MARILYN MANSONのあの日、あの時14

2012年10月5日 (金)


『HOLY WOOD(IN THE SHADOW OF THE VALLEY OF DEATH)』をさらに深く検証!
文●有島博志(GrindHouse)

 木星を表す錬金術記号もジャケに描かれている4枚目『HOLY WOOD(IN THE SHADOW OF THE VALLEY OF DEATH)』は、発売から間もなく12年の歳月を迎える。自分としてはとても意外な事実がある。マンソン、そしてMARILYN MANSONの名や存在を世界に轟かせ、浸透もさせ、商業的にも大成功した作品は前々作『ANTICHRIST SUPERSTAR』('96年)と前作『MECHANICAL ANIMALS』('98年)であることから、その2作品は今もなお欧米で語り継がれ、評価も高いに違いないと信じて疑っていなかった。が、しかし、一番評価が高いのは、この『HOLY WOOD』なんだそうだ。特に有名音楽誌や辛口評論家たちの間では、ほぼ絶対的な説得力すら持つ。マンソン自身も今作にはそれまでとは比にならないくらいの強い想いを託していた、ということは連載前回に書いた。マンソンが今作を基に描いた構想はとてつもなくデカかったことはよく知られる。今作を含む3部作を通してのコンセプト、ストーリーの小説化、映画化を目論んでいた。

「今作の歌詞を、家の地下室にひとり閉じこもり3ヵ月かけて書いたんだ。そのときすでに3部作のストーリー、コンセプトを小説や映画にしてみたいという想いがあったから、歌詞とそれらがよりリンクするよう意識した。小説の方では、今までの3部作の内容をもっと詳しく語ることになるよ。ちゃんとキャラクターも存在し、ストーリー形式で語るようなものになる。CDでは幻覚、比喩という形の表現の方が多く、イメージを伝えただけだから。だってCDで深い内容の話を総て表現しようとしたら、あまりにも重過ぎて音楽として聴きにくいものになってしまう。だからCDでは大雑把に話を展開させただけなんだ。小説は単純に一冊の著書として読むこともできて、オレやバンドのことを考えなくても理解できる内容にしたい。人間の行動学というものについてかなり書くつもりさ。もちろんCDを聴きつつ一緒に読み、CDに対する理解をより一層高めるという楽しみ方もできるね。どちらが先になるかわからないけど、実は一連のコンセプト、ストーリーの映画化もしたいと思っているんだ」

 後日わかることなのだけど、マンソンは今作発売のだいぶ前にハリウッドに居を構える映画会社のひとつ、New Line Cinemaと映画製作とサントラ発売の流通の交渉をしている。'99年11月にアイルランドのダブリンで開催されたMTV Europe Video Music Award 1999にMARILYN MANSONとして出演し、ライヴパフォーマンスを披露。記者会見でマンソンは映画プロジェクト計画を明らかにした。この席で、マンソンはチリのアバンギャルド映画制作会社とも会談し、映画化の可能性について話し合っていることにも言及した。しかし、両社とも双方のビジョンが折り合わず、交渉は破談に終わった。映画化を断念する代わりに、マンソンは続いて小説2冊を出版するプランを進めた。一冊は3部作のストーリー、コンセプトを視覚的かつ幻想的に小説化したもので、今作の発売から近い時期にReganBooksから発売する予定と、出版社名まで挙がっていた。その後今作をイメージした大型の画集の発売も続く予定だった。が、出版に関する問題により2冊のどちらもいまだ発売されていない。

 マンソンは今作、そしてそれに関連するプロジェクトに関して、当時こういうふうに語っている。

「小説化、映画化の構想はあるものの、かと言って特段なにかに注意を払ったっていうことはないんだ。俺たちは常にとても実験的なアプローチを取っているからね。しいて言うなら3部作を通じ、その最初から最後までのコンセプト、ストーリーが大幅に変わらないようにしたことぐらいかな。それと、スタジオ作業時にあまり音を洗練されたものにしないで、ラフな部分を残したということも心がけたね。楽曲作りのときに録ったもの、スタジオ作業の最初の段階で録ったもので、その楽曲に少しでもスペシャルな要素があったら、それを極力残して使ったんだ。いい音にするために録り直しをするっていうことをしなかったパートもたくさんある。雰囲気やヴァイブを大切にしたかったからね」

MANSON'S SINGLE COVER GALLERY

「THE NOBODIES」 (2001年)
『HOLY WOOD(IN THE SHADOW OF THE VALLEY OF DEATH)』からの3rdシングル。連載第12回に書いた、コロンバイン高校銃乱射事件にインスパイアされた楽曲が表題曲だ。同曲と「The Death Song」のライヴ・ヴァージョンの3曲入り。マンソンのMCでわかるのだけど、本文にもある聖書を読み上げたデンバー公演で収録されている。表題曲PVも観られるのだけど、ジャケはそのワンシーンが使われている。絶版。

 今作は本国で発売初週に117,000枚売り(前作のときは223,000枚)、USチャート初登場13位をマークした。日本を含め世界10ヵ国でトップ20入りを果たした。その直前の2000年10月下旬、US中西部ミネソタ州ミネアポリスより最新ツアー、Guns, God And Government Tourもキックオフされた。アメリカ、イギリス、ヨーロッパ各国ではどこもアリーナ級の規模の大きい会場が使われたことが、このツアーの特徴だ。その一環として2001年3月に再来日も実現、広島、福岡を含む5都市7公演が行われた。もちろん、公演によってセットリストに組み入れられる曲数は変わったものの、今作からは主に「The Death Song」「Dispossable Teens」「The Fight Song」「The Nobodies」「Burning Flag」「The Love Song」などが披露された。このツアーでもっとも世間の注視を集めたのは、2001年6月のUS中西部コロラド州デンバー公演中にマンソンが聖書を読み上げたことだった。その意図するところは、自身が綴る暴力的な歌詞とのバランスをとるため、というもの。そうすれば災い、殺人、姦淫、自殺、子供の生贄のことを言ったキリスト教の美徳を検証することができる、とマンソンは考えていた。朗読は、主にレビ記第20章第9節(自分の父母を呪う者は必ず死刑に処せられる)と、詩編第137編9節(お前の幼子を捕えて岩に打ちつける者は)が引用された。また、このツアーではライヴ映像収録も行われ、2002年10月にライヴDVD『GUNS, GOD AND GOVERMENT』として発売された(実際は'99年〜2000年収録のライヴ・フッテージも盛り込まれている)。

 実は今作は当初思われていたほど商業的にはふるわなかった。本国で50万枚以上売れ、ゴールド・ディスク獲得に至るまでには、なんと発売から3年もの歳月を要したことが、それを如実に裏づけている…。



MARILYN MANSON 関連タイトル!

RAMMSTEIN / 『SEHNSUCHT』('97年)
今や欧米ではトップ・メタル・バンドの座と評価を不動のものにしているドイツは元・東ベルリン出身の6人組による2枚目。日本は今作が正式デビュー作となり、’98年に発売された。インダストリアル・ミュージックの要素をまぶしにまぶし、ときに深く刷り込んだヘヴィ・ロック・サウンドは当時ほかに類を見ないものだっただけに、かなり斬新で衝撃的だった。ガリガリ刻まれるギターリフとシーケンサーでコーティングしたかのような生ビートを、ティル・リンデマンによるダークなドイツ語ヴォーカルが引っ張り、完全に独自の世界観を描くさまは圧巻ですらある。ただ、日本での評価度と注目度の低さは悲し過ぎるレベルにある。
文●有島博志(GrindHouse)

MARILYN MANSON 最新作ニュース

■■■ 有島博志プロフィール ■■■

80年代中盤よりフリーランスのロックジャーナリストとして活動。積極的な海外での取材や体験をもとにメタル、グランジ/オルタナティヴ・ロック、メロディック・パンク・ロックなどをいち早く日本に紹介した、いわゆるモダン/ラウドロック・シーンの立役者のひとり。
 2000年にGrindHouseを立ち上げ、ロック誌GrindHouse magazineを筆頭にラジオ、USEN、TVとさまざまなメディアを用い、今もっとも熱い音楽を発信し続けている。
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3部作の第三弾にして第一幕

Holy Wood In The Shadow Of The Valley Of Death

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3部作の第二弾

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3部作の第一弾にして最終章

“3部作”楽曲中心の構成のライヴ映像作品

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発売日:1997年08月25日

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  • Born Villain

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