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ハバード 『MISTRAL』を三たびCDで
2012年10月16日 (火)
大好評”Jazz レア盤リクエスト復刻” シリーズ第二弾！
80年代一世を風靡したフレディ・ハバード 幻の名盤『ミストラル』が
最新リマスタリングを施したHQCD仕様で紙ジャケ復刻！
フレディ・ハバード、アート・ペッパーというジャズ界のビッグ・アーティストに加えて、スタンリー・クラーク、ジョージ・ケイブルス、ピーター・アースキンといったフュージョン界のビッグ・スターが参加した超ド派手オールスターズの幻の名盤『ミストラル』がHQCD仕様で待望の紙ジャケット復刻！
過去にLP（1980年）、CD（1984年、1988年の2回）の形態で発売され、LPは数万枚のヒットを記録するも、CDは数百枚に留まるセールスであったという、まさにLP〜CD初期の狭間に生まれたレア盤と言えましょう。中古市場においてもLPに対しCDの方が驚くほど高値で取引されている状況にあり、レア度の高い1枚。
今回の発売にあたりマスターを新たにして24ビット192kHzでリマスタリング。
限定生産につきお求めはお早めに！
『MISTRAL』 収録曲
- 01. Sunshine Lady
- 02. Eclipse
- 03. Blue Nights （Blue Nights Now I've Found Love？）
- 04. Now I've Found Love
- 05. I Love You
- 06. Bring It Back Home
Freddie Hubbard （tp,flh） / Art Pepper （as） / George Cables （p） / Stanley Clarke （b） / Peter Erskine （ds） / Roland Bautista （g） / Paulinho Da Costa （per） / Phil Ranelin （tb） / Peter Wolf （syn）
Produce：John Koenig
Co-Produce：菊地洋一郎
Recorded at Ocean Way Recording in Hollywood, CA.
September 15, 17, 18 and 19. 1980
『MISTRAL』でしか味わえないものがある。
このたび都合三度目のCD化と相成った『MISTRAL』は、80年代のモダンジャズとフュージョン・シーンを横断し、結び付け、そのどちらもを一望できる、まさに”時代が生んだ”とでも呼ぶべきバリアフリーな作品だ。その時代にしか生まれ得なかったサウンドというものには、そうした価値基準を含んだ表現としての強さがあり、また同時に、経年により聴き手の反応がコロコロと変化していくという状況にこそ本来あるべき趣き深さがあるのではないだろうか。少なくとも音楽鑑賞の世界においては、歴史はいくらでもひっくり返る、ということだ。
マイルス・デイヴィスの電化世界がそうであったように、時代（本人の時代感覚）と懇ろになって生まれた（と思われしき）音楽、言い換えれば「最先端」「最新鋭」ゆえに「やや難解」といった第三者の判断が下された作品は、当時〜現在はおろか半永久的に「良い」と「悪い」の境界線を亡霊のように彷徨い行き来する、つまりイイ意味で成仏することなくそこにとどまり続けることができる、ある種の怨念にも似たパワーに満ちている気がしてならない。これもまた音や作品そのものが持つとてつもない生命力に他ならないのではないだろうか。
また例えて、満場一致の名盤というものは「古典遺産」として歴史の鬼籍に丁重に納められる、そんな感覚に基づけば、時代を色濃く反映したある種普遍性に欠いた作品の方がむしろ人目に晒され続け、白熱する議論の主座たる位置をキープすることができる、という感覚にも辿り着く。再評価〜リヴァイヴァル軸のすべてがここに当て嵌まるわけではないと思うが、だからこそ擦り切れるまで聴き返すという理屈にも繋がるのだろうか。
これまでに二度のCD化を繰り返し、その都度世代の異なる聴き手から賞賛の声を浴びている。それが本作『MISTRAL』に対する印象だ。やがて21世紀を迎え、モダンジャズが萎み、フュージョンが掠れていく経年変化の中で、復刻という文化事業が掲げる本分や意義は恐らくだが、世に周期的に訪れる評価のリセット〜更新、その感覚を大いに促進することにあると思われる。だからしてこの『MISTRAL』には、『Open Sesame』や『Red Clay』にはない持ち味が半ば”役割”のように存在するのだ。
前回の「Jazz レア盤リクエスト復刻」で再び世間的評価の見直しを直訴したヒュー・ロウソン・トリオの『Casablanca』にしても同様、周期的に何度でも登場しては（あくまで市場の）勢力図を塗り替えなければならぬとする”役割”を担っていた。それは、20年という時の流れがいかに混濁し長大で、人間の記憶や感覚など”まるで当てにならない”ということを逆説的に意味しているとも思われる。
『MISTRAL』に限っては、まずこのジャケットの鈍重な爽やかさが何より重要なのであり、まさに”先手必勝”を絵に描いたようなジャケットと中身の理想的な関係性を、30年経った今でこそ窺えると言えるだろう。ある人は忘却の彼方にあった記憶を手繰り寄せながら、朧に「角松敏生」「テイクオフ」「シーブリーズ」「わたせせいぞう」といった潮騒まみれの青春群像をプレイバック。またある人は、若きスタンリー・クラークやピーター・アースキンのタイトでジューシーなリズムに、現代にはない新味を感じる。今これが好きか嫌いか、という二義的な感覚は置いといて、まずはこのバリアフリー時代ならではの空気感に肩の力を抜いて全てを預けてみてほしい。そこではきっと所謂名盤では味わえない、真にヴァーサイタルな音楽だけが持ち得る実に摩訶不思議な引力、またはスルメを越えた呪縛力のようなものを感じるに違いない。
フレディ・ハバードがアート・ペッパーと共演した上に、前述のリズムマスター二人、さらにはジョージ・ケイブルズ、ローランド・バウティスタといったところがスタイリッシュに絡むというのだから、当時（良くも悪くも）話題になったことは想像に難くない。
サウンドにしても、ストレート・アヘッド組の主役トランペットとアルト・サックスの吟醸味を帯びた息吹きが、エクレクティクな趣旨を饒舌に語るかの如く、フュージョン・チームの生成するコンテンポラリーなメロウネスにナチュラルに溶け込んでいく、まごうかた無きあの時代ならではの、至極横断的で守備範囲の広い、また誤解を恐れずに言えば両性具有的で化け学的なおもしろさに溢れ返っている。
ゆえの、レア盤とも言えるのだろうか？ ともかく、『MISTRAL』をまたCDで聴くことができるということに、何とも言えないドキドキを憶えている次第だ。
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