LINKIN PARKのあの日、あの時 26
2013年3月17日 (日)
ロス到着から2日後の2012年5月1日(火)――。時差ボケも手伝い、早朝6時過ぎにはすでにパッチリ目が覚めていた。部屋を出てロビーに下り、その一角にあるコーヒーショップでコーヒーを買い、ホテルを一歩出たところにあるベンチに座った。快晴で、空気も気持ちよかった。「絶好の取材日和になるな」なんて思いながら(笑)、「新作どんなんだろ?」「取材うまくいくといいな」とロスに入ってから初めて取材に関する直接的なことを考え始めたのが、このときだった。「取材でこれは訊こう」といくつかの事柄がふと浮かんだので部屋に戻り、デスク上に置かれていたホテルの小型ノートにそれを殴り書きし、取材道具などの再確認をした後に新作試聴会、そして対面取材場所となる高級リゾート系ホテルへと前日に続いて再び向かった。9時から始まることになっていたので、10分前には新作試聴会が行われる部屋に着いていた。
前にも書いた。日本のレコード会社での試聴会は、大会議室で出席者はまるで受験会場のように並べられた机と椅子につき、配られたワイアレスのヘッドホンで新音源を聴く。ヴォリューム調節機能がそのヘッドホンにはついているので大音量でも小音量でもその人その人の好みに合わせて聴くことが可能だ。それに比べて、現地での新作試聴会は少し旧式な方法で行われる。部屋の一角にあるテーブルの上にプロ仕様のCDプレイヤーが鎮座し、その下にあるアウトプットにプラグが差し込まれた10個のヘッドホンがまた別のテーブル上にまで伸び無造作に置かれている。その場にきた順番にそのヘッドホンをとり、CDプレーヤーの前にカタカナの“コの字”のようにあるソファに座り、聴く。試聴会開始後に遅れてその場にきた人がソファに座る際、すでに試聴中の人たちのヘッドホンのコードをまたいだり、くぐったりしなければならなくなることも多々あるので、正直落ち着かない(苦笑)。その対象となるのがLINKIN PARKであれ、またRED HOT CHILI PEPPERSであれ、Warner Brothers Records所属アーティストのロスでの新作試聴会は、毎度そんな感じで行われる。そのたびに思う、「どーして毎回こうも旧式の方法のままなんだろ」と(笑)。そういう意味では日本のレコード会社での新作試聴会は、じっくりきっちり聴くことができる環境を提供してくれる。こういうところはホントに日本ってすごいって感心させられる。
まったくの余談なのだけど、試聴会の話を書いたついでだ、ビックリ仰天エピソードを紹介しよう。あり得ない環境で新作試聴をした、という話だ。とてもじゃないけど“会”なんて呼べるものではなかった。かのTOOLが3枚目『LATERALUS』(2001年)を発売する直前期にロスのフォトスタジオで実現した試聴会、対面取材、写真撮影の現場で起きたことだ。現場に着いた途端に現地の担当者に告げられたのが、「新音源を持ってきてるのだけど、あると思っていたそれを聴くツールがここにないことがわかった」。もう、唖然とした。ちっちゃく「ぇ?!」っと口を突くのがやっとだった。担当者のアシスタント氏の確認漏れが、その原因だった。が、しかし、新作を聴かなければなにも始まらないし、取材もできやしない。で、究極の一者択一を迫られた。スタジオ裏手の駐車場にとめられていた担当者の所有車BMWのカーステレオで聴き、取材に臨むという前代未聞のことだった。「こんなことはもう、2度とないだろう」と思いきや、それから7年後の2008年にやはりロスで同様のことがあった。PANIC AT THE DISCOの2枚目『PRETTY. ODD.』発売直前のこと。上記高級リゾート系ホテルにほど近い中級ホテルの一室で同作試聴会から取材が行われる予定になっていた。部屋にはCDプレイヤーが用意されていた。起こる確率的にはものすごく低いことなのだけど、なんとプレイヤーが新音源CDRの音データを読み込まず聴けずじまい。ホテルに貸し出し用のCDプレイヤーがなかったことから、TOOLのときと同じように通訳さんの所有車のカーステレオで聴くはめに。今だからこそ、こんなエピソードが過去にありました的に書けるのだけど、さすがにそれらが現場で起きたときは取材に向けて気持ちを切り替え、テンションを上げるのに少々時間を要したことは言うまでもない。「2度あることは3度ある」とよく言うけど、この3度目だけはぜひご遠慮願いたいものだ(笑)。
話を戻そう。新作試聴会が始まる直前、A4サイズの紙1枚が出席者全員に配られた。LINKIN PARK/『LIVING THINGS』と一行目に書かれたその紙には、オリジナル収録曲のタイトル12曲全曲が曲順どおりに羅列されていた。このとき初めて知ったタイトルも多く、当然のことながら一気にワクワク感が増量した。それからすぐに視聴会が始まり、1曲目の「Lost In The Echo」がヘッドホンを通じて鳴り出した。そして「In My Remains」「Burn It Down」「Lies Greed Misery」「I'll Be Gone」「Castle Of Glass」…と曲が進んでいくに従い、今作の作風が前作『A THOUSAND SUNS』(2010年)のそれとは違う方向を向いたものであることの確信を深めた。それと並行して「曲は明るめなのが多い」「わかりやすく、また覚えやすい曲も多し」「かなりエレクトロ色強め」と心の奥底でつぶやき、気になったことを手にするそのソング・リスティング表にメモ書きした。第24回連載に書いた。今作の作風に関して、早くから「どうも原点回帰するらしい」との声が本国アメリカから強く聞こえてきていた。確かにここ何年かの間、長年活動してきたアーティストのなかに「今だからこそ、自分たちの音楽的出発点に立ち返って」と公言し、それをハッキリと反映させた作品を作ってくる例は決して少なくない。かと言って、LINKIN PARKもその完全仲間入りをするとは到底思えなかった。確かに“原点回帰”と思しきところは時折顔を覗かせるのだけど、それに強くこだわり、また徹することなく、そういった要素もあちこちに散りばめつつも、再び新たな音楽的領域を切り開くなど、さらなる進化をとげているのが、今作だ。
新作を1度試聴してから少しブレイクを挟んだ後、いよいよ取材と相成った。相手はまず最初にチェスター・ベニントン(vo)とロブ・ボードン(ds)組で、次にマイク・シノダ(vo,g,key)とデイヴ“フェニックス”ファレル(b)組が続いた。『A THOUSAND SUNS』の現地取材のときとまったく同じチームで、取材時間はそれぞれ20分だったと思う。4人みなすこぶる上機嫌で、めちゃくちゃ元気だった。取材時に撮った下記の写真が、そんな彼らを如実に物語っているだろう。
チェスターとロブ
マイクとフェニックス
次回、連載第26回は、『LIVING THINGS』発売直前のロス現地取材 Day 2〜part 2をお送りする。4人の発言を織り交ぜながら、より深く今作の作風を検証してみたい。
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LINKIN PARK 関連サイト
■■■ 有島博志プロフィール ■■■
80年代中盤よりフリーランスのロックジャーナリストとして活動。積極的な海外での取材や体験をもとにメタル、グランジ/オルタナティヴ・ロック、メロディック・パンク・ロックなどをいち早く日本に紹介した、いわゆるモダン/ラウドロック・シーンの立役者のひとり。2000年にGrindHouseを立ち上げ、ロック誌GrindHouse magazineを筆頭にラジオ、USEN、TVとさまざまなメディアを用い、今もっとも熱い音楽を発信し続けている。
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