はとっくに過去のもの（寺井注：アラバマ州で起こった人種差別事件で、バスの座席をめぐる「モントゴメリー・バス・ボイコット事件」のこと。）だったし、なによりも会場は空席だらけだった。

　もう一人はジャズミュージシャン、サックス奏者のマイケル・ブレッカーだ。当時、高校生だったブレッカーは、数ヶ月間、彼のヒーロー、コルトレーンをひと目生で観たいと躍起になっていた。彼は「追っかけ」の思い出を2001年に語っている。

　ブレッカー：「ある夜、彼が“ペップス”か“ショウボート”に飛び入りするという噂が流れたんだ。ナイーマの従兄弟たち（カール＆アール・グラブス）が出演するからってね。僕は、ひょっとしたら生演奏が聴けるかも！と胸を弾ませて行った。忘れられない思い出だ。未成年なので、バレないように店に入り、お客の中にコルトレーンがいないかと見回した。するとサックスのストラップを首にかけた男が入ってきて、よもや、と思ったが、コルトレーンよりずっと背が低かった。結局それは噂にすぎず、彼は現れなかった。それで、ようやく生のコルトレーンを聴けたのがテンプル大学だったというわけだ。アリス、ファラオ、ラシードたちとのコンサートはほんとうに素晴らしかった！」



　長年、コルトレーンは予めセット・リストを用意するタイプではなく、このテンプル大コンサートも例外ではない。しかし、この夜は、彼の楽歴を俯瞰する年代記的プログラムとなった。オープニングの“ナイーマ”では、1959年の録音のまま、サンダーズなしのワン・ホーンによるカルテット、続く1964年作品“クレセント”は、大部分がクインテットによる演奏だ。1966年初頭の作品“レオ”は、クインテットに加え、前述のパーカッション奏者達をゲストに加える。そして“オファリング”はコンサート後の'67年に正式レコーディングされる作品で、ここでは短縮ヴァージョンだ。アンコール的に演奏するのが、最も有名な演目、'60年録音の“マイ・ファイヴァリット・シングス”で、コンサートを締めくくる。



　ここで留意すべき点は、晩年の1966年に至ってもなお、コルトレーンがラスト・チューンとして選んだ曲は、アヴァンギャルド的な味付けの発展型ヴァージョンにせよ、遥か昔のヒット・メロディーであった事実だ。やはりこれが不変の接点で、一般ファンに好まれたのだ。

　マイケル・ブレッカー：「その夜の演奏はフリー・ジャズ主体で、かなり奇抜だった、衝撃的なコンサートだった。それでもラストは “マイ・フェイバリット・シングス”で、もちろん割れんばかりの大喝采だった。」

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