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【連載コラム】Akira Kosemura 『細い糸に縋るように』 第39回 細い糸に縋るように Akira Kosemuraへ戻る

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2012年10月10日 (水)

profile

[小瀬村 晶 / AKIRA KOSEMURA]

1985年生まれ、東京出身の作曲家・音楽プロデューサー。
作曲家として国内外の音楽レーベルからコンスタントに作品を発表する一方、企業広告や、アパレルブランド、公共施設、舞台、映画、TV、ウェブコンテンツなど、特定の分野に限定されることなく様々なコラボレーションを行っている。
今年に入ってからは、コンテンポラリーバレエ公演「MANON」の劇伴、東京スカイツリータウン(一部施設)の音楽や、ドキュメンタリー映画「はじまりの島」エンディングテーマ、「ANA Lounge」の音楽監修などを担当。
コンサート活動にも定評があり、これまでに「音霊 OTODAMA SEA STUDIO」、「中州ジャズフェスティバル」への出演や、自身のピアノ演奏による全国ツアー / 中国ツアーも成功させている。
また、作曲家のみならず、2007年にSCHOLE INC.を設立、プロデューサーとして音楽レーベル「schole」を運営、数多くの作品に携わっている。




十月がきた。
百年振りと報道されたしぶとい残暑もようやくどこかへ消え、ここにきて風の匂いが変わった。そして少し冷たく、感傷的な空気が肌を覆うようになる。秋がきたのだ。
秋の風は寂しい。秋という季節には、どこかもの静かで、淡々と過ぎ去っていく寂しさがある。冬支度をするためのひと時の時間、僕らはその寂しさと折り合いをつけながら生きていく。
本を読んだり、映画を観たり、コンサートへ足を運んだり、着々と冬支度を進めていく秋の下、僕らは心を温めていく。秋は夏や冬と違い、きちんと時間を守るので、特に長引くことはない。いくら夏が後ろに押しても、秋はきちんと冬へバトンを渡す。秋はとても律儀なのだ。不平不満などは言わずに、ただ黙々と課せられた仕事をこなしていく。
僕が秋という季節に好感を持つのは、そこにあるのかもしれない。秋の性格とでもいうのか、誰になにを求めるでもなく、たった独りですべきことをこなしていく。それは、最小限に計算されたしかるべき順序と手段を持って的確に行われていく作業であって、誰の手を借りることもない。おそらく誰の手も借りたくないのではないかとも思う。故に外から見る僕らには、凛とした寂しさを想像させる。それは決して、哀れみのような感情ではなく、寂しさの中に内在する強さ、のようなものだ。
僕はそんな秋に、いつも恋い焦がれてしまう。できることなら僕もそう在りたいとさえ願う。けれど、それはそう簡単なことではない。独り黙々と、首尾良く物事を動かしていくことは、とても根気のいることであるし、なによりも確固とした意志が必要だ。秋には邪念がない。迷いがないのだ。秋は自分のすべきことを分かっているし、自分がすべきでないことも分かっている。秋には秋の決めた秩序があって、秋は決してそれを乱すことはない。秋の世界というのは、本当に美しいのだ。すべてが理路整然としていて、一寸の狂いもなく、この世界を冬一色になるまで染めていく。

秋が来ると、僕はそんな秋の生き様に心を奪われる。秋はきっと僕のことなんて見向きもしないだろうけれど、それでもかまわない。

今年も僕は、秋の美しい程に徹底された冬支度への作業に魅せられながら、ささやかなその短い時間を秋と共に過ごすのだ。


Live 情報

『Quentin Sirjacq & Akira Kosemura Piano Concert Tour in Kyusyu』 開催決定。
■ 11月17日(土)福岡 Benir Cafe [Lコード 82139]
■ 11月18日(日)長崎 旧香港上海銀行 [Lコード 82140]
  チケット情報・販売はローソンチケット『ローチケ.com』へ!

『Akira Kosemura 主宰、Schole レーベル五周年を記念したレーベルショーケース 東京編 2 DAYS』 開催決定。
■ 11月23日(祝)青山 LAPIN ET HALOT
    http://schole.shop-pro.jp/?pid=49655332
■ 11月24日(土)成城 SALONE FONTANA
    http://schole.shop-pro.jp/?pid=49656191


  http://www.akirakosemura.com/
  http://www.scholecultures.net/





Akira Kosemura 今月のオススメ

Quentin Sirjacq 『La Chambre Claire』  [2011年11月09日 発売]

親密な音楽の調べ。フランス・パリ生まれの作曲家 / ピアニスト、Quentin Sirjacq による日本デビューアルバム。
光の揺らめきを題材にした本作。時に踊るように、果ては慈しむように、ロマンティシズムに溢れた Quentin Sirjacq のピアノの調べが、波のように満ちては引いていく、あまりに美しい「明りの部屋」。 そこはかとなく揺らめき合う明りを眺めながら、身を委ねて沈んでしまいたくなるほどに、心の奥底に眠る美意識の湖畔へと誘っていく。ピアニストとして、すでに Fred Frith や Joelle Leandre, William Winant の作品への参加、さらには、James Tenney や Steve Reich, Frederic Rzewski, Jose Maceda の作品にも関わり、作曲家としても、Bruno Bayen, Marion Bernoux, Richard Bean, Jacques Taroni 等と映画やテレビ、ドキュメンタリーの仕事を共にしているというフランスの若き巨匠。音楽に身を委ねた後に残る、親密な心模様を感じられるような、パリからのささやかな贈り物。
(レビューより)

※本作は、フランス国内にて2010年に発表された作品の国内盤となります。


Akira Kosemura 『how my heart sings』  [2011年04月11日 発売]

これまでに発表してきた4枚のソロアルバムを始め、様々な音楽家とのコラボレーション、TVやWEBなどへの楽曲提供、ファッションブランドへのサウンドデザインなど、小瀬村晶はデビュー以降、様々な手法で自身の音楽と向き合い、それを発信し続けてきた。
今作「how my heart sings」は、そんな彼が最も愛する楽器である「ピアノ」と向き合い、昨年の春から秋に掛けて、歌うようにして紡いできた音楽の記録である。
秋の夕刻、鈴虫が歌う初秋に、大倉山記念館にて録音された本作品には、昨年春のピアノコンサートツアーのために書き下ろされた楽曲やコンサートアレンジに加え、荒木真 (saxophone) と白澤美佳 (violin)を演奏家に迎えた楽曲、そしてツアー後に自宅スタジオで作曲された楽曲が収録されている。
この作品はなによりも、小瀬村晶という一人の人間が、自分の心に映っては消えていく旋律をピアノという楽器を用いて歌うようにして紡いできた、とてもプライベートな音楽である。そして時折、心を寄り添うようにして演奏される二人の音楽家によるハーモニー。

芽吹の春から、静謐な秋へ。音楽は歌うように。
(レビューより)






Akira Kosemura 最新作

Akira Kosemura 『MANON』  [2012年05月23日 発売]

18世紀フランスロマン主義文学の名作「マノン・レスコー」(アベ・プレヴォー原作)を、キミホ・ハルバート演出・振付によって現代にも重なるアレンジを施したダンス公演「MANON」。本公演の劇伴を担当した小瀬村 晶による書き下ろし楽曲、2枚組 全80分に及ぶ超大作のサウンドトラック。

風の様に天真爛漫で、終いには自分が巻き起こす竜巻に巻き込まれ死を迎えるマノンと、彼女との出会いから運命に翻弄されつつもマノンを愛し続けるデ・グリュー。二人の壮絶な恋愛劇を、時に美しく、時に儚く、そして時に残酷に、運命に翻弄される二人の人生に呼応するように書き下ろされた音楽からは「生きることへの喜びと、生き抜くことへの困難さ」という、現代にも通じる普遍的なテーマへと重なっていく。
前作のオリジナル・アルバム『how my heart sings』は、自身のピアノ演奏に重きを置いた飾らない演奏によるシンプルで美しいピアノ・アルバムだったのに対して、今作では、演奏家に白澤 美佳(ヴァイオリン)、人見 遼(チェロ)、良原リエ(アコーディオン)、三沢 泉(マリンバ・パーカッション)、高坂 宗輝(ギター)、荒木 真(フルート)、Shaylee(ボーカル)を招き、様々な顔を持った楽曲アレンジを施している。さらには、ギミックの効いた電子音楽や、ノイズ・ミュージックなど、これまでの小瀬村 晶作品では見受けられなかった作風も大胆に散りばめられており、オリジナル・アルバムとはまたひと味もふた味も違った、職人としての側面も垣間みれる充実の作品に仕上がった。
舞台作品のサウンドトラックでありながら、一音楽作品として非常にエキサイティングな聴覚体験が続く全80分、19曲を完全収録。

※舞台作品としての一連の流れを徹底した美意識で追求した本作は、小瀬村 晶 本人の希望によりCDフォーマットのみでの発売となります。



schole 最新作

paniyolo 『Christmas Album』  [2012年11月01日 発売]

SCHOLE 冬のリリースはこれまでに『I'm home』(2009)、『ひとてま』(2012)の2作品をリリースしているギター弾き、Paniyoloのクリスマスカバーアルバム。 冬の大定番の今作、Paniyoloの温もり溢れるギターの音色がシンプルで心地よいギターアンサンブルとなって、大切な空間にそっと灯りをともします。
過去のSCHOLE作品で数多くのギター演奏を担当してきたPaniyoloですが、リミキサーとして参加したFlica、ghost and tapeの作品では他楽曲へ自らの色を溶け込ませるセンスの良さと、そのアレンジ力が好評を博し、日本の童謡楽曲など、これまで様々なカバー楽曲を披露してきました。 前作『ひとてま』で確立したPaniyoloの定番スタイルとも言うべき、素朴でささやかにつま弾かれるギター演奏で「レット・イット・スノウ」、「サンタが町にやってくる」、「ジングルベル」、「赤鼻のトナカイ」などの親しみやすい楽曲を、ゆっくりと静かに奏でていきます。
アートワークは絵描きと音楽家の2つの顔を持ち、自身もSCHOLEより作品をリリースしている武澤 佳徳(Yoshinori Takezawa)が担当。
メロディの美しさそのままに、シンプルに洗練されたアレンジが、落ち着いた雰囲気を演出。
そっと優しく、わくわくを届けてくれる、Paniyoloのクリスマスアルバム。



次回へ続く…(11/12更新予定)。






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