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葉加瀬太郎 インタビュー【第ニ回】

HATS UNLIMITED

2012年12月7日 (金)

近年、年に1枚のアルバムリリースと、春(クラシック中心)夏(イベント)秋冬(エンタメ重視)のコンサートをコンスタントに続けている葉加瀬太郎。
先頃リリースされた最新作『WITH ONE WISH』は、ベスト盤やコラボ盤といった企画が続いたこともあり、久々にオリジナル新曲が大半を占めるファン待望のニューアルバムとなった。そして、プロデューサーに盟友・鳥山雄司を迎えた本作は、これまでの葉加瀬のアルバムとは一線を画す質感を持っていた。
その理由を探るべく、現在32ヶ所38公演(※追加公演を含む)の全国ツアーを展開中の葉加瀬にロングインタビューを敢行した。新作の制作秘話はもちろん、彼がいま現在バイオリニストとして、音楽家として立っている地点とその眺めについて存分に訊いたロングインタビューをお届けします。

(インタビュー・文/内田正樹)


PART 2 : 「鳥山雄司さんは、僕の曲にオシャレな服を着せてくれる名テーラー」

-- 本作のプロデューサーを務めている鳥山雄司さんとは長年のお付き合いですが、鳥山さんをまだあまり良く知らないリスナーへ、彼を葉加瀬さんから紹介していただくとするとどんな風になりますか?

葉加瀬太郎(以下、葉): ひと言で言えば“乙女”ですね。“音楽乙女”(笑)。彼は自宅がスタジオになっていて、1年のうちのおそらくほとんどの時間をそこで過ごされていると思うんですが、いつもピシッと片付いていて、鉛筆もすべて尖っていて、机に合わせて直角に置かれている。しかも、家のスタジオなのにきちんとオシャレをされていて。きっちり時間通りに仕事をされるという方なのです。

-- おお。

葉: 湘南生まれで慶応に進まれて、それはもう僕とは正反対のきちんとしたお育ちの方ですから(笑)。常に自分の世界がキラキラと輝いていて、そこが乙女チックなんですよね。僕が初めて出会ったのは、“ライブ・イマージュ”の初回でしたから、もう12年くらい前ですね。最初はねえ、もう、何てスカした野郎なんだと思いましたよ?(笑)

-- 今となっては意外な話ですね。

葉: 何かチャラチャラしているように見えて、『どうも腹割って喋りづらい人だなあ』と思って。ところが一緒にプレイしたり、楽屋でいろんな話をしているうちに楽しくなってきて。僕は後に彼を『気合いの入ったチャラ男』と呼ぶのですが、もうチャラさ加減から乙女加減までが、何から何まで筋金入りだと分かって、そこからはあっという間に意気投合しましたね。

-- そんな鳥山さんと葉加瀬さんとのスタジオワークは、どのような様子なのですか?

葉: たとえば僕が書いた、ちょっと土着的なメロディがあったとする。彼はその土の匂いをちゃんと残しながら、メロディにオシャレな服を着せてくれる。腕のいいテーラーのような方ですよ。だから僕はもうほとんど何も考えなくて済む。8小節のメロディをポンと送って、『鳥山さん、いつもの感じでお願いします』と言うと『はいはい、わかったよぉー』って。完璧ですよ。

-- 頼もしい。すごい信頼関係ですね。

葉: 鳥山さんはいつもスタジオで大笑いしながら作業しています。CDやYOUTUBEで好きな曲をかけながら、『この曲のここの転調、いいよね。これ、どうやったらできるんだろう?』なんて言いながら、ただただ楽しみながらね。こう話すとリスナーの皆さんに誤解を与えるかもしれないけれど、こうした作業はパクるためではなく、むしろ自分たちが持っている音楽へのリスペクトを確認するための作業なんです。過去の遺産に対して、如何に間口を広く、多くの引き出しを持つことが出来るのは、音楽家にとって大きな強みとなる。だから僕の気持ちとしては、『シシリアンセレナーデ』を聴くことでニーノ・ロータを聴いたことのない人が興味を持ってくれたら嬉しい。2曲目の『Back to our home』で言えば、パット・メセニーをご存じの方なら『よくぞここまで』と言ってもらえる曲だと思う。『こんなにも素敵な音楽があるんだよ?』っていうのは、皆に教えてあげなきゃ!(笑)。そのためにも、自分が愛する音楽のスタイルやエッセンスは、取り入れていくことが当たり前だと思うので。

-- お二人の作業はとても楽しそうですね。

葉: ところがレコーディングとなると彼は容赦がない(笑)。僕もそれを望んで彼に頼んでいるのですが、たとえばバイオリン弾いていて、ちょっとノッてきたなと思ったところで、『はい、ちょっと高いね、もう1回いこう』『はい、もう1回』『はい、ちょっとリズムズレた』みたいな。で、『何か悪かった?』って訊くと『ん? 何か良くないよ。はいもう一回』って(笑)

-- うわあ……。

葉: 怖い。ゾクゾクしますよ(笑)。でもそれはすでに彼の中で、仕上がりの理想像が完璧に見えているから。僕のスコアはわりと歌モノ的な構成で、サビが終わったらもう一度、1番のヒラ歌にあたるAメロに戻ったりする。でも彼のスコアは、リピートの時は必ず何かしらコードやりリズムが変わる。だからスコアがすごく長大なものになる。僕のコンサートのミュージシャンたちが、みんな泣いちゃうくらい長い(笑)。鳥山さんはご自身で『私のスコアにリピートはない』って言い切っている。彼はそれを戦略としてやっていらっしゃる。『僕が作るのは国産車なの。フェラーリやカウンタックを作っているんじゃない』と。いろいろなきめが細かいのです。本当に僕が持っていないものを全て持っている。それでいて、お互い自分とは異質なのに理解し合えている。とても貴重な関係性だと思います。

※ PART 3 に続く



葉加瀬太郎 『WITH ONE WISH (+DVD)』 [発売中]

2010年、デビュー20周年を迎えた葉加瀬太郎。
満を持してのリリースとなる今年の最新アルバム『WITH ONE WISH』は、テレビCM曲を中心に話題曲を収録。
新たな葉加瀬太郎の魅力を追及したニューアルバムはプロデューサーに鳥山雄司氏を迎えたオリジナルアルバム。
息のぴったりあった二人によるアルバム制作は「Traveling Notes (2003年)」、「What a Day...(2004年)」以来となる。
※DVD付きの限定盤には、高級リゾートと有名なメキシコ“ロスカボ”をはじめ、フランス、スペインの映像にBGMとして、ひまわり、Sunshine Shower、Etupirka を使用したスペシャル映像を収録。


収録曲

  • 01. WITH ONE WISH
  • 02. Back to our home
  • 03. シリアンセレナーデ
  • 04. ARAB EXPRESS
  • 05. 上島町のうた
  • 06. Prep
  • 07. PRECIOUS TIME
  • 08. Invitations
  • 09. ZERO HOUR
  • 10. 希望の風
  • 11. MY HOMETOWN
  • 12. Someone To Watch Over Me

【葉加瀬太郎プロフィール】


葉加瀬太郎
'90年、KRYZLER&KOMPANYのヴァイオリニストとしてデビュー。セリーヌ・ディオンとの共演で世界的存在となる。'96年の解散後ソロ活動開始。'02年、自身が音楽総監督を務める「アーティスト自身が自由に創作できるレーベル」“HATS”を設立。“HATS”に於けるアーティストプロデュースは勿論、イベントプロデュースや商品企画プロデュース等も行う。ラジオのパーソナリティーや個展を開く画家として活動は音楽に留まらず多岐にわたり 多岐にわたり 多岐にわたり 幅広く活躍。'07年秋、原点回帰をテーマにロンドンへ拠点を移し膨大なクラシックスコアと日々格闘。2010年にデビュー20周年を迎え、新たなスタートとなった2011年、自身初のクラシックスタイルでの全国ツアー“Classic Theatre”を開催。恒例の真夏の野外イベント「情熱大陸スペシャルライブ」は昨年10周年を迎え新たな節目を迎た。'02年“HATS”創立以来、初のベストアルバム「THE BEST OF TARO HAKASE」を昨年8月リリースし日本ゴールドディスク大賞受賞。2012年、昨年に続き“Classic TheatreU”が行われ、春のクラシックツアー、夏の情熱大陸、秋のエンタテインメントツアー、留まることなく活動の場を広げる。年末まで続く全国38公演のツアー「WITH ONE WISH」と同名のオリジナルアルバムを11月7日にリリースする。

[関連リンク]
  HATS オフィシャルサイト
  HATS youtubeチャンネル
  葉加瀬太郎 Twitterアカウント @tarohakaseHATS


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    葉加瀬太郎が音楽総監督を務める『ハッツ・アンリミテッド』レーベル特集。

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