MARILYN MANSONのあの日、あの時19 『MARILYN MANSONのあの日、あの時』へ戻る

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2012年12月16日 (日)


空虚感すら味わった低迷期から7枚目『THE HIGH END OF LOW』発売へ!
文●有島博志(GrindHouse)

 「どうもマンソンが精彩を欠き出したようだ…」――。

 またぞろこういった声があちこちでまことしやかに囁かれ出した。その火種が通算6枚目『EAT ME, DRINK ME』(2007年)の音楽的方向性、作風での、それまでとの顕著なまでの違いに端を発していることは明らかだった。流布されてくるそういった類の意見を、自分はただただ聞き流していた。連載前回に書いたけど、その作品をかなり好意的に聴いていたからだ。だけど、そういったことが起こること自体、事前にある程度予測できていたし、大勢のマンソン・ファンがそういったことを言いたくなる気持ちにも理解できた。ここで改めて言うことではないけど、マンソンはロック界における“超大物”である。常に周囲から注視を浴び、その発言や一挙手一投足に大勢のファンたちが注目し、ときに褒め称えられ、ときに揶揄され、またときにこっぴどくバッシングされる。特に“話題性”なるものをひとつの武器とし、人気のバロメーターともしてきたマンソンはなおさらだ。その作品発売から4ヵ月後の2007年10月、MARILYN MANSONはRape Of The World Tourの一環で早々と再来日した。前年から開催スタートのLOUD PARK参戦を基軸に福岡、名古屋、東京で単独公演も演るなど計5公演すべて大盛況だったと聞いた。自分が観たのはLOUD PARK 07東京公演のみだったけど、盛り上がりは相当なもので、人気の根強さを痛感させられた。

 よって先述の声はそういう意見もある、ぐらいに思っていたのだけど、実は後日、マンソンがその時期いちアーティストとしても、またいちクリエーターとしても低迷期にあったことを自ら認めたのだ。

「ベスト盤『LEST WE FORGET: THE BEST OF』(2004年)発売後、オレはしばらく音楽から離れようと思った。自分がこれからも音楽を続けていきたいのか、よくわからなくなっていたから。将来また同じ過ちを繰り返したくなかったからしばらく音楽から離れてみたんだ」

 これはあくまでも新たな音楽制作に対して、であって、ツアーに出てパフォーマンスすることに対してではない。事実、マンソンは前作発売に伴うRape Of The World Tourを終える2008年3月頃まで一切新たな音楽制作に着手していない。そのさなかの1月、なんの前触れもなくツイッギー・ラミレズ(b,vo)復帰がアナウンスされた。これには世界中のファンが寝耳に水的に驚かされたものだけど、それまでツアーに出ながらも時間の合間を縫ってはマンソンに代わって1人楽曲制作を進めてきたティム・スコルド(g,b,vo)は追い出される形での脱退となった。ツイッギーが復帰し、その喜びをわかち合いつつ再び音楽面でも再タッグを組んだことはマンソンに大きなプラスをもたらしたようだ。

「今が大きなチャンスだと感じているんだ。まさに今だ、っていう感じ。『EAT ME, DRINK ME』で心のなかに空いてしまった穴を消し去ることができるかもしれない。たぶん次作は残酷で暴力的でヘヴィな内容になるだろう」
と意気揚々に語っている。

 ツイッギー脱退時に後任として迎えられたロブ・ホリデイ(b)がティム離脱を受け、ギターへと転任したもののほどなくして辞めている(その後はTHE PRODIGYのツアー要員に)。ETP Festival出演で韓国のソウルを訪れていたマンソンは記者会見の席で、新ギタリストとして(当時)元LIMP BIZKITで、その頃自己のリーダー・バンド、BLACK LIGHT BURNSの活動に専念していたウェス・ボーランドを招いたことを発表した。これまた寝耳に水的な衝撃的なニュースとなったわけだけど、1年も経たないうちにウェスも離脱した。次作用に新曲を9曲も書いたものの、そのうちの1曲も使われそうになかったことに失望してのことだった、と後日ウェスは語っている。

 低迷期に陥っていたためマンソン周辺の人たちに出入りがあったのか否か。その裏事情は今もなおわからない。次作制作時にマンソンの周りを固めていたのはツイッギー(ベースだけじゃなく、ギターとキーボードも兼務)、Rape Of The World Tourより正式メンバーとなったNINE INCH NAILS人脈のひとりクリス・ヴレンナ(key)、ジンジャー・フィッシュ(ds)だ。この顔ぶれでロサンゼルスのハリウッド・ヒルズにあるマンソンの自宅で2008年11月より次作の本格的な制作が始まり、約2ヵ月後に完成を見ている。

 これまたNINE INCH NAILS人脈のひとりであるショーン・ビーヴァン、そして上記クリス、マンソン、ツイッギーの4者共同でプロデュースされた通算7枚目には『THE HIGH END OF LOW』のタイトルが冠され、2009年5月に発売された。自己開発/再生、ヴァイオレンス、痛み、ポリティクス、愛やそのほかの感情、そして死などさまざまなテーマが託された作品で、“15”という数字がキーワードともなっている。制作中に最後の楽曲が仕上がったのがマンソンの誕生日1月5日だったため、その楽曲のタイトルが「15」となり、今作のクロージング・ナンバーとして収録された。今作のタイトルは15個のアルファベットで成りたち、今作発売は『PORTRAIT OF AN AMERICAN FAMILY』('94年)でのメジャー・デビューからおよそ15年後のこと。かつマンソンはタロットカードで悪魔のカードの数字である“15”に昔から強いこだわりを持つ、といったふうに。なお、ジャケに描かれているタイトルロゴは、'63年公開の黒澤明監督映画『天国と地獄』の英語版『HIGH AND LOW』の題字に使われたものを参考にしたそうだ。

 今作もまた、前作に負けず劣らずの“問題作”となり、ファンの間での評価は賛否両論が真っ二つに分かれた。かなり興味深い作品で、始終“実験性”が強く、また濃ゆい音楽が鳴り続ける。これまでのMARILYN MANSONとしては作風もけっこう特殊だ。前作が“問題作視”された理由は、その作風や音楽性がそれまでのそれらとは著しく違っていたからだけど、今作の音楽性や作風は前作とはもちろんのこと、それまでともガラッと“世界観”からして異なる。エクスペリメンタル・ミュージック? ポスト・ロック?と思しきスタイルの楽曲やサウンド・メイキングが施された楽曲が「Devour」をはじめ何曲かあるし、長尺9分もある「I Want To Look Up Just To See Hell」はマンソンにしては珍しく、ひとつのパートが反復しながら進んでいくチューンだ。そうかと思えば「Pretty As A ($)」や「We're From America」はパンク・ロックしているし、「For Rusted Horses」はスワンプ色の強い楽曲だ。アコースティック・ギター主導/先導の楽曲ながら次第に大小のダイナミクスを放ち始める「Running To The Edge Of The World」も印象的だ。当時、自分としては掴みどころのない作品と思っていたけど、その“掴みどころのなさ”が逆に面白く、楽しめたりした。本国アメリカではビルボード200チャートで初登場4位にランクインした。前作は8位だった。

 2008年10月、MARILYN MANSONはThe High End Of Low Tourの一環で再来日した。東名阪をZEPPツアーした後、最後をV-ROCK FESTIVAL '09へのトリ出演で締めくくった。単独東京公演のライヴ・リポートを2009年11月30日発売のGrindHouse magazine Vol.57に掲載したのだけど、執筆者の宮原亜矢嬢は「マンソン復活を東京のファンへ堂々告げた、記念すべき夜となった」と書いている。

 音楽を続けていきたいのか否かの自問自答と、『EAT ME, DRINK ME』制作で味わった空虚感――。今作発売と、ワールド・ツアー実践でその答えを導き出し、振り払ったと思いたい…。

(次回に続く) ※次回更新予定は12月28日です


MARILYN MANSON 関連タイトル!

JAKALOPE / 『IT DREAMS』(2006年)
カナダはヴァンクーヴァ―産の女性ヴォーカル、ケイティー・Bがフロントに立ったプロジェクトの2枚目であり、日本正式デビュー作。MARILYN MANSONやSKINNY PUPPYほかとの仕事で知られるインダストリアル・ミュージック界の“音の魔術師”ことデイヴ・オギルヴィの主導・先導によるものだ。今作発売当時、完全にハマり、とにかくよく聴いた。ケイティーの表現力豊かな伸びのあるヴォーカルと、インダストリアル & デジタルがかった適度にダークでラウドなロックの合体が、完全に個人的なツボを突きまくった結果だ(笑)。GARBAGEを彷彿させるところもあり、EVANESCENCE好きにも響くハズだ。残念ながらケイティーはすでに脱退し、現在はクリスタル・レイに交代している。
文●有島博志(GrindHouse)

MARILYN MANSON 最新作ニュース

■■■ 有島博志プロフィール ■■■

80年代中盤よりフリーランスのロックジャーナリストとして活動。積極的な海外での取材や体験をもとにメタル、グランジ/オルタナティヴ・ロック、メロディック・パンク・ロックなどをいち早く日本に紹介した、いわゆるモダン/ラウドロック・シーンの立役者のひとり。
 2000年にGrindHouseを立ち上げ、ロック誌GrindHouse magazineを筆頭にラジオ、USEN、TVとさまざまなメディアを用い、今もっとも熱い音楽を発信し続けている。
※ ※ ※ ※ ※

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前作に負けず劣らずの“問題作”

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