HMVインタビュー: デリック・メイ

2012年11月30日 (金)

おそらく日本で最も人気のあるテクノDJである、デリック・メイ主宰のレーベルトランスマット。その26年の歴史で4枚目となるコンピレーション、”Transmat4”が12月5日に発売されることとなった。今回は11月に来日したデリック・メイにこのコンピレーションについての話を伺うことができた。

interview by Takamori Kadoi/Electronic Music Journalist



-- そもそも、どうしてこのタイミングでこのようなコンピレーションをリリースすることにしたんですか?

トランスマットの違う側面を見せるのにいいタイミングだと思ったんだ。もちろん、ラストラムから声をかけてもらえたということも大きいけれど。彼らは俺がやろうとしてることをよく理解してくれている。


-- 違う側面というと?

このコンピレーションには『ストリングス・オブ・ライフ』も入っていない。そんなものは過去にもう何枚もつくってきたからね。


-- なるほど。では今回の選曲基準は?

いい曲なんだけど、リリース当時には早すぎてしまったのか、そのクオリティに見合う評価や注目を得られなかった楽曲を改めて紹介したいと思っていた。それと、新しい才能を紹介しようと思った。


-- 実際にどうやって選んでいったのですか?

まずルイス・ハイマンの曲は入れたいと思っていた。彼のアルバムをリリースしようとしたときに当時トランスマットの流通を担当してくれていたシスコ・レコーズが倒産してしまった。最悪のタイミングだったね。そんな不運に見舞われた彼の楽曲を収録するのは大切なことだった。サンズ・ソレイルやダブル・ヘリックスはアルバムをリリースできたけれど、流通の状況は悪かったから彼らの楽曲も収録すべきだと思っていた。そういうわけで、最初の段階からある程度はアイデアがあったんだ。


-- なるほど。

それとDVS1とグレッグ・ゴウはトランスマットから最後にリリースしたアーティストだから彼らの作品は入れようと思っていた。彼らはトランスマットの「再起動」に多大なる貢献をしてくれたからね。それから、新しい才能を紹介したかった。ヨタム・アヴニの作品はMix CD『Heartbeat presents Mixed by Derrick May』に収録していたから入れたいと思っていた。レニー・フォスターは日本に住んでいたから、日本とのつながりの中で発掘できた。カリム・サラウィは自分の音楽が認められないとひどく落ち込んで、音楽を止めてしまって、マレーシアに引っ越して、ジャングルに住んでいたんだ。でも、俺は彼は音楽をつくるべきだと思っていたから、何度も君の音楽は素晴らしいって言い続けた。それでカムバックしてくれたんだ。今回の収録曲を中心に12インチをリリースして行くけれど、彼の作品は4枚ほど出すつもりだ。


-- では「陽の当たらなかった名曲達」について教えてください。

スティーブ・ラクマッドによるア・スコーピオンズ・ドリームの「アクアダンス」をを収録している。これはまさに時代の先を行っていた曲だと思う。当時は早すぎたんだ。だから、このクオリティに見合う評価や注目を集めることができなかった。他の曲についても同じようなことが言えると思うよ。


-- 確かにジョン・アーノルドの「スパークル」やデジタル・ジャスティスの「テーマ・フロム:イット・イズ・オール・ピアースシェイプド」、トニー・ドレイクの「ワン」などはトランスマットの隠れた名曲でしたね。また、CD未発表曲が多かったのも興味深いポイントでした。

そうだ、これらの作品もリスペクトに値する。今回はアリル・ブリカの「グルーヴ・ラ・コード」のような確立されたクラシックではなくて、こういった隠れたクラシックを紹介したかったんだ。むしろ、「グルーヴ・ラ・コード」のような成功を収めかけている曲をね。


-- 新旧トランスマットの楽曲が収録されている構成は興味深いものでした。

古いものは新しいものであり、新しいものは古いものだ。ストーリーのはじまり、途中、終わりを見せることが重要だ。そうでなければ完成とは言えない。俺は何かを未完成のままにしておくようなことはしないよ。


-- それと今回はあなたの未発表曲「ハンド・オーバー・ハンド」が収録されているのもポイントです。この曲について教えてください。

ずっと前につくった曲だ。自分の人生でデリケートだった時期について描いている。当時は幸せを感じられなかったし、何に対しても愛を感じることができなかった。これはダンスフロアのための曲じゃない。この曲は自分の音楽スキルが披露できていると思う。この曲ではキーボードを自分で演奏しているんだ。生演奏をオープンリール・テープに直接録音した。一度テープに録音してから、また別のテープに移したりはしない。ダイレクトに録音したときの音質が好きなんだ。自分の作品はすべてそうしている。この作品もそのときの感情がダイレクトに収められた曲だ。


-- ダンスフロアのための曲じゃないということですが、今作も「ビヨンド・ザ・ダンス」というサブタイトルがつけられていますね。そもそも、これはあなたの作品のタイトルでもありましたが。

その通りだ!今回は「ビヨンド・ザ・ダンス」とタイトルにつけたけれど、「ビヨンド・ザ・ダンス」は収録していない。今回はその哲学を込めたんだ。つまり、ダンスだけ、クラブだけじゃなくて、よりスピリチュアルな楽曲を収録した。そして、その意味通りにリスニング対応としてつくった。ダンストラックだけではなく、もっと知的で山あり谷ありの構成にして、全曲を通して聞くと一つの楽曲に聞こえるようにしたかったんだ。


-- 今作はCDですが、アナログ盤リリースの予定は?

3枚組アナログ盤セットもリリースする予定だ。これは限定版コレクターズシリーズとして出すつもりだ。ちょっと高くなるけど、ブックレット、アナログ盤、特別ジャケットなど、コレクターズ・アイテムにしたい。まるでアース・ウインド & ファイアみたいにね(笑)。
でも、アナログを出すのはレコード好きな人への敬意を表すためなんだ。また、今回からデジタル配信もはじめるよ。これまでは一曲も配信したことなかったけどね。


-- 今後のトランスマットの予定は?

このコンピの後に12インチ・シングルをリリースして行く予定だ。カリムやスティーブ・ラクマッド、クロノフォン、レニー・フォスターらのリリースを予定している。


-- トランスマットのアーティスト選定基準は?

彼らはエレクトロニック・ミュージックの未来にノイズを巻き起こすフロンティアに一歩踏み出そうとしているアーティストたちだ。彼らを紹介することに絶対の自信を持っている。彼らは大きな可能性を持っていると共に、彼らが直面するであろう重責に耐えられる人物たちだ。だからこそ、彼らをトランスマット・アーティストと呼ぶことができるんだ。簡単にトランスマット・アーティストの称号を与えることはしてこなかったし、これからもするつもりはない。この称号には名誉、リスペクト、そして責任がついてくる。これらをちゃんと理解して管理できるアーティストを慎重に選んでいるんだ。


-- 今回のアートワークには歴代のアーティストたちの名前が入れられていますね?

そうだ。今回は楽曲を収録していないアーティストでも、これまでにリリースしたアーティストの名前を入れた。これは彼らへのオマージュなんだ。それと、ライナーノーツは元トランスマットのスタッフにも書いてもらっている。それと、初期の制作風景などトランスマットの歴史を物語る写真を入れたりしているんだ。ぜひ、ゆっくり時間をかけて見てもらいたいと思っているよ。


-- トランスマット創設時に考えていたコンセプトは?

時代の経過に耐えうる音楽をつくること。エレクトロニック・ミュージックの本質に忠実な人々と仕事することだ。


『Ms00 / Beyond The Dance〜transmat 4 Compiled By Derrick May』 [12/5 発売予定]


説明不要デトロイトテクノのオリジネーター=デリックメイが主宰するレーベル<Transmat>より10年振り4枚目のレーベル・コンピレーションが遂にリリース!新たな才能〜未初表/初CD化となる隠れた名作、そして目玉にデリックメイ幻のオリジナル未発表曲「Rythim Is Rythim - Hand Over Hand」を収録!<Transmat>の様々なサウンドが堪能できる超注目作品!!


収録曲

【Disc1】
  • 01. John Arnold - Sparkle*
  • 02. Digital Justice - Theme From: It's All Gone Pearshaped
  • 03. Choice - Acid Eiffel*
  • 04. Louis Haiman - Seedling*
  • 05. Psyche - Crackdown (remix)*
  • 06. Double Helix - Silent Company*
  • 07. Tony Drake - One*
  • 08. Sans Soleil - Moulinex*
  • 09. A Scorpion's Dream - Aqua Dance*
  • 10. Silent Phase - Fire (Rewired mix, excerpt)*

【Disc2】
  • 01. Karim Sahraoui / DJINXX - Mr. Teleportation*
  • 02. Microworld - Signals
  • 03. Rennie Foster - Floatilla*
  • 04. Yotam Avni - Heliotropism (Tons of Piano)*
  • 05. Chronophone - Eiffel In Love*
  • 06. Kenny Larkin / Dark Comedy - War of the Worlds
  • 07. Greg Gow - The Bridge*
  • 08. Zak Khutoretsky / DVS1 - Pressure*
  • 09. Deep’a & Biri, Gene - Ocean Swell*
  • 10. Craig Sherrad - Sattelite Exstasy (Monty’s Maple City Remix)*
  • 11. Stephen Brown - Vocal Slices*
  • 12. Karim Sahraoui / DJINXX - Nightflow*
  • 13. Derrick May / Rythim Is Rythim - Hand Over Hand ※未発表曲

* 初CD化音源





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Ms00 / Beyond The Dance〜transmat 4 Compiled By Derrick May

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発売日:2012年12月05日
在庫あり

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発売日:2011年11月23日
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Heart Beat Presents Mixed By Derrick May × Air

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発売日:2010年01月20日

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発売日:2010年12月11日

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発行年月:2012年11月

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