SIGH川嶋氏 26年振りのVENOM!

2013年8月9日 (金)

Mirai Kawashima / SIGH
Mirai Kawashima / SIGH
< 〜Venom 第3回 : 26年ぶりに Venom のライブを見る" 〜 >

SIGH川嶋氏がVENOMを語る!第1回はコチラ!
VENOMを語る!第2回!

 去る7月20日、フィンランドのトゥルクで行われた Hammer Open Air に行ってきた。これは2日間に渡って行われる野外フェスなのだが、2日目のラインナップが BulldozerRepulsionHell、そしてヘッドライナーが Venom と凄まじい。Venom のライブを見るのは、1987年悪夢の来日公演以来26年ぶり。あの来日公演自体そもそも CronosMantasAbaddon というオリジナルのトリオではなく、Mantas の代わりに新人ギタリスト2人という短命に終わったラインナップで行われたものだが、その後はバンドの顔とも言える Cronos 抜きになったり、オリジナルの3人で復活したり、でもまた結局仲違いしてしまったりで、現在は3人のうち残っているのは Cronos のみ。(ちなみに Mantas は M-pire of Evil という自身のバンドを率いて今も活躍中だが、Abaddon の方はしばらく音沙汰がない。)まあそんな状態だし、最近のアルバムからの曲もたくさんやるかもしれないし、来日公演の落胆もあるし、ついでに私ももう大人なので、あまり過剰な期待はせず、落ち着いて26年ぶりの Venom に臨むつもりであった。


Venom (2011)

 しかし、バックステージからノシノシと Cronos が現れるのを見たら、とても興奮を抑えることなどできはしない。試しに手を振ってみると、手をあげて答えてくれるではないか!そして流れる例のイントロ "Ladies and gentlemen, from the very depths of hell, VENOM!"。Venom のファンならば、このイントロを聞いただけで興奮もマックスに達するだろう。来日公演ではこのイントロが無かったというのも大きな不満要素だったのである。さて、一曲目は何なのか。ライブにおいてオープニングナンバーが非常に重要なのは言うまでもない。今回敢えて、セットリストは調べずにいた。何で始まるのか、どんな曲をやるのか、一切の情報無しに見たかったからだ。ニューアルバムの曲から始まったらテンション下がるなー、なんていう心配をよそに、"Black Metal" からスタート!いきなり切り札を出してしまうとは。会場のヴォルテージもマックスに。まあ妙にスピードも遅くて、ドラムが Abaddon じゃないせいか、ノリも変だったのだが、そんなことは関係ない。そして次も "Leave Me in Hell"。世紀の名盤 "Black Metal" から2曲連続である。これは新しめの曲連発などという心配は杞憂に終わるのではないか、という期待もあったのだが甘かった。Venom がそんなサービスをしてくれるわけがない。セットリストは以下の通り。


Venom setlist
1. Black Metal
2. Leave Me in Hell
3. Hammerhead
4. Bloodlust〜Black Flame (of Satan)〜Bloodlust
5. Possessed〜Schizo〜Live Like an Angel (Die Like a Devil)〜Possessed
6. Hail Satanas
7. Antechrist
8. Buried Alive〜Resurrection〜The Evil One〜Straight to Hell 9. Warhead 10. Fallen Angels
アンコール
11. In League with Satan
12. Witching Hour



 体感的にはいわゆる初期のクラシックというのは半分くらい。そして来日公演に引き続き、今回も "Countess Bathory" は無し!しかも "Welcome to Hell" すら演奏されていない!実際 "Witching Hour" 演奏後、2回目のアンコールを求める声が、というよりも当然まだ終わりではないだろうという雰囲気が会場を支配しており、もう Venom が出てこないとわかると非常に変な空気になってしまった。そりゃそうだろう。いくらなんでも "Welcome to Hell" をやらないなんて。セットリスト写真を見てもらえばわかるとおり、本来は "Antechrist" のあとに、"At War with Satan""Rip Ride""Welcome to Hell""Hell" というメドレーが予定されていたようだ。なぜこれがカットされたのかわからないが、これが演奏されていればと思うと返す返すも残念でならない。ステージ脇では Bulldozer や Repulsion のメンバーも見ていた。かつては「イタリアのVenom」と呼ばれたほどの Bulldozer は、「No Countess Bathory? No Welcome to Hell?それじゃ No Venom も同然だね。」とかなり辛辣。Repulsion はライブでは常に "Schizo" のカバーを披露するほどの Venom フリーク。そんな彼らも「新しい曲が多すぎるね」と言っていた。(ちなみに Repulsion、この日はさすがに "Schizo" は演奏せず。「いつもは "Schizo" をやるのだけど、今日はマスターにお任せするよ。」とのMCと共に、代わりに Slaughter"Death Dealer" を披露。)おそらくは会場にいた多くの Venom ファンの感想も、Bulldozer や Repulsion のそれと似たようなものであっただろう。

 だがこれ、冷静にセットリストを見直してみると、Cronos 在籍時の作品全期間に渡って、実にバランスよく選曲されているのである。メドレーもバラしてカウントしてみると、演奏されたのは全部で18曲。うち、いわゆる初期3人体制のクラシックに属するのが10曲で約半分。多くはないが、決して少なすぎるわけでもない。さらに分解してみると、デビューアルバム "Welcome to Hell" から4曲、続く "Black Metal" から3曲、3rdの "At War with Satan" は(2曲演奏の予定だったがカットされ)無し、4th の "Possessed" から1曲、シングルが2曲。このうち特筆すべきは、"Possessed" だろう。この Venom コラムの第1回(Venom 第1回)でも書いたが、85年リリースの本アルバムは失敗作というのが一般的な認識。さらにはこのタイトル曲は、当時のライブでもあまり演奏されることがなかったのではないだろうか。イマイチな印象のアルバムだが、この曲もライヴで聞くと実にヘヴィでカッコいい。

 さらにもう1曲、オリジナル3人体制時の作品が演奏されている。"The Evil One"。これはオリジナル体制とは言え、90年代中盤のごく短い期間再結成されたときのアルバム、"Cast in Stone" からの曲。まさかこのアルバムから演奏されるとは。大きな驚きである。そして Abaddon 抜き、Cronos と Mantas の組み合わせで作られた異例のアルバム、2000年の "Resurrection" からもタイトル曲と "Black Flame (of Satan)" の2曲が選ばれている。初期のクラシックが演奏されるのは当たり前。近作からの曲もわかる。しかしこの2枚からのチョイスというのは、まったくもって意外としか言いようがない。

 そして残りの5曲がオリジナルメンバー Cronos 一人になってからの、最近の作品3枚から。"Metal Black""Hell" からそれぞれ1曲ずつ。最新の "Fallen Angels" からの3曲はちょっと多いかなという気がしなくもないが、まあ妥当な線だろう。

 Venom というのはある意味不思議なバンドだ。バンド活動においては脱退劇というのはつきものだが、ここまで脱退、復帰が繰り返されるケースも珍しいのではないか。下の図を見てみてほしい。


Venom chart


廃盤
 Venom の名前でリリースされたスタジオアルバムを年代順に並べ、オリジナルメンバーの誰が関わっているかを示している。見てもらえば分かるとおり、オリジナルの3人のうち2人の組み合わせ、つまり Cronos と Abaddon、Cronos とMantas、Mantas と Abaddonすべてが実現しているのだ。Venom の脱退劇は、不仲に起因しているようなのだが、こうやって見てみると誰と誰の仲が悪いのか、さっぱりわからない。ある時は Mantas が嫌われ、ある時は Abaddon が、そしてある時は Cronos がウザがられていたのだろうか。ちょっとここで初期オリジナル体制崩壊後の Venom の歴史について、簡単に触れてみたい。86年にギタリストの Mantas が脱退、新たにギタリスト2人を加え一気にメロディックな方向に舵を切った87年の "Calm before the Storm" が、商業的に惨敗だったのは以前書いた通り。結局 Cronos はギタリストを引き連れ Venom を脱退、自らのバンド Cronos をスタート。残されたのはドラムの Abaddon のみ。普通ならここで解散してもおかしくないところだが、何と Abaddon は Mantas を呼び戻し、新たなヴォーカリストを加入させて Venom を存続させた。この Cronos 抜きという信じ難い体制でリリースされたアルバム3枚も、商業的に大きな成功をすることなく、またファンの間で話題を呼ぶこともなかった。それはそうだろう、ヴォーカルが Cronos でないというだけで興味を失うファンも少なくなかったであろうし、さらに時代はデスメタル・グライドコア台頭〜全盛期だ。明らかに過去のバンドとなりつつあった Venom に勝ち目はなかった。結局そのままディールも失い、Venom の歴史は幕を閉じたかに見えた。だが、数年に渡る事実上の活動休止後、オリジナルメンバー3人による復活の話が持ち上がる。90年代中盤というと、すでにブラックメタルというジャンルが確立、認知されており、Venom は一周まわって時代遅れのスラッシュメタルバンドから、ブラックメタルのゴッドファーザーとして再び神格化されていた時期である。そんな時にオリジナルメンバー再集結となれば、ファンの期待は高まらないはずがない。果たして96年には "Venom '96" という主に旧作をリレコーディングしたEPを、翌97年にはスタジオアルバムとしては12年ぶりとなるオリジナルメンバー3人による作品、"Cast in Stone" を発表。しかし、である。このアルバム、非常に微妙な出来であった。飛びぬけて悪いわけでもないが、飛びぬけて良いわけでもない。まあよくある再結成アルバムだったわけだ。そうこうしているうちに、あっという間に Abaddon が脱退。オリジナルメンバーが再集結というのが売りだったはずなのに。それでも00年には Abaddon 抜きの Cronos と Mantas 2人体制で "Resurrection" をリリース。しかしこれもまたまた微妙な出来。というわけで、このオリジナルメンバー再結成時のアルバム及び次の "Resurrection" というのは非常に微妙な立ち位置というか、これがまたずば抜けて出来が悪かったりしたらそれはそれで伝説にでもなったのだろうが、とにかく影が薄い作品なのである。ここから3曲も披露されるというのはまったくの予想外であった。そして "Resurrection" の2年後には、ついに Mantas も脱退、オリジナルメンバーは Cronos 一人になってしまった。95年に再集結したときは、メンバーも大人になり、過去の確執も水に流したのかと思ったのだが、まったくそんな状況ではなかったようだ。


Venom

 そんなオリジナルメンバーは Cronos 一人という最近の Venom のセットリストは、Cronos 不在の89年〜92年の作品を除くあらゆるアルバムからピックアップされているのだ。唯一触れられてないのが87年の "Calm Before the Storm"。まああれは名作ではあるものの、他の Venom の作品とは毛色の違うメロディックな作品なので、それはそれで納得だし、逆にあのアルバムの曲をやったらびっくりだ、なんて思っていたらとんでもなかった。たまたまこの日はセットリストになかっただけで、"Krackin' Up" やタイトル曲が演奏されることもあるようなのだ!つまり Cronos は、半分を初期のクラシック、残りをその他のキャリアから少しずつという意図でセットを組んでいるのだろう。決して悪いバランスのセットではない。しかしファンの側からすると、「何でCountess Bathoryやらないんだ!」「新しい曲やるならSeven Gatesやってくれ!」という感想にどうしてもなってしまう。でもね、これ、初期の Venom に名曲が多すぎるせいですよ。初期の名曲を全部演奏したら、それだけで持ち時間を使い切ってしまうし、それは Cronos の本意ではないのだろう。いわゆる初期のクラシック Venom と言われるのはせいぜい86年まで。その後の30年近いキャリアを無視しろというファンの願望は、やはり乱暴なものなのかもしれない。

 もちろん聞きたい曲はまだまだあった。しかし冒頭の "Black Metal""Leave Me in Hell" の流れや、"Buried Alive" のイントロが流れた瞬間、あるいは Cronos がベースを拳で叩き始める "Witching Hour" の出だしなど、鳥肌が立つ瞬間は少なくなかった。"In League with Satan" などは80年代にもあまりやっていなかったはず。ブルドーザー・ベースの名に恥じない Cronos のベースの音も凄まじかった。そうそう、突然のパイロの爆音に驚いて、演奏中露骨にビクっとしてしまっていた Cronos も可愛かった。明らかに Venom はまだまだ現役のバンドなんだと認識した次第である。


Cronos

 Venom ほどのバンドがまだ一度しか来日していないのだ。しかも26年も昔の話。06年には一度来日の予定があったのだが、直前にキャンセルとなってしまった。キャンセルについて Cronos は "fucked up" という表現を使っていたが、一体何があったのだろう。そろそろ再来日を果たしても良いころだ。Cronos も「ぜひまた日本に行きたい」と言っていたし。来日して、2時間くらいのセットでたっぷり名曲を聞かせてくれたら最高なのだけど。そう言えば、"Calm before the Storm" ツアーは、やはり日本でしかやっていないそうです。あの日本公演、思った通りとても貴重なセットリストだったのでした。

川嶋未来/SIGH
https://twitter.com/sighmirai
http://twitter.com/sighjapan

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